弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

雑誌「ZAITEN」で弁理士特集

2009-12-08 23:11:29 | 弁理士
雑誌「ZAITEN」1月号の第2特集が「弁理士」ということで、さっそく購入してみました。
ZAITEN (財界展望) 2010年 01月号 [雑誌]

財界展望社

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『全国8320人 知られざる弁理士の「仕事とカネ」』
『一般に馴染みの薄い弁理士。かつては特許庁の代理手続が主な仕事だったが、昨今の国際化の波と司法制度改革のあおりを受けて、仕事の内容が大きく変更している。-本誌特集班-』

記者がいろいろと取材して記事を書いたのでしょうが、当事者であるわれわれから見ると、実際の姿とは異なった内容が見受けられます。一応、私の見解を記しておきましょう。

記事「2次試験に工学系の問題が主に出題されるため、弁理士全体の8割が理科系出身者である。」
見解:「8割が理工系」は正しいでしょう。その理由が間違っています。工学系の問題は2次試験の選択科目で出題されますが、選択科目として法律系を選ぶことができますから、その点では文化系も受験できます。8割が理科系である理由は、弁理士業務の大部分を占める特許関連業務が、理科系の素養を要求しているからです。

記事「なぜ、そこまで資格試験に時間を要するのか。それは、試験が司法試験に次いで難関とされているからだ。」
見解:私は、資格試験の難易度を、合格までに必要とする勉強時間で比較しています。現在、要領の良い受験生であれば1500~2000時間程度の勉強時間で弁理士試験に合格できるでしょう。そうすると、2000~5000時間の勉強をしないと合格できないと思われる税理士、司法書士の方がよっぽどの難関資格であると言えます。

記事「多くの受験者が筆記試験は受かったものの、次のステップに進めないという難関試験でもある。」
見解:今年は筆記試験の後の口述試験合格率が80%まで下がりましたが、去年まではそれほど低い合格率ではありませんでした。そもそも80%であっても、それが弁理士試験の難関度を上げているわけではありません。筆記試験が難しいのです。

記事「かつては、試験に合格すればすぐに弁理士として仕事かできたが、08年からは新人研修として、毎年12月末から3月にかけて実務研修を行わないと弁理士として登録ができないようになった。この背景には、クライアントからの仕事に対する苦情が増えてきたということがあげられる。」
見解:弁理士試験は今も昔も、法律の試験であり、実務能力を問う試験ではありません。従って昔でも、試験に合格しただけでは実務者として十分ではありませんでした。ただ合格人数が少なかったから、目立たなかっただけです。昔は、受験者の多くが実務経験を積んだ実務者であったという事情もあります。今は、実務未経験者が大量に合格しています。

記事「原則として、特許出願をしてから1年半は他社の動きや業界の動向を見るために、出願したことを秘密にしておくという。・・・1年半を過ぎたあたりから、本格的に特許申請に向けて動き出すのだ。」
見解:ちょっと意味不明の記事です。出願から1年半というのは、公開公報が発行されるまでの期限を言っているようです。出願人の意思ではありません。
上記の記事に続いて、弁理士のトオルさん(仮名)の発言として「この手はずを踏むと、どうしても特許申請には数年かかってしまい、その間に案件を管理し続けるのは大変なこと。書類も、少しでも間違いがあると突き返されてしまう。多くの弁理士は1人で事務所を開設していますが、正直、大変だなぁと思います。」とあります。この発言内容も、弁理士業務の何について言っているのかよくわかりません。出願から権利取得までに数年かかるからといって、別に一人で大変だとは思いませんし。

記事「実年齢よりも若く見られる弁理士が多いのも、常に最先端の技術や商品を扱っているからだとある弁理士は分析する。実際に、他のサムライ業と違い飄々と仕事をこなし、明るい性格の人が目立つ。」
見解:そうですか。他人様からのそのような評価はありがたく受け取ることにしましょう。


上記記事の後、
『筒井大和・日本弁理士会会長 「質の高い弁理士を維持することが最大の課題です」』というインタビュー記事が続きます。
こちらについては特にコメントはありません。
コメント (2)
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