レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

テンション

2015-02-22 07:28:02 |   ことばや名前
 カタカナ語としての「テンション」使用を初めて目にしたのは、30年以上まえだったろうか。女子高の後輩の出た劇を見てそのあとの彼女の手紙に「テンションがあがらずに出来た」と書かれていた。「テンション」=緊張 という意味は知っていたので、緊張せずにリラックスしてやれたという意味に読んで、なにも抵抗はなかった。

 しかし今日、「テンションのあがる曲は?」「恋のハイテンション」(アニメ『スラムダンク』のEDの歌詞にあった)のような用例をしばしば目にする。私はそのたびに、それはおかしいだろうと思うし、そのような指摘もまた目にする。

 検索して見つけたのは、「英語のtensionは前項にある緊迫感やストレス、葛藤などネガティブな雰囲気を表す用語であるため、完全な誤用または和製英語となる。 英語でhigh tensionと表現した場合も「過度なストレスが溜まっている」や「非常に緊迫した状況」など悪い意味しかない」。
 誤用の生じた原因はギター用語の「テンションコード」で、
「ミュージシャンはライブなどで会場を盛り上げていくとき「テンション(コード)を上げる」と使っていた」。「ミュージシャンが「テンション上げていこうぜ!!」とライブで演奏している人たちに言った」、それが観客が言われたものと思って「盛り上がっていこうぜ」と誤解した・・・のではないかと推測されている。

 わざわざカタカナ言葉を使わず、素直に「盛り上がる」「元気が出る」と言えばいいではないか。誤用される言葉は山ほどあっていちいち目くじら立てるのは疲れるとはいえ、私はどんどん目くじらを立てていくつもりである。

 「おいしい!」の意味で「ヤバっ!」は嫌いだし、「ナイーヴ」を「繊細」で使うこと、「当店のこだわり」「素材と味にこだわる」などという用法、キリがないけど。

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チェーザレ、マルゴ、ミケちゃん

2015-02-17 13:40:53 | マンガ
惣領冬実『チェーザレ』11巻 & 萩尾望都『王妃マルゴ』3巻
 先月、同日に発売。一緒に買った読者はたくさんいたに違いない。
 ひじょ~にキレイに終わっていた『チェーザレ』10巻のあと、久々に、無事に出た11巻。10巻ではイベリア半島で「レコンキスタ」完成、それに続く1492年の大事件、フィレンツェではロレンツォの臨終。葬儀でひっそりと涙しているミケランジェロがさりげなく良い。サヴォナローラの顔は強烈。可愛い顔してイヤミにはイヤミで切り返すルクレチア、気弱な顔してデッラ・ローヴェレに言い返すジョヴァンニも見所の一つか。次の巻ではアレクサンデル6世誕生であろう。1492年は盛りだくさん過ぎ。
 マルゴはたいへん不憫である。ただの恋する少女なのに王家になど生まれて、しかも宗教対立の時代で、普通でない身内の圧迫があって。  兄アンリの側では「奪えばこっちのもの」と家来からよからぬささやきがある一方、マルゴの側では全然そんなことはなくて、心からの恋によってのみ満たされていく、正当な流れであるけどけしからんことに見過ごされがちなことが改めて描かれている。

 今月、予定していなかったけど書店で目にはいって買った『神のごときミケランジェロさん』byみのる(秋田書店 少年チャンピオンコミックス・タップ!  新書サイズ) 
 その題名が示す内容。ウェブ上の連載らしい。いちおう少年マンガの分類だろうけど、すっきり型少女マンガ絵で、ラファエロやレオナルドを美形に描いて説得力はある。
 ロレンツォ・ディ・メディチを肖像に似せて描いてある商業誌マンガは、私の知る限りでは、『チェーザレ』についでこれが二つ目である(同人誌ではほかにあるけど)。
 「ふんどし画家」、懐かしい名前である(いまは古き良き時代である、『エロイカ~』No,8『来た、見た、勝った!』)。

 3月のコミックスで購入予定は
・樹なつみ『一の食卓』1 (明治の斎藤一が登場している)
・『軍神ちゃんと呼ばないで』1  謙信が女の子だったバージョン
・『天上の虹』23 (終わりかどうか知らん)
・セスタス5巻  出るのか、よかった。 
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あちこちでチョコを売っているこの季節

2015-02-13 13:45:02 | 歴史
『バレンタインデーの秘密  愛の宗教文化史』 浜本隆志

 平凡社新書の先月の本。
 バレンタインデーの由来についてよく出てくるのは、3世紀の皇帝クラウディウス・ゴティクスの時代のローマで、兵士の結婚禁止に逆らって結婚を執り行っていた司教が2月14日に処刑されたという事件である。しかし、歴史的に見て、この皇帝の時代に改めて結婚禁止令など出ていないということから、この伝説は信憑性が薄いということも割に知られているだろう。
 この本では、ローマのルペルカリア祭を重要視している。2月15日の、多産・豊穣を祈る祭(『ジュリアス・シーザー』にも出てくる名前ね)、その前夜祭である2月14日。エロスの愛にあふれた異教的なこの祭りをキリスト教的に取り込むために、本来は関係ない、でも日が重なっている聖バレンタイン(ヴァレンティヌス)を引っ張り出してきたのであろうという解釈。
 その後長い年月、古代のエロスを受け継ぎつつキリスト教文化圏に生き続けた。

 いつのまにか「義理チョコ」等が定着しており、今年はネットで「職場の義理チョコ廃止論」も目にする。私個人はそういう職場の義理というものを直に知らないのであるが、そもそも職場でそういう浮かれたことをするのはいかがなものか?それで楽しくさえもないのならばやめちまえよ馬鹿馬鹿しい!と思っている。「恋愛」以外の人間関係にまで広げてしまうことがおかしいんだろうが、と、上記の本で改めて感じた次第である。
 そして、「モテない奴・独り者を傷つける」と言ってバレンタインに反対する声もとんでもない筋違いである。そもそも恋人たちの日なのであるから。クリスマスとはわけが違う。2月14日ならば大いにデカイ顔してくれてかまわんのだ。「聖夜」を「性夜」にすることとはまったく逆である。
 なお、「この日だけは女からの告白が 許される」などというたわごとに対して「許可がいるのかふざけるな」と思っていることは言うまでもない。

 歴史絡みの本で、フィクション以外は「歴史」カテゴリーという方針なのでこちらにした。

 2009年のデータでは、一人あたりのチョコレートの消費量の多さは、スイス、ドイツ、イギリス、ベルギー、・・・の順。日本はスイスの6分の1。
 ないならないでいいけど、少しばかり常備してたまにかじりたいものである。ドイツの「リッタースポーツRittersport」が好き。

「ヘタリア 41話」

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『欧州鉄道の旅』で次回は北ドイツ

2015-02-11 09:45:54 | ドイツ
私はBSの紀行番組をよく見ていることはたびたび話題にしており、いちばんのお気に入りは『欧州鉄道の旅』であることもしつこく言っている。そして、既に新しく録画したぶんの再放送が続いていて嬉しくないという愚痴も。
 この番組は2回でひと組の内容になっている。次回と次次回は新作(年にふた組ほど新作、それ以外は再放送)、久々にドイツである。
 (新作がなくても、再放送ばかりで延々と続いてくれても構わないんだけどね、それが私の見ていないパートなら。少なくとも、新しい録画のあるところでなければ:なぜか父が以前録っていた古い録画はDVD1枚に4、5本でCMカットをしていない。13年から入れるようになったぶんは、BD1枚に22本、CMカットもしている。なるべくならば、古い録画のあるぶんも新しく取り直したいのである。これまでの166回のうち、古い録画69回、新しい録画43回、・・・ないのが54回。)

 2月15日(日) 18:00~18:55 第167回「北ドイツ 世界遺産ハンザ同盟三大都市を巡る ~リューベックからロストックまで~」
 その次も北ドイツの続きなのだろう。私が行った中で最北はベルリンで、リューベック等は話にしか知らない。名物菓子はマルチパン。なんといってもトーマス・マン。『トニオ・クレーゲル』の冒頭で描かかれる冬の風景(ドイツ語の時間に読んだ)。
「欧州鉄道の旅」

BS日テレの『トラベリックスⅢ』(これはドイツの時だけ見る)が、3月1日に「ドイツの街道」なので貼っておく。
「トラベリックスⅢ」
 
 BSを見る、紀行のお好きな方に宣伝しておく。

 あ、『世界一周!魅惑の鉄道紀行』も16日にベルリン~マイセンなので貼っておこう。
「世界一周!魅惑の鉄道紀行」

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男爵校長  ヘタリア

2015-02-09 13:31:46 | マンガ
オイスター『男爵校長』
 駒倉葛尾『居間には今、外国人がいます。』の連載が目当てで買うようになった雑誌「まんがタウン」(双葉社)で『光の大社員』という奇妙なマンガがけっこう気に入っていた。いまは終わって『ど先端ナース』をやっている。
 「オイスター」というヘンテコな名前は正確にはアルファベットである、しかしOの上に変音記号のようなものがついていてそんな文字を出すのはめんどくさいし、アマゾンでもカナ書きにしてあるし、単に「オイスター」ですませる。
 BOで発見。わりに古いのでいまは中古しかないだろう。
 学園ものと言えるのだろうか、マイペース過ぎる女子高生芽野アリカと愉快な仲間たち。7年の間に『男爵校長』『男爵校長DS』『男爵校長High!』とタイトルと掲載誌を変えながら、内部時間もそれなりに流れて卒業のころに終わっている。投書、月面のようなお面をかぶった「月彦さん」など、謎めいた要素もちょこちょことある。
 ところで、彼女らが劇をするエピで『マッチ売りの少女』を選んで
「何よりこの話は ①時間の流れが一定 ②場面が一箇所 ③話のスジが一本 と お芝居の理想的3法則を全て備えているし」と説明している。 17世紀フランス擬古典主義演劇の重んじた「3統一の法則」は、一つの場所、一つの筋、一日のうち であり、ほぼ重なっている。オイスター氏は「三統一の法則」を知っていたのか偶然の一致か興味深い。


『ヘタリア World Stars』1  集英社 A5
 幻冬舎で6巻まで出たけど、微妙にタイトル変更でWebの「少年ジャンプ+」で続行中。(1回目以外は、単行本に収録された部分はなくなっている模様) どういう編集になるのかと思っていたら、単行本の前半の「第1話」~が現代の各国事情ネタで、後半の「Act1」~が歴史ネタという構成である。今回の歴史ネタはもっぱらローマでネロ中心。ユリクラのメンバー盛りだくさん。ティベに司会を任せてさっさと寝てしまうアウちゃん、威圧感ありまくりのティベがそれらしい。
 ここにはまだ載っていない「超時空帝クインティッルス」が、いまの最新話にバレンタイン絡みでまた出ている。まだローマの話があるならば、アグリッピナ以外の皇帝の妻たちも出してもらいたいところである。


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ファンドーリンの捜査ファイル

2015-02-05 13:25:00 | 
ボリス・アクーニン『堕ちた天使  アザゼル』『リヴァイアサン号殺人事件』『アキレス将軍暗殺事件』
 『アザセル』は「作品社」、2002年、あとの2冊は岩波書店2007年。
 図書館のロシア文学の棚で目にはいった。19世紀末のロシアを舞台にした歴史ミステリー、そんなものがロシア作品にあるとは珍しいと思って借りた。作者は日本文学者が本業で「アクーニン」は「悪人」のシャレだという。
 主人公エラスト・ファンドーリンはモスクワ生まれ、両親は早く亡くしているけど貴族の出、ダンディでシャイで切れ者の美青年。話の始めに20歳。
 2007年の時点で11作出ていて『アザゼル』が1作目、事情あって2作目を飛ばして『リヴァイアサン~』『アキレス~』は3、4作目。三作目は外交官として日本へ行く船の中での殺人事件、『オリエント急行』をどうしても連想する状況。『アキレス~』はその四年後、日本で拾った(?)従僕がお供している。ヤクザでファンドーリンに命を助けられたということになっている。シバタ・マサヒロ、そういう名前のまんが家いるけど単に偶然だろう。
 ファンドーリンは氷風呂にはいる習慣がある。ある時、潜って顔を出したら婦人客がいた。女性だけ立たせていてはならないという教育が身についていたので反射的に立ち上がってしまい、慌ててまた座り直す・・・のは笑えた場面。
 もう一つ。船の客には日本人がいて、彼の日記に、西洋人がハンカチで鼻をかんで、しまって、また使うという習慣をヘンなものだと記している。そう、作者の日本理解の一端だな。
 私は活字を読む際、登場人物のビジュアルにマンガを借りることがよくある。理由があって選ぶこともあるし、たいして意味のないこともある。 単にロシアというだけの連想で、ファンドーリンは「まんがタイムファミリー」の『スパイの歩き方』by速水螺旋人 のペルツォフカを借りた。ファンドーリンは黒髪であり、ペルツォフカは(たぶん)金髪だし、ぜんぜん似てないけど。
  

アーヴィング『スケッチ・ブック』上
 岩波文庫のわりあい新刊。エッセイや短編。英国の風物や異国風景の観察等。ドイツ、ライン流域を舞台にした『幽霊花婿』は浪漫的で少女マンガにも良さそう。

『マラルメ詩集』はやはりわからんかった。ここにも「サロメ」題材があり、しかしサロメという名前がヘンな意味の言葉と似ていて気に入らないので「エロディヤード」の名前を使っていて、そういう前例はあるという説明は興味深いものだった。「ヘロデヤ」よりも「エロディヤード」のほうが耽美調に見える。
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図書カードの使い道

2015-02-01 15:22:08 | 
 去年、文春文庫が創刊40周年祝いで懸賞をやっていた。本2冊の応募券で一口だったので、新装版『おろしや国酔夢譚』by井上靖 を自分のと贈る用2冊買って応募した。一昨日、千円の図書カードが届いた。
 私は、こういう記念やプレゼントに関わるときには心がけのよい使い方をしなければいけない気になる。読んですぐに売るであろう時には避ける。
 だいじにとっておく、または読んだらはるばるとドイツに送りたくなるような品に使いたい。

 別の頂き物で図書カードがあるので、今日は多少奮発した。
『しばわんこの和の行事えほん』
  12月に出ていたのをつい先日知った。「こどもMOE」の掲載なので知らなかったのだ。児童書の棚だし。
『バレンタインデーの秘密 愛の宗教文化史』 平凡社新書
  歴史的意義の講釈は私の好むところである。
『文豪と京の「庭」「桜」』 集英社新書
  井上靖作品が載っていれば買おう、という気で手にとり、そして載っている。

 いま図書館から借りているのは
・『スヌーピーの50年』 私の師匠が、自分の英語はシェイクスピアとスヌーピーの語彙が混じっているというお話であったことがある。去年、クリアファイルを買って使っているので読んでおく義理を感じていた。逆に言えば、読んでみる気があるからこそグッズを買った。
・ハインリヒ・マン『アンリ四世の完成』
 年末年始の休みには『アンリ四世の青春』を読んだ。先日『王妃マルゴ』by萩尾望都 の3巻が出たことだし、このさい『完成』も読んでしまおう。
 借りたものを期限中に読むのはもちろんとして、自分の本のうちでは、季節柄『バレンタインデーの秘密』が優先だろう。

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