宮部みゆきの久々の現代もの新刊『名もなき毒』、珍しく夜更かしして一気読みしてしまった。ミステリーなので、本筋とあまり絡まない点について若干の感想を。
宮部作品をあらかた読んでいるけどキャラ名をほとんど覚えていないので、「私」杉村三郎が『誰か』と共通の主人公だということにしばらく気づかなかった。妻が大会社の会長の娘という境遇が、あっ同じだ、とはすぐに思ったけど。
彼は、事実上入り婿同然状態なので、情けないと親きょうだいにほとんど縁切りされている。これについて、彼らがヨメさんの実家にたかったりしないのは偉い、と感心されることもあるけど、男の面目にこだわりすぎるのもそれはそれでイヤだな、と私は思う。実家と疎遠になっても、妻子への愛のほうを優先させてる杉村三郎は逆説的に男らしくてあっぱれだ。
本筋は、無差別連続殺人事件で、それに杉村の務める編集部でトラブル起こしてクビになったアルバイト員の問題が絡む。シックハウスとかいじめとか現代の問題がちらちらと出てくるばかりでなく、上記バイトの嘘つき女のものすごさ、非常識なんて言葉ではものたりない在り様も、たとえば(読んでないけど)「平気でウソをつく人たち」なんて現象に合っていてアクチュアルなところだろう。
近代科学ゆえの毒は厄介だが、ひとの心の荒廃ゆえの毒はさらに忌まわしい。
ささいな点でツッコミ。
「彼がいかにも劇画的に困った顔をしているので、私も調子を合わせ、平手で額をぺしりと打ってみせた」
「劇画」とは誇張を排して写実性を重んじる方針で生まれたジャンルなので、大げさなことを表しているらしいここはむしろ「マンガ的に」のほうが適切だろうな。
宮部作品をあらかた読んでいるけどキャラ名をほとんど覚えていないので、「私」杉村三郎が『誰か』と共通の主人公だということにしばらく気づかなかった。妻が大会社の会長の娘という境遇が、あっ同じだ、とはすぐに思ったけど。
彼は、事実上入り婿同然状態なので、情けないと親きょうだいにほとんど縁切りされている。これについて、彼らがヨメさんの実家にたかったりしないのは偉い、と感心されることもあるけど、男の面目にこだわりすぎるのもそれはそれでイヤだな、と私は思う。実家と疎遠になっても、妻子への愛のほうを優先させてる杉村三郎は逆説的に男らしくてあっぱれだ。
本筋は、無差別連続殺人事件で、それに杉村の務める編集部でトラブル起こしてクビになったアルバイト員の問題が絡む。シックハウスとかいじめとか現代の問題がちらちらと出てくるばかりでなく、上記バイトの嘘つき女のものすごさ、非常識なんて言葉ではものたりない在り様も、たとえば(読んでないけど)「平気でウソをつく人たち」なんて現象に合っていてアクチュアルなところだろう。
近代科学ゆえの毒は厄介だが、ひとの心の荒廃ゆえの毒はさらに忌まわしい。
ささいな点でツッコミ。
「彼がいかにも劇画的に困った顔をしているので、私も調子を合わせ、平手で額をぺしりと打ってみせた」
「劇画」とは誇張を排して写実性を重んじる方針で生まれたジャンルなので、大げさなことを表しているらしいここはむしろ「マンガ的に」のほうが適切だろうな。