レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ぎょうへいばし

2011-01-30 07:29:48 |   ことばや名前
 先週だったか、「東京スカイツリー」の最寄駅の「業平橋」が、「とうきょうスカイツリー」に改名するという記事が新聞に出た。旧名も( )で表記するそうだが。  知名度アップ目的のほかに、「業平」が読めず、「ぎょうへいはし」と間違えられることも理由として挙げてあった。--だったら、スカイツリーの知名度と共に由来も有名にすればいいだろう。「ありわらのなりひら」くらいその機会に知っとけ。
 検索したら、明治35年「吾妻橋」→M43「浅草」→S6「業平橋」と変わってきたそうだ。「吾妻橋」もなかなか風情がある。こんどのが最低。

 だいたい、少なからぬ人々が、子供の名前に読めない当て字をどんどん使ってるというのに、平安時代の歌人の名前がわからないくらいで文句たれるな!
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お江に関する雑談

2011-01-26 16:57:05 | 歴史
 常識というものは個人差が激しいものである。私は、高校時代に永井路子さんの歴史エッセイや評伝をわりに読むようになり、『歴史をさわがせた女たち』などで読んだことが第一印象となった部分は大きい。(クレオパトラ=絶世の美女 は誇張であり、プルタークは云々、もこの時点で知った) お江についてもその際知った。
 過去の人々について、どういう人となりであったかが史料から読み取れる場合もあろうが、勝手にイメージをつくられたり、フィクションがデフォルト化してしまうことは少なくあるまい。事実かどうかはともかく、浅井姉妹の長姉・茶々は、おおむね、勝気でゴージャスという描かれ方が多い。(コバルトの倉本由布さんの作品ではむしろさばさばした感じだった。河村恵利さんではモテまくりである)
 その点、お江は作家での差がある。井上靖『佐治与九郎覚書』(短編)では、美人ではなくおっとりした性格になっていた(長編『淀どの日記』では覚えてない)。みなもと太郎『風雲児たち』では、「姉ゆずりのすさまじさ」であり、秀忠が下手に出ていた。吉屋信子版では、美しく毅然とした感じ(『徳川の夫人たち』で語られることでもそういうイメージがわく)。 そして永井版、いま本屋でたぶん目立つように置いてある『乱紋』では、一見鈍感で、でも流されるようでいて根がタフで運が強い女。なにを考えてるかわからん感じなので、その侍女を設定し、彼女の視点から描いてある。
 天下の美女お市を母に持ち、二度の落城と3度の結婚を味わい、姉と敵対して、最終的にはトップレディー(なんて言葉は好かんけど)、これは相当に劇的なはずなのだけど、歴史好き以外にはさほど知られていなかったようなのはなぜだろう、姉のお茶々の印象がハデすぎるのだろうか。(アウグストゥスのアルプス越えでの一件を知ったときには戦慄を覚えた、どうしてこんなすごい話の持ち主が知られていないんだ~~?と驚愕した。) お江自身が積極的に動いていくというわけではないことが弱点だろうか。しかし、本人が関わっていくのでなくても多くの事件は起きるし、とにかく周囲にスターぞろいなので、ドラマにするならば人目をひく見せ場はうんとあるはずなのだ。
 大河を現在見てないけどね。評判をきくのは楽しい。ある程度の知識と関心はあるけど思いいれまではない、そのくらいのものが最も気楽に構えられる。ーーここまでネットで見た限りでは、あるいはノベライスの評判では、史実無視してまで主人公持ちあげだとか、子役が適切な時期まで成人女優にさせるのが無理があるとかけっこう散々な言われようである。

 便乗本では、光文社新書『江と戦国と大河』を買った。大河ドラマ一般に対するツッコミもおおいに含む。いわく、戦国のヒーローたちはなにかといえば平和のために戦っているが、「戦国乱世」が終わらせるべきものだなんて当時の彼らが思ってやしなかっただろうと。
(森奈津子『スーパー乙女大戦』で、ヒーローもので世界の平和を守るためにって言うけど、宇宙人が攻めてこなくても平和でない地域は多いんだから、あんなのは平和ボケした日本人ならではだろうとツッコミが入っていたな)
 これを読むまでもなく、平和のためをやたらとふりかざすのは時代考証の点でもいかがなものかと私も思う。単に野心で戦をしかけることが悪だなんて思ってなかった時代は長かったろうし。野望の男または女、ではお茶の間ドラマにできないと思ってるんだろう。
 光文社文庫『戦国おんな絵巻』(『葵を咲かせた女たち』改題)永井路子 
 これは、時期からいって、重版したことが明らかに便乗。筆者の主張の集大成といった感じがする。
 秀忠のカタブツぶりには大いに政略の意図があるというのが永井さんの意見であるけど、その流れで引用したい。
「 英雄はみな色を好むか、といえばそうでもないのですね。フーシェは秀忠のような男もいるのです。
 要は、
「女は女房一人なんて、男として情けないよな」
 というつまらぬミエの張り合いに対して、
「へえ、そうかい。それがなんで恥ずかしいんだ」
 と開き直れる度胸があるかないかの違いだ、という気もします。
 男性諸氏、いかがでしょう?」
ーー痛快なので紹介。甲斐性なしの浮気者なんていくらでもいるし、金も力もないブ男だってそこらじゅうにいる。
 ところで、カタさを政治利用云々だけど、ひとはやはり自分に合ったやり方を選びたがるものなので、政治好き男が好色ならばそれを生かした方法を考えるだろうから、やはり秀忠はカタくしていることが性に合っていたのだろうなと私は思う。

 便乗復刊ならば、杉本苑子『月宮の人』も出してもらいたい。
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牛革 タレント ヨシノリン新刊

2011-01-23 07:01:24 | 
 先日、『テルロマ』2巻の懸賞の賞品が来たと書いた。
 昨日、「PHP文芸文庫」創刊記念の賞品が届いた。「牛革ブックカバー」である。私がふだん愛用しているコンサイスは「レザー風」である。「風」がないならばほんとに皮なのか? ほんとの革製はすごく高いものなんだが、そんなものがタダの賞品でいいのかおい、という気がする。「レザー風」よりも硬い。本の装丁もある程度硬くないと負けそうな感じ。 なお、応募は2冊ひと組で、私が買ったのは、片方がリレー時代小説『運命の剣 のきばしら』(宮部みゆきを含む)、もう1冊は宮部&黒鉄ヒロシ『ぱんぷくりん』。
 ハヤカワ文庫のトールサイズ化記念のときは、レザーふうカバーをもらったものだ。そういえば、創元推理文庫でもなにか応募したような気がする。忘れていることも多いので、厳密な勝率はわからない。


 本屋で見た新刊、『風にもまけず粗茶一服』松村栄子 。 これの前篇『雨にもまけず粗茶一服』は文庫で買って読んだ。続編を本誌で(連載当時は『粗茶一服に雨あられ』だった)ところどころ読んでいたこと、カットがわりにかわいいこと(しばわんこのひととちょっと似てると思う。別人だけど)がきっかけだった。 だから続編も気にはなるのだけど、単行本、装丁がヒトの写真なのだ(韓国タレントだそうだ)。これでなければ買ったかもしれない。
 表紙やカバーに絵ではないヒトを使うのは一定量の読者を遠ざけると思う。映画化される『まほろ駅前多田便利軒』の文庫、いま出ているぶんのカバーはその映画の主役二人だ。まぁ、映画化やドラマ化の際にはままあることだし、理解できないことではないけど。でも、本来無関係なタレントの起用は支持できない。いつの夏だったか、角川文庫の太宰は子供の写真で、内容ともつながりがなくてしょうもないものだった。

 来月の集英社文庫、清水義範『信長の女』--誰だろう。ヨシノリンの新刊は久しぶり。
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おぼれるルシウスがあたった

2011-01-20 14:56:58 | ローマ
 こんなのでローマカテゴリーにしていいのかと思う。

 『テルマエ・ロマエ』の2巻についていた懸賞(厳密にはこの本だけではないが)、「おぼれるルシウスマウスパッド」が当たった。900名のぶん。もっとも、私は3冊買ったので(プレゼント用)3枚ハガキを出したけど。 
 「リキッドアイテム」とか言うらしい、中にうっすらと液体が入っている。だから「おぼれる」なのか。
 絵は2巻のP144の下のコマ、つまり、プールのスライダーを降りるルシウス。
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富士山

2011-01-19 10:53:48 | 雑記
きのう授業のあと、別の校舎に寄るためにキャンパス内を移動していたら、進行方向に白い山が見えた。---あれは富士山なのか? 初詣に寒川神社に行く途中でも天気が良ければ見えるし、千葉県木更津市にいたころも小学校の校庭から見えていた。千葉県よりも神奈川県のほうが静岡に近いのだから、湘南キャンパスから見えても不思議はないのだ。地図で見ると、富士山は真西の方角にある。そして確かに昨日の移動は東から西へだった。  驚いたのは、この大学に行って20年近いのにいまさら気がついたということ。
 高橋義人『ドイツ人のこころ』によると、ドイツ人の性格を語るに重要な五大要素として、キリスト教、ライン河、イタリア、菩提樹、クリスマスを挙げていて、日本だと相当するのが (後ろから)正月、桜、中国、富士山 (「キリスト教」にあたるのはなんとしてあったか記憶不確か。儒教か仏教か神道か、このあいまいさがいかにも日本ではある)だった。 ライン河は、ナショナリズムともロマンティシズムとも結びついている。富士山に、私個人はさほどの思い入れがあるわけではないのだが。遠足かなにかで「五合目」まで行ったきりかな。
 さくらももこの出していた雑誌の名前が「富士山」だった。飼っていた豆柴犬の名前が「フジ」だった。たいへんにあいくるしい写真が掲載されていたなぁ。
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白泉社雑誌とのつきあい

2011-01-16 07:07:19 | マンガ
「コミックホームズ 」
 「コミックホームズ」という、白泉社雑誌のデータを掲載しているサイトを発見した。自分が各雑誌を、どこからどこまで購読していたのかほぼ正確に確認できた。できたからといってなんにもならないのだが。

 私が小学校高学年のときに「花とゆめ」が創刊されて、「別冊マーガレット」から2大看板の美内すずえと和田慎二が移った。その後、姉妹誌の「ララ」創刊。当初は誌名も「花とゆめ  ララ」だった。(ララを買ってきてと頼んだのに間違って花ゆめだったこともある) 私は新選組にハマり始めていたので、『あさぎ色の伝説』目当てでララを買いだした、78年2月号(実質は77年12月に出ている)。佐々木けいこが活躍し始めていたな。『あさぎ伝』はすぐに中断、しかし私の購読は続いていた。よそから来たベテランたちだけでなく、ここでデビューしたいわば子飼いの作家たちも、綺羅 星のごとく活躍していた。そのうちいまでも白泉にいるのは、ひかわさん、樹さんくらいか? 80年代前半というと、私にとっては漫研時代(ほとんど描いてないけど)の思い出と、ララの黄金時代と重なっている。(ここに挙げる名前に対して必ずしもファンというわけではなかったが)『日出処の天子』があり、『摩利と新吾』があり、『綿の国星』があり、『エイリアン通り』があり、年に一度『Z』が登場し・・・・・・。いまから思えばめまいがするほどの充実ぶりだった。
 しかし、雑誌にはリニューアルというものがあるらしい。作家の顔ぶれも変わっていく。
 私は、雑誌は根元から分解して好きなものはホチキスで閉じて、コミックスが出たら買って「切りとじ」(勝手な造語である)は処分するということが原則である。しかし、この「切りとじ」にする部分がララからだんだん減っていった。それで、ひかわさんの『時間をとめて待っていて』、かわみさん『まり子闘争』が終わるのを期に買うのをやめた、88年3月号。 まる10年のつきあいだった。私にとっては、中学時代途中から大学時代の終わりまでにあたっている。

 「花とゆめ」
 これを毎号買うようになったのは、たいへんはっきりしている、『動物のお医者さん』開始から。88年1号。そのまえは時々買っていた。そして93年24号、わかりやすくきっかり6年で連載が終わった。そのあともしばらく買っていたのだが、こちらもまた、楽しみな部分が減っていく。久々に期待した加藤知子『天上の愛 地上の恋』はさっさと中断(94.21号~95.2号)した。これの再開と、佐々木倫子の再登場を待っていたがその気配もないので、川原『メイプル戦記』の終了を期にやめた。95年21号。約8年の購読だった。大学院生時代をすぽっと覆っていた。

 「別冊花とゆめ」
 77年から出てまず季刊。91年から隔月。93年に月刊化される際に、氷室冴子『少女小説家は死なない!』のマンガ化の連載があり、私はこの原作を大笑いして読んだことがあるので、それまでたまに買ってた程度のこの雑誌を定期購読するようになった。
 2002年あたり(01年の終わり?)からまた隔月化。そのぶん分厚くなったけど、どうも楽しみ部分比率が減ってしまったのがこのごろだった印象がある。やめようかと思っていたら、04年の大河便乗で「プリンセスGOLD」が「新選組イヤー」を始めたので乗り換えることにした(もともと、もし別の雑誌に替えるならばコレかプチフラワーだと思っていた)。何号までだったのか記憶がはっきりしない。杜野さんの『ひみつの花園』最終回の5月号だったかな? 10年半の購読だった。 
 (06年の途中からまた月刊化、しかもサイズがB5になっている。)

「メロディ」
 97年創刊らしい。
 『天上の愛 地上の恋』がここで再開されたので、99.7月号~03.1月号の間購読。

「セリエミステリー」
 創刊は85年らしい。あまりそれらしくないレディス誌。不定期から隔月へ定着。
 94年10月号から、『炎の蜃気楼』のマンガ化バージョン目当てで買い始める。
97年6月号で廃刊。
 『ほのミラ』は、もともと「別冊花とゆめ」にもちこまれた企画だったそうだけど、「セリエ」亡きあとは別花で再開が予告されていた。しかしそれは実現せずじまい。まぁ、原作があまりにも長くなったので、完全に描かれることはやはりなかったろうとは思う。
 この雑誌の休刊によって、私の知る限り3つの作品が中断してしまった。

 私がなにをいつ読んでいようとひとにはどうでもいいことだけど、なんとなく書きたくなったので。
 気乗りする方は、サイトをのぞいて思い出をつつきだしてみて下さい。

 「白泉社文庫」って、できたのは95年ごろだったか? 当初は、生え抜きの古典名作がそろっていたのだけど、いま出つつあるものはすでに私が雑誌購読から離れたあとの新人が多くなっている。作品価値の判断はおいとくとしても、早すぎないかとしばしば思う。どこでも見られる傾向だけど。 
  
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タ○ガーマ○クからの連想

2011-01-12 11:37:22 | 雑記
 タイトルで伏字であることにたいして意味はない、悪意もない。

 このごろ、あちこちであるという「タイガーマスク」事件。次いで「矢吹丈」を名乗る寄付者も出てきたそうである。
 私が幼児のころに『タイガーマスク』は放映されていて、私もいちおう見てはいた、しかし、さほど熱心に見てはいないなということを当時から感じていた。
 だいぶあとで再放送でこれのOPを耳にしたとき、「死を呼ぶ罠が待っている」が、「血を呼ぶバラが舞っている」にきこえた。J●NEあたりに載る格闘ギャグマンガのようだ。
 キャラ名を善行に使うならば作者だって文句は言うまい。その点、「グリコ森永事件」のときに江戸川乱歩が生存していたら腹立たしかったことだろう。
 ところで、キャラ名に関して著作権はあるのだろうか。
 読んだことないけど、川原つばさというBL小説家がいる。出典は、成田美名子『エイリアン通り』の川原翼であろう。
(ついでに言えば、その『エイスト』の主人公「シャール・イダニス・モルラロール」は、ル・グウィンの作品に出てくる呪文のようなフレーズから採られている。)
 やはり読んだことないけど、「西根公輝」というBL小説家もいる。(『動物のお医者さん』ハムテルの本名である、念のため。)
 「かねさだ雪緒」というマンガ家がいる。鈴宮和由『とってもひじかた君』が出典だろう。「諏訪由布子」というレディコミ作家の名前は、井上靖『風林火山』の由布姫か?
ーーこういうの、お伺いをたてておくのだろうか。

 多少話が違うけど、那須雪絵『ここはグリーンウッド』のCDに、「くやしくてけりつけたキャデラック」云々と出てきた。これらに関して、商品名を出すには断っておかなければいけないのだろうかと、念のため問い合わせたという裏話がどこかに載っていた。「キャデラック」は、高級車のイメージで出しているので「キャデラック」では問題なし。「ぶっちりとひきちぎるロレックス」は、「ロレックス」ではあまり歓迎はしないけどダメとも言えない云々とむにゅむにゅした返事なので遠慮なく使うことにした。「別れられない 離れられない タラオバンナイ(ほんとは漢字だけど知らない)」は、単なるごろ合わせなんだけど念のため、「タラオバンナイ」の作者の遺族に連絡した。世間でままある無許可の二次使用には不満な様子だったけど、許可されなかった場合に備えて、使ってないバージョンも用意してあると知ったらすぐに機嫌直してOKした。--このへん、記憶で書いてるので、一字一句合ってるわけではない。
 タラオバンナイといえば、『エロイカ』初期のほとんど黒歴史のころにも出てきた名前だな。実物はまったく知らんけど。
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ハンスとウンラートとマヌエラ

2011-01-09 06:43:49 | 
 いわゆるドイツの「黄金の20年代」の映画の代表作の一つである『嘆きの天使』 1930、原作はハインリヒ・マンの小説『ウンラート教授』1905。これの邦訳を読んだのはもう数年前だ。筋を一言で言えば、ギムナジウムの教師ラート教授が、カバレット(キャバレーと言ってしまうとイメージが悪くなりすぎるけど)に出入りしている生徒を捕まえようと出入りしているうちに、踊り子ローラに自分が参ってしまって人生転落するという話(身も蓋もないな)。映画では、マレーネ・ディートリッヒの脚線美がたいへん有名である。 原作では、「ある暴君の末路」(転落だったか?)なんて副題がついているように、ラートは権力をふりかざしたイヤな奴として描かれており、その権威も女の色香のまえに敗れるという、辛辣さがある。(映画化にあたってはそういう風刺・批判の要素は意図的に削られた)
 私がこれを読んだころと、ヘッセ『車輪の下』を再読したときは近かったと思う。ごく近い時期の作品でもある。20世紀初頭、教育界でのかつてのリベラリズムが衰え、軍国主義・権威主義の重苦しさが増している時代、それと呼応して「学校小説」が少なからず出た。そのことを念頭におけば、『車輪の下』で生徒側の破滅が描かれており、『ウンラート教授』では、抑圧者側の破滅を扱っているのは興味深い。
 1931のドイツ映画『制服の処女』は、クリスタ・ウィンスローエの小説が原作で、その原作は私も大昔読んだ。角川文庫で、『若草物語』などと似たようなジャンルにくくられていた。小説の原題は『昨日と今日』らしい。小説の年号はいま不明。
 『制服の処女』では、厳格な規律に支配された女子寄宿学校で、繊細な少女マヌエラが若く美しい先生を恋い慕う。製作も出演もすべて女性だけということでも注目を集めた。映画は原作の後半を扱っているが、マヌエラが学校へ行くまえの前半では、父親(将校)やBFも出ている。もっとも、BFといってもはなはだたわいのないものであり、行動はだいたい相手の母親も一緒で、マヌエラも少年よりもその美しい母を慕っているくらいである。(マヌエラ自身の母は死亡している。彼女はマザコンである)
 映画で、なんでもかんでも禁止禁止の寄宿舎で、でも実はそれらのご禁制品を生徒たちはちゃっかり入手していることを示すエピソードがある。女の子のしたたかさを示していて面白い場面なのだけど、なぜか、これの含まれていないバージョンがあるのは謎だ。
 『車輪の下』の少女版とも言えるこの小説、また読める状態になってもらいたいと思う。

 ところで、この映画の原題は Maedchen in Uniformである。Maedchen は英語で言えば girlであって、 virginではないのだ。直訳すれば『制服の少女たち』である。   たぶん、当時は単に、未婚の若い娘というだけの本来の意味で使っていて、いまのように即物的な不純なニュアンスはなかったのだろう。

 まえから、この話題をとりあけたかったけどなんとなく逃していた。寺田寅彦の随筆に、これらの映画の話題が出てきたのでこの際実行した次第。
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年賀状と住所変更

2011-01-06 11:11:59 | 雑記
 去年、郵便の区画変更があり、住所の一部が4月以降変わった。2010の年賀状(あるいはそのまえのクリスマスカード)でその旨を書いておいた。しかし、現在受け取っている年賀状の3分の1しか新しいほうになっていない。前回の年賀状でなく住所録を見て書いているのか、そして修正がなされていないのか。その人の几帳面度とは必ずしも一致していないようなのが面白い。前回(2009)のクリスマスカードでお知らせしたら、2010度年賀状でもうそちらで書いていた慌て者もいたし。

 まえに新聞の「人生案内」(相談欄)で、もう年だから年賀状は今回で終わりにすると書いたのにまた来てしまう、という相談があった。回答は、年賀状の中身は案外見ていないものだから、また来てしまったらその返事はやめて、年賀状の時期が過ぎてから「やめます」状を出すことにしては、という提案だった。

 酒井順子さんもどこかの本で、年賀状については、「出せばいい、というものでもある」と書いていた。凝ってみてもひとは案外見てないことが多いので、感想を求めたりしてはいけないそうだ。
 ま、自分が受け取った場合には心をこめて読み、相手には期待しないことが理想的だろう。
 印刷しただけのものを、自分では出したくないけど、受け取った場合にそれに悪意は持たない。これですませられたら楽でいいな~と思うだけ。
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日独交流150年切手

2011-01-05 07:16:45 | ドイツ
 今月出る「日独交流150年」切手。
「特殊切手 日独交流150年 」
 かつての「日本におけるドイツ年」よりずっと良さそうである。シュヴェリーン城とツォルフェライン炭鉱業遺産群以外は行ったことがある。 それにしても、「炭鉱業遺産群」は異色だな。

 上記のページの下へいくと、「テーマで切手を選ぶ」がある。「アニメ」を見ると、--少女向けがほとんどないことに怒りを覚える。『セーラームーン』くらい、1セットどーんと作ってよさそうなものだ。『ベルばら』も候補にしたいが、原作無視ぶりがひっかかる点。
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