レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

本と年越し

2014-12-31 15:42:59 | 
2014年末 

 図書館で予約した本で年を越したものは数冊ある。
・『池田屋乱刃』伊藤潤  
・井上靖『地図にない島』(「貸し出し中」であると認識していればまたにしていたのに)
・ケストナー『ファビアン』
・アーヴィング『スケッチブック(上)』
・高殿円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』
・小路幸也の新刊3冊
 出版社の冊子をもらってくることにはまっていたころ、小学館の「きらら」で読んだ連載が面白かったので、図書館ではいれば読むようになった作家である。

 『忠臣蔵はなぜ人気があるのか』は、年内最終日から「配送中」になった。「取り置き済み」で年越しという最悪の事態にならなくてよかった。

 図書館は、利用者にとっては閉館状態でも、内部では仕事がなされているということがある。年始は、4日に仕事して5日(月曜)休み、6日から開館ということだった。

 いま借りているのは、ルーサー・ブリセット『Q』(宗教改革を背景にしている)上下巻、『吸血鬼ドラキュラ』。再読中の『第九』『おろしや国酔夢譚』は明けてから読む。ドイツでは第九はむしろ年が明けてから聞くというし、大黒屋光太夫の不屈の精神は年始によかろうということで。
 あ、コバルトの皇女アナスタシアが題材の新刊もまだ読んでなかった。

 今年最後の買い物は中野京子さんの監修の『マンガ西洋美術史 2』。


コメント (2)
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スペイン史のメモその他

2014-12-30 07:29:06 | 歴史
2014.12.30
「歴史」カテゴリーをしばらく投下していないので、3つ。


Ⅰ 来年出る角川の日本史学習マンガ、HPに情報が追加されているので再びリンクする。
「角川まんが学習シリーズ 日本の歴史」


Ⅱ 机の周囲を整理していて出てきた、スペイン史のメモ。

モサラベ:イスラム支配下のキリスト教徒
ムワッラド:イスラムに改宗したキリスト教徒
ムデハル:キリスト教徒支配下のイスラム教徒
モリスコ:キリスト教に改宗したモーロ人
コンベルソ:改宗ユダヤ人
フサイダンテ:隠れユダヤ教徒

1492 コンベルソ以外のユダヤ人を追放
1502 勅令 改宗か追放
1609 全土からモリスコを追放 アフリカ、フランスへ

 ここには書いていないけど、「モーロ人(ムーア人)」とは、アラブ人orベルベル人のイスラム教徒。「ベルベル人」とは、北アフリカに広く住んでいた民族で人種的には白人だと言う。『オセロー』では、オセローは モーロ人とされているけどあれは明らかにキリスト教徒なのでヘンなのだ。モーロ人=黒人だと誤解しているらしい。シェイクスピアだけではなかろうが。
 スペインのイサベル&フェルナンドに「カトリック両王」の名を与えたのは教皇アレクサンデル6世(チェーザレの父)だが、塩野さんの本によると、追放されたユダヤ人にローマでの居住地を与えている。(腹黒策士であっても)狂信者ではない現実主義者という解釈。


Ⅲ ここ数ヶ月、歴史カテゴリーにはいる本で読んだのは、
 辻田真佐憲『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』 幻冬舎新書
 佐藤賢一『ヴァロア朝 フランス王朝史2』 講談社現代新書
 えーと、ほかにもあるはずだけどいま頭に浮かばない。
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なんとなく慌ただしかった日

2014-12-26 16:04:24 | 雑記
2014.12.26
 今日は午前にスーパーの買い物に同行、そのあと車を駅方向にまわしてもらって図書館へ。予約して届いていた本を引き取り、あと1冊借りておく。
 速やかに帰宅して、早めのお昼を食べて、コナミ(スポーツクラブ)へ。今年はこれで最後である。通常営業は29日までだけど最終日は混むのではということで今日行っておいた。1階で買い物。ミュスリもあちこちの国の品があるのでいろいろ試したくなる。今食べているのはフランス製(なぜか高い)。今日買ったのはカナダ産。ほかに日本産だけど「カナダ産メープルシロップ」使用のグラノーラ。キャラメル味と共に、メープル味となると手が出てしまう。

 ドイツ等では25・26日が「クリスマス」として休日である。それを思えば、今日まだクリスマス仕様であってもおかしいことはないのであるが、日本では25日のあとはもうお正月という大イベントへ向かうようになっているので、クリスマス仕舞いが早い。というわけでここのテンプレートも変更である。
 「クリスマスを祝ったら 年を越して初詣に行く これが普通なんです おそれいりますすみません」とは『ヘタリア』の「日本」のキャラソンの好きなフレーズである。
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ドイツとクリスマス、けっこう投げやりな投稿

2014-12-24 09:25:25 | ドイツ
2014.12.24
mixiで紹介されていたエピソード。「エデカ」はドイツ各地にあるスーパーで、私もフライブルクで住んでいたアパートの隣にあったのでよく利用した。このさいなので貼っておく。
「エデカ ジングルベル」

 ドイツカテゴリーがしばらく出ていないので、季節ものということで過去に書いたものへのリンクを貼っておく。ドイツとクリスマスとの思い出はやはり、マルクトの楽しさと当日の静けさと、ベルリンで見た「スターリングラードのマドンナ」であるから。

「圧倒的な静けさ」

「スターリングラードのマドンナ」

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季節と読書

2014-12-18 10:28:17 | 
2014.12.18

 年末年始は図書館が閉まる。通常は2週間の期限が、このときは1週間伸びる。ふだん手を出しづらい本をこの機会に、と思う利用者も多いだろう。もっとも私のいる市の場合、次の予約者がいる本・市外の本以外は、PCから1週間の延長ができるので、それを利用することと比べればたいして変わらないと思う。
 次が私の順番の『愛の裏側は闇』3巻、私は3番目だけど本が市内に3冊あるのは『地震と独身』by酒井順子 『壁と孔雀』by小路幸也。年内に来るだろうか。
  『〈5〉のゲーム』byウルズラ・ポツナンスキ と 『天国の囚人』byカルロス・ルイス・サフォン と 『ヴァロア朝』by佐藤賢一 を現在地元図書館から借りている。全部、次の予約者がいるので早く返したい。『〈5〉のゲーム』はもう読んだ、オーストリアのミステリー。ゲームマニアらしい犯人の連続殺人に刑事たちが翻弄される。
 

 大学の図書館にあまり文学書はないが、「新潮現代文学」がそろっているので多少なりと気乗りするものを借りている。「有吉佐和子」の巻を冬休み前に読み終えられてよかった、クリスマスに『華岡青洲の妻』『恍惚の人』なんて読むのは避けたい。「宇野千代」も借りてあるけど、これを年末年始はどんなものだろうか。
 私はけっこう、クリスマス、年始に読むものは気にするほうである。あまりに辛気臭いもの、殺伐としたものは避けたい。『第九 ベートーヴェン最大の交響曲の神話』は去年出た新書で再読半分まできた、これは季節にふさわしい。



 角川文庫の「ハッケン君」グッズの終わりが近い。油断している間に品切れがほとんどになってしまった。数合わせのためになにかと探して、『ドラキュラ』は図書館にあるのでやめてもっと安かった『あいるさん、これは経費ですか?』にした。同じ作家の「女子大生会計士」はキャラ名が、藤原、柿本、山上等々、日本史から取っていた。傑作なのは「氷高元美」(「氷高皇女」→「元正天皇」)。姉妹編では西洋史で、「はねとりまりい」だの「ぜん・ふえる」だのとかなり無理があった。いちばん笑ったのは「江戸黒太(えど・こくた)」、エドワード黒太子・・・。で、今回の「東京芸能会計事務所」は地名・駅名。「天王洲あいる」って・・・。「烏山千歳」はまだ人名としてありそうだけど、「桜上水芦花」、「聖蹟桜」、「高幡百草」・・・。私が京王線沿線に住んでいるのでこれらの元ネタがわかるけど、別の地域の人はほかのがぴんとくるのだろう。

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TONO ジーヴス

2014-12-13 07:49:37 | マンガ
2014.12.13

TONO 『砂の下の夢 ~空の下の緑~』1巻

「大ヒット作『砂の下の夢』が新シリーズで帰ってきた!」なんてオビに書いてある。『砂の下の夢』全2巻発売中!(プリンセスコミックスデラックス)とも書いてある。
 新シリーズでもなんでもない、不定期掲載で6年ぶりに復活しただけのこと。私が「プリンセスGOLD」を購読していたころに始まって、07年で途絶えていた、それが13年からまた載るようになった。同じ「プリンセスコミックスデラックス」で3巻として出せば、「空の下の緑」なんて副題を添える必要なんてなかったのだ。B6の「デラックス」でなく新書版の「プリンセスコミックス」にする理由が特にあるとも思えない。
 砂漠でオアシスを管理する役目を持つジャグロ族は、一定の年齢になるまで性別を明かさない。この点は山本鈴美香の未完の『七つの黄金郷(エルドラド)』のレッドフォード一族(エリザベス女王に仕えるイングランド海賊)を彷彿させるが、こちらのほうがはるかにリベラル。フェイスとチャルが性別不明の美形カップルであるというあたりにもそれが出ている。
 過酷な砂漠と、そこに漂う人間のたちの思いの切なさが、淡白なタッチで描かれる。

TONO『コーラル』5巻(完)
 珊瑚の母は不貞で家を出て行った、珊瑚の実父はその不貞相手だったーーと言われていた。その珊瑚が紡いでいる海の人魚たちの物語と二重になっている。女王に統率される人魚たちの間にも争いと友情があり、人間たちとのトラブルがある。元人間を兵士として動かすが、彼らのうちには陸の時代を記憶する者もいる。
 『砂の下の夢』の砂漠とは正反対の海の中の舞台とはいえ、シビアな生死はやはりある。TONO作品では、あっさりと残酷な展開が描かれることがたまにあるが、荒んだ自分の姿を鏡で見せられて悔いて元に戻れたエピソードはほっとする。
 珊瑚の母と、その幼馴染に関する真相は、・・・中々にTONOさんらしいと言える。

『ジーヴス狂騒紳士録』  勝田文  P.G.ウッドハウス
  バーティの悪友ビンゴ・リトルとその愛妻ロージーのところに、ロージーの学友が訪問してきたことから困った問題になる話のクライマックスで、ふだんバカなビンゴが強引な頼もしさを発揮してしまうのは愉快であった。
 英国と米国を股にかけた人気シリーズのこのコミカライズは英訳されているのだろうか、していいのに。


 以下、mixiで紹介されていた記事に講談社ゆかりの(元)少女マンガ家たちの座談会が載っていて、そこから、かずはしともさんの発言を引用。

かずはし 1980年代は一番リア充らしいリア充が読んでいたのが少女フレンドで、花ゆめはオタク系、別マ(『別冊マーガレット』)は1970年代前半までオタクで以降は超リア充っていう感じ(笑)。
 別マは、途中でちょっと方向性の切り替えがあって、美内すずえ先生と和田慎二先生を小長井信昌さん(白泉社創業メンバーの1人で、『花とゆめ』『Lala』の創刊などにも携わる)が連れて集英社を出て、入れ替えでくらもち・いくえみ(くらもちふさこ先生、いくえみ綾先生)世代が始まり、オタク時代からリア充へと変わるんです。

 引用終わり。私が前に読んだ鈴木めぐみさんの本では、フレンドや「なかよし」の読者はいまはマンガから離れている、別マは優等生タイプ、花ゆめはオタク、ララを読んでいた人たちは今でもマンガを読んでいるーーという説だった。
 私が別マに熱中したのは70年代半ばで、確かに「花とゆめ」へと大物たちが出ていった。私はフレンド系にはあまりなじまなかった。 前に、別マは「胸キュン」の恋愛マンガのイメージ、という元編集者の発言に私は違和感を覚えたと書いたことがあるが、これは路線変更のあとを指していたのだろうか。

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クリスマスカードや喪中欠礼や年賀状

2014-12-08 17:21:13 | 雑記
2014.12.08

 クリスマスCDをBGMにして、カードの用意をする季節である。年賀状を出すべき相手の一部はクリスマスカード(葉書)にしている。こういう場合に困るのは、4月に出た52円切手。ソメイヨシノ、確かにきれいだけど、なんだってこんな季節限定感の強いものにするか!暑中見舞いやクリスマスカードにこんなもの使うかっ! だからもっと冬らしい切手を選ぶ。

 年賀状の季節は、喪中欠礼上の届く時期でもある。
 先日mixiに載っていた記事によると、喪中欠礼とは、死の汚れを外に出さないために挨拶を失礼するということなので、喪中の人が受け取るぶんには構わない、実際、もらえないと寂しさを感じた人は多数ーーだという。
 しかし、「では出さないでいいということだな(らっきー)」という人が多いのではなかろうか。(もちろん、お子さんを亡くしたなどという場合には気の毒に思うことが先にたつが)  なにか出すとすれば「寒中見舞い」というものがこういう時に使われる。
 松の内も過ぎてしまったらいっそ「寒中見舞い」にするほうがいい気がする。きれいなデザインの葉書がいろいろ出ているのでついつい多種買ってしまっている。年賀はがきよりもむしろこれらを使いたいくらいだ。

 年に一度の挨拶くらいが妥当であり、それが嫌ではなく、改まった間柄でない一部の友人とは、私から暑中見舞いを、その返事を年賀状で受け取ることにしている。
 嫌ではないけど理由があれば略したいということもある。
 一昨年のこと。12月に大学関係者のパーティーがあり、そこでそういう相手(少し先輩や同級生)に会ったら、「今年はここで会ったからお年賀はもう省略しましょう!」と言おうと思い、数人にはそうした。しかし忘れた一人がいて、ちっ、と思いながら年賀状を投函したーーそのあとで喪中欠礼状が届いたのだった・・・。


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祝福の歌姫 漱石  1月の新刊

2014-12-03 09:54:23 | マンガ
桑田乃梨子『祝福の歌姫』
 ハニィは、歌声で魔力を操る魔女、ただし音痴。人や動物にダメージをあたえるほどの音痴。しかし国の王子は音感がおかしくて、ハニィの歌を気に入って、国を守る「祝福の歌姫」に選んでしまう。それにむっとした隣国の魔女ルビィや、王子の「小姑的」従者、王子の姉に求婚する隣国の魔法使い貴族が入り乱れるファンタジーコメディ。
 音痴と自覚してひねくれもしないで努力はしているハニィがたいへん素直で良い性格をしている。王子に感謝してせっせと励む様は、ーーまったく唐突に『王のいばら』by戸川視友 のエピヌと重なる。

 ヒット作だとやたらを長期化させられてダレてしまうことが珍しくない昨今、ほどほどの巻数で充実感を残せる作家・作品がたいへんありがたく思える。
 (佐々木倫子はそういう点で幸せだと思う)

香日ゆら『漱石とはずがたり』2(完)  メディアファクトリー A5 (4コマではないけど、『先生と僕』とのつながりから4コマの棚に置かれるかも)
 先生を回転木馬に乗せようとする弟子たちの企み編、銭湯でヤクザを叱りつける編(これはまでに同人誌で読んだ)、・・・実にマンガのような話である。
 「天災は忘れたころに~」の経緯がカバーイラストに描いてあるとは大胆な。購買意欲に結びつくといいねえ。

香日ゆら『ステラ』 講談社 B6版
 上記の本の帯に宣伝が載っていて知った。
 巻頭の『春の五月』、賞をとった小説の題材が、かつて遠縁の女の子の体験であったことを思い出して悩んでいたけど、法事で本人に会って語り、救いを得る。  見聞きしたことをネタにする創作家には普遍性を持つテーマだろうか。
 全体に、淡白で透明なしみじみ感。
 「似ている」とは安易に使うと誤解を招くけど、私がそういった印象を持つマンガ家はほかに、亀井高秀、ハルノ宵子。

 1月のコミックスリストを点検。
 私が買う予定は、『スパイの歩き方』『薔薇王の葬列 ③』『マダム・ジョーカー 16』『王妃マルゴ③』『チェーザレ 11』『風雲児たち 幕末編』25   ほか、ブックオフ狙いが2冊。
 今月買うのは、『ジーヴス』『コーラル』『スティーブ・ジョブス』。  ヤマザキマリさんといえば、『ジャコモ・フォスカリ』の2巻は? 雑誌にはもう載っていないようだけど。中断なのか、終わっても出ないのか。作者が息子さんに「同人誌だね」と言われたくらい、一般的な題材ではないのは確かだけど、面白いのに。
(後日に付記。中断中らしい。)


 アニメイトに行って、まえに来たときにパスして、次にもあったら買おう、と思っていた『セーラームーンCrystal』のメモパッドを買った。一筆箋として使えそう、ただし機会があまりない・・・。5種類の絵x20枚つづり。10枚ずつにして値段半分のほうがいいんだけど。
 ヘタリアグッズがわずかしかなかった。来年またアニメがあるので、そうなるとまた出てくるのかな。

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花壇 沈黙の果て ルイーズ

2014-12-01 10:40:58 | 
井上靖『花壇』
 江波棟一郎(60)は突然社長を引退した。周囲はいろいろ取りざたしたが、実は海外旅行中に事故にあって奇跡的に助かり、残りの人生はおまけのような気持ちになったのだった。同宿の老紳士が車に同乗させてくれていて、その紳士と運転手は命を落としていた。老紳士は、年をとったら自分本位の生き方をすることを勧めていた(しかしそれで慈善事業のように病院をつくろうとしていたのだから人格者である)。 江波は、家でぶらぶらしながら、数十年前に生まれてすぐに死んだ我が子への追憶にふけったり、じきに結婚する下の娘と初めて旅をしたり、旧友と会ったり、恩師の墓参をしたり。
 しかし会社が行き詰まり、「落城を共にする」気持ちでまた仕事に戻るのだった。すると回復しそうな兆しを見せて話は終わる。
 井上靖後期にたびたび見られる、年配で地位もある、作者自身を反映させた男が主人公の、随筆的な要素も濃い作品。
 うちの物置に古い文庫があるけど、最近図書館の「新着図書」に入ったので借りて読んだ。この「新着図書」に載るのは新刊書ばかりではない。寄贈で増えた本もある・・・のはわかるけど、この本はとっくに入っていたでしょ、なんで今また出てくるの!?ということが時々ある。


シャルロッテ・リンク『沈黙の果て』 創元推理文庫
 「新着図書」を点検して、ドイツ産ミステリーはたいてい手にする。
この作家名は初めてではなく、まえに『姉妹の家』を読んだことがある。英国を舞台にすることが多いそうだ。
 英国ヨークシャーで休暇のたびに一緒に過ごしている3組のドイツ人家族。それぞれの夫たち3人(弁護士、大学教授、セラピスト)は学校時代からの親友ということであるが、妻たちにとってそれは必ずしも望ましい交際ではなかった。その屋敷の持ち主である支配的なパトリツィアの前に、彼女の祖父の隠し子を名乗る男が現れて相続権を主張する。そして3家族のうちの5人が殺害された。
 犯人が誰であるかは、なんとな~く察しがついた。グレ気味だった娘が結局いちばんマトモな道を歩きそう。
 人物名を覚えていないと書きづらい。いちばんイヤな女であったパトリツィアしか記憶にない。中心人物は、気弱な大学教授の夫を持ち、獣医の仕事をしている、夫の先妻の娘に敵意を向けられている人なのだけど。
 諸悪の根源は、気弱な息子を萎縮させて育て方を誤った父かもしれない。

 話は変わる。
 古書愛好家というものが存在する。私は別にそういうものではない。内容が同じであれば、新しい本に心地よさを感じる。
 先月、図書館の「新着図書」に、岩波文庫の『20世紀イギリス短編選 上』というものがあった。出版年「2014」とあった。新しく出た文学書には一通り注目するので、借りてみた。・・・古いじゃないか。1987年の本だぞ。「新着図書」のリストと、さらにクリックしてみて出てくるデータとでは「出版年」にズレがあることがあって、よくわからん。新しい本を期待していたのにそうでない時はいささか不満を覚える。
 『ジーヴス』が有名なP.G.ウッドハウスの短編も入っている。解説に、日本では紹介されていないと書かれていることが時代を感じる・・・といっても80年代だけどね。
 モームの『ルイーズ』は、「病上手、死に下手」の女の話。病弱そうにしながら実は横着、たいへん腹の立つやつ。阿刀田高にこの手の話があったけど、あちらは、病弱な姉のせいで割をくってきた妹と、姉の娘が怒りを覚えていたけど、モームのこれでは、語り手以外は誰も彼女の厚かましさをわかっていないので余計に読者はムカついてしまう。


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