『恋文の技術』by森見登美彦
ポプラ社の冊子「asta」の連載で部分的に読んでいた。京都大学の院生である盛田一郎はしばらく能登の田舎の研究所に送られる。そこで「文通武者修行」と称して友達や怖い先輩女史や元教え子や妹やらに手紙を書きまくる。そして意中のひとへの恋文をいつか見事に書くことを志してはいる。
書簡体小説のラブコメ・・・といっても間違いではないはずだ。
さまざまなバージョンで書かれた恋文でなる一章は、連載のときには一條真美子さんの挿絵が楽しかったのだけど、単行本(そして文庫でも)ではカットされていることが惜しい。
文通、いまどきではレトロなものと見られそうだけど、私も手紙は大好きなので、この作品には心地よさを感じる。
『プリンセス・トヨトミ』万城目学
文春文庫の新刊。単行本が出てから2年しかたっていないのにもう出るのは、映画化のせいに違いない。
「会計検査院」、税金の無駄遣いをチェックする独立機関、そこから大阪へ出張する3人組と、大阪の少年少女の生活が交互に出てくる。実は大阪には独立国が存在し、彼らは「プリンセス」をまもっているのだった。
東京から出向くメンバーが「松平」に「鳥居」、大阪側メンバーが「真田」等とくれば、関ヶ原や大坂の陣を意識していることはすぐわかる。すると、フランスとのハーフと設定されている「旭・ゲーンズブール」はなんだろう。「旭」はもちろんアレ、「ブール」はたぶんドイツ語のブルクと同じ、城、市の意味だと思う。
5月2日に付記。「ゲーンズブール」はGainsbourgであることを知った。gainは勝ち、利益の意味である。勝・利・益と、城・市・町を組み合わせてなにか豊臣に縁のある名前になるだろうか、う~ん?
ところで、上記二人の作家は、京都大学出身で、京都の大学生の話が有名だという共通点がある。さらに、『鹿男あおによし』は奈良出身のモリミーではなく、大阪出身の万城目学のほうなのでややこしい。その点この話は誤解を招かない。
『風にもまけず粗茶一服』松村栄子
マガジンハウスの冊子「ウフ」に連載されていた『粗茶一服に雨あられ』、その前編『雨にもまけず粗茶一服』がそのころ文庫で出て本屋で目についていた。わりにかわいい絵で(人間の絵は「しばわんこ」にちょっと似てると思った。別人だけど)気になっていたし、それは買って読んだ。
弓・剣・茶の小さな流派の家元の跡取り息子である友衛遊馬(ともえあすま)が、進路に迷って反抗したり修業したりする話。
父の命令で比叡山のボロ寺に預けられてこき使われている。文明とはほど遠い生活、自分でこんな肉体労働するのはイヤでも、人ごととして読むぶんにはたいへん好ましい。
『粗茶一服~』が改題されてこの単行本が出たとき、買いたい気もしたけど買わなかったのは、カバーがタレントの写真だったから。図書館で予約して長く待って、ようやく回ってきた。 文庫ではまた違う装丁になるのだろうか。
ポプラ社の冊子「asta」の連載で部分的に読んでいた。京都大学の院生である盛田一郎はしばらく能登の田舎の研究所に送られる。そこで「文通武者修行」と称して友達や怖い先輩女史や元教え子や妹やらに手紙を書きまくる。そして意中のひとへの恋文をいつか見事に書くことを志してはいる。
書簡体小説のラブコメ・・・といっても間違いではないはずだ。
さまざまなバージョンで書かれた恋文でなる一章は、連載のときには一條真美子さんの挿絵が楽しかったのだけど、単行本(そして文庫でも)ではカットされていることが惜しい。
文通、いまどきではレトロなものと見られそうだけど、私も手紙は大好きなので、この作品には心地よさを感じる。
『プリンセス・トヨトミ』万城目学
文春文庫の新刊。単行本が出てから2年しかたっていないのにもう出るのは、映画化のせいに違いない。
「会計検査院」、税金の無駄遣いをチェックする独立機関、そこから大阪へ出張する3人組と、大阪の少年少女の生活が交互に出てくる。実は大阪には独立国が存在し、彼らは「プリンセス」をまもっているのだった。
東京から出向くメンバーが「松平」に「鳥居」、大阪側メンバーが「真田」等とくれば、関ヶ原や大坂の陣を意識していることはすぐわかる。すると、フランスとのハーフと設定されている「旭・ゲーンズブール」はなんだろう。「旭」はもちろんアレ、「ブール」はたぶんドイツ語のブルクと同じ、城、市の意味だと思う。
5月2日に付記。「ゲーンズブール」はGainsbourgであることを知った。gainは勝ち、利益の意味である。勝・利・益と、城・市・町を組み合わせてなにか豊臣に縁のある名前になるだろうか、う~ん?
ところで、上記二人の作家は、京都大学出身で、京都の大学生の話が有名だという共通点がある。さらに、『鹿男あおによし』は奈良出身のモリミーではなく、大阪出身の万城目学のほうなのでややこしい。その点この話は誤解を招かない。
『風にもまけず粗茶一服』松村栄子
マガジンハウスの冊子「ウフ」に連載されていた『粗茶一服に雨あられ』、その前編『雨にもまけず粗茶一服』がそのころ文庫で出て本屋で目についていた。わりにかわいい絵で(人間の絵は「しばわんこ」にちょっと似てると思った。別人だけど)気になっていたし、それは買って読んだ。
弓・剣・茶の小さな流派の家元の跡取り息子である友衛遊馬(ともえあすま)が、進路に迷って反抗したり修業したりする話。
父の命令で比叡山のボロ寺に預けられてこき使われている。文明とはほど遠い生活、自分でこんな肉体労働するのはイヤでも、人ごととして読むぶんにはたいへん好ましい。
『粗茶一服~』が改題されてこの単行本が出たとき、買いたい気もしたけど買わなかったのは、カバーがタレントの写真だったから。図書館で予約して長く待って、ようやく回ってきた。 文庫ではまた違う装丁になるのだろうか。