レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ブラックナイトパレード 薔薇王 マルゴ

2017-01-30 14:15:53 | マンガ
中村光『ブラックナイトパレード』1巻  集英社

 『聖おにいさん』の作者の久々の新作ということで私も買ってみた(聖おに以外はこれが初めてである)。
 日野三春(ひのみはる)は、大学受験に失敗し就職もできず、コンビニのアルバイトをして3年。バイト仲間の大学生ははげしくチャランポランなのに内定をゲット、かわいい彼女までいる。そいつの不始末まで店長の誤解で押しつけられて、魔がさして店の廃棄品を失敬する。それで「ブラックサンタ」会社に拉致同然にスカウトされてしまった。
 ヨーロッパのサンタクロースに「なまはげ」的要素があるのは事実だし、悪事の償いに労働させられるという設定は宗教的な含みを感じる。作者が、イエスやブッダに幼少時からなじみがあったというのもダテじゃなさそう。
 ここしばらく読んだコミックスでいちばん面白い。
 ところで三春の外見に既視感があると思ったが、・・・『薔薇王の葬列』のリチャードに似ているのだった。リチャードと違って善人だけど。


『薔薇王の葬列』は7巻で「第1部完」、でもすかさず第2部が始まるので口実ではない(よくあるからね、「第1部完」と銘打ってそれっきりにすること!)。シェイクスピアで『ヘンリー6世』が三部作、それに比べれば『リチャード3世』は短いので3巻くらいだろうか。不憫なアン・ネヴィルにくらい少しは救いがあってほしいものだけど。ついに王子エドワードはリチャの体の秘密を知らないままで果ててしまった。父子ともに哀れ過ぎる。『RⅢ』でマーガレット王妃がちょっと唐突に出番があるけど、あれをもっと盛り上げて描いてほしい。

『王妃マルゴ』5巻
 「残グリ」ふうにすればいくらでも悪趣味にできる「聖バルテルミーの大虐殺」、ポイントは抑えつつ控えめに処理した。ごたごたに紛れて宗教関係なしの略奪も。争いが始まってしまえばそもそ
もの信仰問題がどこかへいってしまうとはいえ、・・・不寛容より無節操のほうがマシだとつくづく思う。
 何度も改宗しまくったアンリが最終的に勝つという史実までたどりつくのはいつなのか。

『ベルばら』13巻
 ・・・まったく、「エピソード編」なんて11巻、12巻、と単純な続きのように巻数をつけることが大きな間違いだろうに。
 掲載当時、某掲示板で大不評であった「オスカル編」。「おまえが諦めたもののすべてだ」という分身、「ドレスオスカル」。確かに、ドヤ顔しているわりに幸せそうに見えない。ふつうの女として育っていたらという仮定の姿が、それなりに幸せに見えなければ、苦しみは多いけどそれでもこちらの人生に悔いはない、という「軍神マルスの子として」宣言が輝いてこない。あんな意地悪そうな顔の分身では、男人生のオスカルが羨むほどの価値もないようになってしまうのではないのか。 やはりすっきりしない。
 原典の同じシーンをいまの絵で描き直した部分が多いけど、全盛期の絵で見られたらもっと嬉しかっただろう。

 ついでに言えば、 
ベルばらやセーラームーンの、たか~~いコラボグッズがたびたび出ている。衣料品や化粧品だし私はまるで気を惹かれないけど、次々出ているということは、ある程度売れているのだろう、不思議である。


 来月出るコミックスで買うのは、『まほろ駅前多田便利軒』(完結)と『プリニウス』の新刊。そういえば、『芸術新潮』でヤマザキマリさんがルネサンス関連で描いているのを知った。意外ではない。
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熊と踊れ その他

2017-01-21 12:28:05 | 
アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ 『熊と踊れ』  
90年代初頭のスウェーデンで連続銀行強盗等が生じ、犯人たちは前科もない二十歳前後の兄弟たちだったという事件があったらしい。
 『制裁』に始まる、エーヴァルト・グレーンス警部のシリーズの作者が、その犯人たちの弟と組んで、事件を下敷きに書いた長編。
 狂暴な父イヴァン(ロシアからの移住者?)の元で育った三兄弟。長男レオは父と絶縁を宣言して、弟たち+幼馴染一人の4人で軍の武器庫から略奪し、次々に銀行強盗を成功させる。
 そして彼らを追う警部も、母に暴力をふるう父を刺して監獄にいる兄を持っていた。
 『カラマーゾフの兄弟』から哲学を引いて展開を迅速にしたような感じか、でも意外なことにこちらのほうは死人が出ないのである。
 この親父、女房に暴力をふるう点はけしからんが、息子がいじめられた際に殴り返す技を教え込んだことは非難する気はない。

 ところで、『制裁』『ボックス21』『死刑囚』は講談社から出ていたが、すでにAmazonの中古でもけっこう高値がついている。来月の文庫リストでは、『制裁』が創元だかハヤカワだかで出ることになっている。続きも出て、まえはとばされた第4作目(『死刑囚』と、角川文庫で出た『三秒間の死角』の間の話)も訳されてくれると嬉しい。


フワン=ラモン・サラゴサ『殺人協奏曲』  新潮社 1984
 霊界で一人の人間が創られて地上に送られて、その人生があとで審査される。その男マルコスが送られた世界は、第一部がフラウィウスの時代のローマ。マルコスを使役する、ゲルマニアから帰化したアドルフスは陰謀を企むドミティアヌスと手を組む。
 危険人物の「アドルフス」は誰を念頭においているかはすぐわかる。
 第2部は2016年(この作品は1981年発表なので当時は近未来)のアメリカ、第3部はフランス革命前。
 まえにこの作家の『カリフォルニアウイルス』を読んだ際に知ったのであるが、タイトルほどミステリーではない、むしろ歴史+SFの風味である。


レナ・コバブール&アニタ・フリース『スーツケースの中の少年』 講談社文庫 2013年
 デンマーク産。
 ニーナは夫・子供たちを時に放置気味になりながら、むしろ家庭から逃げるように看護師仕事に身を挺している。旧友の元同僚カーリンに、ある荷物を代わりにひきとってくるように頼まれた。その重すぎる鞄の中には生きた幼児が入っていた。
 一方、リトアニア人のシングルマザーのシギータは、謎の失神ののちに息子が消えてしまう。
 我が子を守ろう取り返そうと奮闘するシギータはたくましい。
 産みの母と養母が心を通わせるのがたいへんいい。
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『夫に出会わないためのTo Do リスト』等

2017-01-11 10:29:06 | 
ヤーン・エクストレム『誕生パーティーの17人』 創元推理文庫 1987

 大金持ちの老嬢の誕生パーティー、姪とその夫・子等が集まっている。放蕩で借金持ちの青年が父に金をせびり拒絶され、ある手紙をタネに強請りをかける。その後父子は遺体で発見される。
 しばらく北欧ミステリといえば社会問題云々のものに多く接していたので、こういういかにもの設定が逆に新鮮に見えた。
「スウェーデンのカー」と呼ばれる本格推理作家だそうだけど、どうやら邦訳はこれしか出ていない。


ケルスティン・ギア『夫に出会わないためのTo Do リスト』  東京創元社 2014
 まえに買った創元推理文庫のはさみ込みチラシで気になっていた本。
 カティ(35)は夫フェリクスとの仲はいいけど、出会ってしまったマティアスも素敵で心が揺れてたまらない。うっかり地下鉄事故にあい、気がついたら5年前、フェリクスと出会う前の時間にさかのぼっていた。
 現代ドイツの「ラブコメの女王」と呼ばれる作家だそうで、まえにファンタジー三部作の1作目を読んだことがある。
 ドイツのラブコメというジャンルはいまのところ紹介される機会が乏しそうだし、またあってもらいたい。


『アルジャーノンに花束を』
 知恵遅れのチャーリイの「かしこくなりたい」願いがいじらしい。 手術・研究に関与する人々の、悪意まではないけど人間扱いではなさそうな態度は、『カスパー・ハウザーの謎』を連想した。


『約束』  Fr.デュレンマット  同学社
 20世紀のスイス(ドイツ語圏)を代表する劇作家・小説家のフリードリヒ・デュレンマットにはミステリーに分類されうる小説がいくつかあって、それらは最近同学社から出ている。『約束』は既訳があって私も大昔読んでいる。相良 守峯『ドイツ文学史』(かなり古い本)にはこれを結末まで書いてあって、まがりなりにも「ハヤカワミステリ」なのにいいのかい、と思ったものである。副題が「推理小説に捧げる鎮魂歌」となっていて、作中で刑事が作家に、すべてが論理的に進むなんて嘘だ、偶然や運に左右されるものだ、という不満を申し立てている。
 小さい女の子が殺害される事件が相次ぎ、警部マテーイは遺族に犯人逮捕を約束する。容疑者があがったが自殺。マテーイはそれに納得できずに独自に捜査を続けた。






 犯人の母最悪、こいつ安らかな眠りなんて要らない、犯罪の共犯者扱いでいい! 
 囮に使われて傷ついた少女がその後の人生転落したというのもやりきれんけど。
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今年もよろしく図書館

2017-01-04 10:37:49 | 
 まえにも書いたことがある。
 地元図書館では、年末は28日までで、年始は5日から。しかし、内部では29日まで&4日からお仕事が成されている。29日に返却ポストに入れたぶんがその日のうちに返却処理されていたのは去年だっただろうか。
 今年2日、近郊では大きい神社に行く前にポストに入れた数冊が、いま既に「貸し出し中」から消えている。
 お疲れ様です、今年もよろしく。

 酒井順子『朝からスキャンダル』予約していたのが去年末から「配送中」になっている。6日の午後には届いていてもらいたいものだ。同じサカジュンの『中年書道入門』は、私の待ち順が「1」になってからとっくに2週間は経過していたのに去年のうちにまわってこなかった、延滞しとるのは間違いない。さっさと返さんかい。

 『超展開バレエまんが谷ゆき子の世界』をリクエスト出しているのだが、いまだに「検討中」の状態。県内他市にもいまだにはいっていない。・・・県に1冊くらい入れてもいいと思うよ。

 同日の午後に付記。
 今朝PCから取り寄せを2冊入れたら、片方はもう「手配中」になっている。「配送中」だった『朝スキャ』はもう「取り置き済み」になっている。偉い。
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謹賀新年

2017-01-01 06:55:12 | 雑記
 昨日は風呂場を掃除した。里芋の皮をむいた。自分の部屋はごくわずかに整理した。それなりに働いた大晦日だった。 

 今朝の目覚ましは6時に鳴った。目覚ましに『ヘタリアン・ベスト』から数曲きいて床を出る。
 きのう届いていたハガキ(この地域は郵便配達の時刻が遅く、往々にして翌日の朝刊と共に手にする)に、糸魚川市の友人からのものがあった。大火事のあとで確認状を出していたのである。やはり彼女の地域には影響なかったそうだ。

 今日は地元の小さい神社に初詣に行く。夜は(録画して)ウィーンフィルと『相棒』スペシャルを少しずつ見る。明日はJRで大きめのところに行くという恒例行事。

 親愛なる訪問者の皆さまにも私にも、良い年を祈る。
コメント (2)
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