<3676> 奈良県のレッドデータブックの花たち(175) ツ ゲ(黄楊) ツゲ科
[別名] ホンツゲ(本黄楊・イヌツゲに対する名)
[学名] Buxus microphylla var. japonica
[奈良県のカテゴリー] 絶滅危惧種
[特徴] 山地の石灰岩地や蛇紋岩地に多く見られる常緑低木または小高木で、高さは2~3メートル。大きいものでは9メートルほどになる。樹皮は灰白色から淡褐色で、よく枝を分け繁る。葉は長さが1~3センチの倒卵形で先がやや凹む特徴がある。基部はくさび形。縁に鋸歯はなく、肉厚で、対生する。
雌雄同株で、花期は3~4月。葉腋に花序を出し、小さな雌雄の花を束生する。淡黄色の小さな花群は中央に雌花が1個、その基部に雄花が数個つき、雌花を囲む。雌雄とも花弁はなく、舌状の花柱3個と雄しべの葯が目につく。実は蒴果。材は黄色を帯び、堅く、木目が細かいので櫛や将棋の駒、印鑑、彫刻、細工物などに利用される。
[分布] 日本の固有種。本州の東北南部以南、四国、九州。
[県内分布] 川上村、上北山村、十津川村。
[記事] 古くは『万葉集』に櫛や枕に用いられた証の歌が見える。所謂、万葉植物で、ツゲ(黄楊)の名は梅雨どきに葉が黄色くなる梅雨黄(つゆき)によるとか、葉が次々につき繁るので「次ぐ」意によるとか諸説ある。黄楊は漢名の黄楊木によるもので、材が黄色を帯び美しいことによるという。楊はヤナギを表す。
なお、よく似て間違いやすいイヌツゲ(犬黄楊)はモチノキ科の常緑低木で、ツゲとは別種。イヌツゲは葉が互生し、花も白い小さな4弁花で、違いは歴然である。また、園芸種にヒメツゲ(姫黄楊)があるが、ヒメツゲは高さが50センチほどと小さく、葉も一段と小さい。
奈良県のレッドデータブックは、山地や渓谷の岩場にわずかばかり生え、危険要因はシカの食害と見ている。 写真は石灰岩地の岩場で葉を繁らせるツゲ(左)、枝をよく分ける花期のツゲ(中)、花のアップ(右)。いずれも川上村の石灰岩地。
普段の感知は当たり前のようになっているが
意識して考えると不思議が纏わりついてくる