レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『流沙』その他

2014-08-28 15:09:03 | 
井上靖『流沙』
 30年ぶりくらいの再読。井上靖作品のうちではわりあいマイナーなほうである。後期の作品で「小説全集」にもはいっていなかった、「全集」にはあるので、地元図書館で借りて読んだ。
 37歳の男は当時(単行本はS55)若いうちにはいっただろうか、いまならば充分若いけど。37歳の男と28歳の女の結婚が遅いほうとして書かれているのは時代を感じる。
 左門東平は考古学者、ボンの研究所に籍を置きながらあちこちを発掘で飛び回る生活。春枝章子(あきこ)はピアニスト、パリ在住。この二人が結婚するが、新婚旅行の最中に、パリで行われる演奏会を聞くために帰りたいと章子が言い出したことから諍いに発展し、気まずい別居状態になる。
 実質的な仲人のような佐伯夫妻、東平の旅の友・好人物ボンさん、章子のさばけた助言者である寡夫男九堂、不倫の恋を抱えた友人みゆき。この作家の特色のよく出た人々が関わってくる。
 手紙で成り立っている部分がけっこうある。事件の経過についての東平と佐伯のやりとり、お互いに遠慮なくやっつけあっているけど、読んでいて全然嫌な感じがなく、爽快ですらある。(男の交流を書くのもこの作家は一級!)



『怪奇文学大山脈 Ⅰ 西洋近代名作選 19世紀再興篇』 東京創元社
 図書館の「新着図書」にあったので借りた。ドイツの作品も3つ。L.ティークは初期ロマン派に名前が挙がるけど長生きしただけあって作風の変化もあったときいているけど、実際「ロマンティック」を茶化したような話が収録されていて興味深い。
 ところでこの本の解説、ゲーテ&シラーまでも「ロマン派」に含まれるように書いてしまっているのは問題だろうよ。彼らとロマン派との関係は微妙なものがあるし、青年期には「プレ・ロマン主義」とも呼ばれる「シュトゥルム・ウント・ドラング」の代表者であったことも事実ではあるけどさ。

 
 
 図書館で順番待ち予約していた本が3冊まわってきた。明日ひきとりに行く。
 買った本でまだ読んでいない文庫が目下3冊。


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日々のテレビ

2014-08-24 14:31:49 | 雑記
 40年前には、子供のインドアの遊びといえば、テレビとマンガが主流であった。「ゲーム」などというものはなかった。

 現在私がテレビを見る場合、ほとんどが食事中か、ルームウォーカーを使いながらである。
 決まって見るのは、日曜の6時台の「まる子」と「サザエさん」、基本的に平日にある『相棒』再放送、週に数本のBSの紀行番組。たいていは録画で見る。

 (日曜に、翌日月曜からの週を指して「来週」と「今週」とどちらの呼び方が正しいのだろうか?)
 明日からの週は、紀行で見るものが1本しかない。(ほかは休止だったり既にみたぶん再放送)
『相棒』セレクション(「セレクション」とは正確に言えば「順不同再放送」)も見るようになって数ヶ月、これまでの225本のうち3分の2以上は既に見た。おかげで、明日からの週の5本は全部、既読ならぬ既視聴(なんて言葉はないだろうな)なのである。
 NHKーBSの「プレミアムシアター」で、月に1回くらいオペラを放映するのでそれを時々見る。今夜の『カルメン』は録画。もっとも、こういうのは運動しながらにはあまり気乗りしない。
 
 1回の運動(ルームウォーカー)は4、50分。まだ見ていない紀行の録画が5回ぶん。いや、DVDの見てないぶんもたっぷりあるからそういうのを使ってもかまわないんだけどね。

 『相棒』は10月からシーズン13が始まるので、そのまえに盛り上げようとして9月にはまた「相棒祭り」と称して数時間まとめての再放送をばんばんするかもしれない。

 ところで、BS日テレの『ちょっと贅沢!欧州列車旅行』の再放送の順番がおかしすぎる!と前に書いた。現在の予告ではあさってに#3、そのあと#4、#6、#10 となっている! これもまたへんてこな。いいよもう、この次は元通りに#21ブカレストに戻って、順々にやってくれ、それで問題なし!
 BSフジの『欧州鉄道の旅』が、早いとこ私の見ていない(もしくは新しい録画のない)パートに移ってくれますように。

27日に付記。
 『ちょっと贅沢!~』は、今日見たら、#4、#5、#6、#10、#12となっている。#6までが一区切りで、#12はひとつぽつんと独立した内容。では4回の北欧シリーズの一部である#10が浮いているよ、これやめたら~?そして#13~#18のグループはとばして中欧シリーズへ。私としては、元に戻って#21からがいいんだけど。
 『欧州鉄道の旅』はHPに11月までの予定が載った。このへんは休止がわりに少なくてほっとする。来月後半は久々に新作#165#166、今回はオランダ、楽しみ。ところでそのあと再放送ぶんがまたオランダ(#155#156)なのだ、私は録画してない部分なのでいいけど。#156には「うさこちゃん」も出てくる。 このあと順番に#161#162ロンドン地下鉄(去年の製作)まで載っている。
 このあとの#163#164スペイン(今年の6月放映)も続けて放送するのだろうか?
 そのあとどこへ飛ぶのだろうかと気になる。
 でも、12月には季節に合わせてクリスマスのドイツ(#77#78)にしてほしい~~!


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尊厳者没後2000年なので

2014-08-19 05:48:06 | ローマ
 デュッセルドルフの知人Fさんが、雑誌「ZEIT」を送って下さった。Zeitとは時、時代を意味する。この雑誌の中にも歴史や旅行のジャンルがあるようだ。
 今年が没後2000年ということで、アウグストゥスの特集号!ミュンヘンのグリュプトテークにある、市民冠をかぶったあの有名な肖像を表紙にしている。「暴君それとも光明? いかにしてアウグストゥスは古代世界を変え、なぜ今日まで我々を惹きつけるのか」とのアオリつき。
 権力掌握の歩み、宗教政策、風紀取締、後継者問題、建築物や発掘品など様々な方面で紹介されている。
(全部読んではいないが)不満は、美貌に関しての言及がないことであるが、クレオパトラでもそれは書かれていないのでまあよしとしよう(ヘンな納得)。
 「権力闘争のこの段階で、同年輩の二人の友も助力する。裕福なガイウス・マエケナス、そして、オクタヴィアヌスに欠けている軍事的才能のあるマルクス・アグリッパ」。アグリッパについてはほかにも2ページの記事一つが費やされている、「国家第二の男  マルクス・ウィプサニウス・アグリッパはオクタヴィアヌスの最良の同志。彼はオクタヴィアヌスのために戦闘で勝利し、民の繁栄に尽くした」。
 リウィアについても記事一つ2ページ割いている。「Gattin und Goettin(妻そして女神)  リウィア・ドルシラはアウグストゥスの妻であるだけでなく、最も影響を持つ助言者でもある。死後は神々にまで加えられた」
「リウィアとオクタヴィアヌスが結婚した時、この結婚が52年続くとは誰も思わなかった。リウィアが権力者の夫の影から踏み出て遂には女神にまで高められるとは誰も予見できなかった」
 「結婚の初期、オクタヴィアヌスは跡取り息子を熱望する。しかしリウィアは、15で結婚して既に二人の息子の母であったが、一度の死産のあともはや子を得なかった。プリンケプスの妻は、別の手段で、かけがえのない存在にならざるをえなかった:夫が推奨した美徳のイコンとなること。オクタヴィアヌスが尊厳者の名を得て新しい道徳の規範を作る時、リウィアはローマ婦人のまえに良き模範として進み出た」
 リウィアが、ティベリウスを結局後継にすることに成功したことなどは書かれているが、「ポイズナー」については言及なし。
(私も隅々まで読んだとは言えないけど)

以下、企画サイトを貼る。
「世紀祭 」
 ノルさんの雷怖いのアウちゃん可愛い。
 山崎さんの「元気だった?」「死にかけたよ!」「また?」が笑える。

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新切手82円と52円

2014-08-17 06:42:57 | 雑記
 4月からの値上がりの影響で、郵便料金も変わり、封書が82円、葉書が52円になっている。かつて、62円が80円に、41円が50円になった時には18円と9円の切手が新しく出たものだ。それらはまだうちに残っている、なんとかしないと。
 
 さて、新しく出た82円と52円がどういうものなのか、私は先月初めて知った。

「普通切手」

 ソメイヨシノ52円、ウメ82円。  単独で見ればきれいである、確かに。 しかし、春の花だろう。年中ある花も、季節があまり意識されない花(z.B.かすみ草)を探せるだろうに、なぜこんな明らかに春の花を選んだんだ、いちばん一般的でよく使う額に! 暑中見舞いのハガキに桜なんて、ああみっともない・・・! だから敢えて50円を追加して買っておいた、オシドリのデザインならば夏に違和感がない。
 2円の「エゾユキウサギ」はどれかといえば冬なんだけど、まあ気にしないことにしよう。

 郵便局のお偉方には、日本人らしい季節のセンスというものをもう少し豊かにして頂きたい!

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「メンズ」ってなんだよ

2014-08-13 13:57:45 |   ことばや名前
「メンズファッション」などという呼び方に対して、「へっ、「メンズ」だと、男物と言わんかい!」と感じるのが本音である。しかしこの「メンズ」はmen'sであり、この「's」が「~の」に相当するということは納得できる。
 しかし、「メンズのヘアスタイル」「メンズにオススメのサロン」 「好みのメンズのタイプは?」となると、なんだよその「ズ」は、いらんだろう!と言いたくてたまらん。単に「男」「男性」「男の子」等ですむはずのところ。もっとも、なんとなくカルさ漂う言葉なので、そういう感じがぴったりする文脈も多いのもまた事実だ。
 「好みのメン」だと、うどんか蕎麦かきしめんか、という話と取られそうではある。

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日本史上の「悪人」?

2014-08-10 06:28:40 | 歴史
 かつて、「まんが専門誌 ぱふ」で「悪役キャラクターベストテン」という投票があり、1、『エル・アルコン』のティリアン・パーシモン 2、「南京路に花吹雪』のコールド・ブラッド・ジョー (終わって間もない時期であった)  3、『風と木の詩』のオーギュスト・ボウ  という結果になった。中にはほんとに「悪い奴!」という気持ちでいれただろうメンバーもいたが、概ね人気投票の一種になっていたという印象である。

 mixiで、「日本史上、一番ひどい悪人だと思う1位「明智光秀」」という記事があった。以下、たいして長いものでないので全部コピー。

歴史に名を残した人は、英雄だけではありません。中には極悪非道といわれる「悪人」たちもいますよね。日本史に登場する人物の中で、一番ひどい悪人は誰だと思いますか? 読者452名に聞きました。

調査期間:2014/7/15~2014/7/22
有効回答数:男性145名、女性307名(ウェブログイン式)
マイナビウーマン調べ

Q.日本史上、一番ひどいと思う悪人を教えてください(単一回答)
1位 明智光秀 24.8%
2位 織田信長 14.6%
3位 徳川綱吉 13.9%
4位 平将門 8.4%
5位 田沼意次 6.2%
5位 蘇我入鹿 6.2%

■明智光秀
・「裏切り者というイメージだから」(31歳女性/食品・飲料/事務系専門職)
・「ドラマでいい描かれ方をしているのを見たことがない」(26歳女性/生保・損保)
・「大河の影響」(24歳女性/医薬品・化粧品/技術職)

■番外編:同じ時代に生まれなくてよかった……
・織田信長「殺した人の数が一番多そうなので」(34歳女性/機械・精密機器/秘書・アシスタント職)
・徳川綱吉「動物を大事にするのはいいが、人間より大事にするのはへんだとおもう」(38歳女性/自動車関連)
・吉良上野介「年始のテレ東のドラマの印象が強い」(31歳男性/商社・卸/営業職)

1位は「明智光秀」でした。本能寺の変での謀反が有名ですよね。しかし、実は黒幕がいたなど、光秀以外の人物が浮上する説も。そのおかげもあるのか、最近では少しずつイメージが回復しているようです。

引用終わり。
 私があっけにとられたのは言うまでもない。
 「※イメージです」が必要だろう。フィクションの印象であることを認めているコメントはまだ納得できるが。
 何十年もまえの調査ならばわからんでもないが、光秀なんていまはけっこう立てて描かれることも多いだろうに。
 将門だの入鹿だの、いったいどういう人たちだ?当時の朝廷貴族か!?と詰め寄りたい人選。
 (ここにあがったうち、光秀、意次、吉良、私は好きである)
 作家や役者にとっては興味深い存在ばかりだろうよ。
 綱吉と同時代でなくて良かった、は同感。一般人にとっても迷惑だったのはこの人だけかもしれん。

 物語や歴史上の「悪女」の話題の時には、そこで名前を挙げたからといって必ずしも非難や嫌悪がこもるわけではないと思うのだが、今回の投票はほんとに、キライ、嫌な奴!と思っていそうで、しかもたいして知識があるわけでもなさそうだから槍玉にあげたくなるのだ。
 最初に言及した「ぱふ」のように、「悪役」とされる人々での人気投票を行ったらどういう結果になるだろう。一般とマニアで差が出ることは間違いなさそう。

 なお、この記事に対するコメントは、投票結果に対する批判が多く、大戦の指導者や現代の政治家、某新聞、麻原などが挙がっていて生々しく、楽しい話題にはなっていない。
コメント (2)
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9月のコミックス予定

2014-08-07 09:20:55 | マンガ
来月のコミックスでは
・にしうら染『踊る!アントワネット様』2巻(完結)
・菅野文『薔薇王の葬列』2巻
・TONO『砂の下の夢』2
・駒倉葛尾『居間には今、外国人がいます。』1巻
ーーが購入予定。『砂の下の夢』は1巻が出てから本誌でも長いことご無沙汰で、その間に私はプリンセスGOLDを購読やめた。
 『居間今。』はドイツに送るぶん込みで3冊買う。(同じころに始まった連載の『ダ・ヴィンチ系女子高生』もそろそろ出るかな?)
 氷栗さんの『バビロニアの獅子』の4巻、さっさと買うほうが精神衛生上いいかもしれない。
 これらのほかに、BO待ちのハーレクインコミックスが若干。HQCはほぼ確実にBOで見つかるからな~。

『だめっこどうぶつ』6巻 桑田乃梨子
 4コマなのでコミックスの出るペースは遅い。そして内容もゆるい。
 気弱なオオカミ、乱暴なウサギ、スレた女が好みのユニコーン、足の遅いチータ等、なにかヘンな動物たちの集まっているヘンな森。相変わらず、うる野は鈍くさくダメダメっぷりを披露するし、秋になればまたうさ原は憂鬱ふわふわでウケている。  最初のページはページの半分がタイトルで、そこには季節感がたいていあるので、これらを使ってカレンダーにしたら可愛くて楽しいだろうと今回思いついた。

『イシュタルの娘』6~8 大和和紀
 いまごろ読んだ。主役級カップルよりも脇の人々のほうに目がいく。ここのお江は勝気で、まえに秀吉のところに一時着ていた鈍くさい秀忠をいじめていた。そして史実通り、3度目の結婚で江戸へ。しかし、三度目・年上を逆手にとってやはり秀忠に対して強気に出て主導権を握るーーいや~痛快!
 秀吉が、健康マニアの家康を見て、こいつツヤツヤして若い!と焦るくだりはリアルでおかしい味があった。
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井上靖『盛装』その他

2014-08-01 05:58:20 | 
井上靖『盛装』
  この作家の長編小説74本のうち、生前に出た「小説全集」にも、死後の「全集」にも収録漏れしている作品は19本ある。そのうち、市内の図書館にもないので「県内」に広げて借りなければならないものが数冊。それでまず借りたのがこの『盛装』上下巻文春文庫。赤い薔薇、黄色い薔薇のカバー絵がきれいである。
 社長令嬢(養女)の伏木瑟子(しつこ)が俳優と心中事件を起こし、ひとり生き残ってしまう。しかし彼らは恋愛関係にあったのではなかった。しばらく東京を避けてシーズンオフの会社の寮に滞在することになり、秘書の秀才青年前原と、彼女を撮りたいという写真家の早見がお目付け役に同行する。早見の知人である人妻四条杉子は、心中事件のあと夫がふさぎこんでいる様子に、夫と瑟子への疑いをいっそう強めていた。
   読んだのが30年以上まえだろうか、まったく覚えておらず、新鮮に読めた。もののわかった壮年の男、飄々とした青年、美しい人妻と令嬢、遠慮のない悪友、シリアスな中にもユーモアのある会話、 これぞ井上靖調。

 「井上靖全集」は「短編」「長編」「エッセイ」に大きく分類してあり、エッセイの最終巻には西域紀行のほかに、『更級日記』の現代語訳、西行に関しての論も載っている。1巻目には詩の全部と初期短編が載っており、別名義での懸賞小説など愉快な話もある。7巻目には末期短編と戯曲。『就職圏外』は中々楽しい。

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