レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

オランダ国歌とSS隊歌

2010-06-30 14:11:43 | ドイツ
 サッカー好きにとっては、オランダの国歌を耳にする機会の多いこのごろだろう。
 私はかねがね、これと、ナチスドイツの親衛隊(SS)の隊歌との関連が気になっていた。最初にきいたとき、これ同じ曲じゃないか?と思ったこともある。
 結論を先に言えば、似てはいるけど同じとは言えない。

 SS隊歌の歌詞は、1814年つまり対ナポレオン解放戦争によってドイツ人の愛国意識が高まっていた時代に書かれた詩、「全ての者が不忠になろうともWenn alle untreu werden」。作者マックス・フォン・シェンケンドルフは「愛国的ロマン派」に数えられる。
オランダ国歌は、昔の王ウィルヘルムスの生涯を歌った内容。16世紀、スペインの支配に抵抗したオランダ貴族(「ゴイセン同盟」)の歌とも書かれている。

 私はかつて卒論でドイツ軍歌をテーマにしたが、このときの定本は軍装品店で買った復刻本3種、「国防軍・SS合唱歌集」、「SS歌集」、「新・軍歌集」。これらには合計3種の上記の歌詞による歌が載っている。「合唱歌集」には2種あり、一つは、民謡ふうの歌をもとにしてSS将校が編曲したらしいもの、もう一つはオランダ国歌と同じメロディのもの。この曲で「新軍歌集」にも収められている。圧制と戦うオランダと、フランスからの解放を目指す自分達とを重ねる気持ちで、19世紀初頭の詩に16世紀の曲をつけて歌っていたのだろう。
 そして、「SS歌集」に載っている隊歌は、また別の曲を採用したのか、新たに作った曲なのかわからない。前半は、オランダ国歌の曲とかなり似ている。うろ覚えだと混同しそうだ。
 関心のある方は、YouTubeで「親衛隊の歌」と「オランダ国歌」をきいてみよう。

 つまり、19世紀のドイツの愛国詩がいくつかの曲で歌われて、その一つがオランダ国歌と同じ曲であり、別の一つがSS隊歌ということである。
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電車の乗り過ごし

2010-06-27 07:13:30 | 雑記
 このごろ、電車を乗り過ごすことが数回あった。すぐに気がついて引き返し、遅刻してはいないが。
 この手の出来事で思い出すことがある。
 その年は、J高のあとで大学の授業に行っていた。時間にあまり余裕がなく、昼食は慌しかった。(どうしていたのか記憶にあまりない) 大学まえにある讃岐うどんの店に、いつか入ってみたいと思っていた。 そしてある日、J高の授業がないので、自宅からまっすぐに大学へ行った。余裕があるので、待望のうどん屋に行こうと楽しみにしていた。S駅で乗り換え。新宿からの下りは、箱根・小田原方面行きと、片瀬江ノ島行きがありうるが、同じ列車が途中で切り離されることもある。私が乗るべきは箱根・小田原方面行き。S駅で、「この電車は相模大野から、前6両が小田原行き、後ろ4両が片瀬江ノ島行きになります」というアナウンスをきき、目の前の車両に「小田原」と書いてあることを目にしながら乗り込んだ。そして、本を読んで過ごして数十分後。どうも外の様子に見覚えがない。--片瀬江ノ島方面へ行っているのだ。急いで引き返し、授業に遅れはしなかったが、ふだんよりも余裕がないくらいであった。
 途中で切り離される列車ならば、そして各車両に行き先が明記されるならば、初めから、前の車両には「小田原」、後ろは「片瀬江ノ島」と出しておけばいいだろうが! あれは、たまたまあんなだったのか、いつものことなのかわからん。
 思い出すたびに怒りがわく。食べ物が絡んだ失敗は、ハタから見て滑稽なだけに本人の怒りは激しくなるのではなかろうか。
 その後、期末になってようやくうどん屋に行くことができて、その旨さに感嘆して、長いこと常連となったのである、あの「茂鈴」が閉店してもう数年、一家はどうしていることだろう。
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今年の夏の文庫フェア

2010-06-26 08:34:19 | 
 新潮、角川、集英社、この3社は夏には文庫フェアが恒例になっている。これまでは、新潮は2冊で毎年代わる景品、角川は2冊でブックカバー、集英社は1冊でその場で携帯ストラップ。
 今年は、新潮はバンダナ、角川は1冊でその場で携帯ストラップ(「ハッケン君」など)、集英社は同じ。
 私は、そもそも携帯電話を持っていないのでストラップなどいらないし、必要なくても欲しいと思うほど好みでもない。バンダナは・・・頭にしめる趣味はないけど、手ぬぐい等としての使用法がある、しかし~、いまのパンダのデザインかわいくないんだよ~~。実用品と割り切って、買うことに気乗りする本があれば、ひとつくらいもらってみるかなぁ?
 集英社文庫、去年は『漫画版 世界の歴史』の1巻が入っていた。『学習漫画 世界の歴史』全20巻を10巻におさめたもの。しかし私の感想としては、1巻がいちばんぱっとしないのだ。どうせなら、最初の巻よりも最後の10巻を入れたほうがいいよ(私個人の趣味では、あずみさん担当の産業革命の入っている6巻)と思っていたが、今年はこれらからは入っていない。
 私がつけてほしい景品は、クリアファイル、不織布の文庫ブックカバー。夏から初秋にかけてのムードの品を数種類、その場でもらえる形式で。
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バケツアイスの存在

2010-06-23 14:42:49 | 地理
 「地理」というカテゴリーを新設することにした。広義の意味でのドイツ以外の国(日本含む)について「歴史」には入れがたい話題、食べ物、風俗習慣、世界地図を見ながらのあれこれなどをここに含める。


 6月14日の読売夕刊の「いま風月曜日」という欄に、「文筆家 君野倫子さん」が、京都の老舗の品、小ぶりの桐の「お針箱」を紹介していた。そのおまけのコメントが以下のもの。

「スーパーマーケットはその国を映す鏡だ。私が住む米国では、バケツ大のアイスクリームや、セメント袋のようなシリアルが並ぶ。どんなに大きくても、置き場所には困らないお国柄だ。」
 
 ふむ、だから日本は必然的に小型化が得意になるわけだ。『縮み志向の日本人』とかいう本が評判になったこともあったな。
 
 みなもと太郎さんが、京都の食べ物の底力を感じた二つの体験を描いていた。
 一つは、京都南座の食堂でいちばん安い卵丼を食べたとき、食べている最中は味がしないと思ったが、そのあと午後の部を見ている間にじわじわと口の中に心地よさが漂い続けていたという。
 もう一つ、湯豆腐で有名な南禅寺に卸しているという豆腐屋を知って、バケツ2杯ぶんを買って、そんなに食べられないと思っていたら、一家(4,5人くらい?)で一度に食べてしまったという。

 豆腐ならばつるつる入るのもまだわかるが、アイスクリームのバケツサイズ、まさかいっぺんに食べるとは限るまい、それを入れておくのはどれだけデカい冷凍庫なんだっ!? 減ったら小さい容器に移すなんてマメな(?)ことをアメリカ人はしないような気がする(偏見)。

 TONO&うぐいすみつる『海外うろうろ本』は、この姉妹のこれまでの海外旅行エッセイコミックの再録本で、半分くらい私は既読だった。
 そこで描かれていた、
「アメリカには 青いケーキや き緑のケーキや ま紫のケーキがあります」

 NY在住の作者による『ヘタリア』ではたびたび言及される、バケツアイスに青いケーキ。別系統の本で目にすると説得力が増してしまう。
 バケツアイスは困るが、どんぶりサイズのプリンやゼリーくらいならば食べてみたい。
 私は通常、カップアイスだって何回かに分けて食べるけど。
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『やっとかめ』増刷

2010-06-19 16:18:17 | 
 清水義範『やっとかめ探偵団』は、作者の故郷の名古屋を舞台とした、婆さんたちの素人探偵もののシリーズである。既にドラマ化やアニメ化や舞台化もされてきたらしい。
 これのテレビドラマが、婆さん役を全員男優でという趣向で20日に放映されると先週知った。原作は光文社文庫だけど絶版ではないのだろうか、この機会に復活すればいいのに、と思っていたが、きのう本屋に行ったら案の定出ていた。奥付は、初版1刷が88年、2010年に8刷 と書いてある。単純計算すれば3年ごとに出ていたことになる。ならば単に増刷か。 でも、このタイミングで出すのはどうしてもドラマを意識していると見えるので、なんだか「復刊」のように見える。それが悪いというのではないが。光文社のHPには、新刊としては載っていない。
 再版の見込みがなく、版権もひきあげたものが「絶版」、そうでない場合を「品切れ」と呼ぶことが一般的であるらしい。いずれにせよ悲しい響きだ。
 いま検索したところ、厳密に区別するならば「重版」は改定などした場合、同じものを印刷するのは「増刷」だそうだ。

 ま、好きな本や作家が復活するのは嬉しいことなので、『やっとかめ』の続刊もまた出てもらいたい。
 これ、マンガにするなら・・・ヤマザキマリさんかな、ジジババが上手いので。間違っても少女マンガではない、少年誌でもあるまい。
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フランス史の顔

2010-06-16 15:09:34 | 歴史
 中野京子『名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語』 光文社新書
 すでにベストセラーの『ハプスブルク家 12の物語』の姉妹編。
 史実のだいたいの流れは知っているが、新たに知って驚いたこと
・マリー・ド・メディシスに関して。アンリ4世の2度目の妃。まえの妃マルゴが、スキャンダラスな評判はあれど華やかな存在だったことに対して、二人目は魅力の点でかなり劣るとは読んだことがあった。しかし、そのぱっとしない自分をヨイショしまくる連作をルーベンスに描かせたとは。
・ヨーロッパ近代史で刑死した君主といえば、イングランドのチャールズ1世、フランスのルイ16世、ロシアのニコライ2世。  ルイ16世が、先代から負債を引き継いだチャールズ1世と共通項を感じて英国史の本でよく研究していたので、強圧的な政策はとらずに妥協を重ねたけれど、結果はあの通りだったーー悲しいことである。 この人たちよりもはるかに憎々しい王はいくらもいるだろうに。

 ルイ14世がアポロンに扮した図、私はこれを見ると、美空ひばりを思わずにはいられない。いちど倒れてからあとの復活記念リサイタルのときの、まるで宝塚のフィナーレに近いようなハデハデの衣装。
 アウグストゥスも(まだその名前を得てない時期だろうが)アポロンのコスプレをしたことがあるというけど、もっとまともな衣装であったと思いたいものである(マエケナスがノリノリでプロデュースしていそうだ)。この人も背が低いので高底サンダルはいてたという。ルイ14世は、ハイヒールで脚線美を誇示していた。
 まぁ、実質独裁でも市民の代表者の建前を貫いて、個人的に質素だった人と、
これでもかとばかりにド派手に権威をみせつけて目立ちまくった人とではかなりの隔たりがあるが。

 前後して出た、佐藤賢一 『フランス革命の肖像』 集英社新書ビジュアル版。
 巨漢でデブ(そして醜男)ミラボーの項で、
「『三銃士』のポルトス然り、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン然り、現代フランスの名優ジェラール・ドゥパルデュー然りで、かかる身体的特徴こそフランス人が痺れる男の、ひとつの典型なのだというから、やはり単なる醜男では片づけられない」
 だいぶ共通点のあるダントンの肖像はまるでブルドッグのようである。木原さんが『杖と翼』で描いていたダントンは中々特徴を生かしていたのだ(味のあるキャラであった)と愉快である。
 ところで名前の挙がっている俳優ジェラール・ドパルデユューは、私は『アステリクス』実写で初めて見た、あれも巨漢デブのキャラ。『仮面の男』(脚色はげしいとはいえ一応『三銃士』だ)でポルトス演ったし、私は見てないけどジャン・バルジャンにも、そしてダントンにも扮している。違和感のない配役なのだろう。
 タレーランは端整な優男で、くえない策士で、『ローマ』で青年オクタをクールに演じたサイモン・ウッズが少し年くってから演ったらきっと似合うと思う。見たいな~。
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またヘタリアグッズの話題

2010-06-13 13:40:59 | マンガ
『ヘタリア』の本家サイトである『キタユメ。』で、このごろワールドカップにことよせたカットが載っていてたいへんラブリー。日本とカメルーンとオランダとデンマークでは、食べ物がいちばんおいしいのは(ほかを全く知らないけど)たぶん日本だと思う。いちばんの美形国はデンマークのような気がする(TONOさんかそのお友達が「コペンは美男天国でした」と書いていた)。

 おとといアニメイトへ行った。『銀幕ヘタリア』(映画館に行く予定はない、いずれDVDは買うけど)けど先にCDは予約してあったので、その引取り、および、新商品探し。非売品CDが3巻と本誌(バーズ)の応募券が必要ということで今月号を買ったら、グッズの案内が載っていた。トートバッグとマグカップとクリアファイルは欲しいと思ったが、無事買えた。
 まえに、「世界の国旗セット」シリーズでマグカップが出ていたことに言及した際に、ちゃんとカットがついていて種類が1,2ならば買うかもしれないけど、と書いたが、今回ほんとに2つ買ってしまったよ、「銀幕」と、WC絡みのと。前者は、ヘタG8(という言い方をしているかどうか知らんけど、サミットのG8からカナダを引いて中国を足したメンバー)+それぞれの名物、後者は、サッカーボールふうの形に枢軸トリオ。かわいい。--買って後悔はないが、いまのところ使わない。
 トートバッグは、やはりG8と、ピザにソーセージにハンバーガーその他各国のシンボル(?)。

 ところで「国旗」は今回はボールペン(?)が出ていた。売れているんだろうか。
 「プロイセン」があるなら「ローマ帝国」があってもよさそうなもの。だったらなにか買うぞ。
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ヴォレヌス生きててもいいかも

2010-06-12 11:52:20 | ローマ
 HBOのドラマ『ローマ』が、ミステリーchとかいう、主にヨーロッパのミステリーを放送する局で12月~5月に放映されていた。私は今回、15回以降を、3人組の登場場面にほぼ絞って見ていたけど、最終回は少しゆっくり見た。
 続編の製作計画はあり、脚本はできているというこのドラマ。本編から4年後で、架空主人公の二人はまた出るという。死んだヴォレヌスが生き返るのはナンだな、と思っていたけど、見直したところ、確かに、ヴォレヌスは瀕死で子供たちのところに戻ってきてるが、そのあとは、プッロが「死にました」とオクタに言ってるだけなのだ。あの時点では、ヴォレヌスはカエサリオン連れて逃亡した身の上であったから、オクタに対しては死んだことにしておいたほうが無難である。それならば、実は死んでなかったという展開にしてもそう不自然ではないと思った。

 このまえ講義でギリシア神話に触れたとき、月の名前の由来にも言及した。ここはテストには出ないけどと言いながら、カエサルとその死後のひと悶着も説明した。そのあとで一人の女子学生が、このへん(オクタ)はまえに手塚治虫のマンガで読んだことがありますと言ってきた。  中央公論から出ていた手塚監修の世界史学習マンガの中の『大いなる理想』を知ってる人に意外なところで会った。私は当然、アレはローマ好きの間では伝説の名作、フィクション化しててもポイントは抑えてある優れものだと言ったのである。
 文庫化されてくれないかな~。 
 ムロタニツネ象さんによる世界史も、キャラが実物に似せてあるという点がわかりやすくて良い。ブックオフでローマの巻は持っているけど、こちらはいまでも普通に売られているのだ。
 
 これをローマカテゴリーに入れるのはシャクだけどもう一つ。
 よそでもタネにされていたNHK・BSハイビジョンでの『華麗なる宮廷の妃たち 第1回 クレオパトラ 美貌と知性は誰のため?』。私もハイビジョンは見られないので直には知らないが、つまらなかったという投稿を目にした。いずれは地上波でも放映されるだろうが。号泣ならぬ、激怒の準備が要るのかな、そうまでして見る必要もないんだろうな~。
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「号泣」

2010-06-09 13:54:15 |   ことばや名前
 先日、とある番組で、「号泣」という言葉を声をたてずに泣くことだと思っている人が少なくないという話が出ていた。
 言葉の意味の誤解にも、語感がそんな感じだからとか、似たような他の語と混同するとか、文字通りに取ればそれもありそうなど、無理ないかもと思えるものはある。例えば、「情けは人の為ならず」はこのあと「まわりまわってわが身のため」と続くことを知らなければ、甘やかすとためにならないということだと思ってしまうのはわかる。また、「憮然」も、本当はしょんぼりしてる様なのだが、語感のせいで、ぶすっとした、ふてぶてしい、怒ったような様子かと思われがちだ(私も去年知った)。
 しかし、「号泣」はなぁ。「怒号」とか「号令」とか、「エンジンの音 ごうごうと」とか(『加藤部隊歌』より。このあと「隼はゆく 雲の果て 翼に輝く日の丸と胸に描きし若鷲の 印は我らが戦闘機」と続く。この漢字は「轟轟」なので念のため)。むしろ勢いを感じないだろうか。どうしてそんな誤解が出てくるのか不可解である。

 と思っていたが、もしかすると、週刊誌や芸能ニュースでしばしば「○○号泣!」なんて軽々しく使っているので、大泣きする程度の意味に錯覚させてしまうのだろうかと考えた。こういう乱用ははなはだ品がない。
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小暮写真館、ヨシンリン文庫本2冊

2010-06-06 14:32:40 | 
宮部みゆきの新刊、700ページにもなる分厚い書き下ろし。私にとっては最もとっつきやすい現代もの。
(この作家のジャンルの中ではということ。) 
 男子高校生の花菱英一は、学校で「花ちゃん」と呼ばれている、しかしだからといって、両親と弟まで一緒になって花ちゃん呼びすることは中々コミカルな状況である。この一家の引越し先が古い写真館で、その看板を下げずにいたせいで誤解され、そこで撮られたらしい「心霊写真」の苦情を持ち込まれる。その事情解明したのでさらに誤解を招き、また妙なものが持ち込まれてしまう。そして、花菱一家の過去のいきさつとも絡んでくるのだった。
 宮部さんの作品には、妻子をこよなく愛する男がときどき出てくるが、これもその一種かもしれない。父を代弁するように、父方の身内にタンカきる花ちゃんかっこいいぞ、よく言った!

 清水義範『雑学のすすめ』、『疑史世界伝』が文庫で出た。後者は、『シミズ式目からウロコの世界史物語』と改題されている。文庫に買いなおして本棚が少し空いたぞ。
(阿刀田高のプルターク本、ダンテ本も早く小さいのに買いなおしたいものだ)
後者所収の「ゆめまぼろしの中南米」では、マヤとアステカとインカという、しばしばいっしょくたに連想される文明に関して整理してくれている。「あわただし記」は、ものすごく駆け足で中国4千年を語る離れ業。
 うんちく本としても読み物としてもお勧め。
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