レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

アキレウスの歌 ルミッキ

2016-11-21 14:05:01 | 
マデリン・ミラー『アキレウスの歌』 東京創元社 2014年

 文庫本にはさんである広告で気になっていた本の一つ。タイトルが示すとおりギリシア神話もの。語り手はパトロクロスで、身内の間で居心地悪く過ごしていたが諍いで人を殺して異郷に追われ、そこでアキレウスと出会う(実際には過去にも見知っていたが)。劣等感の大きいパトロクロスは、天性の輝きを持つ美貌のアキレウスに強く惹かれ、深い絆で結ばれるーー心身ともに、これは時代を考えればぜんぜん不自然なことではないのであるが。
 周知のようにトロイア戦争となり、母テティスの命令で女装で隠れさせられているが、オデュッセウスの策略でそれが露見する、この剣を使っての場面はビジュアルとして中々かっこよく想像できる。
 これまで私の見たトロイア戦争の映画では、アキレウスをヒロイックに描いたものが案外少ないのであるけど、この小説では少女マンガ並にキレイ。


サラ・シムッカ『ルミッキ』全3巻 西村書店 2015年
 フィンランド産。ミステリーに含まれるのだろうか。
 都市タンペレに一人暮らしする女子高生ルミッキ。頭が良く群れない、やや変わり者の17歳。家庭にはなにか秘密があることを感じており、彼女自身も過去の恋の痛手を秘めている。
 警官の父を持つ同級生の美少女エリサが、自宅の庭に投げ込まれた血に汚れた札束を手に入れたことからトラブルに巻き込まれ、頼られたルミッキも奮闘する。
 それが1巻での話。
 作者はヤングアダルトを多く手掛けているということで、それも納得、高校生の生活ぶりも興味深く読めた。
 女の子が男の気をひくためにバカでかよわいふりするのはこの地でもあるんだな、ということも。
(女がカマトトして男がそれを喜ぶとか、異端を迫害するなどが日本人の悪のように軽々しく言われがちだけどね)
 ぶりっこだったエリサが父の隠し事を知って頭を使い、バカな男友達よりも賢明なルミッキとの信頼を選んでいく有様が好ましかった。
 2巻では、休みにプラハに旅したルミッキが、父の隠し子(彼女の異母姉)と名乗る女性に出会う。
 3巻では、学校の劇で新釈白雪姫を演じることになったルミッキ、新しいBFと交際中、別れた人が再び現れる、さらにストーカー、そして彼女の過去の記憶が復活する。


 両者とも、少女マンガにしてもおかしくない。
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CDの枚数を減らせるか?

2016-11-13 14:06:19 | 雑記
 しばらく前から新聞に広告が載っていた品、レコード、カセット、CDからCDへ録音できるデッキが欲しいと思っていたが、ついに購入して昨日届いた。それを置くスペースをつくるために、昨日、部屋の片隅を整理した。そこに品を置くだけはした、使ってみるのはまだ先のことにする。

 カセットにしか持っていないのでCDに移してとっておきたいものは、
・かつてドイツ語の時間に先生にダビングして頂いた、現代歌手によるハイネ作品の歌集
・『ふえはうたう』の関さん歌集(そのころはカセットからカセットへ移せる機器もあったものだ)
・・・きちんとしたCDで入手できる・出るならば買ってもいいんだけどね。

 CDからCDは、そのCDの一部だけをとっておきたいというものを集めてしまって本体は手放したい。これによってCDを置くスペースに余裕をつくりたいのだけど、上記のようにカセットからCD化するものが発生すると、結局枚数は、・・・あんまり減らないかもしれない。

 機器の保証期間が1年って短すぎる。

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ヴェサリウスの秘密 死者は笑みを招く 他

2016-11-04 13:37:55 | 
『ヴェサリウスの秘密』 ジョルディ・ヨブレギャット
 集英社文庫の新刊。
 スペイン産のミステリー。1888年、万博直前のバルセロナが舞台。
 主要人物は3人、
 医者の父を持つ、今はオックスフォードで若くして教授になっているダニエル。
 借金持ちの新聞記者フレーシャ。
 ダニエルの父の助手を務めていた医学生のパウ。
 それぞれが厄介ごとや秘密を抱えてうごめき、ダニエルの父の死の真相を巡って、そして連続殺人事件に巻き込まれていく。
 繫栄する都市の光と闇、そして世紀末の妖しさが鮮やかでスリリングな物語。
 ところで、バルセロナを舞台とするスペイン産ミステリーってやたらと目につく。オペラの舞台で多いのはセビーリャだけど。


『死者は笑みを招く』 ネレ・ノイハウス
 創元推理文庫の新刊。
 ドイツ産、オリヴァー&ピアのシリーズ。本国では2作目だけど邦訳は順番が違うので4冊目。
 動物園で他殺体が発見され、被害者は環境保護等の活動家の男性教師。心酔者が多い一方で敵も多かった。
 環境保護云々も、過激派や独善を含むと大いに感じる。

 
『悪魔の手は白い』 サンダ・ヤコプスン
 ハヤカワ文庫、今年の刊。デンマーク産。
 小さな町で、牧師の妻が行方不明になり、遺体で発見された。似た状況で妹を亡くした男が接近、協力して事件を探っていく。 


『弁護士はぶらりと推理する』  マルチェロ・フォイス
 2004年のハヤカワ文庫。
 イタリアの中でも独自の歴史・風土を持つサルデーニャを舞台とした、しかし独特な暢気さを感じさせるシリーズ。でも邦訳はこのあと出ていないようである。


『連続殺人「赤い死神」』 マリオ・スペッツィ
 2007年の扶桑社ミステリー。
 アル中気味の新聞記者が、連続殺人を記事にすることと並行して、心理療法士の神父のもとに通わされ、己の親との関係を突き詰めていく。そして秘密が暴かれる・・・。
 なんだか犯人の動機が腑に落ちなかったけど。
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「漱石の愛した絵はがき」展 開催中

2016-11-01 06:29:20 | 
「漱石の愛した絵はがき」
「日本近代文学館」
 代々木公園といつも混同してしまうのだが、駒場公園内の「日本近代文学館」で開催中の展覧会「漱石の愛した絵はがき」。
 寺田寅彦等のドイツからの絵はがきに、ゲーテに関する品が3枚ある。フランクフルトのゲーテハウスのものがあるので、こんな時代からすでに出していたのかと興味深い。ボンのベートーヴェンハウスはどうだったのだろう。
 病床の漱石宛に小宮豊隆の出した花の絵のハガキ。鏡子=悪妻説で夏目家サイドから相当恨まれていそうな小宮だけど、こういうの見るとやはり健気だと思えてならない。
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