レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『チェーザレ』7巻その他

2009-08-30 06:24:29 | マンガ
『チェーザレ』7巻
 シックな装丁。中身がどういう絵であるかを帯で見られるようになっているのは親切な工夫である。
 降誕祭の場面、「キリエ・エレイゾン」が延々と続く(緻密な背景も人々の有様も観賞にたえる)。
 『神曲』に秘められた謎を追求する前ふりとして、ローマ帝国以来の歴史が講釈される(私個人としては大いに興味深いが)。
 こういう目立った動きのない場面も贅沢に盛り込まれていて、それが許されているとは、この作品の待遇の良さを改めて感じる。
 儀式の前に頬染めたジョバンニがなんかかわいい。
 初登場の若い芸術家が、鼻が曲がっているからアレか?と思ったらアタリだった。
(前巻のことだけど、ミゲルの子供のころってアンドレみたいだ)

『海の綺士団』14巻
アシェルとドラグートの約束の試合は、騎士団長の企てにより、多数騎士たちのトーナメントと化す。
最終的に当該の二人の決着になることは始めからわかっていたが。
登場する男たちが忍耐強いということが、古き良き時代の少女マンガをほうふつさせる。


『華の姫  茶々ものがたり』1巻
先月出ていた。しばらく迷ってから買った。
本命男は、茶々が子供のころからの護衛役だった若者で、鶴松はこちらの子という設定。しかしこの子はじきに死ぬことになっている。では、次に生れる拾(ひろい)、のちの秀頼はどうなるのだろうか。秀吉に対して憎しみ以外の感情も芽生えてくる兆はあるし。家康と組んでいる僧侶(天海だよね)は光秀という設定を使っている。
 ところで、作者は歴史好きだそうだけど、クレオパトラが好きだとあとがきで書いている。--淀とダブる点がおおいにある。


 9月のコミックスリストを見ると、藤本ひとみ原作『令嬢テレジア』10巻ーーまだやってるのか!「完」の文字もついていない。原作、そんなに長いものでもなかったのに(そりゃ、『一夢庵風流記』→『花の慶次』の例もあるけど)。官能レディースの作家でも、魔木子さんの絵でならば見たいけど、森園みるくのいまの絵では気乗りしない(昔の絵はきれいだったのに)。
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暗夜行路、細雪、嵐が丘

2009-08-28 16:01:00 | 
 清水義範『独断流「読書」必勝法』で取り上げた本を、再読も含めてわりに読んでみた。

 『暗夜行路』
 再読。こんなタイトルのわりに根が楽天的だという印象を持った。だいたい、出生の秘密なんてあったって、こいつ生活の苦労なんてぜんぜんしてないもんね、単に、売れもしない小説書いてるだけだし、教養のために旅行だって平気でできるし。
 ところで、ふつうこの話の内容は、「母と祖父の不義の子である時任健作が結婚後妻の過失に苦しむ」と説明される。私はこの、「妻の過失」という言葉にひっかかっていた。妻は被害者だろう!と。再読したのはそこの確認も目的の一つだった。で、その結果、・・・直子に隙は確かにあった、しかし悪いのが男であることには変わりない、もっとも、暴行されたとかなんとか書くのは抵抗を感じるので、「過失」程度にしておくのが無難なのかいなぁ・・・。「不貞」だったら明らかに不当だ!と怒るけど。

『細雪』、
ほかの古典で連想したのはJ.オースティン。ハイソな人々の結婚をめぐる浮き沈みという点で。蒔岡のほうが「非常時」のくせにゼイタクさが目立つけど。

『嵐が丘』
 これを読むのは3度目くらいか。最初は、高校1年のとき、「ララ」で伊藤愛子がマンガ化したのがきっかけだった(ヒースクリフが家出したところで中断した)。
 だれだったかこの小説を論じた作家が、映画化ではキャシーが善人になってしまっている、彼女が死ぬのは「怒り」のせいなのに、と主張していた。確かに、キャシーがエドガーと結婚した動機は不純だ。お嬢様の身分にある人が、下僕ではなくて釣り合った相手を選ぶこと自体は非難できないと思うけど、それによってヒースクリフの立場を引き上げたいということまではまだ認めるとしても、もどってきた彼と夫が仲良くしてくれることを望むのはあまりにも非常識ではなかろうか~~。・・・・・・だからこそキャシーなんだけど。あっけにとられるほどのエゴイストぶり。
 唐突ながら、私はシシィを連想した。ワガママものという点で。夫とはやはり異った人種であったという点で。いや、シシィとフランツ・ヨーゼフの間に愛はあったと思うけど。でも魂の同類ではありえなかったろう。
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『漫画版 世界の歴史』の絵について

2009-08-26 05:50:53 | マンガ
「歴史」カテゴリーでも話題にしたけど、絵についてだけ述べるのでマンガのほうで。

 2002年11月に集英社から20巻一気に出た『学習漫画 世界の歴史』が今年文庫10巻で出直している。(元の版も相変わらず児童書の棚に並んでいる。)

「漫画版 世界の歴史」


絵がある程度、少女マンガの美意識にかなう巻について。

3巻『十字軍とイスラーム』の後半(親本の6巻)
主要人物・事件:サラディンやスレイマン1世
担当:芳村梨絵
 レディコミで見かける作家。ちょっと妖しげな雰囲気にも向いた独特の絵。

4巻『モンゴル帝国と世界の交流』後半(8巻)
マルコ=ポーロなど
アンベ久子 
検索すると、2000年現在の情報で、レディスにたまに描いていて、昔は「アベ浩子」たったという書きこみあり。その名で検索したら、--「LaLa」にいた人だ! そうだ、この絵は見覚えがある。サワヤカ系。
 付記。2010年8月に出た『二十四の瞳』(ホーム社のMANGA BUNGOシリーズ)を「安部大代」の名前で描いている。また名前変わったのか?

5巻『ルネサンスと絶対主義』の後半(10巻)
ルイ14世、フェリペ2世、マリア・テレジアとフリードリヒ2世、ピョートル大帝
長谷川幸恵
大物たちをほどほど少女マンガ絵できれいに描いている。
検索してもこの本しか出てこなくて、明らかに同名異人がぞろぞろ。


6巻『フランス革命と産業革命』(11巻と13巻)
前半 笈川かおる  後半 あずみ椋
「笈川かおる」は昔「ぶ~け」で活躍したときいている。
すっきりした絵。ナポレオンはなかなか似ている。
あずみさんに関しては、肩入れがあふれすぎなのでこの際ノーコメント。

7巻『アメリカ建国と清王朝』の後半(14巻)
ラクシュミー・バイイーなど
青木庸
検索したところ、80年代に「朝日ソノラマ」から単行本を出している。
もっと近いところでは、『マンガでわかる近藤典子の収納の達人』(1997)なんてあった。

8巻『帝国主義と第一次世界大戦』の前半(15巻)
ビスマルクなど
中村結香
検索してもこれしか出ない。地味で、ちょっとぎこちなさも感じるけど端正なタイプの絵。

10巻『パレスチナ問題と東西冷戦』(19巻20巻)
前半 南舘千昌  後半 竹坂香利
「南舘千昌」で検索したところ、どうも著作はほかになさそうで、「日本剪画協会」の会員ということで名前が出てくる。きれいな絵である。
「竹坂香利」は、ちょっとユニークな画風。集英社系でこういう絵なら「ぶ~け」かな、と思ったら実際そうだったようだ。
ケネディやゴルバチョフ、実在の人物を、特徴をある程度ふまえて、自分の絵の中に溶かしこんで、ほどほどのかわいさで描いてあってナイスである。

 総合。
 少なくとも絵で選ぶならば6巻と10巻がお勧め。
 今年の夏の100冊フェアにこれの1巻が入っているせいか、1巻のみ、もう2刷になっている。もくろみどおり売れたかは知らん。もし来年も入れるならばいっそ10巻にせよと要求したい。(そりゃシュミでは6巻を推したいが)
 2010夏に付記。この年には「漫画版世界の歴史」はフェアに入ってはいなかった。

 ついでに。
 私が最初に学習マンガの絵に注目したのは、もう20数年前に手にした岸田恋(れん)さんの『雨月物語』だった。フツウのマンガ雑誌に載っていればそう目立つわけではなかろうけど、学習マンガでは絵のダサい人が多いので、そういう中では洗練されてきれいだった。その後、古典文学をかなりいろいろと描いていることを発見。「どれみ出版」から出ていた作曲家の伝記シリーズで「バッハ」、「モーツァルト」、「ショパン」を描いているのをブックオフで見つけた。(そんなシリーズの存在知らなかった)
岸田恋さんは、数年前、「あおば出版」のソフト系レディコミ誌で「さくらまこ」の名で見たけどいまはどうなってるのだろう。コミケで、修道士のマンガを出していたこともあるな。
 私はマンガ読み歴40年以上になるけど、絵に対してのえり好みは激しかった(もちろん、昔好きだったけど今見ると絶句、というものは大いにあるけど)。ま、「学習漫画日本の歴史」に関しては、そもそも少女マンガ美意識なんて求める気もしなかったけど。
 学年誌マンガのサイトがあるくらいだから、学習マンガのデータ集めたHPがあってもよさそうだと思う。
 児童書としての枠以外にも、たとえば『その時歴史が動いた』とか、講談社+α文庫の「マンガ○○」とか、「まんがで読破」とか、たくさん出ているし。
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いま眼前にある本

2009-08-24 05:50:34 | 
・小路幸也『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』
 図書館からの借り物、このあとも予約者多数につき早く返却すべし。
 古本屋兼喫茶店を舞台としたささやかな事件簿、ほのぼの人情コメディ。
 マンガ化するならば河あきらがイメージだな。
・『高野聖』 借り物。
 ヒルの群れにまといつかれる描写がブキミ・・・。
・清水義範『夫婦で行くイスラムの国々』
 文字どおり、ヨシノリンとその愛妻のイスラム紀行。インドにトルコに、スペインまで幅広く入っている。
・三木紀人『方丈記 発心集 歎異抄』
  本屋のバーゲンで半額以下で出ていた。実は三木先生とは御縁があり、かつて『新選組血風録』上映会にうち(母と私)から招待券をお送りするのが常であったのだ。
 『発心集』、世捨て人たちの往生物語各種。 宗教ものでも、実のところ、キリスト教の殉教物語よりもこちらのほうが抵抗がない。--したくはないけど。
・荒俣宏『イギリス魔界紀行』
 『ヘタリア』で「イギリス」が妖精たちと仲良しというキャラ設定がたいへん的を射たものに思えてくる本。
 
 この数日、上記のものを並行して読んでいる。
 近々加わる予定は、
カミラ・レックバリ『氷姫』(珍しいスウェーデン製ミステリー)、『もつれた蜘蛛の巣』byモンゴメリ、田辺聖子『光源氏ものがたり』上、『ローマ人の物語 最後の努力』、
 
 いちばん楽しそうなのは間違いなく、このまえブックオフで買った『文珍の学問のすすめ』だ。
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『本が好き!』休刊だって

2009-08-19 06:18:31 | 
 光文社から出しているPR誌(というよりも十分に読み物雑誌のレベル)の『本が好き!』、10日発行。私が書店で楽しみに持ってくる冊子の一つであるけど、最新号9月号で、12月に出る「1月号」で休刊が決まったと告知された。それは残念。金払う読者が足りなかったのか。しかし私も、本屋に売り物として置いてあるのならば、買うのもいやではなかったと思う。通販に面倒さを感じるので、本屋で買えるならば100円200円出してもいい。
 ま、いつまでとわかっているならば、それまでに連載もたたむのだろう。
 ひこ・田中『子供の物語はどこへ行くのか』(児童文学・ゲーム・アニメなど。ディズニープリンセスへの痛烈な批判が小気味よかった)、『字幕屋は銀幕の裏側でクダを巻く  字幕翻訳者のツッコミ評論』by太田直子、 などは、少なくとも、新書で出たら買って読む気がある。

 ポプラ社の『asta』、6日発売のはずなのに、このところ並ぶ日がズレてないか? タダで持っていく読者としてはえらそーにモンク言えた立場じゃないが。池上永一のエッセイ『テーゲーチャンプルー』が楽しい。
 小学館の『きらら』は2月続けて入手しそこねている。地元書店では置いてないので不確実。これは表紙の装丁がかわいいのだ。 『謎ときはディナーのあとで』がけっこう好き。
 幻冬舎の『星星峡』、新しい楽しみは酒井順子のエッセイ『おばあさんの魂』。
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マンガばなしぽつぽつ

2009-08-16 06:06:49 | マンガ
 8月のコミックス新刊リストをチェック。
うぐいすみつるさんのエッセイコミックが3冊出るけど、タイトルからするとあまり私の関心をひくものではない。確実に買うのは、ライプチヒの友人に送る、佐伯かよのさんの『クオ・ヴァディス』の新刊lくらいだ。
 9月ぶんでは、『大奥』の5巻と、桑田乃梨子エッセイコミック『日々是敗北』を買う予定。

 ここでも「準ブックマーク」に入れている歴史サイト「脳幹倶楽部」の「こまむ」さんが載ったので、「まんがタイムファミリー」の8月号(知ったとき既に半月経っていたので本屋3件めで発見)を買った。「ファミリー」とつくだけあって健全な4コマ雑誌。9月号にも載るのでとりあえずまた買う。少なくとも買うことがイヤではない程度にはまっとうな内容だと思う。 ひらのあゆ(「ぱふ」で知ってた)『ラディカル・ホスピタル』が面白い。

 小学館の「凛花」(りんか)という雑誌、「フラワーズ」の姉妹誌という感じだろうか、ここで、さいとうちほが『子爵ヴァルモン』という連載をしているようだ。フランス文学の『危険な関係』byラクロ が原作。
 ところで、2chの少女漫画板で、さいとうちほ と 氷栗優 が重なるという話題が出ていた。宝塚との縁が深い、チェーザレを描いた、絵の評価は高い(けど話は必ずしもそうでない) という共通点が確かにある。
 そして、氷栗さんは宝塚が『危険な関係』を『仮面のロマネスク』として上演したときに、そのマンガ化を担当した。すると、これでまた一つ共通点ができたというjことになるな。
 単行本出たら喜んで買うよ。
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天地無用

2009-08-15 06:18:40 |   ことばや名前
 そういうタイトルのマンガがあったな。

 言葉そのものから想像されるものや語感と、意味することが一致していない言葉がある。
 「天地無用」、荷物を運ぶ段ボールなどに書いてあり、ひっくり返してはダメ、という意味。
 しかしな~、むしろ、上下なんかどっちでもいい!という感じを私は受けるぞ。
ワイルドなあんちゃんの乗り回すトラックにペイントしてあるみたいだ。

 ちょっと違う問題だけど、「オス」「メス」の漢字、「雄」「雌」ではなくて「牡」「牝」のほう、これが長いこと覚えられなかった。「土」と「ヒ」では、むしろ「土」のほうが女っぽくないか、「母なる大地」の連想で。仕方なく、その感覚の逆だということにしておいた。
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朝の習慣

2009-08-13 06:03:32 | 雑記
 基本的に、5時半起床、まずPCの電源を入れて、メールといくつかのサイトをチェックして目覚まし。
 少し勉強。
 7時ごろ朝食。
 そのまえに洗濯機のスイッチを入れる。全自動とは言いながら、たいていは2回「ピピピ」と鳴って異常を知らせるのでそのときはまたスイッチを押す。15分くらいで1回目、そこから40分くらいで2回目が鳴ることが多い。そのとき自分の部屋にいると、奥地から出てくるような気分になるので(家が広いという意味ではなく、単に私の部屋が けものみち なだけである)、それらが終わるまでは近くにいることにしている。
 外をいくつも犬の散歩が通過するが、いちばんかわいいのは、7時半から8時の間に通る、おっさんに連れられた日本犬。中型の茶色が2匹。立った耳にくるり尻尾、あれを見られるとなんとも楽しくて得した気分になれる、あ~かわいいカワイイ。
 この二つ(洗濯機と犬)が済めば、安心して自分の部屋にこもる。そして10時ごろまで勉強し、11時ごろには昼食に気持ちが向う。
 これが出かけない日の午前の基本である。
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『乙女の日本史』

2009-08-11 05:20:36 | 歴史
 という本が出ている。東京書籍より。「歴女」ブームにのって出てきたのに違いない。

 「おじさん史観」に対抗して「乙女目線で」という姿勢は、考えようによっては、志向するところが違うだけでミーハーごころを根底に持つことは同じだ、とも言えるけど、そしてあやしげなところはあるけれど、でも、根拠のあることと単なる俗説を区別することはおおむねしているし(注)、悪趣味に堕してはいないと思う。
 ところで、頼朝と義経も当然出ているのだけど、その頼朝の紹介で「カラダよりアタマが切れるタイプ」「政治家気質」「貴公子系のハンサム」「恐妻家だが浮気者」「冷徹」「とにかくクレバー」--笑ってしまうくらいアウグストゥスと重なっている~~~、あははは。

 注
「史実のみでジャッジ!戦国一のイケメンは誰?」で、三郎景虎の名も挙がっているけどその説が怪しいことも書いてあるし(こういうの、西洋史でもやってもらいたい)、謙信の養子についても、公式肖像はないし(知られている絵は後世にイメージで描かせただけ)、面会した公家たちがなにも日記で言及していないし、フツウだったのだろう、という堅実な結論を出している。
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きれいな教会

2009-08-09 06:03:09 | ドイツ
 教会にもいろいろあるけど、通常、カトリック教会は装飾的で、プロテスタントはシンプルだとされている。うちの近所のプロテスタント教会(私が行くのではない)は、ふつうの家にしか見えない。電車から沿線に見えているぶんでも、ぜんぜんそれらしく見えない教会が二つある。
 でも、ドイツで教会たくさん見たけど、プロテスタントでもきれいなところはあったはず、と思っていくつか検索すると、少なくとも、ドレスデンのフラウエン協会、ベルリンの大聖堂、ライプチヒのトーマス教会は新教だけどキレイだ。
 作られた時代は宗教改革以前でも、あとで新教に使われることもあっただろう。ローテンブルクのヤーコプ教会は、市の改宗でプロテスタントになったけど中には名物の芸術品がたくさんある。ニュルンベルクの街中には有名な教会が3つはあり、うち2つは、できた時代は古くても現在は新教の教区教会だそうだ。
 ドイツ最初の国民議会が開かれたことで有名なフランクフルトのパウルス教会は、フランス革命のころ、もともとからプロテスタント教会としてつくられたけど、いまほとんど式典などに使われているという。丸い変った形をしている。

 カトリックだプロテスタントだというほかに、建築様式の時代差というものもある。


 『世界の歴史 9 ヨーロッパ中世』(河出書房新社)によると、
11世紀以降、木造に代わって石造の屋根が教会につかわれる
 →あまり高くない、ずんぐり、壁面が厚い、窓をほとんど開けない、壁を絵画・彫刻で飾る、内部が薄暗い
    →暗い中でろうそくをともしての儀式は効果満点  
     →多くの巡礼者が来る南西フランスやイタリアで発達した「ロマネスク様式」  
 それに対して巡礼者の集まらない北フランスなどでは
 屋根を工夫し、石柱でささえる→天井を高くできる、窓を大きく開けてステンドグラスから光を入れる
「ゴシック様式」
ーーうんとかいつまんでみるとこんなところか。
 私が見たドイツの教会の中で、空に突き立つような尖塔、高い天井、ステンドグラス、というタイプは、ケルンのドーム、フライブルクのミュンスター、ウルムやレーゲンスブルクの大聖堂もそうだ、これらはまさしくゴシックに属する。確かに、壁よりも石柱の印象だ。色としては黒っぽいようなイメージがあるけど、そのほうがステンドグラスが映えるのかも。
 別のタイプは、壁面は白くて、天井画や壁画が華やかだというもの、レーゲンスブルクの「アルテカペレ」(大聖堂ほど有名ではないだろうけど)、行ったことないけど、有名な「ヴィース教会」、「オットボイレン教会」、これらは、白と金が基調で、壁・天井に絵、華やかだけど色調はむしろソフト。ロココ様式で、ゴシックよりずっとあとだ。

「ただいま実験中!」というサイトにたくさん写真があって重宝だったのに、いつのまにかなくなってしまった。
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