レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

あかねこの悪魔 他

2013-03-31 06:59:58 | マンガ
『あかねこの悪魔』6巻 竹本泉
 『テルマエ・ロマエ』の掲載誌『コミックビーム』に載っていて、気に入ったので単行本を買っていた。
 絵が可愛く、本絡み、コスプレ要素ありということで好ましく読めた。
 高校の図書館が主な舞台で、高校卒業で終了。円満完結っていいものだなぁ・・・。
(私がこれまでリアルタイムに熱心に読んでいたマンガで、最高の最終回といったら『緋色い剣』である。『シャンペン・シャワー』の名も必ず出す。)
 茜子はたびたびなにかパック飲料を口にしているけど、それらの名前がいつも奇怪であった。今巻では、「青汁王子」「高リコピントマトの皮」 「茄子オレ」 「微炭酸まっ茶ゼリー」 「冬季限定トロピカルパッションうり」 「タピオカラムネメロンソーダ」  『スラムダンク』の木暮のTシャツとか、『動物のお医者さん』の二階堂の服の柄みたいなものか。
 作中に出てくる架空の本が中々面白そうなものがある。『会議は踊る されど進まぬ殺人事件』、本気で誰か書いてもよさそう。要人が集まっていたのだから暗殺計画の一つや二つあっても当然だし。 『神々もたそがれる地獄巡り湯けむり連続殺人事件』、アイスランドに神々が湯治に来るというシチュエーションはぜひ見たい。

『妖怪と薬売り』 山下友美  角川 B6
 なせか書店であまり目にせず、入手は数日経ってからだった。
 実在の人物もモチーフにしたFT入り時代劇。薬売り志願者の正助と、謎の同僚慶太、万年不老の乳母。
 モデルと創作とうまくからめてある・・・のだと思う、史実を知らないので断言できないけどそういう印象を受ける。
  正助の外観、だれかを思い出すと思ったら、ドラマ『ローマ』のアグリッパに似てると気がついた。ごつめでちょっとかわいくて朴訥な感じが。

 4月の新刊で購入するのは『王のいばら』11巻、5月は『放課後よりみち委員会』3巻。6月は『教師諸君!』3巻(完)が出る予定。
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宣伝文句「中世」

2013-03-27 15:21:37 | 歴史
 ヨーロッパの紀行を見ていると、「中世の街並み」、「中世のたたずまい」等、たびたび出てくる。実際に中世のものだろうか、もっとあとのもあるのではなかろうかという疑問と共に、「中世」が問答無用にステキなものとして扱われていることに違和感を覚える。

 それに伴って最近気がついたこと。

 そういうの、日本ではしないなぁ。

 例えば、奈良・飛鳥を出して「古代のロマン」ということはあるだろう。

 京都をタネにして、「王朝の雅」云々は大いにある。

 「戦国のロマン」とか、「江戸情緒」とか大正ロマンとか昭和レトロとか、そういう宣伝はあるにしても、ムードを盛り上げるために「中世」という言葉は出してこない気がする。

 日本での中世といえば、鎌倉・室町。鎌倉は鎌倉で単独で宣伝できてるし、室町時代のセールスポイントはいまひとつピンとこない、末期がもう戦国だし。

 西洋史の「中世」に比べるとけっこう短い時期なのだな。西洋史の中世が、どこからどこまでか曖昧で、ゲルマン民族大移動からルネサンス前では長すぎだろう、その中でも激しい変化があってひとくくりにできないだろう、と思うけど、日本の場合はそこまで感じない。もちろん、詳しい人からすれば全然違ーう!と言いたいだろうけど。

 清水義範『イッキによめる! 日本史人物伝 平安時代&武士の誕生編』(講談社)は、近日発売。私の行く書店では児童書の棚にある。『古代編』は、ヤマトタケル、ヒミコ、聖徳太子、中大兄皇子、大海人皇子。「「青い鳥文庫」サイトの連載である。ネットで読めるものではあるけど、やはり本の形はありがたい。


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マリアネラ 螺旋

2013-03-24 06:50:09 | 
ベニート・ペレス・ガルデス『マリアネラ』
スペイン19世紀の写実主義作家の小説。
 裕福な地主の一人息子のパブロは、生まれつき盲目で、聡明で美貌の青年。近所の孤児の少女マリアネラが彼につきそって目となっている。ネラの美しい心ゆえに、彼女を美しいと信じるパブロは、盲人との結婚が嫌でなければ結婚して欲しいと言い、ネラもその心を受け入れていた。しかし、村に呼ばれた名医がパブロの目を治してしまい、そしてその叔父が娘を縁談の相手として連れてきていた。目の開いたパブロは、姿も心も美しい従妹に惹かれてしまう。
 ーー切ない話である。
 この作家の作品は、すでにここで書いた『フォルトゥナータとハシンタ』と、そして『トラファルガル』が邦訳されている。『トラファルガル』は、『国民挿話』という長大なシリーズものの最初の巻で、タイトルのとおり、英国とフランス・スペイン連合軍の海戦。老貴族夫妻に仕える少年が主人と共に参加して、のちに出世していくらしい。


サンティアーゴ・パハーレス『螺旋』
 これは現代小説。
 主人公はマドリード在住の35歳の編集者のダビッド。勤め先の小さい出版社では、SF小説『螺旋』シリーズが大ヒット作だが、作者トマス・ダウトは一切謎の存在。しばらく新刊が出ておらず、既に映画化も決まっているくらいなのに音沙汰がない。実は編集長自身も会ったことがなく、原稿が送られてきて振込先が指示してあるだけなのだという。そこでダビッドが、作家を探して新刊を催促する役目に選ばれた。妻には子供をせっつかれており、ほうっておいたら離婚されかねないので、休暇と偽って、その作家がいると推測された村に二人で滞在する。手紙等の分析の結果、件の作家 は右手が6本指だという手がかりであったが、その村にはそれが珍しくなかった。おまけに、休暇とは嘘だったことを知った妻は怒って一人で帰ってしまう。離婚の危機を抱えながら、ダビッドは任務遂行できるのか?
 村には、仲睦まじい中年(壮年?)の夫妻がいて、妻は難病で先が長くないけど、穏やかに晴れやかに暮らしている二人は人々に敬愛されている。
 マドリードの元大学生フランは、麻薬にハマってしばらくぐれていたが、やめることを決意して援助センターに通い出し、学生時代の友のところに再度ころがりこむ。その友が最後に転職するけど、このへん、伏線が生きていて楽しかった。
 ひじょ~に面白かった。

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まんがタウンその他

2013-03-20 15:45:24 | マンガ
 双葉社の4コマ月刊誌『まんがタウン』に、駒倉葛尾さんが新連載を始めたのでこれから買うことになる。
 『居間には今外国人がいます。』 これから中学生になる三池万希、仕事であちこちまわる両親と離れて日本の自宅(祖母がいる)に戻ることにしたら、多くの外国人が同居する空間になっていた。なにかと妄想と自己陶酔にひたるマキと、ツッコミいれつつ取り巻く人々のてんやわんや(死語?)ーーだと思う、たぶん。今回は、古株ドイツ人ミヒャエルと、アメリカ人オタクのマイケルの二人がクローズアップ、わりにいかつい顔のドイツ人と能天気そんなアメリカ人がそれらしい感じと言ったら偏見であろうか。これからまだまだあちこちの人が出てくるのだろう。
 次に気に入ったのは、西炯子『ちはるさんの娘』
 まったく初めて読んだので前後は知らんが、千夏さん38歳、その姉千冬さん42歳、地味にしていて素顔が美人の妹、素顔が地味なので気合入れて化粧している姉。 あっさりタッチの絵と華やかに描いた絵とのメリハリが魅力的。
 『光の大社員』
 ばかばかしさが中々いい感じ。悪者が正義のヒーローを監視している。ヒーローが13時間寝るつもりで目覚ましをセットするけど、「バカッお前それ1時間後に鳴るぞッ!?」  確かにそうだ。12時間以上眠ることは想定していないのだろうか。

 『教師諸君!』が終わったので、「まんがタイムファミリー」はとりあえず購入はやめる。(駒さんがまた登場なら考える)
 『航海王子の優雅な船旅』は、「ひらのあゆスペシャル」を買うことにする。
 『博士の白衣女子攻略論』は単行本で。
 先月始まった『毎日が新選組!』は、しばらく立ち読みしよう。
 ほか、好きなのは『椿さん』『ひかり!出発進行』『村ドル』『うのはな三姉妹』『100点満点店長さん』
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しばらく出ていない翻訳シリーズ

2013-03-17 16:26:15 | 
 4月の文庫発売リストを点検すると、創元推理文庫でアランナ・ナイトの新刊がある。カバー絵がどうも好みでなくて手を出しにくいけど面白い。19世紀のスコットランドで、メアリ・スチュアートについても絡んできている。前巻(2冊目)ではたいへん気がかりなところで終わっていた。

 思えば、しばらく出ていない続き物がけっこうある。
 同じく創元、ポール・ドハティーの『修道士アセルスタン』シリーズ、2006、07、08年と3冊出たあとご無沙汰。これは14世紀のロンドン、リチャードⅡ世が少年王であるころ。
  光文社文庫、『密偵ファルコ』は09年に出たきり。あとわずかで終わる予定のはずなのだが。
 集英社文庫、スウェーデンミステリー『エリカ&パトリックの事件簿』これまで年に1度出ているのでそろそろ次が来てよさそう。パトリックのダメ上司はどうするんだか。
 同じく集英社文庫の、『ブーリン家の姉妹』ことテューダー王朝シリーズは11年に4巻目が出たがあと数冊あるはず。同じ作者フィリッパ・グレゴリーの別の文庫からの「薔薇戦争シリーズ」は、『白薔薇の女王』が11年に出ただけ。
 ほか、ドイツのミステリーでも期待できるものがけっこうある。
 ここの挙げたもの、買う!と必ずしも断言できないのが辛いところであるが。『ファルコ』は絶対に買う!


 来月の文庫新刊で、買うと決めてるのは集英社文庫『夫婦で行くバルカンの国々』by清水義範。
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歌劇『ジュリアス・シーザー』

2013-03-15 05:58:08 | ローマ
このまえ言及した、ヘンデルのオペラの『ジュリアス・シーザー』(古典英文学以外でこの表記はしたくないんだが・・・)、録画を見たので感想を書く。あらすじについてはまたウィキペディアに頼る。
「 エジプトのジュリアス・シーザー」
 以下、番組のサイトから引用。             
 「歌姫チェチーリア・バルトリがクレオパトラを熱演!ヘンデルの歌劇「ジュリアス・シーザー」をユーモアあふれる現代風演出で。ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭2012から           
                              
歌劇「ジュリアス・シーザー」          ヘンデル作曲
(全3幕)                     
   アンドレアス・ショル チェチーリア・バルトリ  アンネ・ソフィー・フォン・オッター
   フィリップ・ジャルスキー  クリストフ・デュモー ルーベン・ドローレ ヨッヘン・コヴァルスキー
                   ペーター・カールマーン
                              
 (管弦楽)イル・ジャルディーノ・アルモニコ  (指揮)ジョヴァンニ・アントニーニ
                              
  ~オーストリア ザルツブルク・モーツァルト劇場で収録~(2012/5/25、27)          
                              
【振付】ベアテ・ヴォラック                 
【演出】モーシュ・レゼール  パトリス・コーリエ                 
【翻訳】森口いずみ                     
【字幕】米沢啓子

 引用終わり。正直名前を覚えようという気はぜんぜんない。
 音楽は良かった。(とはいえ、同じ歌詞部分の繰り返しがやたら多いので、そういうのは早送りしまくるという、鑑賞法としては邪道もいいとこになった)
 意外に、展開は楽しかった。クレオパトラ(すごい巨乳・・・)が自信満々であることはともかく、ポンペイウスの寡婦コルネリアが美女設定で、数々の男どもに目をつけられる。 彼女とセクストゥス(この二人は実際には他人だけどそのへん無視)がトロメーオ(プトレマイオス)を仇として討とうとしているのを知ったパトラが協力する。そしてセクストゥスが仕留める。史実から離れていてもこれは全然かまわない。
 演出が気に入らない。現代ファッション。ローマ兵が迷彩服で銃を抱えている。ローマ兵ならミニスカートでないと気分出ないだろ。自動車から降り立つスーツの「シーザー」って・・・。トロメーオがパンク(?)で刺青だし。
 (どうせ現代化するなら、ファッションだけでなくて設定もなんとかうまく移してみてもらいたいものだ、そういうのはむしろ見たいくらいだ)
 現代衣装というだけでなく、ひじょーに下品でグロテスク。トロメーオがシーザーの像に悪態をつきまくる場面で、マネキンよりもリアリティのない像なのに、その腹からは血みどろの内蔵(のようなもの)を引きずり出すとか、コルネリアを寝室に呼びつけて待っているトロメーオが、エロ本見ながらXXしているとか。
 かつてヨーロッパには「カストラート」というものが存在した。女が教会や舞台で歌うことが禁じられていたので、高い声を保つために去勢された歌手。現代、カストラート用の役を歌う際には、男性歌手が裏声を使うか、女性が男装して歌うものであるらしい。この演目では、ウィキペディアによると、シーザーとトロメーオが「カストラートアルト」、セストが「ソプラノ」と設定してある。そしてこの講演では、この三人は男性が担当している。見かけは男なんだけど声が女、どうも気持ち悪い・・・。こういうものなのだと納得できればそれでいいのだろうが。
 もし、もう少しあとの時代に製作されたオペラであれば、カエサルの役はどの声域であてたのだろうか。
 見慣れたミニスカートで舞い踊るローマ兵の舞台ならば見たいものである。
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スペインの名誉劇

2013-03-14 13:17:52 | 
 16-17世紀スペインの戯曲においては「名誉」というテーマがよく出てくる。17世紀のカルデロンにはこの「名誉劇」と言われる作品が三つある。いずれも、妻の不貞を疑った男が妻(と相手の男)を殺すという筋である。ここで多くの人は『オセロー』を連想するだろう。しかし、オセローの場合、疑わせる企みがあり、妻を激しく愛しており、殺してから無実を知って己も死ぬ。 その点カルデロンの場合、周囲の取り決めで結婚した妻のまえにかつての恋人が現れてしまい、拒絶するのに男がつきまとい、夫の知るところとなり、殺害に及ぶ。(少なくとも即ぶつ的な意味では)不貞などなかったことは知らないままであり、夫は罰を受けない。実に理不尽である。
 『名誉の医師』では、騎士ドン・グティエーレとその妻と、妻の元恋人の王弟、国王、そして騎士がまえに求婚していた令嬢が登場人物。騎士(めんどくさいので名前をなるべく略)は以前別の令嬢を口説いていたが、これまた、ほかの男が忍んで来ていると誤解して彼女を捨てたのだった。彼女はそれを国王に訴える。王はそれをもっともだと認めるが、すでに件の騎士は結婚してしまっているのでどうにもならなかった。それで、最後に王は騎士に、この令嬢と再婚させるという結末になる。
 ーー無実の妻を殺しておいて咎められず、再婚の世話まで受けるのかい、腹の立つ!
 ところで上の説明では固有名詞をなるべく省いて書いたが、王というのはペドロ1世であり、「王の異母弟」として出てくるのはエンリケ。『アルカサル』の読者にとっては馴染みのあるメンバーなのである。(エンリケは史実では兄なのだが。翻訳での判断か?) 王の酷薄な性格を示す描写が含まれているのは「残酷王」を意識してのことであろうし、令嬢の訴えごとに耳を貸す場面は「審判王」らしさを狙っているのかもしれない。 その後の史実、エンリケがペドロを倒して王位につくという展開を知っていた観客は、この事件(?芝居での顛末)が影響しているかのような錯覚を抱かされたのだろうか。
 同じカルデロンの『サラメアの村長』は、「名誉劇」に入れられないかもしれないけど名誉が主題には違いない。ことが姦通ではなくて強姦だと、被害者の父(または兄)が、男に責任とって結婚させるか、それがだめならば被害者は修道院へ入れて、男を殺す、そうしないと名誉が守れないということになっている。『サラメア~』もその後者の展開になる。そして、最後に登場した王はその行為を認める。 ここでの王はフェリペⅡ世。
 少しまえの時代のロペ・デ・ベーガの『フエンテ・オベフーナ』では、横暴な領主に対して村人たちが立ち上がって領主を倒す行為が最後に許される。ここで出てくるのはアラゴンのフェルナンド(イサベルの夫)だった。

 まえにネットで見たスペインでの事件。娘を強姦された母がその犯人(保釈中?)に暴言を吐かれて射殺し、法廷で傍聴人たちに喝采で迎えられたという。 名誉と復讐の精神は生きているのだろうか。
 (加害者をぶっ殺すことには反対しないぞ。被害者を白眼視はけしからんけど。)
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黒髪のお約束

2013-03-13 15:17:35 | マンガ
 このまえ「ことば」カテゴリーで「黒髪」に言及した。「西洋人」の中での金髪・黒髪の分布とか、フィクションの中での意味づけとか、関心のつきない話題ではある。
 その中でのごく一部を書いてみる。

 日本のマンガは基本モノクロ。
 日本人ばかり出てくる話であるからといって、登場人物の全員の髪を黒く(ベタ髪という)しなければいけないのではない。各人の区別やキャラクター表現として、白いまま(白髪とも言う)だったり、トーンを貼ったり、または金髪線がはいったりもする。ベタでないからといって黒くない設定というわけではない。
 一方、外国もので、「黒髪」設定ならば、これは必ず黒く塗る必要がある。

 このようなことは暗黙の了解だと思っていたが、ネット上でヘンな話を目にしたことがある。
 某少年誌(青年誌?)の原作つきのマンガで、ヒロインの髪をカラーページで薄茶に描いた。すると原作者が、○○は髪を染めるような子じゃない!と憤慨し、しかし「クオーター」という後付け設定ができてしまったという。
 ーーその原作者はマンガの「常識」に相当問題があったのではないのか。

 西洋もので「黒髪」設定なのに絵では白いのでたいへんヘンに思ったことは2度ほどあるような気がする。
 現代日本が舞台のライトノベルで、文章では「サラサラの黒髪」なんて書いてあるのに絵では白いのでオイオイと思ったことは2回ある。挿絵と文が合っていない場合はたいてい作家の側の責任(原稿が遅い)だと阿刀田高さんが書いていたけど、読者としてはツッコまずにいられない。

 土方歳三という人は、黒髪が明らかにチャームポイントであったはずだけど、そのわりに、昔の新選組マンガでは必ずしもベタ髪になっていない。70年代の代表作『天まであがれ!』『あさぎ色の伝説』では白いし、その影響なのか、当時のFC本でも白が多かったと記憶する。 男主人公はベタ髪が多く、白いのは脇のクール系という原則のせいだったのだろう。

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いまどきの「黒髪」

2013-03-12 14:54:04 |   ことばや名前
 最近ネットで、黒髪嗜好は不況と憧れ、とかなんとかいう記事があった。
 「“新いい女は「黒髪」主義”(『GINGER』4月号)、“だれがなんと言おうと、「日本女性は、髪ですから”(『Domani』4月号)――年齢層を問わず、最近の女性誌では“黒髪”企画が定番化しつつある。」
 ナチュラルな髪への憧れと、不況でカラーリングを控えるようになったということが指摘されている。

 実際のところ、日本人のすべてが黒々とした髪をしているわけではないし、天然で茶色っぽい人もいる。うぐいすみつるさんのエッセイマンガで読んだが、アメリカでの書類や証明書などで個人の容姿を記す場合、日本人の髪の多くはblackではなく(ではブラウンなのか)、インド人やアラブ人の青光りしているような色がブラックなのだそうだ。

 しかし。上記のように、染めていない状態を、まるで特別であるかのように「黒髪」と称することに、私はひじょーーに抵抗を感じる。そもそもそれがフツーの状態だろう、という意識が私にはどうしてもあるので。(フツーであることが絶対に良いとは思ってもいないが)
 外国でいろいろな色の人がいる状況であるならばおかしくない。
 日本の話でわざわざ「黒髪」と描写してあるならば、それが特に目立っている、キャラクターづけとして重要である場合でないとおかしい。私はそういう感じを持っている。

 上記の雑誌記事の場合は、もちろん、染めなければいいというわけではなくて、きれいに手入れをすることまで視野にいれているのだろうけどね。

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かもめ 嵐のマドリード エル・カミーノ

2013-03-10 06:14:15 | 
 スペインの小説三つ。

フェルナン・カバリェーロ『かもめ』
 19世紀の写実主義時代の作品、男性名の女性作家。
 職を求めてスペインへ行く若いドイツ人医師フリッツ・シュタインが、客船の中でスペインの若い公爵と近づきになる。
 彼は軍で雇われるが、敵兵を看護したことでクビになり、行き倒れたところを親切な村人たちに助けられる。
 腕のいい医師として村になじんだシュタインは、粗野だが歌の上手い漁師の娘のマリアサラーダに恋をして結婚する。
 やがて、怪我をした高貴な人物を助けるが、それはシュタインにかつて職の世話をしてくれた公爵だった。公爵もまたマリアサラーダの歌に魅せられ、ぜひ首都に来るように勧めた。夫妻はマドリードに来て、マリアサラーダはスターになるが、花形闘牛士と不貞にはしる。
 ごくまっとうな読みやすいスタイルで、田舎の生活、都市の人々の有り様が描かれている。
 滑稽なのは、マリアサラーダの父が病気になり、娘を連れてこようとして村の少年がマドリードに送られるくだり。屋敷で合わせてもらえずに劇場に行かされたが、たぶんオペラ『オテロ』のデズデモーナの役を演じる彼女を見て、本当に殺されたと思い込んで、村で(父親以外に)言いふらしてすっかり誤解されてしまった。シリアスな話だけどこのへんはコミックリリーフ。

ラモン・センデール『嵐のマドリード』
 内戦ただ中の首都で、共和国軍に摂取された城の塔に隠れ住むはめになった公爵夫人(未亡人)。美しく傲慢な貴婦人と、かしずきつつ翻弄される庭師との屈折した愛憎。  レディコミ向きかも。

ミゲル・デリーベス『エル・カミーノ』
 チーズつくり屋の息子が主人公。父親は息子に自分の身の上よりも出世してもらいたくて町の学校へ行かせようとしている。少年自身はあまりそれに気乗りしないけど、なんだかそういうふうに決められてしまったらしい。
 時間軸がいまひとつはっきりしない感じだけど、彼の村での仲間たちとの様子がつづられる。ほのぼのした印象を残す。

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