レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

恋文 トヨトミ 粗茶一服

2011-04-28 05:16:38 | 
『恋文の技術』by森見登美彦
 ポプラ社の冊子「asta」の連載で部分的に読んでいた。京都大学の院生である盛田一郎はしばらく能登の田舎の研究所に送られる。そこで「文通武者修行」と称して友達や怖い先輩女史や元教え子や妹やらに手紙を書きまくる。そして意中のひとへの恋文をいつか見事に書くことを志してはいる。
 書簡体小説のラブコメ・・・といっても間違いではないはずだ。
 さまざまなバージョンで書かれた恋文でなる一章は、連載のときには一條真美子さんの挿絵が楽しかったのだけど、単行本(そして文庫でも)ではカットされていることが惜しい。
 文通、いまどきではレトロなものと見られそうだけど、私も手紙は大好きなので、この作品には心地よさを感じる。

『プリンセス・トヨトミ』万城目学
 文春文庫の新刊。単行本が出てから2年しかたっていないのにもう出るのは、映画化のせいに違いない。
 「会計検査院」、税金の無駄遣いをチェックする独立機関、そこから大阪へ出張する3人組と、大阪の少年少女の生活が交互に出てくる。実は大阪には独立国が存在し、彼らは「プリンセス」をまもっているのだった。
 東京から出向くメンバーが「松平」に「鳥居」、大阪側メンバーが「真田」等とくれば、関ヶ原や大坂の陣を意識していることはすぐわかる。すると、フランスとのハーフと設定されている「旭・ゲーンズブール」はなんだろう。「旭」はもちろんアレ、「ブール」はたぶんドイツ語のブルクと同じ、城、市の意味だと思う。
 5月2日に付記。「ゲーンズブール」はGainsbourgであることを知った。gainは勝ち、利益の意味である。勝・利・益と、城・市・町を組み合わせてなにか豊臣に縁のある名前になるだろうか、う~ん?

 ところで、上記二人の作家は、京都大学出身で、京都の大学生の話が有名だという共通点がある。さらに、『鹿男あおによし』は奈良出身のモリミーではなく、大阪出身の万城目学のほうなのでややこしい。その点この話は誤解を招かない。

『風にもまけず粗茶一服』松村栄子
 マガジンハウスの冊子「ウフ」に連載されていた『粗茶一服に雨あられ』、その前編『雨にもまけず粗茶一服』がそのころ文庫で出て本屋で目についていた。わりにかわいい絵で(人間の絵は「しばわんこ」にちょっと似てると思った。別人だけど)気になっていたし、それは買って読んだ。
 弓・剣・茶の小さな流派の家元の跡取り息子である友衛遊馬(ともえあすま)が、進路に迷って反抗したり修業したりする話。
 父の命令で比叡山のボロ寺に預けられてこき使われている。文明とはほど遠い生活、自分でこんな肉体労働するのはイヤでも、人ごととして読むぶんにはたいへん好ましい。
 『粗茶一服~』が改題されてこの単行本が出たとき、買いたい気もしたけど買わなかったのは、カバーがタレントの写真だったから。図書館で予約して長く待って、ようやく回ってきた。 文庫ではまた違う装丁になるのだろうか。
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ベルばら切手、これからのコミックス購入予定

2011-04-24 05:45:47 | マンガ
 「アニメヒーロー&ヒロインシリーズ」切手に、来月『ベルばら』が出るという。
「ベルばら切手 」
 絵からするとまだ前半のころだろう。フェルゼンが2枚出ていてアンドレが1枚なのはちっと気に入らない、おまけにまだ前半のおリボン髪型のころだし。でも、後半だと絵が出崎馬面になるから、これで適切だとがまんしておこう。まえに原作絵のオスカルも切手になったことがあったけど、あれは種々の絵柄の一部だった。
 「ヒーロー&ヒロイン」と言いながらこれまで少年ものに偏っていて腹立たしかったのだ、初めて少女マンガから大きく出たぞ。次に出るなら『セーラームーン』かな。--ダメな絵のではないことを祈るぞ(作画監督でだいぶ違うから)。国際的知名度も高いので、海外にも売り出してほしい。

 今月新刊コミックスの購入
暁かおり『江』2巻
戸川視友『王のいばら』3巻
香日ゆら『先生と僕 夏目漱石を囲む人々』2巻
ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』3
わたなべ志穂『お江ものがたり』
ヤマザキマリ『アラビア猫のゴルム』1
技来静也『拳奴死闘伝セスタス』1
 来月は『イシュタルの娘』3.
 --ほとんど歴史ものなんだな。先日アニメイトでもらった情報ペーパーをチェックしたらわりに増えてしまった。
 
 アニメイトにはときどき行く。『ヘタリア』グッズを物色する。このまえは、リングノート2種新しく出ていたので購入。「乙女文具」HPで見たことはあるエコバッグ、8種類のうちできればドイツか日本が欲しいのだけど、なぜかイギリスしかなかった。買ったらすっきりしそうなので買った。たくさんはいりそうな品である。



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なぜアントワーヌ?

2011-04-21 15:07:20 | 歴史
 おととし文庫で出て読み、手放すまえに再読した本、『マリー・ルイーゼ』by塚本哲也(文春文庫上下)。
 跡取り息子を望むナポレオンがジョゼフィーヌと離婚して、神聖ローマ帝国→オーストリア帝国のフランツⅠ世の娘と再婚した。この皇女の名は通常「マリー・ルイーズ」と書かれることが多いけどここでは「マリー・ルイーゼ」で一貫している。この際こだわらないことにする。
 浪費家であったジョゼフィーヌと違ってマリー・ルイーゼは質素で慎ましく、ナポレオンとの仲も睦まじかったが、やがてこの風雲児も没落を迎えて、流刑の身に。 彼女も子供と共にエルバ島へ行く気持ちはあったけど、父との板挟みで悩み、おまけに、ジョゼフィーヌとの離婚を教皇が認めていなかったことを知って衝撃を受ける。 イタリアのパルマ公国へ女王として赴任し、善政をしいて国民に慕われる。
 ナポレオンびいきの陣営からは悪く言われがちなマリー・ルイーゼであるけど、決して薄情者でも軽薄でもなかったことを認識させられる伝記。
 マリー・アントワネットと似たような立場にあるけど人気がないと言われる存在(パルマでは別として)。

 奇しくも彼女と同じ名前のマリア・ルイサ、スペインのカルロス4世の王妃も、アントワネットと共通点が多く、そして人気はない人。強烈なキャラクターなので伝記があれば面白いに違いないけど、ビジュアルの点で美化ができないのがかなり不利な点か。
 
 去る日曜の『新日曜美術館』で「マリー・アントワネットと二人の画家」として、中野京子さん出演で、ヴィジェ=ルブランとダヴィッドが取り上げられた。アントワネットの有名な肖像の数々はヴィジェ=ルブランの作品であるけど、モデルよりも画家のほうがはるかに美しい。天は二物を与えている。  彼女の晩年の作品でスタール男爵夫人のギリシアふうの絵、--美女にしてないのは良心的だと思う、確かに強そう。

 いま、アントニア・フレイザーの『マリー・アントワネット』を読んでいる。数年前にソフィア・コッポラの映画の原作ということでハヤカワ文庫で出た。(映画の評判は悪いね~) 
 身内の間では「アントワーヌ」の愛称で呼ばれたと書いてあるので目を疑った。フランス語なのは、当時のヨーロッパの上流社会でフランス語がハバをきかせていたから不思議でないけど、「アントワーヌ」って男名前じゃないか! 男装してるのでもない、男のように育てられているわけでもないプリンセスがなぜ男名!? 巻頭に載ってる、彼女自筆の手紙の写真には確かにAntoineと書いてある・・・。謎だ。
 藤本ひとみの小説で、彼女の名前でウィーンから出す書簡にサインだけ自筆でする際に、既に教師がいなくなってたので「マリー・アントワーヌ」と書いてしまい、ルイ15世が、嫁いでくるのは男のようだと苦笑する場面がある。大人向きの小説でもジュニア向きのでもこれは出てくる(これらの本には、フレイザーの本のように「アントワーヌ」が愛称だったとは書かれていない)。出典があるのだろうか、それとも創作なのか知らない。もし事実であるとすれば、家族の習慣にも責任があったということになる。 アントワネットの伝記では、ツヴァイクの次にアンドレ・カストロが有名だろうけど、私はこれを読んでいない。現在いる市の図書館にはないし。

 でも、「アントワーヌ」って知らなければ女名前にも見える。(「アンリ」も「フランソワ」も) 「マルクス・アントニウス」が「マルク・アントワーヌ」だとぐっとヤワにきこえてしまうな。

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講談社文庫とムーミングッズプレゼント

2011-04-17 06:11:27 | 
 去年の秋あたり、講談社文庫の100冊フェアで、2冊ぶんで「ムーミン」トートバッグがもらえる企画があった。

 今月の新刊から『ムーミン』の新装版が出始めて、11月ぶんまでの新刊のオビの応募券でムーミングッズがもらえるというプレゼントを始めた。5冊、10冊、~~100冊。私が応募するとすれば、5冊の文庫本サイズノート、10冊の手ぬぐいだろう。
 おまけに、いつもやっている10冊ぶんでもらえるブックカバーも種類がいきなり変更されていた。これまでは、デニム地黒、デニム地黄色、デニム地黒、レザー風赤、レザー風紺 だったのが、デニム地・黒、デニム地・カーキ・スナフキン、レザー風・紺、レザー風・茶・ムーミン、レザー風・赤・ミイ になっている。期限は今年いっぱい。 私は既に二つぶんはためてあったし、今月の新刊を買ったら30を超えた。では、新しい種類を申し込むことにしよう。 好かんキャラものなんか使いたくはないが(出銭なんかぜったいにいらん!)、ムーミンは少なくとも大昔アニメを見ていたし(原作とはだいぶ違うのだろうが)、嫌いではないのだし、こういう機会があれば、使う品ならばもらっておく。
 それにしても、講談社文庫のHPでは、上記のグッズのプレゼントは広告出しているけど、ブックカバーに関しては載せていないのだ。ふだんからそうだ。教えたくないのか、応募してほしくないのか?と思ってしまう。
 しかしここで宣伝してしまおう、--ここのブックカバーは使い心地がいい、ぜひ応募しよう! (そしてここの品は「コンサイス」のものである)

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今年のNHKドイツ語

2011-04-10 06:45:15 | ドイツ
 4月は新番組の時期であり、語学講座も始まる。だいたい4月号はほかよりも売れ行きがいいらしい。
 教育テレビとラジオのドイツ語のテキストを今回買ってみた。ラジオの応用編では、日独交流150年にちなんだ話題が扱われていて面白い。日本でのキリスト教禁止にそれなりに理があるとしたプロテスタント神学者の見解とか、ヨーロッパ人が世界のあちこちで侵略していたので鎖国も理解できるとしたカントとか、新鮮な発見がある。
 『テレビでドイツ語』、放送時間が留守だったりもう寝てたりするころなので、今回まだ全然見ていない。先月テレビその他が替って扱い方を覚えてないので録画もしてない(そういえば先月出た『ヘタリア』の新しいDVDもまだ見てない・・・)。少しは授業でも使いたいのだけど。
 
 年末あたりからしばらくは、教科書の新刊見本が山ほど届くのが常であったけど、今年それがほとんどなくなっているのは景気の悪さのせいだろうか。久しぶりに自分で教科書を選ぶ機会が今年はあって、それには去年もらった新刊から選んだ。ライン河に縁の深い本。これだと適したビデオもいろいろあるし。

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シャンプーとソープと石鹸

2011-04-08 14:45:38 |   ことばや名前
 「ボディシャンプー」と「ボディーソープ」はどう違うのだろうか?
 
 「ボディシャンプー」というものをどう定義づけするのかは知らない。単に「シャンプー」といえばそれは髪を洗うものだろう。
では「ボディソープ」とはなんだ。たぶん、「せっけん」ならば固体をまず想像するので、体洗い用で液体のものを意味するのが普通だと思う。 だったら、「ボディシャンプー」と「ボディソープ」の違いは? 「シャンプー」と「石鹸(ソープ)」にはそれなりに定義というものがあるにしても、たいていはそれほど厳密に考えていないに違いない。
 「ハンドソープ」は液体または泡状という感じがする。昔の小学校の水道には、網の袋に入った石鹸が下げてあったものだ。昨今の学童はぜいたくだから、ああいうものは、不特定多数の手が触ったから汚いと嫌がるのだろうか(洋式トイレの便座みたいに)。もしかして、ポンプ式の「ハンドソープ」とはそういう神経質な要望から生まれたのだろうか? --では、歯磨き粉にもポンプ式が出てくるのか? もう出てるのか?

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無くなった桜、満開の桜

2011-04-06 16:17:45 | 雑記
 近所で桜を見るとなると、うちのごく近くにある幼児園(「幼稚園」ではなく「幼児園」)だった。しかし去年ここが閉鎖されてしまった。ここには白と濃いピンクの花をつける珍しい桜があったのに、いまはそれが無くなってしまった。「核兵器反対集会発生の地」とかなんとかいう記念碑がいつのまにかできていた。
 もう一つ、元日に行くことが常である小さい神社。ここに足を運ぶと、例年通り満開。1本の下では1家族が座っていた。 お賽銭を入れて拝んできた。
 温かい日だった。
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渡辺岳夫『燃えよ剣』珠玉の名曲を礼賛する

2011-04-05 05:42:38 | 新選組
 NHKのBSで、新作のドラマ『新選組血風録』12回が始まったらしい。まるっきり評判をきいてなくて多少驚いた。出演者で知ってるのは鴻池の近藤正臣だけだ。老けたなぁ。『天を斬る』その他で、メインキャラたちにお世話になっていた人という印象が強い。

 S45年(1970)放映の、栗塚旭主演で結束信二脚本による連続テレビ映画の『燃えよ剣』に対して私は激烈な愛を抱いているということを私は再三書いている。『燃えよ剣』といってもいくつもあるので、誰が出て誰が書いたものかをいちいち記載が必要でめんどくさい、おまけに「テレビドラマ」ではなくて「テレビ映画」だし(でも「映画」の本では取り上げられず、テレビ番組として扱われる)。

 『燃えよ剣』その他一連のシリーズにおいて、音楽もすばらしい。渡辺岳夫といえばアニメでも有名どころでヒット作も多い。
 98年だからだいぶ前だけど、『燃えよ剣』と『新選組血風録』の「ミュージックファイル」がCDで出た。そのまえから私は録画から録音して音楽集のカセットをつくったり、好きな曲はピアノで探り弾きしていた。ピアノ曲アレンジなんてできれば気合い入れて練習するだろうに。  先日久々にピアノをたたき、さらにCDもきいて、改めて感慨にふけった。
 どの曲がどこで流れて、なんて話はマニアでないとわからんだろうと思っていたけど、アマゾンの紹介で「視聴」もある(途中までだけど)ことを知ったので、勝手にヨイショを書く。
「燃えよ剣ミュージックファイル 」
「新選組血風録 ミュージックファイル 」

 それぞれの曲にいちいちタイトルはついてたわけではないけど、CDにはつけてある。
 『裏通りのテーマ』、これはもうそのまんま、オリキャラである「裏通り先生」のテーマである。
 『京洛暮色』とされているのは挿入歌(『燃えよわが命』という題になっている)の変奏曲の一つ、この題は合っている。第一話のラストや『落日の町』ラストで使われた。でもいちばん印象深いのは、『波の入り日』での河合の最期だろう(このドラマの河合は史実と別物と思ってほしい)。
 『鎮魂』も同じく挿入歌の変奏。コーラスによる。『残月油小路』で、藤堂の最期近くとか、山崎の最期とか、『沖田総司』のラストなど。これもぴったりの題。
 『永遠の別れ』は、OPテーマの変奏の一つ。藤堂が近藤たちとの決別を宣言したときとか、山崎が息をひきとったあととか(この回『波の入り日』だけは最後がいつものEDではなくてこのメロディが続いた) 流山でのラストとか、--これも合ってる。
 『お雪哀切』が3つあり、確かに『波の入り日』で、歳三が短い休暇をお雪と過ごすエピソードに多用されたのでわからんでもないが、私はそれらよりも『沖田総司』での、総司と歳三の月夜の別れのほうが印象が強い。私は勝手に月の名曲と思っている。当CDの38番、私の好きな曲の5本指に入る。 「俺は、今度生まれ変わるときは、おまえのような人間に~」のあとに流れる。「困ったな。だって私はね、こんど生まれ変わるときにも、土方さんみたいな人とつきあいたいと思ってるんですから」  これらのやりとりののち、去っていく歳三、見送って、障子を閉めて、そして朝。慌ただしくやってきた裏通り先生、病室に入って「沖田君!」 そこで『鎮魂』の曲が入る。総司の死を、気落ちして座り込む裏通り先生の様子と、字幕説明と、止まっている水車が表す。
 --あ~もう、何度思いだしてもじんわりくる。
 『血風録』は、『燃えよ剣』ほどには何度も見てないので、こちらで先に出てきたけど『燃えよ剣』での印象のほうが強い曲はある。
『血風録』で『散り行く隊士たち』と題のついた曲は、私には『燃えよ剣』の『残月油小路』ラスト「その夜、京の町はしんしんと冷えた。油小路の軒下に飛んだ血潮がそのまま赤く凍りついたと伝えられる。この夜、脱出しなかったのはずべて一流の剣士ばかりであった。剣がひとりでに動いて脱出を許さなかったのであろう。剣に生きる者は、ついには、剣に死ぬ以外にはない」(または伝蔵の死)が最大のインパクトなので、私は勝手に『残月』と呼んでいる。悲痛で壮絶で、これも好きな曲の一つ。
 『惜別』の1つめは、『血風録』では『海鳴りが呼ぶ』で、重傷を負ってて意識のないままの山崎と、許嫁の娘が婚礼を挙げるシーンが主要だろうか。私にとっては『天を斬る』の『春の祈り』のクライマックスで印象づいている。
 とーとつだけど:菊地明さんの『沖田総司青春譜』で、斬り込んだときに不運に居合わせた浪士の妹を間違いで斬ってしまったことから自決する隊士の話があった。「柿崎を包み込むように残菊の香が漂い、その一輪を彼の左手が握っていたという。それは、彼が殺めた娘へのせめてもの手向けだったかもしれない」の描写で、上記の曲が浮かんで仕方がない。だから私の脳内タイトルは『残菊』。
この『青春譜』、いまは持ってないのだけど、復刊したら買う。

 あ~、ビバ渡辺岳夫! ビバ『燃えよ剣』! 
 『俺は用心棒』でも音楽集出してほしいぞ。

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文学全集の存在(なげやりタイトル)

2011-04-03 07:59:04 | 
 先週のある日、新しく買った本・借りた本が尽きたので、本棚の奥からしばらくご無沙汰だった短編集を引っ張り出してみた。中央公論社の「世界の文学・ドイツ名作集」、「学生社」の『ドイツ短篇名作集』。
 前者は、まえに住んでいたところの近くの図書館のリサイクル棚から持ってきたものだ。蔵書の除却ではなくほぼ新品で、ずらっと全集が並んでいた、持ち主が引っ越しでもしたのだろうか。それで何冊かもらった。
 後者は、--どうも記憶にない、古本屋で買ったらしい跡がない、これもリサイクル棚か? 困ったことに(?)「謹呈」のハンコが押され、サインまではいっているよ、贈呈者は訳者の一人だ。受取人の名前までばっちり書いてあるのはなんだか気まずい・・・。
 前者は、昭和42年(1967)に出て390円(500ページ近いハードカバー)、後者は1961年、350円(400ページ近く)、うーむ、50年くらいまえの本・・・。
 前者は、同じ全集が地元の図書館にもそろっている。赤い本で見つけやすい。(姉妹編の「日本の文学」はかつてうちで持っていた、こちらは青い本だった)
 こういう文学全集の類は、いまはもう新しく刊行されることはなくなっているのだろうか。少なくとも、個人で持つのはたいへんだろう。せめて、図書館に置いてあるぶんくらい活用されてほしいものだ。(たとえ利用者が少なくても安易に廃棄なんてしないでよ)
 「世界」編は、どのくらい種類があるのだろう。私が知っているのは、上記の中央公論版、筑摩の「世界文学大系」(古い版はオレンジ色、あとのは・・・ベージュ?)、新潮社のは、やたら分厚い本で金か銀の横縞もようのデザインだった記憶がある。河出書房は緑色。集英社版はなんだかいくつも種類がある。ほかにもまだまだ出ていただろう。 でも、シェイクスピアとかゲーテとかドストエフスキーなんて大物の場合は、どこでも載ってる作品はほぼ同じなのだ。本棚の前で借りるものを物色する人は、なにを基準に選ぶのだろうか。持ちやすさもけっこう重要だと思う。いつ読むかの条件にもよるけど。
 ところで、中央公論の全54巻のうち、ドイツは9冊、フランスは17冊、なんだこの差は。でもたぶんどこもこんなものだろう。大学の図書館でも、仏文の棚は独文の倍のスペースとってたし。

 こういう、個人作家のでない「文学全集」というものは、日本以外でもあるのだろうか。作家の全集・選集はドイツにあたりまえにあることは知っているけど。ドイツで編集された「ドイツの名作」にはなにが入っているのだろうか、外国のならば日本の作品はあるのだろうか、--ドイツに限らず関心がわく。

 私はなんとなく、ポピュラーな古典名作は「全集」か文庫で読むものだという意識があるので、たとえば『風と共に去りぬ』の単行本なんて見ると奇妙な感じがしてしまう。(いや、あったかどうか知らんけど)

 『ドイツ短篇名作集』を読み終わったので少し感想を。
 ハインリヒ・マンの『ともだち』とシュテファン・ツヴァイクの『女家庭教師』。
 『ともだち』は、いい家の息子である主人公が、階層の違う少年に魅力を感じて親しくなるが、周囲の人々の彼とその母に対する差別を感じて戸惑う。
 『女家庭教師』は、幼い姉妹の家庭教師である若い娘が、姉妹の従兄である青年と深い仲になって妊娠してしまいクビになってしまう。たぶん珍しくはなかったガヴァネスの不幸。 (そういう家庭教師の境遇で坊ちゃんとの恋愛を切り捨てて成功したのがのちのマリー・キュリーだった)
 両者とも、いい家の子供の視点で大人の世界への不信感の芽生えを描いていて印象深い。
 クライスト『チリの地震』、見るからに不幸そうな顔をした作家で、たいていの作品は暗い。これも、未婚の身で妊娠してしまって処刑されそうだった令嬢が不意の大地震で逃亡できて恋人と再会したが、ミサの群衆の集団ヒステリーでやはり殺されてしまうという救いのない話。
 ヘッベル『うし』  グリムの某エピを連想する、あっというまに芋づる式に一家惨殺・・・ではないけどともかく次々に死んで誰もいなくなった話。なんなんだよ。
 ケラー『破戒の聖僧ヴィタリス』  世間に誤解されながら娼婦のもとに通って祈りを捧げて回心させることにうちこんでいる変人の青年僧ヴィタリス。わりにいい男の彼を憎からず思う令嬢が策略をしかける。   中々微笑ましい印象の話。

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