レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

読みたい本のメジャーとマイナー

2011-08-30 05:16:29 | 
 このまえ読売新聞誌上の本の広告で、小さく『シュトルム名作集Ⅳ』三元社 が出ていた。5460円、あまり聞かない出版社名であるうえに、値の高さもマイナーさを物語っている。図書館くらいしか置かないのではなかろうか。私が在学中に大学の図書館で読んだ本と同じシリーズ・・・かと思ったらさすがにそこまで古いものではなくて、検索すると、Ⅰは09年に出ている。年に1巻ずつくらい出るのだろう。 北ドイツ出身の19世紀の作家・詩人、テオドール・シュトルム、作風の変化はあるが、初期のリリカルな短篇『みずうみ(インメンゼー)』がポピュラーであり、かつて旧制高校での定番だったという。いまでもあちこちの出版社からこれを扱った教材は出ている。(成田美名子の初期の代表作『みきとユーティ』で卒業式の劇でやっていたのはこれである)
 図書館で借りることができたらこの作品集も読みたい。でもこれまでの巻は市内にはない。

 同日の書評欄に、『ウルフ・ホール』という小説の紹介があった。早川書房で上下巻。ヘンリー8世の時代を側近の視点を中心に描いているらしい。 ドラマ『背徳の王冠』なんてものも放映されたし、映画『ブーリン家の姉妹』もあったし、現在の英国王室もわりに話題になるし、有利な題材なんだろうか。ーーだったらローマ史だって(以下いつもと同じ)
 文庫ならばすぐに買うけど、単行本ならば図書館に頼ろう。こちらは市内でも購入されるだろう。


 関係ない話題。
 先日本屋で目に入った本
 「 和風総本家 七代目豆助 オフィシャルフォトブック」
 めまいがするほどの可愛さ。
 耳が立っていても毛がふさふさしていても、尻尾がくるんとしていても、それでなんの役にたつわけでもない、でも、かわいいということには価値がある~~!
 同じようにして『幼獣マメシバ』のフォトブックも買ってしまったのだったな。映画も見たいと思っていてまだ果たしていない。
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地球恋愛 だめっこどうぶつ

2011-08-28 05:45:37 | マンガ
今月買った新刊から。

『ラディカル・ホスピタル』21 ひらのあゆ
芳文社 A5判。 4コママンガは一回のページが少なくてたまるのが遅いけど、単行本もたいてい薄めだし、この作品はおまけに3種類の月刊誌に掲載されているのでわりあい出るペースは早い。そのまえに「ひらのあゆスペシャル」として総集編のようなものも出るので、単行本での新鮮さがいまひとつだというナンはあるけど。でも、これら「まんがタイム」系列の雑誌は買うのイヤじゃない。(『教師諸君!』目当てで私が購読しているのは「まんがタイムファミリー」、おまけに『先生と僕』の香日ゆらさんも登場するようになっているのでますます気乗りする)
 「まんファミ」今月号でのことだけど、夏バテした奥さんのために自分で料理をしようと思ったドクターが患者のおばさんに、「男の料理」の注意点を尋ねて、「後片付け!」と即答される場面は痛快であった。
 
『地球恋愛』1 ヤマザキマリ
 講談社 B6
 世界各地の中高年恋愛!などという、およそ少女マンガ(なのか?レディス誌だったか?)らしくないコピーのついていた連作。『イタリア伊達男』は、明らかに作者の夫の祖父がモデルなんだろうなぁ。「俺はどういうわけか あの冴えなくて素朴な幼なじみに惚れる女性を好きになる だからきっと俺の女の趣味は悪くない」はさりげなくいい感じ。
 『アメリカンダンディ』の、変人なくらい几帳面なおじさんは、・・・やはり多少は作者の夫が反映されていそう。整然としたひとり暮らしの部屋で、たわいないテレビを見て笑っているさまはかわいいと思う。

『PIL』 ヤマザキマリ
創美社 A5
 声楽家でイタリアにいる母と離れて祖父のところにいる女子高生の七生、でも祖父もまた経済観念の欠落した変人。
 これまた、高齢者を描くことの好きな作者の面目躍如だな。  セールスのおばさんにだまされそうなら腹もたつだろうけど。このじいさん、周囲に味方がいてよかったな。

『だめっこどうぶつ』5巻
竹書房 A5
 これも4コマ、出るペースは2年くらいごと。
 うる野の影が分離して善行するのがメルヘンで良かった。
 季節感が豊かなので、これもカレンダー向きだと思う。くわたんカレンダー、出たら買う。グッズ向けでもある。

 9月の新刊での購入予定は、
『壬生義士伝』3巻  ながやす巧 浅田次郎
『世界の果てでもマンガ描き』2巻  ヤマザキマリ
『江 魔王の燠火 (下)』  魔木子
『あかねこの悪魔』3 竹本泉
『チャンネルはそのまま!』4  佐々木倫子
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巻数が減っている

2011-08-26 05:36:11 | 
 このまえ外出したのは火曜日、いや外出といっても駅前に歩いて行く程度だけど。
 中央公論社からの描きおろし里中版『旧約聖書』のⅢの広告が出ていたので明日買ってこよう。
 新潮文庫の今月新刊も明日は出ているだろう、『ローマ人の物語』がついにファイナルだ。
付記:BOOKS indexで確認すると、30日の発売となっているので明日はまだかな。

 このところ、『人間の絆』を借りて読んでいる。高校時代に読んだきりだったのを再読。
 昔読んだ大長編の文庫をまた手にして気がつくこと:たいてい、いまのほうが巻数が少ない。『戦争と平和』、『モンテ・クリスト伯』、『ジャン・クリストフ』、『レ・ミゼラブル』など、まえは7,8冊なかったか? いまはそういうのが4冊くらいにされている。上記『人間の絆』は、まえに読んだときには新潮文庫で4冊だったけど、いまはそれが上下巻。分冊はコストがかかるそうなので、それが原因だろうか。持ち歩くならば薄いほうがいいけど。
 だから『ローマ人の物語』の文庫の薄さを見るとつくづくこの本のポピュラーさを感じるのだ。
 おい、だからAllan MassieやColleen McColloughのローマ小説も思い切って出せよ~~!


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「実の」姉

2011-08-23 05:54:13 |   ことばや名前
 数年前ブームになって注目されていたコバルト文庫の『マリア様がみてる』by今野緒雪 は、ミッション系の女子高を舞台としている。ここには「姉妹(スール)」と呼ばれる、その昔の女学校の「おねえさま」のような慣習があるという設定になっている。だから、生徒たちの会話で「実のお姉さま」なんて言葉が出てきても、複雑な家庭の事情などというわけではないという描写があった。

 一般に、「実の」の反対は「義理の」である。「義理の姉」といった場合、配偶者の姉、兄の妻、親の再婚相手の娘、自分か相手が養女である場合、などいろいろある。いずれにせよ、血縁のないものを指している。

 先日、ちくま文庫で出た『アントニーとクレオパトラ』、注釈が詳しいので買ってみた。アグリッパ、マエケナスにも説明のついているところがいい。
 ところで気になったのがこれ、第二幕第二場、アントニウスとオクタヴィアの結婚が提案される場面でのセリフ。
「あなたにはお母上の血を引く姉君、称賛の的のオクテーヴィアがおいでです」
  ここの注は、「史実では、オクテーヴィアはオクテヴィアス・シーザーの実の姉、つまり父母とも同じ。この間違いはプルタークによる」。
 母の血を引く姉って、母が同じ姉という意味なんだろうな。だとすればーーおい、プルタークは異母姉と書いてるんだぞ、シェイクスピアはそこからも間違ってるぞ。--何度も読んでいたのに初めて気がついた! 
 「実の」きょうだいという場合、両親とも同じという意味で使うこともしばしばあるようだ。私の感覚では、半分でもつながっているならば「実の」だと思うけど。もちろん善し悪しではなくて単なる事実として。
 作品中でオクタヴィアを美貌だと言っているので、その弟もそうかと読者が思ってくれる可能性を高めてもらいたいので、史実は両親同じだとこの新訳で書いておいてくれたことを私は喜んでいる。もっとも、訳者の参考文献としてブノワ=メシャンの『クレオパトラ 失われた夢』が何度も挙がっていることは気にくわないが。松岡和子さん、この本ではオクタの容姿をぱっとしないように書いてあるけど信じないでくださいよ。

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図書館のタイミング

2011-08-21 06:19:22 | 
 市内の図書館のHPを時々チェックして、新着図書から読みたい本に予約を入れる。新刊でなくても予約は利用する。
 きのう朝の時点で、1冊が「配送中」になっていたので、午後に行けばこれをたぶん受け取ることができるだろうとは思った。しかし、昼食に新しく買ったパンを食べたい!という欲求が勝ったので午前に行き、返却だけですまさざるを得なかった。やはり、午後に「利用・予約状況」を見ると「取り置き済み」になっていてくやしい。そうたびたび出かけたくもないし。
  予約した本に、あとに希望者が続いていたりすると私はわりに気にするほうだし、早くひきとって早く返却したいと思う。そこで若干せこいことも考える。--取り置きの連絡があってから○日以内に借りて返却したらポイントが貯まる(遅れたらマイナスがつく)、なんていうことはできないのだろうか。でもまあ、ポイントためたとしても実際にどういうごほうびが可能か? 購入する本の決定権? 予約本の優先権? 
 現実には、1冊一人何日くらいのペースでまわっているのだろうか。いまうちの市内では、予約者数のトップは『謎解きはディナーのあとで』、800人以上いる。ああいうのは1日で充分だと思うけど、そして複数冊購入されてるんだろうけど。『失楽園』ブームのころ、大阪のどこかでは予約者が千人超えたときいたこともある。 いまはたぶん、そんな順番がまわってくるより先にブックオフあたりに出るのに違いない。

 きのうは書店では、集英社文庫の新刊『シャドー・イン・ザ・ウォーター』、新書で目についた『新選組の新常識』by菊地明 を購入した。前者はスウェーデンのミステリーで、同じシリーズのまえのぶんも買ったので。気になるのはこのタイトル、元々こういう英語の題だったのか? たとえそうであるにしても、このてのカタカナ題は嫌いだ、『水の中の影』のほうが風情があるのに。
 集英社文庫は、来月は、『ブーリン家の姉妹』の4作目が出る。毎回言っているが、西洋歴史ジャンルでもどんどん出ていて結構なことである、ああ羨ましい!  佐藤賢一の『小説フランス革命』の1巻目がもう文庫化だ、早いな。

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紅茶の歴史の本から

2011-08-18 06:50:09 | 歴史
『一杯の紅茶の世界史』という本を図書館から借りて読んだ。文春新書、by磯淵猛 2005.

 私は日常で飲むことはコーヒーのほうが多いけど、コーヒーと紅茶のどちらが好きかといえば紅茶である。

 現在、紅茶といえば英国のイメージであるが、ヨーロッパで最初にお茶を飲むようになったのはオランダで、1610年に平戸とマカオで買った緑茶がハーグへ持ち込まれた。このころには上流の人々だけであったが、17世紀末にはジャワに茶園が作られたことから庶民にも広まった。
 
 英国では、1657年にロンドンのコーヒーハウスで初めて茶(オランダから買った)が売られる。62年に国王チャールズ2世がポルトガル王女キャサリン・オブ・ブラガンサと結婚し、彼女がお茶と大量の砂糖を持ち込んだことも影響した。
 やがて緑茶だけでなく紅茶も知られるようになり、1730年代からは紅茶のほうが多くなっていく。

 --等々、もちろん英国だけでなく中国やインドなどのことも含んで、紅茶の歴史があれこれつづられている。
 「リプトン」と「トワイニング」ではリプトンのほうがすっと庶民的な印象があるけどそれは歴史にも根付いていたのか、とか、初めて飲んだ、たぶんF&Mのアールグレイと、そのあと飲んだ別のアールグレイではだいぶクセの強さが違っていたけど、それはこういうわけだったのか~~とか、いろいろわかった。

 アイスティーは、1904年のセントルイスの万博でイギリス商人が、暑かったので冷たい紅茶を売ったら大いに売れたことから始まったもので、アイスティーの需要はアメリカが世界一だそうだ。

 私個人の記憶では、1990年秋にドイツで2カ月過ごしたとき(ライン河畔の小さな町ボッパルト)にはアイスティーを見たことがなかった(スーパーで見たという人もいた)。98年に行ったときには、あたりまえのように、アイスのレモンティーやアップルティーが売られていた。
 来日したロッカーが缶コーヒーを気にいったという話もあった。いまではスターバックスなんかもあちこちの国に進出しているし、アイスコーヒーも受け入れられているのだろう。

 でも、暑い日にたくさん飲むならば麦茶やほうじ茶やウーロン茶、甘くないものがいちばんだ。

 この本を読んだあとで、清水義範『ザ・対決』(講談社文庫)の『コーヒーvs茶』を読み直した。緑茶&紅茶兄弟と、コーヒー&インスタントコーヒー兄弟が、どちらがエライかを議論するという内容。簡単にまとまっていてわかりやすい。こちらも面白いウンチク本でお勧めしたい。(もっとも、『クレオパトラvs楊貴妃』は、そういう仇名で呼ばれる二人の美少女の話で、歴史上の彼女たちの説明は出てこない)
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田辺源氏本

2011-08-16 10:10:47 | 
 先月の集英社文庫の新刊、『春のめざめは紫の巻 新・私本源氏』『恋のからたち垣の巻 異本 源氏物語』。厳密には復刊であるし、聞き覚えはあるタイトルだ。5月に文春文庫で出た『私本・源氏物語』と同じ系統。まえにここで話題にした際にお勧めされていた本が都合よくまた出てくれた。
 『新・私本』では、女たちからの視線で語られている。オジンにはオジンの良さがあるものだけど、オジンであることを自覚しないで若いままのつもりでいるのは滑稽だという若い娘の指摘はたいへんクールで小気味良い。原作と違って若紫は源氏を遠ざけたままで終わっていたり、おてんばな玉かづら、男よりカネ!の朝顔の叔母、したたかさを増した六条、柏木との恋に燃える女三宮、実に楽しい。
 図々しいくらいで愛矯のある中年「ヒゲの伴男」は明白に作者の旦那がモデルなのだろう。

 ところで、英雄や古典のパロディという趣向は珍しくはなく、そういうのは元ネタのファンから見て受け入れられるかどうかは様々である。マーク・トウェインの『アーサー王宮廷のヤンキー』は、タイムトラベルした(?)アメリカ男がハッタリかましてアーサー王の宮廷で大きな顔してあれこれする。--正直なところ私はこの小説を読んで愉快になれなかった。作者はマロリーの『アーサー王の死』を高く評価していたというし、悪意はたぶんないのだろうけど、実際描かれるアーサーの言動、たとえば下々の者たちの訴えに対する判定など、理不尽に見えることが目立って、名君とか立派とか思えない。貶める意図で書いたとは全然思わないけれど、もうちょっと、ヒロイックな要素、せめて、愛すべきお殿様という感じくらいはあってもよかったのではないか、私はそういう印象を持った。
 アーサー王にせよ源氏にせよ、私は激しく愛着を持っているというほどではないのだけど、田辺本での源氏おちょくりにはそれでも作者の愛をしっかり感じることができる、これはなんの違いだろうか。もちろん、上記の『~~ヤンキー』を愉快に読める人のほうが多いのだろうけど。
 マーク・トウェインではっきりと面白かったと記憶しているのは、『ノータリン・ウィルソンの悲劇』『ハドリバーグの町を腐敗させた男』、わりに暗い話だな。『トム・ソーヤ』は面白かったけど『ハック』は合わなかった。

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キャラクターグッズのうちわ

2011-08-14 05:41:28 | マンガ
 おとといアニメイトへ行ったら、季節がら、うちわや扇子が多く並んでいた。「世界の国旗」で「プロイセン」を買った。ドイツは見当たらなかったし、色彩としても黒赤黄よりは黒白メインのほうが涼しい感じだ。
 私がほかに持っているキャラもののうちわは、『セーラームーン』2種(ミュージカルの会場で売ってたもの、でも絵はアニメ)、『スラムダンク』(いつ買ったんだろう)、「2000 Summer」と書いてある『天上の愛 地上の恋』(コミケで買ったのだろう)。セラムンは、セロハンの袋をはずしてもいないままの状態。SD、花道と流川と木暮とゴリの絵で、花道の赤頭とゴリの色黒のせいか妙に暑苦しい。『天~』は国で言えばオーストリアで、プロイセンとはむしろ敵だな。おととしあたりに買った「ドイツ」(国旗ではなくて原作絵)の扇子も持っていて、バッグの中に入れてはある。

 この週末は、甲子園と違ってぜんぜん称賛されない夏の祭典が催されている。私は2004年の夏、アテネオリンピックの開会式の行進をもっと見たいなと未練を残しながら出かけていったのが最後になっている。(歴史絵巻のようで面白かった) たぶんうちわもグッズとしてあちこちで売られているのだろう。
 昨今のヒット作で言えば、『テルマエ・ロマエ』や『聖おにいさん』も、納涼グッズにはハマりそうである。
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ドイツの夏の思い出

2011-08-11 05:18:46 | ドイツ
 私の少ないドイツ滞在体験は2度、1990年の10-11月と、98年8月下旬~99年夏。後者を正確に言えば、8月24日に成田発で、翌年の8月1日にフランクフルト空港を発った。
 秋は2回味わっているのに対して、夏のいまの時期つまり8月の半ばは知らないので、私にとってドイツの夏はなんとなく空白の感じを持っている。
 とはいえ、なにも印象がないかといえばそんなことはない。「夏はTシャツだけで済む」と冬にきいていたときには別世界のような気がしていたけど(フライブルクは温暖なほうだけど)、実際にTシャツで充分になった。日本のような湿気には乏しい。
 フライブルクでは6月半ばから3カ月に渡って多くのイベントがあり、ワイン祭があったり、町の名物の大聖堂で毎週コンサートが催された。7時半ごろ開始で、短くて40分くらい、長くて1時間10分くらい。終わったころにはまだまだ空は水色、昼の色をしていた。だから、夜に帰りが遅くなることの大嫌いな私でさえ、このあとまだどこか出かけても問題ないような気分になったものである。帰るけどね。せいぜい、近くでアイスクリームを食べる程度で。 10時ごろにようやく、空の色は夜らしくなってくる。夏時間であることを考慮しても、日本よりも暮れが遅い。緯度の高さなのか、夏冬の差が大きい。6時過ぎ、冬場には真っ暗、夏にはまだ昼のよう、だから既に一般商店が閉まっていることがずいぶん怠けているかのように見えたものだ。
 ドイツの夏といって最も印象が強いのはこの暮れの遅いことだった。そして、日本では夏の風物詩である花火が、かの地ではむしろ大晦日であることも納得できた。花火大会の時間帯にはまだ空は明るいのだから。
 『冬の花火』というタイトルがなにかなかったろうかーーと検索してみたら、太宰治と渡辺淳一が出てきた。たぶん健康とは程遠い内容なのだろう、風情はありそうだけど。歌の題にもあって、男のウソ臭いセリフを「まるで冬の花火」と言っている。こういう感覚は、大晦日の夜にバンバン花火うって騒ぐ人々には説明が必要だろうな。

 ヨーロッパで夏に花火がないわけではなく、たとえばパリ祭の夜には確かあったはず。時間帯がうんと遅いに違いない。
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モーム『回転木馬』『探検家』『夫が多すぎて』

2011-08-09 05:53:49 | 
このごろ、図書館でモームの作品をあれこれと読んでいる。

 『回転木馬』 
 遠縁の根性悪ババアから莫大な遺産をもらって悠々と暮らしている老嬢(50代)、その周囲の人々の物語。
 ・いちばん感動的なのは、牧師の娘(40代)とだいぶ年下の青年のロマンスだろう。彼が病で先が長くないとわかってから、世間体も親の反対も押し切って結婚、ついには彼女の父も折れて、温かい介護のもと、安らかに世を去る。
 ・容姿だけは抜群だけど怠惰で不誠実な女たらしの青年が、ある人妻をカモにして、散々巻きあげる。彼女はついに夫に告白して青年とはきっぱり別れる。--読んでいるほうとしては、青年に天罰でも下ればいいと思ったけど、このあと、彼よりもずっとうわてでしっかりした女にゲットされて性根を叩き直されるという結末はそれなりに痛快だった。
 ・ 母親のふしだらさに衝撃を受けて軍隊入りして帰還した坊ちゃんが居酒屋のウェイトレスと深い仲になる。しかしその後社交界で出会った未亡人と惹かれあうのでウェイトレスとは別れようとした矢先に妊娠を告げられ、責任上結婚。ずるずると破局へ。
 『林檎の木』でアシャーストがミーガンと結婚していたらこんな感じだったか?という連想が湧く。

『探検家』
 またずいぶんそっけないタイトルだな。
 ある名家の主が愚かなふるまいから破産し、あげく詐欺までやって刑務所行きになる。気丈な娘は、弟がいつか家の汚名を返上してくれることを願っている。彼女は、アフリカで数々の冒険を果たし、いまもまた戦いを続けている探検家の男と恋におちるが、彼に同行させた弟もまた父の愚かさを受け継いでしまっていた。
 フィクションにおいて、気丈な姉の期待を裏切るバカ弟という設定はしばしば見るような気がする。

『夫が多すぎて』 岩波文庫  新刊でもないのに、図書館の新着図書になっていた。
 第一次大戦直後を舞台にした喜劇。
 夫が戦死したので、その友人と再婚した美女。しかし、前夫は生還してしまった。
 実際にも大いにありえる、悲劇にもなりうるーーというよりも、普通は悲劇のタネになりそうな状況で、ひとをくった喜劇になっている。  これ、レディコミでやらないか?
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