大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年07月14日 | 植物

<3105>  大和の花  (1074) ムシトリナデシコ (虫捕撫子)                                     ナデシコ科 ナデシコ属

                                                       

 ヨーロッパ原産の1年草で、日本には江戸時代の末に渡来し、観賞、切り花用に植えられ、現在では逸出して野生化しているものが日当たりのよい道端や河川敷などでときに見られる。所謂、帰化した外来種で、私は東吉野村の高見川のツルヨシが繁る河原で、紅一点、あたかもそこに自生している草花のように花を咲かせているのに出会い、何という花かと少し気持ちの高ぶったことがあった。調べた結果、本種とわかったのであるが、それはそれで、異郷で生き延びる強い生命力の現われに思えたことではあった。

 茎は直立して上部でよく枝を分け、高さが30センチから70センチほどになる。葉は長さが3センチから5センチのほぼ楕円形で、柄がなく、茎を抱いて対生し、全体に白味を帯びる。花期は5月から6月ごろで、茎頂や上部葉腋に花序を出し、直径1センチほどの紅色から白色まで変化の見られる花を傘状に集め、上を向いて開く。

 茎の節間に粘液を出す箇所があり、この粘液に触れる虫には動けなくなるのでムシトリ(虫捕)の名が冠せられた。だが、この粘液は何を目的にするのか、捕らえた虫から栄養を補給する食虫植物ではないと言われる。別名、ハエトリナデシコ(蠅捕撫子)。 写真は瑞々しい若葉のツルヨシ群の中で艶やかな花を見せるムシトリナデシコと花序のアップ。   梅雨湿り雲が蓋する奈良盆地