レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

キホーテ神父 氷雪のマンハント 等

2016-12-30 09:19:01 | 
グレアム・グリーン『キホーテ神父』

 かの有名なドン・キホーテの子孫(直径ではなかろう)である善良な神父と元町長サンチョが旅に出る。神父の愛車ロシナンテを駆りながら、敬虔な神父とコミュニズム信奉者の元町長が和気あいあいと議論している。
 『処女の祈り』というタイトルにだまされて見た映画がポルノで、でも絡みシーンの意味が理解できない神父とツッコミ入れるサンチョはたいへん面白い。


シュテフェン・ヤコブセン『氷雪のマンハント』
 急死した大富豪の金庫に入っていたDVDは、残虐な人間狩りが撮影されていた。発見した娘はその首謀者が父だと確信し、ほかの参加者と被害者の身元調査を探偵に依頼する。一方、結婚したての元兵士が謎の自殺を遂げる。それにあたった女性警視は残された妻の行動に不審な点を感じる。
 ・・・異常な犯人たちにぜひ天誅を加えてくれ!という気持ちでぐいぐい読めた。


フワン・ラモン・サラゴサ『煙草 カリフォルニアウイルス』
 国際ニュースのロンドン支局のミチェルは、煙草の原料が被害にある新種のウイルスのことを耳に挟む。そして世界各地でそのウイルスが暴れ始める。
 正攻法のわりにちょっと奇妙な後味の物語。

 ところで、この主人公の名前は、英国人であるならばマイケルの表記のほうが妥当ではないだろうか。ほかの登場人物もほとんど英語の名前だし。

 作者が何人か、何語で書かれているか、登場人物、舞台等が一致していないことは珍しくない。スペインの作品だけどスペイン以外が舞台である例がたいへんよく目につく気がするのは気のせいだろうか。4月にハヤカワ文庫で出た『トレモア海岸最後の夜』byミケル・サンティアゴも、舞台はアイルランドで登場するのはイギリス人だったし。
 ドイツ産の『悪徳小説家』、イタリア産の『六人目の少女』等、どこの話だと特定しにくい作品はある。逆に、はっきりとどこが舞台かを表に出したものは・・・たぶんそのほうが多い。特にそれを強調する意図がないにしても。私はどちらかといえば後者のほうが好きだが。


『心理療法士ベリマンの孤独』カミラ・グレーベ&オーサ&トレフ
 ハヤカワ文庫で今年出たスウェーデン産。
 夫を亡くした痛手をまだひきずっているシリ・ベリマンは友人とともに診療所を設けている。患者の若い女はつきあい始めた年長の男のことで不信感を漏らしていたが、謎の死を遂げる。シリの周囲でも、飼い猫が行方不明になり、彼女を中傷する手紙が患者に送られるなどの不気味な事件があいつぐ。
 犯人の動機に伏線不足な気はするが面白く読めた。夏至祭とかザリガニパーティとか、外国物を読む際に私はこういう描写を期待するほうである。


以下は、去年書いてまだ投下していなかったぶん。

ハヴェル・コホウト『プラハの深い夜』
 1945年。プラハでドイツ人男爵夫人が惨殺される事件が起きる。抗独活動とのつながりも疑われ、ドイツ人検事ブーバックが派遣され、チェコ人刑事モラヴァと協力することになる。45年といえばもう戦争も末期、ドイツの敗戦も目前という状態であることは読者もわかっている。占領下での殺人という状況は『将軍たちの夜』(ハンス・キルスト)を思い出させるし、本来敵対する二人というのは『ゲルマニア』もある。
 同じ作家の『愛と死の踊り』は1944年に始まり、チェコ・モラヴィアの保護区(占領下ということだな)での軍司令官の娘が寄宿舎から両親の元へ呼び寄せられ、冷ややかな美貌の士官に恋する。 これも戦時下しかも末期が舞台である、しかしミステリー色はほぼない。滅び、倒錯の要素が濃厚で、残グリ向きかもしれない。

 まったく毛色は違うが同じチェコ作品ということで『カールシュタイン城夜話』(フランティシェク・クプカ 風濤社)。14世紀、プラハに都を構えるカレル4世が静養のために腹心たちと共に田舎に行き、各自が物語を聞かせ合うという枠物語。様々な女たちのありようが語られる。私にとってはやはり、ただ美しいというだけでそれがよからぬ欲望をひきおこしてしまった不幸の話が、怒りをかきたてるという意味で印象に残る。彼女が静かに、尊敬されて余生をおくったという点が救いではあるけど。(たまには、男どもにだけ罰が下る話はないのかい!)
 この本の装丁がずいぶんヘンテコな絵である。まっとうな内容なのになぜこんなグロテスクな絵を使ったのか不満である。


『フラテイの暗号』 ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン 創元推理文庫
 西の離れ小島で、デンマーク人学者の死体が発見されたことから始まる。
 ところで、アイスランドといえば小さい国!という先入観があるもので、その中で西部とか東部とか言ってるとなんだか奇妙な感じがするのだけど、「九州と四国と合わせたくらい」の大きさなのだから、当然その中でも地域差があり、都市も田舎もあるはずなのだ、とあたりまえのことに驚いてしまった。
 中世の書物『フラテイの書』をめぐる会話があちこちに挟まれる。オーラヴ・トリュグヴァソンやハラルド美髪王も出てくるので、あずみ椋読者には親しめる要素が多い。(しかしこの方面に関して訳者の知識はいまひとつのようである。
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来月の新刊、ハードナッツ4巻

2016-12-26 08:54:38 | マンガ
 このごろ、コミックスと文庫の発売予定を調べるために使っていたサイトが役立たずなので、書店に張り出してあるリストを点検する。落ち着かないので見落としはあるだろう。
購入予定は
『薔薇王の葬列』7巻
『ベルサイユのばら』13
『王妃マルゴ』5巻
山下友美さんのハーレクイン
桑田乃梨子『明日も未解決』

 歴史もの率が半分以上。
 『ベルばら』は、本来の全10巻のあとに「エピソード集」を「11」「12」とまるでストレートな続きのようにしたことは大きな間違いである。今回収録の「オスカル編」は某掲示板で非難の嵐であった、それが「13」とは不吉な偶然。


 2,3年前に「女性自身」であずみ椋さんの連載が載ったので、買いたくもない雑誌を18回買った。その後、ご本人が同人誌として4冊本で出して下さったので、本誌の切り閉じ(私の造語)は手放した(捨てるのももったいないので、いっしょに原画展に行ったことのある、いまは実家に戻っている友達に送った)。

 「女性自身」のマンガは、4コマものが2種類と少し長い(12P)ものが1本と決まっているらしい。「女性セブン」では掲載マンガがけっこうコミックスが出るしヒット作もあるけど、「女性自身」では単行本が出ない。それなのになぜか『ハードナッツ』by大竹とも だけ、A5サイズで出ている。「かわいさゼロのネコマンガ」のコピーのとおり、ほんとにかわいくないネコたちと、飼い主たちの日常ものがたり。これも私は気に入っている。4巻が最近出た。「主婦 とねちよ子」が、頂き物の高級なチーズを旦那が無造作に食べてしまったことに腹を立て、息子が親父に、立派な箱に入っているのは食べていいか尋ねる、袋のは食べていい、と教えをたれるエピが地味におかしい。この旦那は、「しょうが」を買ってきてと言われて「紅しょうが」を買ったりするけど、うるさくないのはいいと思う。

 ところで、先日なんとなく「女性自身」を手にしたら、連載にけっこう大物作家つかってるじゃないか! ・・・単行本、出してるよ。私がムカっとしたことは言うまでもない。


 マンガ雑誌の中には、同人誌からスカウトしたメンバーで成り立っているものも珍しくなく、そういう雑誌では作家たちのコミケ情報も堂々と載っていたりする(私の知っている時代はそうだった、この10年ほどは知らん)。
 しかし、そうでなくても、少なくとも、そこの掲載作品が単行本にならなくて自費で出したつまり同人誌として出したという場合くらい、その掲載誌でも情報を載せてくれてもいいんじゃないのか?と、『趣味じゃない園芸』の時も思った。
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きのうの日記

2016-12-24 10:19:48 | 雑記
 私の行く大学は、曜日ごとのコマ数の偏りを防ぐため、必ずしもカレンダーの通りに休みにならない。昨日が今年最終日の授業であった。だから大学へ。

 でもまあ勉強は少しで切り上げて、季節柄、『第九』関連の番組を見せた。

 休み前の日には弁当持参をしないで外食する「ひとり打ち上げ」の習慣で、今回は久々に(たこ焼きでなく)SOUP STOCKで食べる。そのあと町田へ。アニメイトでヘタリアの新グッズのクリアファイルとマスキングテープを買った。たいへんな行列で20分かかった。この店舗はわりに最近リニューアルがあって広くなったが、その影響だろうか。

 向かいにあるBookoffで2冊購入。

 地元図書館で、予約というよりも取り寄せ本で届いているものが多いので半分を借りていく。

 『貧乏お嬢様のクリスマス』をこの際だから買う。
 
 「まんがタイムスペシャル」の今月号を買う。

 前日から読み始めていた『神の棘』by須賀しのぶ を電車内で読み終わり返却した。須賀さんの『また、桜の国で』は図書館の「新着図書」でチェックしていたが、直木賞候補ということで希望者が増えるだろう。・・・買ってもいいかな。
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父帰る  ジョー・ネスボ

2016-12-15 13:50:54 | 
菊池寛『父帰る  藤十郎の恋』

 岩波文庫の新刊。
 『恩讐の彼方に』の戯曲バージョン『敵討以上』もはいっている。主の妾と密通して成敗されそうになって逆に殺してしまった若侍が、のちに出家して、難所にトンネルを掘り始める。そこへ主の息子が敵討ちに来るーーという話は有名であろう。
 そもそもの元凶である悪辣な女がどうなったのか、まったく言及していない点が上品である。

 『父帰る』の逆みたいな、『放蕩息子』みたいな、『息子』という戯曲は作者誰だったろうか。徳大寺伸さんの指導する劇団の公演で見たことがある。


ジョー・ネスボ『この雪と血を』
 街の裏稼業を仕切るボスに雇われた殺し屋、浮気したボスの妻を殺すように命じられたが、一目惚れしてしまった。
ーーけっこうベタベタ感がある、でもやはりほろりとくる、鮮やかで切ない純愛もの要素がある。
 この作家は、オスロが舞台の「ハリー・ホーレ」シリーズが代表的。私はまず単発ものの『ヘッドハンターズ』を読んで、その次にシリーズ第1作、(2作目は未邦訳)3作目、と読んだ。ここまでの印象は、すごく面白いというほどでも、つまらんからやめようと思うほどでもなかった。今年単発ものが2作邦訳が出たので、それを読んでみて、さらに読み続けるかどうか決めようと思った。それで『この雪~』を読んだ結果、続けることにして、4作目『ネメシス』、7作目『スノーマン』まで読了。最初に日本で紹介されたのが『スノーマン』で、なるほどこれが一番面白かった。既婚子持ちの女たちが奇妙に失踪する事件が密かに多数生じていることに気づいたハリー、別れたはずの恋人との未練、新人美人刑事の謎。




 ところで、女の不貞・ふしだらを罰する、裁くという姿勢で連続殺人やらかす男の話ってしばしばある。『相棒』のXXだってそれだったし。その性別逆の例はきいたことがない。そんなもんいちいち殺してたらキリなしなのだろうか。
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これからしばらくの間にするべきこと

2016-12-12 07:48:26 | 雑記
・先週から行方不明である○○を、自室でもう少し捜索してみる。出てこなければ再発行手続きをする。
・クリスマスカードと年賀状を書く。
・部屋のBGMとしてクリスマスCDを引っ張り出す。セーラームーン2枚とドイツ産数枚。
・先月買った「マルチプレーヤー」で、CDからCDへとダビングするやり方をきちんと理解して実行する。
・期末テスト等をつくる。
・終わってから又は一区切りついてから読もうと思っていたコミックスを読む。
 
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マギー・ホープの新刊その他

2016-12-01 06:19:43 | 
ジョルジョ・ファレッティ『僕は、殺す』  文春文庫2007年
 治安の良さを誇るモナコで起きる連続殺人、被害者は著名人の若い美男ばかり。
 モンテカルロのラジオ番組の人気DJの元に、犯人は予告の電話をよこし、流す音楽で標的を暗示する。
 

スーザン・イーリア・マクニール『ファーストレディの秘密のゲスト』
 創元推理文庫の新刊。マギー・ホープのシリーズ。
 時は1942年、つまり大戦中であり、アメリカもついに参戦している。
 マギーはチャーチルに随行してアメリカへ。大統領夫妻は国内にも多くの敵を抱えている。夫人エリノアを狙った陰謀阻止に、そして理不尽な裁きで死刑判決を受けた黒人青年への助命活動に、マギーも関わっていくことになる。
 これでもかとばかりに実在の有名人たちが、大物政治家だけでなく文化人もぞろぞろと登場している。

 

 目下、図書館で順番待ちしているのは、酒井順子『朝からスキャンダル』『字を書く女』、スウェーデンミステリー『熊と踊れ』『満潮』、 『坊ちゃんのそれから』。
 予約者がいなくなってからにしようと思っている小路幸也等が数冊ある。
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