レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ヤマザキマリ2冊、くわたん、大奥8

2012-09-30 05:28:25 | マンガ
『テルマエ・ロマエ』5巻

 今回の見所は、さつき祖父の渋さと、馬のハナコの健気さ。雑誌「Hanako」に作者のインタビューが去年載ったことがあるけどそれはただの偶然なのだろうか。
 4巻の初めに「137年」と書かれていて、ルシウスが戻る先は138年、ではいよいよハドりんもご臨終が近い。予定通り、クライマックスに向けてふんばってくださいヤマザキさん! 
 別れたリウィアの再登場があるのかそれは気になる。

『ジャコモ・フォスカリ』1巻  集英社
 『テルマエ・ロマエ』5と同時の発売。なんて地味な表紙・・・。
 ジャコモはヴェネチアの名家の坊ちゃんで、のちに60年代の東京で大学教授として教鞭をとる。少年時代、屋敷の使用人の息子である強くて美しいアンドレアに憧れており、彼はファシストとの戦いに身を投じて帰還しなかった。東京でジャコモは、行きつけの名曲喫茶で、アンドレアを思い出させる美貌のウェイターに出会う。
 こうして書いてみると『ヴェニスに死す』を思い出すなぁ。いや、ジャコモは死なないけど。
 思いがけずリウィアの名前が登場。ローマでも自然を崇めるブームがあったという文脈で「初代皇帝アウグストゥスの妻リウィアの家は「花鳥風月」のフレスコ画で飾られている」。
 (メジロは義伯父が飼っていたのでちょっと懐かしい)

桑田乃梨子『放課後よりみち委員会』2
 学校の中で異世界に紛れ込んでしまう高校生たちが、先生の失踪した友人をその世界で探すなどどいう役目を与えられてしまった。ーーと書くとあやしげにも見えるけど、のんき極まりないマンガ。ほかのメンバーはトラやクマやペンギンになるのに、自分は女の子化するという事態をあっさりと受け入れている光里(ひかり)は大物なのかもしれない。
 おとなしい女の子なのに、夢の中でその世界へ行って不審な黒服青年になってしまう陽菜が、光里そっくりな(本人である)女の子とツーショットを楽しむの図はかわいく微笑ましい。

よしながふみ『大奥』8
 吉宗編の続きでそのあとの9代家重へ。
 家重といえば、名君のダメな後継ぎとして知られている。ここでは、ひどく不細工で言葉が不自由なので愚昧に見えるけど本当に頭が悪いのではなく、周囲にばかにされて傷ついている。(4代目皇帝のクラウディウスをちょっと思い出すな) その家重に誠実に仕えるようになる、美貌で利発な小姓お龍がのちの田沼意次、おおっ、ついに出た~~!
 板前の善次郎→芳三が、料亭で、男だからと差別されるあたりは、複雑な面白さ愉快さがある。いかついこの男と、優男の側室が心を通わせていくくだりは和む。
 ・・・・・・ウナギ食べたいよ~~! 
 ウナギの話題が出てきて、そしてアレも登場したとなると、ではもちろん出るか、「土用丑の日」!
 では『たあへる・あなとみあ」も? 良沢や玄白はどんなキャラ?
 源内は殺人で獄死するのが史実で、衆道絡みだという説もある。(彼のベストセラー小説はBLスラップスティックだし) よしなが源内も同性愛の気ありそうだし、では殺人の事情はどうなる?
 (源内は『パタリロ!』のもなかなか面白かった)
 
 ところで、映画の『大奥』の吉宗編(まだイントロの部分)、たいして好評だったという印象でもないのだけど、家光編や綱吉編が映画とテレビで作られるのだな。『聖おにいさん』もついに劇場アニメ化だというし。
 私が5大メジャーマンガと勝手にひとくくりにしている作品(世間で知られていて私も支持している近年のマンガ、『ヘタリア』『聖おにいさん』『大奥』『チェーザレ』『テルマエ・ロマエ』)のうち、メディアミックスされてないのは『チェーザレ』だけになったか。あの題材ならばほかにたびたび使われてきているからなぁ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

都市伝説、メッテルニヒ、子と愛

2012-09-25 14:52:20 | 歴史
 先週、新聞の週刊誌の広告で、『女性自身』の記事の「都市伝説」特集の中に「謙信は女? 沖田総司はブサイク?」なんて書いてあり、そのあと美容院へ行ったので手にした。
 そもそもこういうはるかに過去のことも「都市伝説」にはいるものだろうか。歴史ジャンルについては「歴史研究家」なる人が回答を担当していた。謙信の女性節は八切止夫氏に始まるものだけどありえないとして否定。沖田に関しては、「肖像画」というのは姉ミツの孫であるし、彼の容貌は不明だと言っていた。(「ヒラメ」説ってそもそも、誰が言ってどの本に載ってたものだった?)  いずれにせよ、「美剣士」(う~~)は後世のイメージに過ぎないことは断言されている。それにしても、こんなのがいまさらまだ出てくるのか・・・。 「土方歳三のほうが写真も残っていて明らかにイケメンなんですが、はっきりしすぎだと妄想もわきにくいのでしょうか」というコメントもある(この人、土方人気の現実を知らんのか?)。ーーそれで言うならばクレオパトラよりもアウグストゥスのほうが不利だというのか? 
 沖田をブサイクで見たいとは思わないけどね。『ひなたの狼』くらいがちょうどいい。

 先月、『メッテルニヒ』by塚本哲也 を読んだ。ハプスブルク三部作。(ほかは、孫のほうのエリーザベト、マリー・ルイーゼ)
当然『マリー・ルイーゼ』と重なる部分もあり、ドイツ文学史に親しんでいれば聞き覚えもある事柄(検閲、ハンバッハの祭典、ビーダーマイヤーなど)がぞろぞろと出てきて興味深い。出身地であるライン河畔のコブレンツには行ったことがあるけど、もしも次の機会があれば「メッテルニヒハウス」にも注目したい。

 「歴史」に入れるのもヘンな気がするけど話題二つではものたりないのでここへ。
 このまえ、読売の日曜版に里中満智子さんが出ていて、『天上の虹』について語っていた。悪女扱いされがちな持統について、夫に愛されていなかったと主張するある学者の理由が、子が一人しかいないからだと・・・。(もちろん里中さんはそれを退けていらっしゃる)  よくもまあそんな愚劣なころを本気で言えるものだと私も思う。そんなのは単に体質だろう。子沢山が男らしさの印だというバカもいるらしいしな・・・。上杉謙信よりも徳川家斉のほうが男らしいと? 
 武田信玄の周囲で言えば、最愛とされる諏訪御前も息子一人なんだが。これとは矛盾するな。感傷的なことを言えば、あんまり子沢山であると物語としてロマンチックでなくなるとも思う。 『源氏』で紫の上も子無しだし。
 とにかく! 子供の有無、多い少ないと愛は関係なし!!
 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ごたごたカセット

2012-09-22 14:10:20 | 雑記
 ビデオカセットというものはDVDに完全におされてしまっているし、ブルーレイとかいうものまで出てきていてますますわからん状態になっている。 授業で映像を使う際、ごくごく一部の場面にだけ用があるならば、ビデオカセットのほうが、あらかじめそこに合わせておけばいいのでずっと便利なのだ。音声でもそういうことは言えるので、カセットを使う道もまだまだ残しておいてもらいたいものがと切に思う。

 本棚や押入れの整理をする時、カセットも問題になる。聞き潰して捨ててかまわないぶんもある、しかしそう長い時間使う機会が毎日あるものでもない。
 とっておきたいものもある。
 すでに20年以上まえの、私の好きな歌のとあるセレクトときたら、A面に『南京路に花吹雪』から4曲、『うる星やつら』から3曲、B面には『荒鷲の歌』『麦と兵隊』『空の神兵』『父よあなたは強かった』『暁に祈る』『戦友の遺骨を抱いて』、『ペリカンロード』から『Endless my love』、『シャンペン・シャワー』から『ファイター』(マルロのテーマのかっこいいバージョン)、『荒野の天使ども』から『First Love』という内容。 笑ってしまう硬軟極端な収め方。
 『麦と兵隊』は三浦洸一が最高である。きりっとした美声で、悲壮感も叙情性もたっぷり。
 これらはレコードから録音したのだけど、いまはレコードプレーヤーさえもめったにないのだろうな。私もすでに持ってないし。
 先日、CDラジカセを新しく買ったけど、「カセ」の部分のある品もいずれなくなるのだろうか。それはいやだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『エロイカ』メモリアル本

2012-09-16 14:32:33 | マンガ
『エロイカより愛をこめて』の35周年の「メモリアルブック」というものが出たときいた。カラーページの収録というものが気になり、本屋でビニールのかかっているのものを多少曲げて中をのぞき、扉絵だけでなく「本文」もであることを確認してから買った。まぁ、A5版の中に縮小してあるけど。ある時期のものならばもう少し大きいサイズで見たかった。
 私がハマったのは82年、単行本で6巻まで一気に読み、まもなく7巻、8巻が出た(8巻から『9月の7日間』)。本誌では『魔弾の射手』のころ。本誌を買ってリアルタイムで読むようになったのは『パラダイスPARTY』からだった。(あのころ既に凋落が近づいていたのだとあとでふりかえってわかる・・・)
 
 82年あたりからしばらくは、本誌で知っている部分になる。全員プレゼントや付録、当時出たキャラグッズの絵、ああ見た見た懐かしい。財布だの「バッグ・イン・バッグ」だの持ってたのはどうしたのだろう。カセットボックスはいまでも押入れにある。(『Z』に比べると、連載時期が長いぶん私が確かに知っている比率が低くはあるが。) 
 80年代初期の絵がやはりいちばんきれいかなぁ。「サイン色紙・直筆年賀状」の最初のページを見ていて強くそう感じる。
 私は『アラスカ最前線』がベストだと思っている。『イン・シャー・アッラー』から『9月の7日間』が黄金期。
 ほかのマンガ家たちの「トリビュート」、一部はすでにプリンセスGOLDの付録に載ったものの再録。 木原さんのはわりに似ている。
 新しい絵で意外だったのは滝口琳琳さん。けっこうクセのある絵の人だけど(でも私にはなぜか抵抗なく読める)、なかなか似ていてキレイ。正直、いまの原作絵よりもこのほうが私は好きだ。
 私が『エロイカ』サークルにいろいろはいって二次(当時は「パロディ」とひっくるめて呼んでいた)を読みまくっていたころ、「顔くらべ」なんてものを作ってみた。FCで描かれている少佐、伯爵の絵をあれこれ並べてみて面白がっていた。原作の絵よりも好きなものはたくさんあった。のちに『間の楔』でもこういうことやったものだ。『炎の蜃気楼』では実行しなかった・・・と思う、記憶にない。
 続いてほしいとは思わないけど、こういう骨太大スケールの世界が少女マンガの枠の中に存続していてもらいたいとは心から思うのだ。
 そういえば、英訳が中断していると前にきいたけどそのままなのだろうか。独訳は出ないのだろうか。まとまりの良さからすると、『Z』をドイツで出して欲しい。

 『ベルばら』も40年記念で出ている本がある。作者の描き下ろしの絵が劣化しているという評判を目にするのでやめておこう。理代子さんの絵は、広く言えば『ベルばら』後半から『オル窓』前半がベスト。『オル窓』第2部の連載第1回目だけ「月刊セブンティーン」を買った、あのときの絵の美しさは思い出してもため息ものである。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月なのにまだ蚊

2012-09-12 16:11:51 | 雑記
 残暑とはいつまでを指すのかと毎年思う。暑さが続いているから当然のように、まだまだ蚊はいる、蚊取り線香は欠かせない。

 「歴史ロマンDx」で、黒田かすみさんが「血の伯爵夫人」バートリをコミックエッセイで取り上げた際に書いていた、特別に血が苦手だというわけではないが、蚊を叩き潰した時に血が出てくるのは気持ち悪くてダメだと。  
 私は逆である。うまく手でバチンとしとめて赤いものが出てきたら、「やった!」の気持ちがいっそう強くなる。既にこいつは吸血行為を犯して誰かを不快にさせている、そしてその血を栄養として新たに害を為す生物を産もうとしていた、それを阻止することができた!ということで嬉しさがわいてくるというものだ。こいつらに献血する義理はない、ジュースどころか痒みをよこすのだし。
 まだまだ続くこの戦い。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しをん新旧エッセイ

2012-09-07 05:21:24 | 
 『舟を編む』がヒット中の三浦しをんの新刊エッセイが『お友だちからお願いします』大和書房。
 フセンをつけた部分
・お父さんの短く刈った頭を撫でたら柴犬みたいな感触で気持ちよかったというくだり
・料理好きな知人男性の得意メニュー「黄金山」、かんたんでおいしそう、けっこう気乗りする。
・三好達治の「太郎を眠らせ~」の詩は太郎&次郎を人間でなく、犬や猫や金魚や盆栽でも成り立つという指摘。ーー太郎と次郎の犬小屋の上に雪、想像するとたいへんかわいいぞ。ここはやはり日本犬でないとな!
・実家の庭に出没する野良猫、ブサイクな茶色い猫なので「ブチャイク」と呼んでいる件。語感にかわいさがある。

 新潮文庫から出た『悶絶スパイラル』は、単行本は2008年に出ていた。
・ どこかの寺で見た、明治天皇と昭和天皇の区別のついていない女の子たち。 
ーー私が見てもそれは嘆かわしいと思うであろう。
 『映像の世紀』を見て改めて「ソ連」の悪辣さに怒りを感じたりする時、冷戦時代を知らない学生たちとの世代差を私は勝手に感じるし。
・アマゾンの「おすすめ商品」が微妙に的をはずしているという指摘。
 これはきっと、アレやアレを評価しているからなんだろうなとは思うが、しかし私はこんなもん興味ないわい!と思うことは私もたびたびある。
 この文庫でのしをんさんのエッセイは、カバーイラストが松苗あけみ氏である。今回は巻末にマンガまである。そこに描かれているしをんさんは、美化ははいっているけど似ていて上手い。

 付記。
 たぶん2010年、「活字倶楽部」で三浦しをん特集があって、その時点でまだ文庫化されていない本をメモした紙がファイルにはさんである。10年に出た『天国旅行』『木暮荘物語』は当然まだ。07年の『仏果を得ず』『きみはポラリス』『あやつられ文楽鑑賞』は既に全部出ている。09年に出た4冊のうち、『神去なあなあ日常』は今月、『まほろ駅前番外地』は来月文庫化。08年の2冊のうち『悶絶スパイラル』は先月出た、残るは『光』。これ、津波によって島一つが全滅、たまたま山の上にいた数人だけが生き残ったーーという状況設定なのだ。時節柄避けられるかも・・・。おまけにものすごく暗い展開だし。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

育毛剤シンビジウム

2012-09-03 05:43:27 |   ことばや名前
 「シンビジウム」は蘭の名前としてわりに有名なほうであろう。蘭の種類は多いようだ。「オンシジウム」なんて私の頭には「オシフィエンチム」(アウシュヴィッツのポーランド名)が連想されるし、「デンドロビウム」ときては怪獣のようで全く美的でない。
 薬用育毛剤に「シンビジウム」がある。実際その成分が含まれているらしい。
 その字が「神秘自由夢」。・・・・・・昨今の悪趣味なキラキラネームや暴走族的当て字のようである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

図書館の棚で

2012-09-01 06:44:04 | 
 図書館に「寄贈」した本が蔵書に入れられたことは何度もある。しかし、「ご自由にお持ち下さい」棚にのつもりで出した本が本棚にあるのは奇妙な気分だ。

 図書館の文庫の棚の「クリスティ」が、今日見たら妙に増えていた。そしてそれらに心当たりがある。私がBOで買って読んで、リサイクル棚にと言ってカウンターで提出したものと重なっている。だいたい、いま売られているハヤカワ文庫のクリスティ作品は「クリスティ文庫」としてまとめられ、ほとんどのものは写真を使ったカバーデザインになっている。旧版は真鍋博氏の絵であり、こちらのファンも少なくないようだ。  いまから図書館の蔵書に入るのが旧版ならば、購入ではなくて「寄贈」だと推測してもよかろう。   私の持っていった古本が並べられていたとしてもいっこうに問題ないのだ。『アレクシア女史』も同じ経過をたどったようだし。  ただ、あれはBOで買ったといっても新品同様の状態だったので、棚に並んでも違和感はなかったが、今回のは決して新しそうに見えない本なので、なにか奇妙な感じがするのだ。

 ついでに言えば: アガサ・クリスティにはミステリー以外の小説が6冊あり、これらもはなはだ面白い。この6冊は、かつてはハヤカワ文庫の中で「MT(ミステリ)」ではなく「NV(ノベルズ)」に分類してあり、渡邉なんとかいう人の装丁が風情のあるしゃれたものだった。しかしHP「早川書房 クリスティー文庫」では、真鍋氏の旧装丁は現在のと共に載せているのに、渡邉氏のはないのだ、納得いかん。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする