大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年06月10日 | 植物

<2354>大和の花 (529)コナスビ(小茄子)とナガエコナスビ (長柄小茄子)    サクラソウ科 オカトラノオ属

           

 コナスビは山野の道端や林縁などに生える多年草で、茎は地を這い斜上して、高さ15センチから30センチほどになり、四方に広がる。全体に軟毛が多く、葉は長さが2センチ前後の卵形から広卵形で、先は尖り、縁には鋸歯がなく、対生する。

  花期は5月から7月ごろで、葉腋に直径7ミリほどの黄色い花を1個ずつつける。花冠は5裂して平開する。雄しべは5個、雌しべは1個。花柄が長さ2、3ミリとごく短いものをコナスビ(小茄子)、8ミリから18ミリと長いものをナガエコナスビ(長柄小茄子)という。実は蒴果で、この実をナスビに見立てこの名があるという。

 コナスビは日本全土のほか、中国、台湾、インドシナ、マレイシアなどに分布し、ナガエコナスビもほぼ同じ分布域と思われる。大和(奈良県)では各地に見られ、垂直分布でも平地から標高1800メートルの山岳まで見える。写真は左2枚がコナスビ、右2枚がナガエコナスビ(花冠裂片の間に見える萼裂片は果期になると蒴果を包む)。 柚子の枝伐れば柚子の香襲ひ来る生きゐるまさに証のやうに

<2355> 大和の花 (530) ミヤマコナスビ (深山小茄子)                   サクラソウ科 オカトラノオ属

                                             

 半日蔭になった林縁や道端などに生える多年草で、茎はつる状になって伸び、節から根を下ろし広がる。葉は長さ2センチほどの卵円形で、鋸歯はなく、腺の黒点が入る特徴があり、対生する。

 花期は6月から7月ごろで、茎上部の葉腋から2、3センチの花柄を出し、黄色の花を普通2個ずつつける。花冠はコナスビより大きく、肉厚で、5裂するが、4裂のものも見られる。全体に毛が多い。

 本州の紀伊半島、四国、九州に分布する日本固有の襲速紀要素系の植物で、大和(奈良県)では十津川村南部の一部に自生地が限られ、個体数も少なく、希少種にあげられている。その名にミヤマ(深山)とあるが、平地の道端で見ることが出来る。 写真はミヤマコナスビ(十津川村の南部)。 水を張る田の広がりや夏大和

<2356> 大和の花 (531) オカトラノオ (岡虎尾)                              サクラソウ科 オカトラノオ属

           

 日当たりのよい丘陵や山地の草地や林縁に生える多年草で、地下茎を長く伸ばして増え、群生することが多い。基部が紅色で、短毛がまばらに生える茎は直立し、高さは60センチから1メートルになる。葉は長さが6センチから13センチの長楕円形で、先端が尖り、鋸歯はなく、互生する。

 花期は6月から7月ごろで、茎頂に長さが10センチから30センチ弱の総状花序を出し、直径1センチほどの5裂した白い花冠の小花を多数密につける。小花は下から順に開花する。花序軸は中途で横に曲がり、尾状に伸びて、先端が上向きになる特徴を有する。オカトラノオ(岡虎尾)の名は生える場所とこの花序の姿による。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国にも見られるという。大和(奈良県)ではそこここに見られ、高原に赴けば出会える。なお、近縁種に葉が細身で花序の先端が垂れる特徴の見られるノジトラノオ(野路虎尾)がある。なお、若芽を食用にする地方もある。中国では薬用にされるようであるが、日本では聞かない。 写真はオカトラノオ。  雨を呼ぶ鳴き声近く雨蛙

<2357> 大和の花 (532) ヌマトラノオ (沼虎尾)                           サクラソウ科 オカトラノオ属

         

 池沼の縁や濠端などの湿地に生えるオカトラノオ(岡虎尾)の仲間の多年草で、地下茎を伸ばして群生することが多く、茎は直立して高さが40センチから70センチになり、茎の基部は赤みを帯びる。葉は長さが4センチから7センチの狭長楕円形で、先は細くなって尖り、互生する。

 花期は7月から8月ごろで、茎頂に長さが20センチ前後の総状花序をまっすぐに立て、5裂した白い花冠の小花を多数密につける。小花は下から順次開花し、咲き上る。他種と異なり、花序は曲がらず、直立するので、見分けられる。

 本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国、インドシナ半島などに見られるという。大和(奈良県)では湿地の草地で見かける。ときに花序の先端がない貧弱な個体に出会うが、これは雑種か、生育不良なのか。 写真はヌマトラノオ。左から群生する花、真っすぐ立つ花序、密生する小花のアップ。この花が咲き始めると夏も本番である。 米朝の首脳会談テレビにて梅雨曇天下の大和において

<2358> 大和の花 (533) ギンレイカ (銀鈴花)                                 サクラソウ科 オカトラノオ属

                

 日の当たる山地の湿り気の多い林内や林縁などに生える多年草で、稜がある茎は上部で分枝し、高さは30センチから60センチになる。葉は長さが5センチから10センチの長楕円形で、基部は翼状の柄となり、互生する。

 花期は6月から7月ごろで、枝先に短い柄を有する長さが5、6ミリの白い小花を横向きにつける。花は平開することなく、下から上へと咲き継いで行く。ヌマトラノオほど花数がなく、全体に地味で、登山道などでも見逃しがちな草花である。萼片に包まれた蒴果の実は直径5ミリほどの球形で、先端部に花柱が残る。

 本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島に見られるという。大和では登山道でまれに出会う。ギンレイカ(銀鈴花)の名は白い花をつけ、実が丸いので銀の鈴と見たか。ギンレイカと対の名を持つ草本にキンレイカ(金鈴花)があるが、これはオミナエシ科で別種。別名のミヤマタゴボウ(深山田牛蒡)は根がゴボウに似るアカバナ科のタゴボウ(チョウジタデ)に擬え、山に生えることによる。  写真はギンレイカ。花期の姿(左)、花のアップ(中)、花と若い実(実は萼片に被われ、先に花柱が残る)。金剛山ほか。   

  梅雨曇天梅雨曇天下なる日本果たして晴れ間は見えて来るのか