吉屋信子『良人の貞操』
数ヶ月まえにブックオフに出ているのを見つけて買ってあったものをやっと読んだ。読み始めれば早い。
昭和11~12年の新聞連載。
邦子と夫・信也(工場の技師)は結婚して4年。信也の従兄弟が急死して、その寡婦・加代は邦子の女学校時代からの親友だった。東京に出てきて再び勤め始めた加代と信也は惹かれあってしまう。
筋だけかいつまむとたいへん俗な話ではあるが、女の絆をおろそかにしない作家の態度はやはり『花物語』の作者だけある。
当時はまだ「姦通罪」などというものが存在していたが、男の側については、少なくとも相手が玄人である限り野放し(?)という不公平がまかり通っていた時代、「貞操」と「おっと」との組み合わせが挑発的であったことは言うまでもない。
三浦しをん『政と源』
新刊。
「墨田区Y町」に住む老人コンビの話。元銀行員、妻が娘のところに行ったきりで別居状態の国政、つまみ簪職人で寡夫・若い住み込み弟子と二人暮らしの源二郎。源の弟子の徹平には年上の美容師とバカップル状態。その若者たちの結婚に力を貸したり、源の過去のロマンス(愛妻との)が回想されたり。
「つまみ簪」というものを私も今回初めて知ったのであるが、作者の、さまざまなお仕事に対する関心が反映されている。
なんと掲載誌がコバルト、しかし普通の単行本として出ていて、かつ、たぶん本誌でのイラストも掲載されている。円陣闇丸というのはBLの人だろう、なかなかかっこいい絵である。
(正直言うと、しをんさんの作品につけられる絵(マンガ化含む)は、私の好みの画風とはだいぶ違うことが多く、そして私の好みの典型の絵だとあまり合わないだろうとも思っている。)
カレン・レックバリ『踊る骸』 集英社文庫
スウェーデン産ミステリー『エリカ&パトリックの事件簿』の5作目。
前作で、エリカの母の遺品にナチスの勲章が発見されたことから疑問が湧いたというヒキになっていた。その品を亡母エルシの友人であった元歴史教師に預けておいたところ、彼が殺害されたということがこの巻の発端。
エルシの幼馴染である人々も、極右がいたり、ナチハンターがいたりで大きく道が分かれている、しかしある秘密を共有する共犯者でもある・・・。
パトリックの新しい同僚が、南米からの移住者で、おまけにレズビアンという身の上で、偏見で見られる条件があることも出てきたり、嫌な上司として書かれていたメルバリにどんどん「可愛げが生じてきているとか、謎解き以外の点でも見所が多い。
過去の殺人事件、加害者側にしてみれば殺意がわくのは無理もないけど、第三者から見るとけっこうかわいそうだと思うぞあの状況は。
数ヶ月まえにブックオフに出ているのを見つけて買ってあったものをやっと読んだ。読み始めれば早い。
昭和11~12年の新聞連載。
邦子と夫・信也(工場の技師)は結婚して4年。信也の従兄弟が急死して、その寡婦・加代は邦子の女学校時代からの親友だった。東京に出てきて再び勤め始めた加代と信也は惹かれあってしまう。
筋だけかいつまむとたいへん俗な話ではあるが、女の絆をおろそかにしない作家の態度はやはり『花物語』の作者だけある。
当時はまだ「姦通罪」などというものが存在していたが、男の側については、少なくとも相手が玄人である限り野放し(?)という不公平がまかり通っていた時代、「貞操」と「おっと」との組み合わせが挑発的であったことは言うまでもない。
三浦しをん『政と源』
新刊。
「墨田区Y町」に住む老人コンビの話。元銀行員、妻が娘のところに行ったきりで別居状態の国政、つまみ簪職人で寡夫・若い住み込み弟子と二人暮らしの源二郎。源の弟子の徹平には年上の美容師とバカップル状態。その若者たちの結婚に力を貸したり、源の過去のロマンス(愛妻との)が回想されたり。
「つまみ簪」というものを私も今回初めて知ったのであるが、作者の、さまざまなお仕事に対する関心が反映されている。
なんと掲載誌がコバルト、しかし普通の単行本として出ていて、かつ、たぶん本誌でのイラストも掲載されている。円陣闇丸というのはBLの人だろう、なかなかかっこいい絵である。
(正直言うと、しをんさんの作品につけられる絵(マンガ化含む)は、私の好みの画風とはだいぶ違うことが多く、そして私の好みの典型の絵だとあまり合わないだろうとも思っている。)
カレン・レックバリ『踊る骸』 集英社文庫
スウェーデン産ミステリー『エリカ&パトリックの事件簿』の5作目。
前作で、エリカの母の遺品にナチスの勲章が発見されたことから疑問が湧いたというヒキになっていた。その品を亡母エルシの友人であった元歴史教師に預けておいたところ、彼が殺害されたということがこの巻の発端。
エルシの幼馴染である人々も、極右がいたり、ナチハンターがいたりで大きく道が分かれている、しかしある秘密を共有する共犯者でもある・・・。
パトリックの新しい同僚が、南米からの移住者で、おまけにレズビアンという身の上で、偏見で見られる条件があることも出てきたり、嫌な上司として書かれていたメルバリにどんどん「可愛げが生じてきているとか、謎解き以外の点でも見所が多い。
過去の殺人事件、加害者側にしてみれば殺意がわくのは無理もないけど、第三者から見るとけっこうかわいそうだと思うぞあの状況は。