井上靖『流沙』
30年ぶりくらいの再読。井上靖作品のうちではわりあいマイナーなほうである。後期の作品で「小説全集」にもはいっていなかった、「全集」にはあるので、地元図書館で借りて読んだ。
37歳の男は当時(単行本はS55)若いうちにはいっただろうか、いまならば充分若いけど。37歳の男と28歳の女の結婚が遅いほうとして書かれているのは時代を感じる。
左門東平は考古学者、ボンの研究所に籍を置きながらあちこちを発掘で飛び回る生活。春枝章子(あきこ)はピアニスト、パリ在住。この二人が結婚するが、新婚旅行の最中に、パリで行われる演奏会を聞くために帰りたいと章子が言い出したことから諍いに発展し、気まずい別居状態になる。
実質的な仲人のような佐伯夫妻、東平の旅の友・好人物ボンさん、章子のさばけた助言者である寡夫男九堂、不倫の恋を抱えた友人みゆき。この作家の特色のよく出た人々が関わってくる。
手紙で成り立っている部分がけっこうある。事件の経過についての東平と佐伯のやりとり、お互いに遠慮なくやっつけあっているけど、読んでいて全然嫌な感じがなく、爽快ですらある。(男の交流を書くのもこの作家は一級!)
『怪奇文学大山脈 Ⅰ 西洋近代名作選 19世紀再興篇』 東京創元社
図書館の「新着図書」にあったので借りた。ドイツの作品も3つ。L.ティークは初期ロマン派に名前が挙がるけど長生きしただけあって作風の変化もあったときいているけど、実際「ロマンティック」を茶化したような話が収録されていて興味深い。
ところでこの本の解説、ゲーテ&シラーまでも「ロマン派」に含まれるように書いてしまっているのは問題だろうよ。彼らとロマン派との関係は微妙なものがあるし、青年期には「プレ・ロマン主義」とも呼ばれる「シュトゥルム・ウント・ドラング」の代表者であったことも事実ではあるけどさ。
図書館で順番待ち予約していた本が3冊まわってきた。明日ひきとりに行く。
買った本でまだ読んでいない文庫が目下3冊。
30年ぶりくらいの再読。井上靖作品のうちではわりあいマイナーなほうである。後期の作品で「小説全集」にもはいっていなかった、「全集」にはあるので、地元図書館で借りて読んだ。
37歳の男は当時(単行本はS55)若いうちにはいっただろうか、いまならば充分若いけど。37歳の男と28歳の女の結婚が遅いほうとして書かれているのは時代を感じる。
左門東平は考古学者、ボンの研究所に籍を置きながらあちこちを発掘で飛び回る生活。春枝章子(あきこ)はピアニスト、パリ在住。この二人が結婚するが、新婚旅行の最中に、パリで行われる演奏会を聞くために帰りたいと章子が言い出したことから諍いに発展し、気まずい別居状態になる。
実質的な仲人のような佐伯夫妻、東平の旅の友・好人物ボンさん、章子のさばけた助言者である寡夫男九堂、不倫の恋を抱えた友人みゆき。この作家の特色のよく出た人々が関わってくる。
手紙で成り立っている部分がけっこうある。事件の経過についての東平と佐伯のやりとり、お互いに遠慮なくやっつけあっているけど、読んでいて全然嫌な感じがなく、爽快ですらある。(男の交流を書くのもこの作家は一級!)
『怪奇文学大山脈 Ⅰ 西洋近代名作選 19世紀再興篇』 東京創元社
図書館の「新着図書」にあったので借りた。ドイツの作品も3つ。L.ティークは初期ロマン派に名前が挙がるけど長生きしただけあって作風の変化もあったときいているけど、実際「ロマンティック」を茶化したような話が収録されていて興味深い。
ところでこの本の解説、ゲーテ&シラーまでも「ロマン派」に含まれるように書いてしまっているのは問題だろうよ。彼らとロマン派との関係は微妙なものがあるし、青年期には「プレ・ロマン主義」とも呼ばれる「シュトゥルム・ウント・ドラング」の代表者であったことも事実ではあるけどさ。
図書館で順番待ち予約していた本が3冊まわってきた。明日ひきとりに行く。
買った本でまだ読んでいない文庫が目下3冊。