大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年02月09日 | 植物

<3676> 奈良県のレッドデータブックの花たち(175) ツ ゲ(黄楊)                            ツゲ科

               

[別名] ホンツゲ(本黄楊・イヌツゲに対する名)

[学名] Buxus microphylla var. japonica

[奈良県のカテゴリー]  絶滅危惧種

[特徴] 山地の石灰岩地や蛇紋岩地に多く見られる常緑低木または小高木で、高さは2~3メートル。大きいものでは9メートルほどになる。樹皮は灰白色から淡褐色で、よく枝を分け繁る。葉は長さが1~3センチの倒卵形で先がやや凹む特徴がある。基部はくさび形。縁に鋸歯はなく、肉厚で、対生する。

  雌雄同株で、花期は3~4月。葉腋に花序を出し、小さな雌雄の花を束生する。淡黄色の小さな花群は中央に雌花が1個、その基部に雄花が数個つき、雌花を囲む。雌雄とも花弁はなく、舌状の花柱3個と雄しべの葯が目につく。実は蒴果。材は黄色を帯び、堅く、木目が細かいので櫛や将棋の駒、印鑑、彫刻、細工物などに利用される。

[分布] 日本の固有種。本州の東北南部以南、四国、九州。

[県内分布] 川上村、上北山村、十津川村。

[記事] 古くは『万葉集』に櫛や枕に用いられた証の歌が見える。所謂、万葉植物で、ツゲ(黄楊)の名は梅雨どきに葉が黄色くなる梅雨黄(つゆき)によるとか、葉が次々につき繁るので「次ぐ」意によるとか諸説ある。黄楊は漢名の黄楊木によるもので、材が黄色を帯び美しいことによるという。楊はヤナギを表す。

  なお、よく似て間違いやすいイヌツゲ(犬黄楊)はモチノキ科の常緑低木で、ツゲとは別種。イヌツゲは葉が互生し、花も白い小さな4弁花で、違いは歴然である。また、園芸種にヒメツゲ(姫黄楊)があるが、ヒメツゲは高さが50センチほどと小さく、葉も一段と小さい。

奈良県のレッドデータブックは、山地や渓谷の岩場にわずかばかり生え、危険要因はシカの食害と見ている。 写真は石灰岩地の岩場で葉を繁らせるツゲ(左)、枝をよく分ける花期のツゲ(中)、花のアップ(右)。いずれも川上村の石灰岩地。

   普段の感知は当たり前のようになっているが

   意識して考えると不思議が纏わりついてくる


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2022年02月09日 | 植物

<3675>「大和の花」追記(1165) ツメレンゲ(爪蓮華)     ベンケイソウ科キリンソウ属

                                                    

 暖地の岩場や民家の石垣、屋根の上などに生えるイワレンゲ(岩蓮華)の仲間の多年草で、ロゼット状の葉をつけ、ロゼットの中心から花茎を立てて高さ6センチから15センチほどになる。多肉質の葉は長さが3センチから6センチの披針形で、先が針状に尖り、扁平なイワレンゲと異なる。葉は赤味を帯びたり、粉白色になったりするものが多い。

 花期は9月から11月ごろで、直立する花茎に小さな白い花を密につける。花弁の先は尖り、雄しべの暗紅色の葯が目につく。ツメレンゲ(爪蓮華)の名はロゼット状の葉を仏像の台座(蓮華座)に、多肉質の先が尖った葉を獣の爪に見立てたことによるという。

 本州の関東地方以西、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国に見られるという。民家の傍に生え、群生することもあって、昔から知られ、江戸時代の中ごろには園芸栽培され始めた。また、シジミチョウの一種クロツバメシジミの食草としても知られる。

   大和(奈良県)では北部地域で激減しているが、南部ではかなりの自生地が見られ、レッドリストには希少種にあげられている。 写真は民家の石垣に生え、花期を迎えたツメレンゲ(左)と花が見られる花茎のアップ(右)。ともに五條市大塔町。

   花はなぜ私たちに愛好されるのだろうか

   それは花が植物の象徴的存在としてあり

   私たちへ植物の貢献度が高いからである