<1496> 節 分
節分や 鬼の面目 所作に見ゆ
今日二月三日は節分、明日は立春。暦の上ではこの両日が冬と春の節目。ために来る年の始まりの季節ということで、一年の安寧と多幸を祈願し、災いを払う習わしとして節分祭(節分会)が行なわれ、追儺(ついな・おにやらい)の行事が催される。追儺には豆撒きによって、所謂、災厄をもたらす元凶の鬼を追い払う「鬼追い」がつきもので、神事や法要とともに社寺で行なわれることが多い。だが、一般家庭でも子供のいる家などでは豆撒きをする風習がある。
奈良大和は古社寺が多く、この追儺の行事は各地の社寺、殊にお寺でよく見られる。「福は内 鬼は外」と声を出し、豆を撒いて鬼を退散させるが、暴れる鬼を将が懲らしめるといった場面設定なども見られる。中には吉野山の金峯山寺蔵王堂のように「福は内 鬼も内」というところも見られる。これは法力によって鬼を調伏し、改心させて受け入れるという発想によるものである。
今日は法隆寺西円堂の鬼追い式(追儺式)に出かけてみた。西円堂は西院伽藍の北西隅に当たる高台の基壇上にあり、薬師如来が祀られている八角堂で、午後六時より法要があり、続いて午後七時過ぎから鬼追い式が行なわれた。燃え盛る松明を順に現われる黒、青、赤の鬼たちが燃え盛る松明をわたされると、その松明を振り回し投げつけ、堂の基壇上を三回廻って暴れ、最後に鬼門(北東)の方角を守護する四天王の一武神、多聞天(毘沙門天)が槍を持って三匹の鬼たちを追い払い、鬼追い式は午後八時に終了した。鬼が投げつける松明が観衆を直撃しないように張りめぐらされた金網越しに約五百人が見守った。
なお、節分には太巻きの巻き寿司を今年のよい方角である恵方に向かって丸かぶりにして食べるとよいという恵方巻きの風習があるが、大阪が発祥のようで、スーパーなどではこの恵方巻き売り場に列が出来、太巻きが飛ぶように売れていた。恵方は十干十二支の干支によると言われ、よいとされる四つの方位が一年ごと順に巡り来るという。因みに今年の恵方は南南東、来年は北北西で、次の年はまた南南東、そして、次は東南東で、西南西となり、また元に戻って、南南東に巡るという。
また、節分にはイワシの頭をヒイラギの枝に挿して玄関先に掲げ置くと鬼がイワシの臭いに閉口して寄り着かないということで、今日はこのイワシとヒイラギも売り場に並べられた。ヒイラギは葉に鋭い棘があり、鬼の目を刺し撃退させるという。こういう次第で、今日は節分商法が見られ、スーパーなどはにぎわった。 写真上段は法隆寺西円堂の鬼追い式で、左から黒鬼、青鬼、赤鬼、毘沙門天。写真下段は左から恵方巻の売り出しに詰めかけた買物客、山積みされた恵方巻、節分のため売り場に並んだヒイラギとイワシ(いずれも大和郡山市内のスーパーで)。
節分や 鬼追ひ払へ 春が来る
節分や 誰の願ひも 福は内
節分や 太巻き売り場に 人だかり
節分や 太巻き恵方 南南東
節分や 鰯の頭 健気なり
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます