<2700> 余聞、余話「凝灰岩層の屯鶴峯を歩く」
遥かなる歴史にありて今があるそしてぼくらは今を旅せる
大阪・奈良府県境の二上山(510メートル)の北西約2キロ(近鉄南大阪線の直ぐ北側)の香芝市穴虫に灰白色の凝灰岩が露出する奇岩の低い山並みがある。この奇岩群が白い鶴が屯(たむろ)しているように見えるところから屯鶴峯(どんづるぼう)と名づけられ、地質的に貴重なところとして、昭和26年(1951年)11月、奈良県の天然記念物に指定され、今に至っている。
凝灰岩は火山灰や火山屑の堆積によって出来るもので、屯鶴峯(154メートル)の奇岩群の奇勝は地質時代第3紀(人類が現れるずっと以前の1000万年以上前)に二上火山群の活動が活発だったとき、二上山の噴火によって大量に降った瀝青岩などを含む火山灰が湖の水底に堆積し、その後の隆起と風雨の浸食によって露出し、出来たものと言われる。
凝灰岩は軟らかく軽い特質を持つため、古くから古墳の石棺や寺院の基壇などに用いられ、量の多い屯鶴峯の凝灰岩はこうした石材としてことあるごとに運び出された言われる。また、戦時中に造られた防空壕があり、その一部が今も京都大学防災研究所の地震予知研究センター屯鶴峯観測所として利用されているという。
凝灰岩地にはどんな植生があり、どんな花が見られるのだろうと、出かけた次第であるが、歩いたのは5月初旬で、クロバイ、ツクバネウツギ?、アカマツなどが目についた。サルトリイバラは実をつけ、テリハノイバラが多く見られたが、花はなかった。入口から歩いて10分ほどの山頂からの眺めはよく、南東方向に二上山の雄岳と雌岳、その向こうに遠く葛城山や金剛山の連なりが望まれ、樹木に被われた屯鶴峯には凝灰岩の灰白色の岩頭を覗かせ、悠久の時の流れの今という時を感じさせるところがあった。
写真上段は左が屯鶴峯の山頂から二上山方面を望む一景。中央奥が二上山の雄岳と雌岳、その右奥に葛城山と金剛山の連なりが望める。手前の二次林の中に白い肌を見せるのが凝灰岩の奇岩群の一部。右は広がる灰白色の凝灰岩層。写真下段は左から花期のクロバイ、花期のツクバネウツギ?、アカマツの花、実をつけたサルトリイバラ。 生はみな個性の発露ほかになき一存在の意義にしてある