弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

NHKスペシャル「日米安保50年」

2010-12-12 18:09:06 | 歴史・社会
12月11日のNHKスペシャルシリーズ 日米安保50年 第4回 日本の未来をどう守るのかを途中から観ました。

NHKが行った世論調査を踏まえながら、以下の人たちで討論が行われました。
○福山哲郎 内閣官房副長官
○寺島実郎 日本総合研究所理事長 
○田中均  日本総研国際戦略研究所理事長
○添谷芳秀 慶應義塾大学東アジア研究所所長
○豊下楢彦 関西学院大学法学部教授
○キャスター・国谷裕子

この議論を聞いたこととも関連して感じたことを何点か。

キャスターの国谷さんが「自主外交」「対米従属からの脱却」という観点で話題を提供したことに対し、さまざまな議論がありました。

私は今、永井陽之助著「平和の代償 (中公叢書)」を読み返しています。こちらこちらに書いたように、私は図書館で「平和の代償」を借りて読んだのですが、一読で内容を理解するには至らず、5500円で古書を入手したのです。
この本を読むと、印象に残る箇所が随所に見つかります。

『(戦後の日本人にとって)「防衛」とは、自国のためであり、また、そうでなければならないということが、疑わざる当然の前提のようになっている。その前提そのものが少しも疑われていない。戦後われわれ日本人が、いかに国際的責任感と、平和への連帯意識を喪失し、一種の孤立主義に陥っているかの証拠である。国連中心の日本が、海外派兵の義務を拒否して、権利のみ主張する態度にもそれがあらわれているが、防衛とは自国のためだけでは決してないのだ。隣人のためなのである。アメリカのためであり、ソ連、中国のためであり、南北朝鮮、台湾、あるいは東南アジア諸国民のためでもある。(p65)』

『「全能の幻想」とは、自国だけの「一方的行為」で、国際問題や紛争が、すべて片づくと考える妄想である。国際政治はつねに、対他的行動であって、相手方の出方に依存していること、を無視することである。(p73)』
(原著の傍点部を太字にしました)

鳩山前首相が普天間問題について「国外、少なくとも県外」と連呼したことについては、鳩山氏が「全能の幻想」に陥っていたと考えると説明がつきます。
つい先ごろの尖閣問題についていえば、民主党政権が「国内法に基づいて粛々と対応」と述べていた頃はまさに「全能の幻想」に陥っていたようです。それが、レアメタル禁輸と邦人4人逮捕のニュースに接したとたんにもろくも崩れました。

これからの日本の安全保障についても、「日本は米国の言いなりではないか」との主張は、裏を返せば「主権国家として自主的に安全保障政策を立案すべきだ」ということになりますが、関係諸国が日本の提案を受け入れてくれない限りなんの役にも立たない、ということにまず気付くべきでしょう。

番組では、「今後の日本の安全保障はどのように進めるべきか」という世論調査の結果を示していました。①「日米同盟を基軸に」は19%しか得られず、正確な表現は覚えていないのですが②「アジアの諸国と相互安全保障」といった選択肢に半分ぐらいの得票がありました。設問の構造からいって、②は①を前提にしていないことになります。
しかし、番組出席者が述べていましたが、日本が安全保障問題でアジア諸国から尊敬され、重きを置かれるとしたら、それは日本が日米同盟を堅持しているからに他なりません。日米同盟を軽視する現在の民主党政権に対して、東アジアの諸国は唖然としているでしょうし、“そんな政策で東アジアの安全を毀損してほしくない”というのが本心でしょう。
今回の世論調査結果を見る限りでは、日本国民の「全能の幻想」はまだ強固に実在しているようです。

ところで、すでに放映されたシリーズ日米安保50年第2回は、副題が「沖縄 “平和”の代償」でした。私は見なかったのですが、放映後に気づきました。「平和の代償」といえば、安全保障の世界では、永井陽之助氏の著書名であることは周知の筈です。番組製作者はどのような意図でこの副題を決めたのでしょうか。もし「永井陽之助氏の著書名は知らなかった」というのであれば“もぐり”といわざるを得ません。
コメント
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