レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

読んだのか読んでないのかの記憶

2017-03-26 08:17:29 | 
 図書館の「新着図書」に集英社文庫の『いつか、君へ Girls』が出ていた。「ナツイチ政策委員会」が2012年に出した、ヤングアダルト向きのアンソロジーである。『いつか、君へ Boys』『いつか、君と Girls』『いつか、君と Boys』と言う具合に4冊出た。これまでも図書館にはあった本がまた入ってきた場合、この「新着図書」に書かれるのかどうかはなにで決まるのだろうかと不思議に思う。

 それはさておき、この本は三浦しをんの作品もはいっているので、私は買った可能性が高い。しかし記憶にない。まあ借りて読むならいいか、混んでいるわけではないし、と借りた。

 『てっぺん信号』by三浦しをん 
 高校生の江美利は、フランス人の祖母を持ち、しかしその子である父はまったくそれらしくない容姿をしており、それでもおフランスかぶれの洋画家であり、江美利はぱっとしない容姿をしている。かっこいい先輩に片想いしており、美少女の親友がいる。
 授業中に窓の外で目撃される謎のモールス信号を追って、風変わりなおばあさんと出会う。

『眠り姫の星』by今野緒雪(マリみての作者)
 ある種のSF。男だけになってしまった星から来た少年と、コールドスリープで100年眠っていた少女が出会う。

 これらは面白くて、ほかにおなじみの作品のある作家なので、読んだら覚えていそうなものなのに覚えがない。ではこの本、買ってはいなかったのか?と思ったのだ。しかし、

『宗像くんと万年筆事件』by中田永一 
 小学生女子が同級生の高価な万年筆を盗んだ濡れ衣を着せられて、貧乏のせいで臭いと嫌がられている宗像くんが名探偵のようにそれを助けてくれる話

ーーは、確実に読んだ記憶があるのだ。

 検索したところ、これはけっこう何度も収録されている短編である。しかし、ほかの本は私が手にしそうではまったくない。ではやはり、『いつか、君へ Girls』を私は5年前に買って読んだのだろう。それにしても、『てっぺん信号』『眠り姫の星』を忘れていたことは腑に落ちない。

 図書館で登録すれば「マイライブラリー」なんてものができるけど、単に、いま借りている本と予約中の本しか出てこない。貸し出し履歴くらい記録できればいいのに。

付記。このブログ内検索をしたら、12年夏の記事に
 「景品のハチスタンプをもらいたい気はないけど、三浦しをんと今野緒雪がいるので『いつか。君へ Girls』を購入。」と書かれていた。
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『ダッハウの仕立師』

2017-03-19 07:34:59 | 
メアリー・チェンバレン『ダッハウの仕立師』  早川書房
 1940年ロンドン。貧しい家庭の長女エイダは服飾店に勤めている。腕の良さ、センスの良さは認められており、いつか自分の店を持つ夢を持っている。エイダは偶然、オーストリア=ハンガリーの伯爵を名乗る男スタニスラフと知り合い交際する。彼はパリへの旅に誘い、戦争が始まりそうだと周囲は反対するが出かけてしまい、そして本当に戦争になって帰国が困難になる。スタニスラフに引きずられてベルギーに逃げるがそこで彼はいなくなり、エイダは女子修道会に助けを求めた。しかしベルギーもドイツに占領され、イギリス人のエイダも捕虜としてドイツに連れていかれた。しばらく老人介護の施設で働かされていたが、そこからダッハウ収容所付近に移され、所長の妻等のドレ スの仕立に使われる。


 ネタバレが嫌ならばここでやめましょう



 例えて言うならば『テス』。
 不幸の元凶の男を殺して死刑になるという点が共通。
 しかし、その男の外道ぶりはこちらのほうが上。裁判では、セクハラパワハラに加えて命の危険さえもある状況だったのにそれをわかってもらえず、ぬくぬくと利敵行為にはしっていたかのように決めつけられて、情状酌量もされずに嘘つきよばわりされてただの殺人犯扱いされてしまったということもエイダのほうが不幸。帰ってきたエイダが家に迎えられていたらこんなことにはならなかったろうに、母親も憎くてたまらない。
 

 戦争を背景にした、結末にあんまりだと叫びたくなった小説という点は『片手の郵便配達人』byグードルーン・パウゼヴァング を思い出す。主人公になんの罪もないということであちらはさらに理不尽だった。
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大奥  明日も未解決 劉備徳子 伯爵との一夜のあとで アデライトの花

2017-03-13 10:17:23 | マンガ
『大奥』14巻
 13代家定編続行中。でも主役の半分は老中阿部正弘、でもこちらは病で死去して退場、とことん主君に心を砕いて、上様のほうでも正弘の身を案じていて、乗馬するほど元気になったのを見せて晴れ晴れと笑ってみせて・・・なんともうつくしい交流で泣かせる。
 カステラもらえてよかった。
 天璋院(男)が家定(女)の過去(父家慶に慰み者にされていた)を打ち明けられて言った「その地獄を生き抜いて上様がこの場におられるという事は侍が戦場でひどい手傷を負いながら合戦に勝ったのと何も違わない」は名セリフ。
 家定が懐妊という事態に、でも、本命カップルは子に恵まれないというこの作品のお約束そして史実があるので、これは成就しない。いまの最新号を買ったが、ものすごいノロケっぷりで、遠くない死別がいまから辛い。
 家茂=福姫は気立ても良さそうで、対する和宮がどういうキャラなのか期待する。
 某掲示板で、井伊直弼が実物に似せてあるという声を見たが、堀田も似ている。


桑田乃梨子『明日も未解決』
 吉元の級友の原田が事故で死んだ。しかしその幽霊がなにか言いたいことが残っていて成仏できなくて出てきている、しかし姿は見えない。霊の見える嵐柴、その嵐柴の世話焼き幼馴染の野中、オカルトな状態だけど妙にのんきな状態がしばらく続き、そしてちょっと切ない終わり。
 1回12P×14回でコミックス1冊、それで充分読ませる連載、そういう戦力はだいじだぞ!と、某J誌にも言いたい。


『劉備徳子は静かに暮らしたい』1巻  仲野えみこ  花とゆめコミックス
 ララ連載。ネットで知った。
 三国志の武将たちがなんでそろって日本人(高校生)に転生してるんだという根本的なツッコミは言ったらおしまい。
 魏・呉・蜀それぞれのボスが女子生徒で男どもを従えているというあたりいかにも少女マンガで、曹操が偉そうにしているのがそれらしい。学園ラブコメの常道で、元キャラもそれぞれに活かしてある、と思う。
 もうちっと、ごつい奴を出していいと思うね。


『伯爵との一夜のあとで』 山下友美 ジェシカ・ギルモア
 かつて花ゆめで描いていた山下さんの数冊目のハーレクインコミックス。
 ウェディング写真家のジェシカは、式場として使われた城で泊まるはめになり、歴史研究をしているという管理人の青年セブと一夜を過ごす。妊娠を知ってセブを訪ねると、彼は伯爵だった。
 双方とも誠実で謙虚なところが好ましい。


TONO『アデライトの花』1巻
 ホラー誌ネムキ(眠れぬ夜の奇妙な話)の掲載だけあって、なにかこわい。
 名家ハント家の息子キューブには、周囲の人間のほとんどが動物の姿で見える。彼には同母姉コロナと異母兄弟ピートがいる。ピートとその母アデライトは塔で暮らしている。実はキューブの父クラックは政略結婚の許嫁アデライトが決まっていたが、パイロープと恋をして結婚してしまい、その後嫁いできたアデライトは国に戻らずに第二夫人のような立場になっていた。アデライトは「花の病」に冒され、それが伝染していく。
  キューブの目にうつる動物の姿で描かれるので、そのおかしさ故に人間たちの悪意がよけい不気味に見える。
 キューブ(外見は幼少期のエキューみたい)の姉コロナは、療養先で知り合ったキャンベルと婚約する。美少女のコロナと不釣り合いにブサイクで、母からも妹からも蔑まれているキャンベルにはなんだかクラウディウスを連想してしまう。
 クラックの昔の話:跡取り息子だけど覇気がないと言われて孤独を感じて、野良犬を密かに飼っていたが、それがどんどん増えて、小屋の穴から出て近所のニワトリを襲っていたので、母が犬たちを処分した。「誰だってこぶしをにぎり締めて 涙をこらえて やりたくない事をやっている 残酷な事を! 残酷な事ができない人間はクズだ!冷酷な判断ができない人間が地獄を作るんだよ!」--ものすごく重い言葉。 
 ハント家のメイドのマージは、かわいいからそれで充分だと本人も両親も教育をおろそかにしていた、それが致命的な不幸のもとになる。
 美しさに惹かれるのは当然だけど、美醜にとらわれすぎることの愚かさ罪深さも繰り返し描いてみせる。
 つくづくあなどれないTONOさん。スローペースな連載で続刊の出るのはかなり先なのが辛い。
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「悲運のプリンス」

2017-03-09 06:48:51 | 歴史
 先日暗殺された某有名人を、ある番組で「悲運のプリンス」と書いていた。” 〟でくくっていたことからして、番組側でも似合わないと思っていたのだろう。

 「悲運のプリンス」、この言葉が似合う人物といえば?

 日本史では、古代史で有馬皇子、大津皇子の名前がまず出てくる。「プリンス」を厳密に使わなくてもいいのならば敦盛など平家の面々。南北朝時代だと大塔宮護良親王。
 額田王の周辺は少女マンガでやたらとポピュラーなので、有馬や大津もたびたび描かれている。源平合戦もわりにある。護良親王は、いまのところ『鬼国幻想』by市川ジュン くらいなものだろうか。
 これよりあとの時代だと、天皇やお公家さんの影が薄くなってしまう。詳しい人なら誰か念頭に浮かぶかもしれないけど。

 西洋史では、
・ライヒシュタット公 ナポレオンと皇女マリー・ルイーズの間の息子
  コバルトの『帝冠の恋』by須賀しのぶ がある。
・エドワード4世の息子たち
  リチャード3世に殺されたことになっている王子たち
・ルイ16世とマリー・アントワネットの息子ルイ・シャルル
  『ベルばら』には悲惨な死までは描かれていない。『踊る!アントワネット様』byにしうら染 では、救出されていた。
・ニコライ2世の一人息子アレクセイ
・フェリペ2世の長男ドン・カルロス  ただしシラーの作品は史実とは程遠く、実際には相当に暗愚であったらしい。
・フェリペ2世の異母弟ドン・フアン・デ・アウストリア
  河惣益巳『サラディナーサ』のほかになにか登場しているかは知らん。
・オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフの弟マクシミリアン
  主人公になった例は知らない。
・同息子ルドルフ
 母シシィがたびたび描かれるので脇での登場は多い。マイヤリンク事件は何度も映画になっている。 『天上の愛地上の恋』by加藤知子もある。
・プリンスというほどの身分ではないけど、チェーザレに敗れたファエンツァのアストール・マンフレディも中々。
・ チェーザレつながりで、ルクレチアの2度目の夫アルフォンソ・ダラゴーナ。
・ プリンスどころかファラオにまでなっていたけど、カエサリオンだって充分にその資格はある。スポットを当てた例は『ナイルのほとりの物語』by長岡良子の一話くらいしか知らん。
・ネロの異母弟ブリタニクス
 ラシーヌの悲劇がある。

 単にかわいそうなだけではヒーローにはなれない。多少なりと戦った、少なくとも自ら行動したのでないと、と私は思う。上記の例のうち、ルイ・シャルルはかわいそうすぎる。、
 主役を持ち上げるために敵役を不必要に貶めないということも、物語に厚みを持たせるために大切な要素であろう。
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私家版 人形

2017-03-05 13:35:46 | 
『私家版』ジャン=ジャック・フィシュテル  創元推理文庫 2000
 借りた本の巻末広告で面白そうだと思って読んだ。
 イギリスの出版業者のエドワードは旧友のフランス人作家ニコラの作品を英訳して出している。影が薄くぱっとしないエドワードは、派手で傲慢で魅力的なニコラに、踏みつけにされながら屈折した感情がある。ニコラの新作を読んだ彼は、自分の過去の恋愛の不幸な結末がニコラのせいであったことを知って復讐を企てる。
 ひじょ~~に面白かった。結末も意外性があるし。
 連想したのは『太陽がいっぱい』。


デュ・モーリア『人形』
 創元推理文庫のわりに新刊。
 恋の始まりと盛り上がりと幻滅、ありそうな成り行きを語るいくつかの話はリアルに、少しおかしく感じられる。俗物牧師の話が二篇、こいつはいつかひどい目にあってほしいと思ってしまうけど、要領よく切り抜けてしまうのだろう、憎たらしいと感じさせるのは作品として上手いのだろう。


 このごろ図書館の「新着図書」に、去年出ていた「集英社文庫「ポケットマスターピース」がたくさん入っている。世界の文豪たちの名作選で、分厚い文庫である。
「集英社文庫 ポケットマスターピース」
 読んでみたくはある。
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「ロマンチックな都市」とは?

2017-03-01 06:14:09 | 地理
 先日、mixiで紹介されていた記事から引用。

「米経済誌「Forbes(フォーブス)」の2017年版「世界で最もロマンチックな20都市」が発表された」
 「同誌は、富裕層経営者を主な読者層として、世界37カ国に約800万人の読者がいる。選出された21都市の選定基準は、「旅行」「グルメ」「婚活・恋愛」の各分野に関する4つの世界的な媒体のうち2媒体以上が「ロマンチックな都市」として複数回にわたって紹介した都市。」
パリ(フランス)ブリュージュ(ベルギー)京都(日本)チャールストン(アメリカ)プラハ(チェコ)ジャイプール(インド)
フィレンツェ(イタリア)ブエノスアイレス(アルゼンチン)マラケシュ(モロッコ)リスボン(ポルトガル)
シドニー(オーストラリア)モントリオール(カナダ)エディンバラ(イギリス)メルボルン(オーストラリア)
ブダペスト(ハンガリー)ニューヨーク(アメ リカ)ドゥブロブニク(クロアチア)
サンセバスチャン(スペイン)ベネチア(イタリア)サンフランシスコ(アメリカ)ローマ(イタリア)


 私はどうも釈然としない。
 「ロマンチック」という言葉ははなはだあいまいであり、なにを想定するかはいくらか個人差があるのは当然である。
 私が好き勝手なことを言う。
 ・大きすぎないこと。巨大な都市では違和感がある、したがってドイツで言えばベルリンは違う。
 ・古風な趣があること。 高層ビルの群れや金融街は違う。フランクフルトなどは違う。
 そしてかな~り偏屈なことを言えば、あまり国際的でないほうが似つかわしい気がするーーこう思うのは、ドイツ文学史上のロマン派に愛国的要素があることが影響しているだろう。
 太陽がさんさんとふりそそいでいるよりは、霧に包まれているほうがいい。少なくとも、露出した人々がころがっているビーチに私はロマンチックという言葉を使う気にならない。
 明るく広々としている都市、近代的で巨大な国際都市、--はなんか違うと感じるのだ。
 するとローマなどもダメということになる、それに対しては、う~~ん?というところ、自分でもイエスかノーかわからない。
 上に挙がった都市を見て感じること、ラブロマンス映画の舞台にするには好ましいものが多そう。


 なんでドイツがぜんぜんないんだよっ!? ローテンブルクやハイデルベルクならば文句ないのに!

 なお、「ロマンチック」というガラではないと思うことは、魅力がないということとは違うので念のため。

 
 ↓は、私がいつか投下するための書きための「地理」に長いことほったらかしにされていたもの。読んで面白かったのでいつかタネにしようと思ってタイトルだけメモしていたのだろう。
『爆笑!クールジャパン  えっ?外国人は日本をそう思っていたの・・・!?』 サンドラ・ヘフェリン 片桐了
『はとバス乗ったら 知らない日本が見えてきた』 野広実由
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