<3118> 大和の花 (1081) ツタ (蔦) ブドウ科 ツタ属
ツタは北アメリカと東アジアの温帯に見られるブドウ科ツタ属約15種の総称であるとともに北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島や中国にも見られる在来種を指す固有の名でもある。ここではアマヅラ(甘蔓)、ナツヅタ(夏蔦)、モミジヅタ(紅葉蔦)の別名を持つ後者の在来のツタについて見てみたいと思う。
ツタ(蔦)は山野の林内や林縁に生える落葉つる性の木本で、節から先に吸盤がついた巻き髭を伸ばし、この巻き髭の吸盤によって他の樹木や岩壁に取りつき這い登る。葉は2形あり、1つは花のつく短枝の葉で、大きく、広卵形の上部が3裂し、裂片が鋭く尖り、縁に粗い鋸歯が見られ、質はやや厚く、15センチほどの柄を有する。今一つの葉は花のつかない長枝につき、小さく、切れ込みのないもの、1、3裂するもの、3小葉になるものなどが見られ、柄の短いもの。両方の葉とも紅葉が美しく、小学唱歌にも歌われている。
花期は6月から7月ごろで、短枝から長さが3センチから6センチの集散花序を出し、葉に隠れるように黄緑色の小さな花を多数つける。花弁と雄しべは5個。実は液果で、直径数ミリの球形。熟すと藍黒色になる。近縁種にアメリカヅタがあり、よく似るものにウルシ科のツタウルシがある。
和名ツタ(蔦)の由来は、伝う意、または物を結ぶのに用いたことによる「つな」の意などの説が見られる。別名のアマヅラは樹液を煮詰めて甘味料を作ったことによる。ナツヅタはウコギ科のキヅタ(常緑)のフユヅタ(冬蔦)に対するもの。モミジヅタは葉がモミジに似て紅葉することによる。
なお、ツタは古来より知られ、『万葉集』にも都多、津田と万葉仮名で見えるが、ツタには2系統あって、1つは地錦(つた)、今1つは絡石(つた)で、『万葉集』には「はふつたの」というように枕詞として用いられ、現在の紅葉が美しい落葉木本のツタ、地錦ではなく、絡石の常緑木本テイカカズラとする説が専らで、実に紛らわしいところがある。 写真は葉を繁らせるツタ(左)、固いツボミが目につく花序(中)、11月の紅葉(右)。 論陣の論は斯くあり自らを納得せしむることに始まる