レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

夏の文庫フェア、もう始まっている。

2016-06-26 13:45:51 | 
「新潮文庫夏の100冊」
「カドフェス」
「ナツイチ」

 夏の恒例行事(?)、新潮文庫と角川文庫と集英社文庫の100冊フェア、早くも並び始めた書店もある。ともかく冊子をもらってきた。
 景品について言えば:新潮のはぜんぜん欲しくない、集英社のは、しおりと思ってもらってもいい、角川は「かまわぬ」のデザイン(朝顔)が涼しげで欲しい。
 限定カバーについては:新潮は単色カラーでおとなしい路線。『こころ』が白で『人間失格』はグレー。ある年に『人間失格』がピンクでひんしゅくをかっていたと記憶している。
 角川は、『文豪ストレイドッグス』の絵を一部で使っている。私が手を出したくはならないが。メディアミックスを利用することじたいには反対しない。マンガ・アニメの絵を使うことも嫌いではない。
 集英社の限定カバーは、集英社文庫シンボルキャラのハチを起用したものと、今年のキャンペーンガールを使ったものがある。前者はまあいいとして、・・・そもそも私は、絵でなくヒトの実写を(映像化作品の出演者とでもいうならまだしも)表紙にすることに反対である。今回の『こころ』『人間失格』も、こんな表紙では買いたくない。起用タレントに悪意があるのではないが。
 それにしても、『こころ』『人間失格』は、3つの文庫で定番になってるだけあって、ずいぶん様々なカバーで出ている。集英社文庫では小畑健(読んだことはない)の絵で出ていたことがあるが、あの絵は悪くなかったと思う。

 では、私が買いたい本があるかという話。
 新潮:ざっと見た限りでは、ない。『燃えよ剣』は今年もはいっている。『あすなろ物語』がないのはけしからん。ジャンル分け(?)として「ヤバイ本」という言葉はもっとけしからん。
 角川:ない。人にプレゼントするならば『怖い絵』。
 集英社:読んだことのない本をなにか買うとすれば、『短編復活』『短編工場』。人に贈るならば『夫婦で行くイスラムの国々』by清水義範、そして・・・『漫画版 世界の歴史 6 フランス革命と産業革命』。2002年に出た20巻本の集英社の『学習漫画 世界の歴史』は数年後に文庫10巻になった。ある年の「100冊」で1巻が入っていたことがあるので、私はどうせならば最初の1巻よりもラストの10巻のほうが絵の点でもいいのに、と思った、それはこのブログでも書いたことがある。もちろん私自身は6巻を推す!とも。
 ふっふっふ、今年はその6巻が入っているぞ。モト本は11巻「市民革命とナポレオン」by笈川かおる、13巻「産業革命と自由主義」byあずみ椋。 絵がきれいだし、盛り上がりもある。  でもどうしてこの管が選ばれたのだろう。モト本は、懸賞つきの1&2巻とフランス革命の巻(つまり11巻だな)が売れたときいているけど。まあいい、あずみさんのパートが読まれる機会が増えたことを喜ぼう。
 それにしても、この冊子においても、監修者しか名前が出ていないことが腹立たしい。私の見た限りでは、どうも集英社の学習マンガはマンガ家の名の扱いが悪い。ちなみに「日本の歴史」も6巻がはいっている、「織豊政権と江戸幕府の成立」、これも日本史でメジャーなところである。
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来月確実に買うのはTONO新刊

2016-06-20 08:17:03 | マンガ
 7月のコミックス新刊をチェックする。

 幻冬舎から 『ちびさんデイト 上』680円 というものが出るのは「普及版」だろうか。『ヘタリア』が、A5サイズの6巻で出ていたものを、B6サイズで元の2冊を1冊にしたもので再度出していたのと同じことなのだろう。

 TONO『砂の下の夢~空の下の緑~』の2巻が出るのは確実に新刊。プリンセスGOLDの不定期掲載の『砂の下の夢』、「プリンセスコミックスデラックス」(B6サイズ)で2巻まで出ていて、収録漏れが2作ある状態で数年経ち、久々に再開して、コミックスが通常の「プリンセスコミックス」(新書サイズ)から『砂の下の夢~空の下の緑~』として「1巻」が出たのだった。「新シリーズ開始」なんて書いてあったけど、単に再開しただけなのだ、内容上の区切りがあったわけでもない。ふつーに『砂の下の夢』の3巻として出せばいいだけだったろう、まぎらわしい。

 逆に、『ベルばら』は「エピソード集」を「11巻」「12巻」として出していることのほうがおかしいけどな。やたら高い本にしなかったことは結構だけど、いろいろとギャップもブランクもありすぎる。

 新子友子『ロンリーウルフ』は、同じ角川で同じ題でB6サイズとA5サイズで出ている。内容は違う。こういうのも困る。


 私は別に『星矢』ファンではないけど、新刊の棚でいくつも目についた。原作者自身の絵のもの、ほかのマンガ家のもの複数。『エロイカより愛をこめて』も、いっそ別の人が担当するのであれば、二次創作の一種として私も気軽に受け止められるのに。・・・ということはこの際おいといて。 星矢を現在扱っているメンバーの一人である久織ちまきさんは、某日本史伝記マンガシリーズで信玄を担当していて、謙信がやたらとキレイだと一部で(?)評判だった。星矢各種の中でも、私はこの人の絵が好みである。表紙だけで言うのもナンだけど。どっちみち星矢を読む予定はないけど。

 それにしても、同じ時期に続いて出てきたプロテクターアニメ、『トルーパー』(まったく見ていない)、『シュラト』(好き)と違って、『星矢』だけはいまでもこうしてなんらかの動きがあるのはやはりすごいことなのだろう。嫌がっている古参(「こさん」が変換できなかった!)ファンはきっといるだろうけど。
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梅雨。

2016-06-13 08:49:04 | 雑記
 梅雨時である。
 洗濯物を干すことには不便な季節である。天気予報をマメに見て、洗い物を多く出していい日とダメな日を計画する、しかしそれも近づいてきてまた狂うことはある。今日はごく少なく、風呂場でゆうゆうと干せた。

 庭(1階の特権)には、うちで植えたわけでもなく紫陽花が咲いている。晴れた日の紫陽花は「すさまじきもの」である。
 もしも紫陽花に感情があるならば、「アタシが映えるために雨降って!」と、晴れ間に喜んで洗濯物を干しているような日には血管マークで怒っているかもしれない。
 先日、TONO『ウサギコットン100%』を読んで以来そんな妄想が浮かんでくる。


 『燃えよ剣』原作でお雪とのラブシーンに紫陽花が効果的に使われていた。栗塚版では使っていない(あれはあれでたいへん文学的演出をしていたけど)。コミカライズでもする機会があれば、きれいな絵で見たいものである。


 今日は雨、出かける日でもなく、「雨の日にはプレリュード」をBGMにこれを書いている。
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ローカル女子  ウサギコットン

2016-06-06 14:44:22 | マンガ
『ローカル女子の遠吠え』1巻 瀬戸口みづき

 芳文社「まんがタイムスペシャル」連載中。
 勤勉さが長所であるカタブツの有野りん子は東京でデザインの仕事をしていたが、4年目で挫折を感じて故郷の静岡にUターンする。新たな職場には、舌禍(?)で左遷された東京男の雲春さん、彼を狙う恋愛脳肉食ぶりっこ桐島さん等のメンバーがいる。
 発売されて数日外出せず、3日後には地元書店で売り切れていた。増刷かかるだろうと思ったら案の定で、少し遅れて買えた。
 あとから登場する、元モデルの卵だった長身美人の水馬さんも、変人でいい感じ。
 静岡では家康が「ウチの大御所様」なのは本当だろうか。重要人物のわりに一般人気の乏しい人だと認識しているけど、人気の地があるのはそれはそれで結構なことだと思う。
(私は生まれは熊本県玉名市だけど、郷土意識が強くはない。熊本城は行ったことないし。)


『ウサギコットン100%』1巻  TONO 白泉社 A5サイズ
 短編と表題作連載。
 よくこんなヘンテコな発想を・・・と感嘆するような話を淡白でかわいい絵でさらっと描いてしまうのがTONOさん。
 ウサギのぬいぐるみ・・・のわりにはいまひとつ可愛さが不足のウサギ、しかし本人はかわいいつもりで、持ち主にもかわいさを要求しまくり、自分をうっかりふんづけた「ノブコ34歳」に対して「こんな酒飲んでサラミなんか食ってるアジアの中年女!」「金髪縦ロールの美少女はどこにいるのよ!!」などど暴言を吐きまくり、「少しでもアタシにふさわしくなってもらうから」と、かわいいカッコを強制し、かわいくない食べ物を禁じてきて~というしだい。阿闍梨に退治されて寺に連れていかれると、そこにいた呪いの人形たち、これがまた性格にナンありな連中。オトメチックなかわいさを強制するかわいくないウサギの暴論は、一部の少女マンガ性に対するオチャラカシを感じる。
 ところで、『カレンのファスナー』が「同時発売」となっているけど、これ、まえにも出ていたよね?新装版?なにか編集の違いでもあるのか?


 小学館の「フラワーズ」が、創刊15年ということであれこれ企画していて、5月28日に出た7月号には『ポーの一族』の新作(の前編)が載った。その前号は急逝した吉野朔実の遺作の読み切りが載ったことですぐに売り切れて増刷が出た。だからたぶん7月号もそうなるだろうと思っていたら、やはりそうなった。11日に出るらしい。私は、買えたら買おうと思っていて、29日の夜に地元で1冊残っているのを買った。『ポー』に関して、大昔いちど読んだきりであり、特別なファンというわけではないのだけど。そもそも時空を超えてあちこちに出没できるキャラたちであるから、新しいエピが作られてもおかしい世界ではあるまい。大戦中の英国、ドイツから逃げてきたユダヤ系姉弟がゲストキャラ。
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古城ゲーム サンドハムン島シリーズ

2016-06-01 06:00:27 | 
ウルズラ・ポツナンスキ『古城ゲーム』  

 創元推理文庫の4月新刊。
 医学生のバスティアンは、ガールフレンドに誘われて、高圧的な父の命令に逆らってでも、14世紀の生活を疑似体験するゲームに参加する。「魔女」役の女が不吉だと訴える中で、メンバーが次々と行方不明になっていく。
 解説によると、ウィーン出身のこの作家は、「現代オーストリアエンターテインメント文学の三巨頭」だそうだ。ポツナンスキなんてドイツっぽくない姓は歴史ある他民族都市ウィーンらしいと言える。あ、そういえば、父による圧力という要素は、フロイト縁にこじつけられるかもしれない。「バスティアン」という名前は『はてしない物語』から取られたという設定だし、あれも、異世界での体験で成長する話なので重ねられているのだろう。
 ところで上記の「三巨頭」は、ほかにマルクス・エルスベルグ、アンドレアス・グルーバーだそうだ。前者は『ブラックアウト』を読んだけどさほど面白かった印象はない。もう1作邦訳があるけど市内の図書館にないので保留。後者は面白いと思う。


ヴィヴェカ・ステン『静かな水のなかで』
 ハヤカワミステリ文庫。スウェーデンのサンドハムン島を舞台にしたシリーズの第1作。
 夏は観光客でにぎわう島で不審な死が相次ぐ。
 刑事のトーマス・アンドレアソンは40まえのやもめ、赤ん坊の死が動機で離婚に至り、心が溶けていない。
 トーマスの幼馴染のノラ・リンデは弁護士、二児の母。銀行に勤務しているが無能な上司に不満で、ヘッドハンティングにあって大いに気をひかれる。しかしそのためには引っ越しが必要であり、夫は聞く耳を持たない。
 スウェーデン(というか北欧全般)は日本よりも格段に「女性の社会進出」が進んでいるとされるけど(実際、成人女性で専業主婦ってほとんど登場しない)、それでもやはり壁はあるものだと感じさせる。医者で名家の出である夫の両親は高慢でうっとうしい存在。
 ノラという名前は『人形の家』を意識している。夫はヘルメルならぬヘンリクだけど。
 第2作の『夏の陽射しのなかで』、第3作『煌く氷のなかで』と、順々に紹介されている。
 前作ネタバレを無造作に出してくるので、順番に従って読むのがやはり推薦されている。
 トーマスの別れた妻は3作目に登場するけど、もし復縁するならばそれもたいへんそう。
 3作目では、100年以上昔のある一家の状況が本筋と並行して語られている。強圧的な父のもとで育ったゴッドフリッドは美しい少女ヴェンデラと恋に落ちて結婚、子供が生まれて幸せの絶頂ーーと思われたが、出産後妻は無気力になり家事も育児も放置する。しばらく一人で耐えていたゴッドフリッドがついに妻に手をあげてしまい、それを機会に妻は動くようにはなったが、理由もなくめそめそすることは変わらず、待望の息子も母に似て弱々しく、ゴッドフリッドを苛立たせる。
 息子トールヴァルドに対する接し方はあんまりだろうと思うけど、無能極まりない妻が、私の知っている某を思い出させるということもあって、ゴッドフリッドに対してもいささか同情はする。彼が被害者から加害者になってしまったのに対して、トールヴァルドはひたすら被害者で一生終わった(妻子に暴力ふるわなかったならばそのほうがいいのだけど)ようでたいへん不憫である。そしてその不幸はあとの世代の惨事になった次第。
 男主人公と女主人公がカップルではない点はちょっと珍しい。
 夫の浮気もあってノラは決定的に離婚を決意するが、その際、子供は両親の間を往復するのが北欧では一般的だという。これまで自分だけが背負っていた子供の世話を夫もしてみるはめになることや、高慢ちきな夫の母が、夫の浮気相手がナースであることに不満だろうと思ってザマミロとほくそえむのはおおいに共感できる。
 う~む、でも金にもの言わせて自分の手は煩わせないですませるかもしれん、姑はヘンリクをナースと別れさせてどこぞのご令嬢を押し付けてくるかもしれんなどの不安はある。・・・少しは読者の溜飲が下がる方向に展開してもらいたいものである。

 同じくスウェーデンの女性作家によるシリーズで、マークルンド『爆殺魔』と『ノーベルの遺志』。前者はシリーズの第1作目で、邦訳がだいぶ間が空いて後者は6作目だそうだ。主人公アニカは新聞記者、一男一女あり。夫は法務省のお役人。こちらのシリーズも、働く女の息苦しさというものが濃厚に漂っている。前者では、夫の母の煩わしさが印象に残っていたけど、後者を読むと・・・夫トーマス(上記のサンドハムンシリーズの男主人公と同じ)もこんなにイヤな奴だったっけ? 訳者解説によると、これのまえの第5作目ではトーマスが浮気して、それをアニカが知って、夫には気づかせずにわりに過激な手段で相手を追い払ったらしい。浮気に気づいていたことを隠していたこ とに対してトーマスが怒っているんだが、・・・そういうのを「逆ギレ」というのではないか? こいつに比べればサンドハムンのノラの夫はまだマシに見えてくる。 夫トーマスが浮気相手のところに出ていって、アニカの購入した家は放火されて(アニカは近所の仕切り屋だと思っている)・・・あまりに踏んだり蹴ったりの終わり方。このあとまだまだ苦難続きであるらしい。
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