レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

新しい学研の世界史まんがのローマはお勧め

2016-08-30 05:56:04 | ローマ
「アントニウスとクレオパトラ」

『アントニウスとクレオパトラ』ゴールズワーシー

 序で、アウグストゥスの功績は認めながらも、好きになることは難しい、と、2度も言っている。2度言うほどだいじなことなのだろうか。こういう人、オクタ萌え同人誌なんか目にしたら腰抜かすだろうか。
 でもまあ、貶めて描いてはいないから怒るまい。アグリッパとマエケナスも活躍している。リウィアについては「急いで結婚したことは、オクタウィアヌスが本気で恋に落ちていたことをうかがわせる」、オクタウィアも「魅力も知性もあった」と描写している。(オクタの美貌に言及していない点は不満だけどな) カルプルニアへの誹謗や遺言状へのいいがかりは無し。
 笑えるのはここ、
「アントニウスは自分なりの目立ち方をしていた。一人前の体格になると、濃いあごひげを綺麗に整え、トゥニカを下げるのではなく逆にふつうよりも高く挙げて帯を締めて、筋骨たくましい脚を見せるようにするのを好んだ」

 まえに「サルメントゥス」という名前に関して疑問を抱いたが、この本に出てきた。
「解放奴隷だったが、容姿の良さとそれをうまく利用することで知られ、騎士階級に成り上がるとマエケナスと、さらに彼を通じてオクタウィアヌスと親しくなっていたのである」 これについての注もコピーしたはずだけどいま見当たらない。

「学研まんがNEW世界の歴史2」
「学研まんがNEW日本の歴史」は知っていたけど、「世界」も出ていた。先日やっと書店で手にした。なるほど、日本編同様、絵はわりにきれいなものが多い。さて2巻、「ギリシア・ローマと地中海世界」。シュリーマンの発掘、最盛期アテナイ、アレクサンドロス、ローマ共和制末期、キリスト教の誕生、という5部構成。上記サイトで少し読める。わりにきれいな絵。
 私にとって最も肝心なローマのパート。・・・オクタが美少年で利発で「末恐ろしい」と教師に思われたりしている。クレオパトラが父の膝の上に乗っているくらいの少女時代に「(ローマを)」かいならしてみせるわ」などと言ってのけている。この二人、根っこは似た者同士として表現しているのだろう、両者の間に敵意はない。
 オクタヴィアを出していないのは残念な点、そのぶん過保護なアティアママが補っている? 庶民の食堂でビールを試みるオクタなど、細かいところで凝っている。
 アグリッパも活躍していることも高得点。
 ローマひいき、オクタ好きならば買ってよし!
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ベルギー、イタリア、国交150年の切手

2016-08-27 19:35:15 | 雑記
「記念切手 2016」

 日本とベルギー、日本とイタリア、今年が国交150年ということで切手が出ている。
 別に宣伝料ももらっていないけど貼っておく。
 ベルギーは名物のワッフル、ビール、ダイヤ等、名所二つ。イタリアは絵画が4つ、トマトにバジリコにモッツァレラというのがいかにもで楽しい。
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道化と王 イタリア捜査 荒野のホームズ

2016-08-23 17:55:53 | 
『道化と王』 ローズ・トレメイン
 図書館の新着図書。
 チャールズ2世の時代、この設定は私は初めて読んだ。
 主人公メリヴェルは職人の子で医者。父の作った手袋を王が気に入っていたことから、その息子に王から声がかかる。愛犬の病を治療したことで宮廷に出入りするようになる。「道化」とタイトルにあるけど、楽しませる存在ということであってそれが職業ではない。
 名だたる女好きの王は、愛人の一人であるシリアを、別の愛人の嫉妬からかばうために、カムフラージュとしてメリヴェルを名目上の夫にして屋敷等を与える。しかしシリアに彼も恋してしまい、それでクビ(?)。旧友ピアスの働いている精神病院で人助けに尽くすけど、そこでもまたやらかしてしまう。
 根が善人だけど失敗もくりかえすメリヴェルはあちこちで女遊びするし恋もするけど、真に愛した(恋ではなく)のはたった二人だと言っていて、それが、医学生時代以来の友ピアス、ストイック過ぎてうっとうしくもあるが誠実な人間、そしてもう一人は国王陛下、オーラをまとった気まぐれな遊び人、まるで逆の二人であるところが面白い。


「アジアミステリリーグ」
 上記サイトを参考にして、英米(+仏)以外のミステリーをあれこれ読んでいることはたびたび書いている。
 ドイツはもちろんとして、北欧はかなり読んだ。南欧をチェックしてみると、スペインは、数年前の「スペインイヤー」の際に、ミステリーに限らず図書館で手にできる範囲はほぼありったけ読んだので、未読のタイトルがほとんどない。それでいまリストにたくさん挙がっているのはイタリアである。


『8017列車』 アレッサンドロ・ペリッシノット
 地元図書館の棚にある。「イタリア捜査シリーズ」という肩書のついた別作家のものもある。歴史的な時代背景を持つものというくくりなのだろうか。
 本書は、終戦後の1946年が舞台。戦時中に起きた列車事故、多くの死者が出た惨事でありながら顧みられなかったこの事件に、元鉄道公安官アデルモが踏み込む。
 アデルモは、ファシストではなかったし悪事もやっていないが、その時代になまじ出世していたので戦後「パージ」にあっているという身の上。「イタリア捜査シリーズ」の『デルーカの事件簿』でもそういうのは出てきた。
 トリノの人間であるアデルモがナポリに来て、ドリノでは当たり前の、控えめとか静かにするとかいうしつけがここでは全然ないことを感じる(でも不愉快ではない)、初めてピッツァを食べて感激する、--そういう場面がかなり面白い。トリノといえば、イタリアの北西部、フランス占領下だった歴史もある。イタリアもいろいろ。
(かつてハプスブルク支配下で、と書いたけど、それは「トリエステ」だった、混同していた。)


スティーブ・ホッケンスミス『荒野のホームズ』『荒野のホームズ、西へ行く』  ハヤカワ・ミステリ
 アメリカ産。たしか、『文士、ホームズを愛す』という本で知ったのだった。
 カンザス出身のアムリングマイヤー兄弟、グスタフとオットー(ドイツ系)。病と洪水で家族を亡くしていまは二人きりのカウボーイ。赤毛の彼らに仲間が冗談で読ませた『赤毛連盟』、グスタフはすっかりハマってホームズ礼賛者になり、己も名探偵を目指してしまう。
 ユーモラスな語り口が楽しい。 
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童貞王 ランベルト 来月の文庫

2016-08-20 10:04:35 | 
『童貞王』 カチュール・マンデス  国書刊行会
 すごいタイトルである。
 同社の本の巻末の広告で、ルートヴィヒ2世やワグナーをモデルとしたキャラが出てくるというこれを知った。
 プロイセンが力を伸ばしているご時世、「チューリンゲン」国の若い王フリードリヒ2世は、美貌の女王に憧れている。
 一方、その女王の側近である貴婦人は、ある歌姫が女王によく似ているので、その女を仲介することを王の使者にもちかける。
歌姫、元娼婦のマグダレーナは王に引き合わせられるがーー
   たいへん大胆な展開と結末。オーバーアマガウの受難劇は名高いが、こういうふうに話に取り入れられるとは驚いた。
 「チューリンゲン」国はもちろんバイエルンを指しているけど、実際のチューリンゲンにはヴァルトブルク」があって「タンホイザー」の舞台でもあるから、まったく無縁というわけでもない。

 解説では、「狂王」の名前は「ルートヴィヒ・フリードリヒ・ヴィルヘルム」なのでこの話で「フリードリヒ」はおかしくないと解釈しているけど、「大王」も男色という共通点はある。(『ヴェニスに死す』のアッシェンバハの代表作がフリードリヒをテーマにしているのも意味深長)
 「フリードリヒ」の祖父は踊り子にいれあげて退位するはめになったというのはもちろんローラ・モンテスを指している。小説でのマグダレーナはその再来を狙わせられるというわけである。解説で、王が思慕する女王のモデルであるシシィと、その女王と似ているという設定の歌姫が狙う役割のローラ・モンテスとが、そういえば似ていないか?と書かれているがーーー似てないってば!

 この小説、1881年に出ているというのがすごい。ルートヴィヒ2世の死は1886年、それより早い。バイエルンで発禁になったというのも無理あるまい。

 この小説が、パリでのワグナー人気につながっていったそうだ。数年後に出たやはりフランスの小説『神々の黄昏』も影響が大きいという。たぶんその小説は読んだと思う、30年以上まえに。ヴィスコンティの映画等、どうも「神々の黄昏」という名称は往々にして、神話本来のラグナロクと違って、けだるい、もっと言えば軟弱なイメージで使われることは歯がゆくもある。


『二度生きたランベルト』 ジャンニ・ロダーリ
 イタリア文学の棚で目についた。
 コモ湖畔で暮らす老男爵ランベルト。世界旅行の途上、賢者から、名前が呼ばれ続ける限り死なないと告げられて、人を新たに雇って交代で「ランベルト、ランベルト」と絶えずアナウンスさせる。そのせいか、ランベルトは若返り始める。そこへ強盗団が屋敷を占拠してーー。 
 愉快な物語であった。


 来月出る文庫本で、図書館待ちは光文社新訳文庫の数冊、岩波の『失われた時を求めて』10巻。
 本屋で手にしてぱらぱらでいいかというのは『眠れないほど面白くて怖い世界史』(王様文庫)。
 買おうと思っているのは
『サザエさんからいじわるばあさんへ 女・子どもの生活史』樋口恵子 朝日文庫
『オーディンの末裔』 ハラルド・ギルバース 集英社文庫
  ここでも言及した『ゲルマニア』の続きであろう。

 これらのほかに、翻訳ミステリーで気になるのがけっこうある。

 頭休めが欲しかったらツチケンの『無理難題が多すぎる』を買うかもしれない。
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来月買うコミックス

2016-08-17 16:01:27 | マンガ
9月の新刊で、確実に購入するのは

・内水融『サエイズム』4(完)
   既刊は買ってあり未読。来月で終わるならばまとめて読むことにしよう。
・惣領冬実『マリー・アントワネット』
 ネットでそういう作品の噂を目にしたばかりだけど、もう出てしまうのか。
・『アド・アストラ』10

  買おうか?と考慮するのが『萌えの死角』5巻by今市子、ブックオフ狙いが2冊。

 マンガは活字よりも簡単に読める、と思われているけど、そうとも限らない。マンガだって、それなりに気合というものは必要なのだ。買ったけどまだ読んでいないコミックスが6冊はある。上記『サエイズム』のように、まとめて読むつもりで貯めているものもいれたらもっとある。


 先月、芳文社の「まんがタイムファミリー」で『ダ・ヴィンチ系女子高生』が終わったので、購読をやめた。ほかに好きな作品がいくつかあるが、『軍神ちゃんと呼ばないで』はこの先もコミックスが確実に出るだろうからそれでいいか(姉妹編『ここから風林火山』まで始まるくらいだし)。そういうわけで、定期購読は「まんがタイムスペシャル」だけになった。そもそもの目当て作家はもういないけど、好きな作品がけっこうあるし、コミックス化の望めないもの、逆に、コミックスを買うほどではないけど読みたいものがあるし。
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新・世界の高身長

2016-08-14 16:09:45 | 地理
 先月、mixiで紹介された記事で、世界各国の平均身長が話題になっていた。私がその時見た記事とは違うが、一部を「人民網日本語版」2016年7月28日から引用する。

 英国やスイスなどから集まった800人の研究グループは、世界保健機構(WHO)がまとめた1914年と2014年における各国の18歳の身長と健康、栄養などのデータを選択し分析したところ、男女の高身長ランキングトップ10は全て欧州の国々が占めていた。男性の平均身長トップ10はオランダ、ベルギー、エストニア、ラトビア、デンマーク、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、セルビア、アイスランド、チェコ共和国で、女性の平均身長トップ10はラトビア、オランダ、エストニア、チェコ共和国、セルビア、スロバキア、デンマーク、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナという結果だった。

 引用終わり。

 同様の調査に関して、10年以上前に私が目にしたときは、成人男性は1.オランダ、2.デンマーク、3.ドイツ ということであった。
 この時もいまもオランダは上位に入っている。狭くて平らな国土の上を、大きい人々が自転車をこいでいるのか・・・といつも言いたくなる。

 『ヘタリア』の主要メンバーの中で、最も大柄ナキャラデザインになっているのはロシア、ついでドイツである。こういうのは、そこの国民の体格と国土からイメージしているのだろう。で、「ロシア」がデカいのは国土からだろう、上記の蝶さで「ロシア」ははいっていないのが不思議だ、姉妹であるウクライナ、ベラルーシはあるのに。(「ウクライナ」はデカすぎる胸が特徴・・・あれはなにに由来するのだろう? 美人国として有名なのは知ってるけど)
 2番目に広い国の「カナダ」は、「アメリカ」と顔は同じだけどケゲが薄い人扱い。
 「イタリア」が「日本」に初対面で「俺よりちっちゃい!」と言っているのは、人の体格だろうか。面積は日本のほうが大きいんだ。「私はあなたよりずっと爺さんですよ!」と「日本」が言うのはなにに基づくのか。「紀元は2600年」の日本、BC753建国とされるローマ、これで言えばローマのほうが少しトシだ。(「ローマ爺ちゃん」はせいぜいおっさんにしか見えないけど) 「明治維新」は1868年、イタリア統一は1861年、これでも少しイタリアのほうが早いんだけどね。


 机の隣の本棚にある「ワールドアトラス」は、2006年に買ったものだったので、そろそろ新しいのにしたいと思っていた。商品券はなるべくならば長く持つものに使いたいと思うので、これを買った。世界の言語人口・宗教人口のデータが新しくなっていることを期待したのに、それは載っていない、ふん。
 比べて気がついた違いは、
・ドイツ、ドレスデンの「世界遺産」登録が取り消されたので記載がない。
・「グルジア」が「ジョージア」になっている。
(私は本名の「サカルトヴェロ」を支持する)

 よく見ればもっと変更があるにちがいない。

 いまの季節、テレビをつければ各国の旗を目にする機会が多いだろう。スポーツに興味ないからしないけど。別の祭典のほうが気になる。ぜんぜん賞賛されないほうの。
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「ドイツ」の絵の扇子を所有しているけど

2016-08-07 13:50:51 | 雑記
 「失せもの」という言葉はなにやら風流である。「紛失物」と言えばお役所的である。
 暑い日に、扇子を使う人をたまに見る。同じ用途でも、うちわは場所をとるので外出時ならば扇子のほうがいいだろう。
 私もいくつか持っているのだが、そのうち一つしか見当たらない。一昨年あたりに買ったヘタリアグッズはどこにあるのだろうか。この部屋のどこかにはあると思うのだが。
 うちわは、先月アニメイトで買ったヘタリアものが一つある。枢軸トリオのセーラー服姿の絵。去年の品も二つある。もっと古い品もあるだろう。これらは、持ち手がなくて丸い穴がある類のもの。
 マンガ・アニメの絵で、ふつうに柄のある品もスラムダンクやセーラームーン、いくつか持っている。

 今年の夏コミでも、こういう品が各所で見られるのだろうか。
 トラブルなく済んでもらいたい。
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ミルク殺人その他

2016-08-01 07:14:58 | 
 今月出る文庫新刊で、確実に買うのは『夫婦で行く意外とおいしいイギリス』by清水義範、集英社文庫。webでの連載。

 気になるのは、
・『ロレンザッチョ』byミュッセ(光文社古典新訳文庫) 藤本ひとみ作品でも描いている題材だろうか。
・『シャーロット・ホームズの冒険』 ブリタニー・カヴァッラーロ 竹書房文庫


『ミルク殺人と憂鬱な夏 中年警部クルフティンガー』 
 ハヤカワ文庫の先月新刊。ドイツ産。
 アルゴイの田舎での、めったにない殺人事件で休暇旅行返上して操作する警部。しかし妻の企画する旅行は気乗りしないので実は行かずにすんで嬉しいなんて本音は言えない。倹約家で恐妻家で、外国かぶれのグルメ気取りや外来語の氾濫にムカついている、そういう可愛げのあるおっさん警部がいい味である。ローカル色をふんだんにまぶしたこのシリーズ、邦訳ももっと出したい予定があることは初回からシリーズ名を副題としてつけていることでもわかる。出したら買うよ。

 ところで、張り込みに際してクルフティンガーが用意した「おいしいもの」は、「ソーセージ二、三本にプチパン一つのセットと、サラミ二、三本にプチパン一つのセット、それにマスタード、燻製ハムをはさんだサンドイッチを一つ、1・5ミリの厚さに切った黒パンに田舎風サラミをのせたオープンサンドイッチを一つ」「チーズをはさんだサンドイッチも二つ」「おやつ代わりにバナナ」「デザートは板チョコ」「ピクルスを一瓶」・・・そりゃま、パンやハムの質が良ければおいしいだろうけどさ。日本人一般の「お弁当」に比べるとなんとまあ手のかからないシロモノ。英米人の話に出てくる「お弁当」だってたいしたものに見えないし。


 スウェーデン産のエーヴェルト・グレーンスのシリーズについてまだ投下してなかったので。ネタバレに見えるかもしれないので注意。


『制裁』  アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム  ランダムハウス講談社
 スウェーデン産。

 年端もゆかぬ女の子たちを襲って殺したロリ変態殺人犯が脱走して、また殺した。被害者の父親が警察よりも早く犯人を発見して射殺。世間は喝采を送る。弁護側は、脱走犯はさらに二人を殺害する計画があったことを理由に、父親の行為は「正当防衛」だと主張、判決は無罪となる。しかし、それが世間に影響して、子供相手の犯罪者たちへのリンチが続発してしまう。

  私個人としては、父親の復讐行為には賛成する。



『ボックス21』  同上
 ストックホルムのエーヴェルト・グレーンス警部とスヴェン・スンドクヴィスト警部補のシリーズの2作目。
 リトアニアからだまされて売られてきた娼婦が病院でたてこもり事件を起こし、エーヴェルトの同僚を呼びつけた。



 ・・・このエーヴェルトたちの行動、右京さんなら絶対にしないことだよな。人情としては理解の範囲だけど。しかしその人情も実は踏みにじられているんだが。それが明るみに出る日は来るのだろうか、やるせない。 
 この話の救いは、救出されて故郷へ帰れたほうの女を、恋人が受け入れてくれたこと。


『死刑囚』 
 作者は同上。「武田ランダムハウスジャパン RHブックスプラス」というのは「ランダムハウス講談社」となにが違うのだろうか。

 まえの話で初登場した若い女性警官をエーヴェルトが見込んで、昇進させて自分の部下に引き抜いている。マリアナ・ヘルマンソンというフルネームがここで初めて出てきた、まえはヘルマンソンと姓だけの表記であった。

 筋はといえば、アメリカで、GFを殺したとして死刑判決を受けたジョンが刑務所で病死、しかしストックホルムで起きた暴力事件の犯人が身元を現れるとその死刑囚だったことが判明したーーという発端。



 後味は非常に重い。
 救いは、ジョンの父が孫を得たことには幸せを味わっていること。ジョンの無実は遅まきながら証明されたのだろう、ほんと遅すぎるけど。



 上記3作は、原著と同じ順で邦訳が出たが、角川文庫から出た『三秒間の死角』上下巻 は原著の4作目がとんでいて5作目である。エーヴェルトは長年の恋人が事件のとばっちりの事故で植物状態に近い病院生活で、辛抱強く見舞いを続けていたのだが、4作目で対ついに彼女は亡くなったらしい。


 『三秒間~』は、麻薬潜入捜査の話。シリーズ中で最も最後が暗いのが『死刑囚』であり、もっともハッピーなのは『三秒間~』。
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