大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年04月27日 | 植物

<966> 花の大和 (1) フジ (藤)

            藤の花 春日の宮の そこここに

  桜はほぼ終わったが、大和のゴールデンウイークは、桜に続く花がこれからであり、花のゴールデンウイークと呼んでもよい。山野に恵まれた大和には古社寺も多く、山野はもちろんのこと、社寺には庭がつきもので、その庭には草木が見られ、草木にはゴールデンウイークのこの時期に花が咲くものが結構多く見られる。まず、フジ(藤)が咲き、ボタン(牡丹)、そして、シャクナゲ(石楠花)、ツツジ(躑躅)、カキツバタ(杜若)と次々に花を見せる。という次第で、この項から順次、大和のこれらの花について紹介してみたいと思う。では、最初にフジの花。

                                                        

 大和はフジの多いところで、自生するものは低山帯に多く見られ、蔓性であるため、他の木に巻きついて生育する。植えられたフジは棚に這わせ、棚から一面に花が垂れ下るところを鑑賞する。『万葉集』には次のような奈良におけるフジの花を詠んだ歌がある。

   藤波の花は盛りになりにけり平城(なら)の京(みやこ)を思ほすや君            巻 三 ( 330 )     大伴四綱 

   春日野の藤は散りにて何をかも御狩の人の折りてかざさむ                                巻 十 (1974) 詠人未詳

 この万葉歌が示すように、フジの多い大和においても、奈良の春日山周辺はフジの多いところだったのだろう。現在も多いところであるが、これは藤原氏に縁の春日大社があり、神紋にもフジの花が用いられているように、特別天然記念物である春日山原始林の森とともにフジを大切に扱って来たことにもその要因が見受けられる。

  で、古来より春日大社には内侍殿北側の七寄生木の藤、春日若宮の八房藤(八つ藤・樹齢五百年超)、前庭の砂ずりの藤(樹齢七百年超)などが知られるとともに、社殿の周辺にもフジが多く自生して見える。また、春日大社神苑の萬葉植物園には「藤の園」が設けられ、二十種二百本のフジが一同に植えられ、ゴールデンウイーク中が見ごろである。 写真は砂ずりの藤(左)と春日奥山のフジ。春日若宮の八房藤とこの春日奥山のフジは花期が遅く、五月十日過ぎが見ごろとなる。なお、これらのフジは一名ノダフジというフジで、蔓が右巻きに巻き上がるヤマフジに対し、左巻きに巻き上がる特徴がある。大和に野生するフジはほぼこのノダフジのフジであると言われる。

 

 


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