レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

キノコの教授 少年マンガ・少女マンガの欠点

2019-06-28 07:12:13 | マンガ
 香日ゆらさんといえば、『先生と僕』等、漱石ものが有名な人。私はそもそも、『乙女の日本史』(文学篇だったか?)で紹介されているので知ったのだった、さっそくアニメイトに買いにいったがその時点でまだ単行本は出ていなかった。
『三枝教授のすばらしき菌類学教室』1巻 角川
 天谷洸輔は、好きな子と同じ大学に入学したものの、学部が違いキャンパスが違うことを知って落ちこんでいたところ、見知らぬ女の子(小学生)と出会い、連れられてヘンなおっさんの部屋へ。じきに教授とわかるそのおっさん(キノコ柄の背広を着ている)に
「君は今日から きのこの王子様だ!」
 既成作品を安易にもってくることはあまり望ましくないが、私が連想するのは『動物のお医者さん』と『愛なき世界』である。
 キクラゲがキノコだと私は知らなかった。クラゲだと決めつけてはいなかったが、キノコよりは海のもののような気がしていた。

 巻末の広告ページから引用。

 エンタメxお仕事  働く男って・・・いいよね?
 知的好奇心をくすぐる業界マンガが盛りだくさん!!
 恋愛だけじゃモノ足りない女子へ贈る 女性が読む青年誌
COMIC BRIDGE online
引用終わり。貼っておく。
「COMIC BRIDGE online」
「女性が読む青年誌」というのは言葉が矛盾しているんだが(「青年男女」という言葉の使い方もあるけど)、そういう雑誌があるのは別にいい。少女マンガにしか見えない青年誌マンガだって珍しくもないし。女読者を想定してあるならば、やはり絵はいかつくないだろうし、多くの女が嫌がりそうな傾向(あんまりな巨乳とか)は避けるのだろう。


 そういえば、最近mixiに載った記事で、女性にきいた「少年マンガのここがイヤ」というアンケート結果があった。挙がっているのは、強さのインフレとか、結局血筋がものを言う展開、女キャラがみんな主人公に惚れる等。
(私は、ありがちなギザギザの髪の毛が嫌い!)
 こんなのが全部でないことはもちろんだろうし、少女マンガにもありがちなことは多い。
 そのうち、男女逆の記事も出てくるだろう。
 私は、主要キャラに若さが求められることが少女マンガの最大の制約だと思っている(欠点とまでは言えないけど)。
・ 設定上、容姿が「並」と美形の区別が、絵だけでわかりづらい
・ 老若男女の区別が弱い、若い美男美女以外が描けていない
――ということがしばしばある、もちろん全部ではないけど。
 「恋愛必須」という思い込みは、読者よりも作り手側に強いのではなかろうか。
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『ゾロ』その他

2019-06-22 09:17:30 | 
『ゾロ 伝説の始まり』 イサベル・アジェンデ 扶桑社ミステリー文庫2008
 「怪傑ゾロ」とは、1919年にアメリカの小説で誕生して、多くの映画に登場するヒーローである。私はまえに小説で読んだが、あれは原作だったのか、映画のノベライズだったのか? 軟弱者と思われていて実は・・・は、「紅はこべ」然り、中村主水然り。
 この『伝説の始まり』は、南米の作家が書いた前日談である。
 舞台18世紀末から19世紀初頭、カリフォルニアで、スペイン出身の父と、インディアン(と敢えて書く)の戦士だった母の間に生まれたディエゴは、父の戦友を頼ってスペインへ留学する。そこでかなわぬ恋に身をこがし、剣の腕を磨く。
 スペインはナポレオンの支配とその後の王政復古に揺れる時代、歴史もの要素もけっこうある。
 フランス大使がゲリラに襲撃されて、令嬢が流れ弾で美貌を損なわれるが、書物に慰めを見出して猛勉強、作家として売れっ子になったというちいさな脇筋がなんだかいい。男名前で、という点に時代の制約がリアルに感じられる。
 ディエゴの乳兄弟のベルナルドとの絆も見ものだし、片想い相手のフリアーナ、その妹の大胆なイサベル、彼女たちの世話焼きおばさん、フリアーナのストーカー男の叔母エウラリア等、キャラたちが鮮やか。
 少年マンガにも少女マンガにも充分なる。


ヘニング・マンケル『イタリアン・シューズ』
 世間から離れてひっそり暮らす元外科医の60代男の元に、昔別れた、というよりも一方的に捨てた女がいきなり現れる。病で先が長くないが、昔の約束――彼が子供時代の思い出の湖に一緒に行こうと言ったことを果たして欲しいと求める。

ホーカン・ネッセル『悪意』
 短編集というよりは中編集。
 過去に行方不明になった人間からの連絡があってーーという話が複数出てくるが、展開がそれぞれ違っていてスリリング。

ビクトル・デル・アルボル『終焉の日』
 1980年のバルセロナを舞台に、内戦とその後のフランコ独裁時代の事件を行き来しつつ、親子の代に渡る愛憎と復讐、国家的陰謀が絡む。

 上記3冊、図書館の新着図書で、次の予約者が待っているので優先して読んだけど、そういうせかされた事情がなくてもぐいぐいと読めた。
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全10巻のマンガ

2019-06-16 09:20:49 | マンガ
 mixiで紹介されていた記事、「全10巻の面白いマンガ」というアンケート。
 なにが挙がっていたか忘れた、忘れたということは私の好きなものではなかったということであるけど。
 『ベルばら』がはいっていないことはけしからん。ほかの人のコメントに、ベルばらは10巻は外伝なので9巻だという意見もあった。その後巻数が増えたので10巻ではないという声も。――確かにそうなのだが、私の持論では、本編(72-73年)が終わって間もなく描かれた『外伝・黒衣の伯爵夫人』は「10巻」とされているし、絵・キャラの点でのギャップもない※(時間軸の点ではほぼありえないのだが、読者サービスとして目くじら立てる気はない)。ここまでで「全10巻」とする、この全10巻が『ベルばら』本家本元なのである!
※80年代に、短命だった雑誌「JAM」に連載された外伝、通称JAMばら、最近数年の間に数本描かれてマーガレットコミックスで11巻~13巻に収められた「エピソード集」は、オスカルが己の人生を否定しているように見えかねない等、ところどころ古参ファンのひんしゅくをかった。新聞連載の4コマ『ベルばらKids』はよかれあしかれあまり大マジメにとることもなかろうと思う。

 上記の記事に対して、「なんで10巻限定するんだよ」とのツッコミコメントもあった。同じマンガでもバージョンによって巻数は変わる。ベルばらでも5巻本で出たものは、文庫版、昔の「愛蔵版」(77年ごろ、ハードカバーで高価)。
 それに、従来と比べていまのコミックスは薄くなっている。新書サイズで180~200ページが主流だったものだけど、そしていまでもポピュラーなレーベルはそのパターンだろうけど、B6サイズで150ページくらいというものも多くなっている。(4コママンガだと100ページくらい) すると当然、巻数は増える。このことからしても、古典マンガといまの作品に同じ数え方をするのは不適切である。
 
 くだんのアンケートは、人気マンガもやたら長いと手を出しづらい、10巻程度ならばわりに気軽だから、という趣旨は理解できる。10巻程度、10巻以内となれば私もたくさん推薦したい。
 「全10巻」の名作で私が推すのは、もちろん、『緋色い剣(あかいつるぎ)』byあずみ椋(講談社版では全7巻の構成)、これも「スペシャル本」2冊があるけど。
 『セーラームーン』は、元々のコミックスは全18巻で、その後の新装版はまた違った編集、本編12巻+「ショートストーリーズ」2巻、『セーラーV』2巻。「完全版」は、『V』が2巻で、短篇集込みで『セーラームーン』は10巻の構成。--範囲を広くすればこれもまた全10巻と言ってよい。



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今年初めての

2019-06-14 07:59:06 | 雑記
 きのうの朝、自分の部屋で遭遇してしまった、蚊!じっくりと狙いを定めて、両手でバシッ!成功。血が出たので既に誰かが被害にあい、新たな蚊誕生の栄養になるところだったのだ、それを阻止できたので、こういう時の血はむしろめでたさを感じる。
(黒田かすみさんはこの時の血が怖くてたまらないらしい、「歴史ロマンDX」でのバートリに関するエッセイマンガでだったと思う)
 私は蚊にさされやすい体質(O型だし)で、蚊を警戒し、蚊の退治には執念を燃やす。夏場、人が不用意に開け放していると鬼のようになる、その「ひと」というのはほとんど母である、自分が蚊にさされにくいからって私よりけっこう無頓着なことが腹立たしい。
 最近だれかのエッセイで読んだ、蚊にさされたあとかゆくなるのでなければこんなに殺されないだろうに、と。同感である。奴らは養分を得ているのに、こちらは不快感を置いていかれるのだ、割に合わな過ぎる。献血すればジュースをもらえるらしいが、痒みなどいらん。今年もせっせと蚊は殺戮していく。

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最後のプルチネッラ その他

2019-06-07 12:39:36 | 
小島てるみ『最後のプルチネッラ』
 「プルチネッラ」とは、イタリア伝統の即興喜劇「コメディア・デラルテ」の道化。
 「最後のプルチネッラ」の名を目指して二人の少年が競い合う。ナポリの貧民街で、道化の父を持ち、大道芸人をしている赤毛のちびジェンナーロ、演劇一家の御曹司で元天才子役の美少年ルカ。――なんだかすごくお約束でガラかめの連想さえ出てくる。
 古代ローマの時代から転生をくりかえす「おいら」の物語が挿話としてはさまれ、次々と支配者も替わってきたナポリの歴史も浮かび上がる。
 三浦しをんの読書エッセイで最近文庫化もされたのでまた読んだ本で興味を持った本。まえにそのエッセイを読んだ際に注目してなかったのだろうか、追加されたぶんなのだろうか。
 充分にマンガに向いている。


 ライトノベルの天野頌子さんは、『警視庁幽霊係』の文庫版がTONOさんの挿絵だったことで読むようになったということはここでも書いている。「ポプラ文庫ピュアフル」で出ている『よろず占い処』または『陰陽屋~』シリーズ。最新の11巻目『陰陽屋秋の狐まつり』で、生まれる子供の名前のことで夫婦が相談に来ているエピは、大筋に関連しないけど私には興味深い点だった。妻は「貴麗爛(きらら)」、夫は「樹璃杏(じゅりあ)」を主張している。店主(元ホスト)は「画数があまりにも多い名前は子供の負担になることをお忘れなく。過剰に凝った名前など、ただの親の自己満足にすぎません。美しくかつシンプルな名前、あるいは願いのこもったシンプルな名前がおすすめです」とアドバイスして、結局は「りさ」に落ち着く。 おおいに世間に知らしめたい。



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『メディチと薔薇の娘』 その他

2019-06-01 08:47:27 | マンガ
 先月半ばに出た秋田書店の新刊。

長池とも子『メディチと薔薇の娘』 プリンセスコミックス(B6サイズ)
 長池さんはまえに『ロレンツォ』で、ロレンツォ・ディ・メディチを描いたことがある(史実と違って美形化されている)。それと同一直線上にあるとみてよい。
 豪商の娘ローザ15歳は、嫁入り先ゲットよりも絵を描くことにひかれている変わり者。母の弟ロレンツォ・ディ・メディチは、彼女の気骨を見込んで(?)、事件の調査に協力させる。 強いて言うなら『ベルばら』のル・ルーを思い出すかな。
 なお、ボッティチェリも絵のうえで美形化されている。
 ローザの父が妻をだいじにしている様子もたいへんよろしい。

↑同時発売の『モネのキッチン』byにしうら染 2巻 (ボニータコミックス 新書サイズ)は、「印象派」誕生、いわゆる「俺たちの戦いはこれからだ!」END(Finというべき?)で、それなりにまとまった感じ。
 『踊る!アントワネット様』『前略 パリは甘くて苦いです。』、この作家はよくよくフランスが好きだな、なにか専門と縁があるのだろうか、ウィキペディアには載ってないだろうかと検索したら、モネ展で以下のものを見つけたので貼っておく。
「スペシャルコンテンツ」
 あずみさんにもこのテの機会があるといいのに~~といつも思う。北欧関連とか、聖書とか『ニーベルングの指環』とか。

コメント (4)
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