<284> 大和に見るツツジ科の仲間たち (4)
馬酔木咲く 奈良公園の そこかしこ
今回はツツジ科の中で、アセビ属のアセビ、ネジキ属のネジキ、スノキ属のアクシバ、ナツハゼ、ウスノキを紹介したいと思う。アセビとネジキは大和のほぼ全域に見られ、常緑低木のアセビは低山にも深山にも自生し、植木にされたものも見られる。古くは『万葉集』にも登場し、奈良公園の一帯に多く、奈良においては春を告げる花として親しまれている。
落葉低木のネジキは、幹がねじれたように見えるのでこの名がある。なので、花がない時期でもそれとわかる。花はアセビに似て、白く細長い壷形の花を鈴なりに連ね、下向きに咲く。しかし、アセビと違って葉に隠れるようにつくので、花の多い割には目立たないところがある。
落葉小低木のアクシバは全国的に分布し、アセビやネジキほどではないが、大和でもほぼ全域、低山にも標高の高い山岳でも見ることが出来る。花は六、七月ごろで、花冠の裂片が反り返って巻き、その部分が淡紅色で美しく見える。
落葉低木のナツハゼは大和の北中部に多いが、私は、果実のみで、まだ、花にはお目にかかっていない、地味な花なので目につき難いところがある。果実は黒紫色で、紅葉の下でよく目につく。その紅葉と果実は印象に残る。落葉低木のウスノキは大和の北部から南部まで見られるが、北部に多いという指摘がある。艶のある赤い果実が餅を搗く臼のような形に見えるのでこの名がある。五月ごろかわいらしい花を咲かせる。
ツツジ科の仲間は毒性を有するものが多く、シカが口にしない。奈良公園の一帯にアセビが多いのは、シカの食害を免れているからとも言われる。これは以前にも触れたが、毒性を持ったレンゲツツジが若草山の草原に見られることもアセビに同じであると言える。もちろんのこと、シカによる植生への影響は奈良公園だけでなく、大和の全域に及んでいることで、大和がツツジの宝庫であるというのもツツジに有毒なものが多く、シカの食害を免れていることもその一因としてあげ得ると言ってよい。
では、今回の(4)をもって「大和に見るツツジ科の仲間たち」の項を終わる。なお、大和におけるツツジについてはモチツツジとヤマツツジの雑種であるミヤコツツジ、大和の南部に自生するオンツツジやウンゼンツツジなどがまだ接触出来ていない点、それに、曽爾村の屏風岩公苑の柱状節理の岩壁に見られるツツジがミツバツツジかコバノミツバツツジかの判別が出来ていない点、更に、御杖村の三峰山のシロツツジが如何なるツツジかなどが今後の課題としてあげられる。また、大和に自生するツツジ科のほかの木々にも関心があるので、私としては、今後も見て歩く必要を感じている。 写真は左からアセビ(大和高原の神野山)、ネジキ(上北山村の山中)、アクシバ(天川村の山中)、ナツハゼ(果実・下市町の山中)、ウスノキ(吉野町の龍門岳)。
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