大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年08月23日 | 植物

<3144>  大和の花 (1097) ヒカゲイノコズチ (日陰猪子槌)                              ヒユ科 イノコズチ属

                       

 ヒユ科の多年草であるイノコズチは、最近、日当たりのよい道端や荒地などに生えるヒナタイノコズチ(日向猪子槌)と日陰に生えるヒカゲイノコズチ(日陰猪子槌)に分けられ、近縁種に葉がヤナギの葉に似て細いヤナギイノコズチ(柳猪子槌)や葉の先が丸いマルバイノコズチ(丸葉猪子槌)がある。なお、種としてイノコズチという場合、ヒカゲイノコズチを指す。

   ヒカゲイノコズチは4稜形の茎がよく分岐し、やや膨らむ赤紫色を帯びた節を有し、高さが50センチから1メートルほどになる。葉は長さが5センチから15センチの長楕円形で薄く、先が尖る。葉柄はごく短く、対生し、群生することが多い。

 花期は8月から9月ごろで、茎頂や枝先に細い花序を伸ばし、小さな花をヒナタイノコズチよりまばらに連ねる。実を包む小苞が刺状になり、これによって獣の体や衣服などにひっつき、種子の散布が行われる。本種は本州、四国、九州に分布し、中国、台湾などにもみられるという。大和(奈良県)では各地で見られる。イノコズチのイノコはイノシシの子のことで、茎の節が太いのをイノコの膝頭に見立てたことによるという。

   今は普通に見られる雑草であるが、漢方では乾燥した根を牛膝(ごしつ)と呼び、利尿、脚気、通経、強精などに用い、大和(奈良県)では薬草として栽培された時代があったという。また、若い葉は茹でて水にさらし、和え物や浸し物、油いため、振りかけなどにして食べるという。 写真は群生するヒカゲイノコズチ(左)と花序のアップ(右・ヒナタイノコズチより長い特徴がある)。 

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