大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年07月04日 | 植物

<2013> 大和の花 (259) アマドコロ (甘野老)                                          ユリ科 アマドコロ属

 今少しユリ科の草花を追ってみたいと思う。まずはアマドコロ属。アマドコロ属はアマドコロ(甘野老)やナルコユリ(鳴子百合)のように花柄に苞葉のないものと、ワニグチソウ(鰐口草)のように苞葉のあるものとに大きく分けられる。ユリの仲間らしく、6個の花被に6個の雄しべがあり、花式図では6の数字が並ぶ特徴があり、筒状花の基部は合着する。実は液果となる。では、まず、アマドコロ属の代表種であるアマドコロから。

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 アマドコロは山野の草地や湿地に生える多年草で、高さは30センチから60センチほどになる。茎に稜のあるのが特徴で、上半部は弓状にゆるく曲がる。長楕円形の葉は無柄で上向きに互生する。花期は4月から5月ごろで、葉腋から花柄を垂れⅠ個から2個の白色筒状の花が茎に沿って連なるようにつける。花の先端部は緑色になる。実は球形の液果で、秋に黒紫色に熟す。

 アマドコロ(甘野老)は、横に這う根茎に節があり、ヤマノイモ科のトコロ(野老・別名オニドコロ)に似るとともに、甘く食べられるのでこの名があると言われる。『万葉集』の4首に登場する「にこぐさ」にアマドコロ説がある。所謂、万葉植物にあげられている。食用のみならず、萎蕤(いずい)の生薬名でも知られる薬用植物で、根茎を日干しにし、煎じて服用すれば滋養強壮によく、打撲傷には磨り潰した根茎を食酢で固め患部に塗布すれば効能があるという。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、ヨーロッパや東アジアに広く見られ、大和(奈良県)でも自生が見られる。なお、アマドコロはナルコユリによく似て紛らわしいが、アマドコロの茎には稜があるのに対し、ナルコユリの茎には稜がなく、丸みがあるので見分けられる。 写真はアマドコロ(曽爾高原)。左の写真は若い茎の花。   少年が自転車を漕ぎ行き過ぎぬサッカーボール前籠に入れ

<2014> 大和の花 (260) ナルコユリ (鳴子百合)                                  ユリ科 アマドコロ属

                     

  ナルコユリ(鳴子百合)の鳴子は紐縄に多くの板を吊るして田畑に張り渡し、その紐縄を引っ張って吊るした板を揺らして鳴らし鳥や獣を追い払う食害避けの道具である。古くは引板(ひきた)と呼ばれ、『万葉集』の歌にも「衣手に水渋(みしぶ)つくまで植ゑし田を引板わが延(は)へ守れる苦し」(巻8・1634・詠人未詳)とある。その意は「袖に水渋がつくほど苦労して植えた田を鳴子など引き渡して守るのは苦しい」と直訳出来る。

  葉腋から垂れ下る白色筒状の花が茎に連なるように咲く姿をこの引板の鳴子に見立ててこの名があると言われる。山野の林縁や草叢に生える多年草で、高さは大きいもので80センチほどになり、上部は弓状に曲がり、アマドコロよりも一回り大きい。茎はアマドコロと異なり、稜がなく、まるいので触れば簡単に判別出来る。葉はアマドコロより細長く、披針形から狭披針形で、あまり反らない。

  花期は5月から6月ごろで、葉腋から細い花柄を出し、複数の白い筒状花を垂れ下げて連ねるので、この花に鳴子が連想されたわけでる。筒状花の先端部は緑色で、アマドコロより全体に花数が多い傾向にある。全国的に分布し、国外では朝鮮半島で見られ、園芸品も多く、庭園にも植えられている。大和(奈良県)でも事情は同じで、植えられたものが結構目につく。なお、ナルコユリは若芽を山菜として食用にされ、アマドコロと同じく、黄精(おうせい)の生薬名で知られる薬用植物で、根茎に滋養強壮の効能があると言われる。 写真はナルコユリ。左は植栽起源の野生化したものか(ダイヤモンドトレ―ルニ上山)。右は花のアップ。

   弓なりに花を連ねて鳴子百合 花の数をし夢を抱ける

 

<2015> 大和の花 (261) ミヤマナルコユリ (深山鳴子百合)                     ユリ科 アマドコロ属

                                             

  山地の林内や岩場に見られる高さが30センチから60センチになる多年草で、ナルコユリやアマドコロに似るが、茎に稜があり、葉が狭長楕円形から広楕円形で、裏面が粉白色であるため、披針形の葉を有するナルコユリとも、花のつき方が異なるアマドコロとも区別出来る。

  花期は5月から6月ごろで、葉腋から花柄が斜上して2、3枝を分け、先が緑色を帯びる白色筒状のかわいらしい花を茎の左右につける。実は液果で、黒紫色に熟す。全国的に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では低山でも深山でもときおり見受けられる。 写真はミヤマナルコユリ(金剛山・実の写真は大台ヶ原山)。   西瓜好きの母にして我が西瓜好き

 

 


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