Andrew Johnston の『Caesar und Calpurnia』は、ドイツの権威ある出版社 Fischer Verlagから出ています。英語の著者名ですが、スコットランド人の父とドイツ人の母を持ち、ベルリンで学んだドイツ語作家です。英訳が出ているかどうか不明です。かつてあるサイトに載っていた私の紹介を、編集を加えてここに再掲載します。
まずは、小説の全体像から。もちろんこれらは正確とは言いかねる訳です、わからなけれぱとぱしたりごまかしたりしていますのでお含みおきください。
序 オウィディウスの前書き
流刑地で、かつてアウグストゥスに、カルプルニアのことを書いてほしいと言われていたことを思い出してそれを実行するという前書き。
第1章
①”カルプルニアはいつも早く起きた、起こされることはなかった。これは実家で覚えたことで、いまなおそうしていた。これを夫は気にいっていた。彼がそう言ったことはなかったが。そしてそう言ったとしても彼女にとってさほど重要でもなかった。彼は妻にあらゆる自由を認めており、けして非難しなかった、しかしほめることもめったになかった。じきに15年になる結婚生活の中でカルプルニアは、それを無関心とは見做さないことを学んでいた、いずれにせよ夫婦間の普通の無関心ではなかった;明らかに、彼はどうでもよさそうな個々のことにまでよく気がついており、それらを、カルプルニアがかつて「大きなモザイク」と呼んだものの中へと組み入れていた、かつて、彼女がまだ夫のことを常に考えていた結婚当初。彼の思考は大きなモザイクだった。様々な石が、ほかのたくさんの石と共に一つの巨大な関連の中に並んでいる。しかし、個々の石しか見えていない限りその関連はわからない。カルプルニアは、結婚して以来、自分が、稲妻のはしるときだけ光のさす豪華な暗い広間にいるような気持ちになっていた。稲妻がさせば一瞬モザイクの床の一片が見える、しかし無数の石が何を描いているのかまではわからないのだ。すべての人々が彼女の夫がなにを考えなにを計画しているのか、冗談を言っているのか本気なのか、決してわからないと驚くとき、カルプルニアはただ同意するしかできなかった。”
このようなイントロのあと、クレオパトラがローマに来るという知らせがカルプルニアのもとへ。フルヴィア、ヒルティウス、カエサルの順番でやってくる。「今日にも着くでしょう」とヒルが言ってるところへ「彼はもう来ている」と本人の声。三人称で言ってるのは『ガリア戦記』をふまえているのですな。
②パトラ、悪天候のため予定よりも苦労して上陸。カエサルの訪問。離婚を迫るパトラに「私はかつてスッラに刃をつきつけられて離婚を迫られた時に拒否した。いま違うことをすると思うかね?」ときっぱり却下。
第2章
①カエサルとカルプルニアの会話、(後述)
②ムンダ
③キケロとブルートゥスの会話
第3章パトラの館での宴童要な場面で長めの章、後述
第4章
①パトラとおかかえ哲学者フィロストラトスの会話。カエサリオンの認知だけでは不満なパトラ。彼女に対する何者かの襲撃事件。パトラも陰謀を考える、カエサルと元老院との間を決定的に裂いて、自分のほうへと結びつけようという。
②ブルと母セルウィーリアの会話。自分の父がカエサルなのか問い詰めるブルに、否定する母。
③カル、幼少時の夢。カエサルの発作を目撃。
第5章
①カエサルとヒルティウスの会話。パトラに対する襲撃の一件、しかし彼女はそれをカエサルにも報せていない。
②フルヴィアはドラベラとの密会現場に赴くが、そこにはフィロストラトスがいる。襲撃の犯人かと疑っていたけど疑いは晴れたと言う。
③キケロをカエサルが突然訪問。入浴しながら会話。キケロの娘トゥッリアのお悔やみに来たと言う。キケロ「何年もの間、娘は一番の友だった」「よくわかる。ユリアも成長が早かった。ポンペイウスに嫁がせたときはまだほとんど子供たったが、なにをなすべきかよくわかっていた。ポンペイウスはユリアとあって幸せだったーーユリアもまた。ユリアは私の知る最も優しく賢い人間だった」「トゥッリアは結婚で幸せではなかった。結婚について私はいい手本ではなかったが」なんて話をしていて、そしてキケロが若い妻と離婚しようとしている話になる。「あなたのほうが若い女たちとはうまくやっているようだ」「私の妻は確かに私よりだいぶ若いが、しかしもう全く若いとは・・・」「私が言っているのはもちろん女王のことだ・・・」
このあとキケロの話はカエサルへの嫌味になっていく、いつのまにかカエサルは眠っているように見える。そしてカエサルは、新しい著作を進呈して帰る。
それが『アンチカトー』。(思いっきり意訳)「あのヤロー、これを渡しに来たのか!お悔やみと思ったのがバカだった!」
”トゥッリアを思い出さずにはられなかった。いつも父の「子供じみたかんしゃく」を笑っていた。彼はため息をついた。カエサルを理解するのは不可能だ。''
第6章
①アントニウスをパトラが訪問、先日の事件を語り、カエサル暗殺をほのめかす(?)。
②カルブルニアの侍女のアスパシアは、案はフィロストラトスに抱きこまれていて、夫妻の様子を報告させられている。後述。
③おばを訪問したカルプルニアと、近所にいるポルキアとの会話。
第7章
①アントニウスとヒルティウス、パトラの件で話す。
②雪の音に目が覚めたカルプルニア、カエサルとの語らい。(後述)
③アントニウスを篭絡しているパトラ。カエサルに、抵抗できないような贈リ物をして、反対派を煽る事態を招く提案。
④カルプルニアとオクタの会話。後述。
第8章
①ブルの秘書アンティパーター(父はニコメデス王の侍医だったが宮廷の陰謀で処刑された過去を持つギリシア人)にフィロが接触、陰謀に巻きこもうとする。
②アスパシアの報告。気分のすぐれないカルプルニアに、カエサルは珍しいガリアのケーブを持ってくるがカルの気は晴れない。
③剣闘士養成所にブルが来て、短刀の使い方を習う。出入りしているアントと稽古
(?)。
④ルペルカリアの祭。カエサルに王冠を授けるパフォーマンスの事件。(これで、7③でのパトラの提案した「贈り物」が王冠であったことがわかります)
第9章
①カルとおぱの会話、変わってた婚礼の目の思い出。
②ブルに暗殺を催促する匿名の手紙
③ブルと母の会話
④カルプルニアにポルキアが、暗殺の陰謀を知らせる。しかし報せても無駄だと彼女自身思っている、たとえ失敗しても、独裁に抵抗する証だけでも充分だと語る。「私は夫のそばで死ぬ覚悟はできている。彼が祖国のために命を捧げるならぱ、私は引き返さない。言いなさい、あなたが聞いたことを、あなたの手も気高い人々の血がしみつくように。あなたのご主人に告げなさい、終わりが近づいていると」ポルキアはそれまで父カトーを賞賛する気はないと言っていたけれど、「いまこそあなたがカトーの娘になったのが見えるわ」とカルプルニアは言う。
⑤フィロはアンティパーターを待っているが、見知らぬ男たちに消される。
第10章
①C&C,『アンチカトー』をめぐっての会話。新しい本を書いて、『アンチカトー』でのことを謝罪してほしいと庸うが拒絶。「私のカトーについての本は君には関わりない。私たちとは関わりない。問題なのは政治であり、私の名誉だ…」
②パトラ、アントに暗殺決行時の行動を指示
③キケロと暗殺者たちの会話
第11章
①ヒルティウスは不眠症、アンティパーターが陰謀を密告。
②カエサル、パトラを訪聞。カエサルば既に暗殺の陰謀を知っている。行かないようにパトラは警告する。
第12章(①②③後述)
①C&C
②パトラがカルプルニアを訪問、カエサルを議場に行かせないように告げる。
③暗殺決行の日。