<1591> ユ ズ の 花
柚子が咲き花潜が来て花にゐるこの世は生きる同士の世界
庭のユズに花が咲いた。ミカン科らしい白く甘い香りの五弁花で、内側に雌しべを囲んだ三十個ほどの黄色い葯の雄蕊が円筒状に並んでいてかわいらしい。昨年に比べるとぐんと花数を増やしているので今年は収穫量に期待が持てる。
花の一つにコガネムシの仲間のハナムグリ(花潜)が来て頻りに花に頭を突っ込んでいた。蜜を吸っているものと思われる。ハナムグリには毛が密生しているので花から花へ花粉を運ぶ役目が出来る。これは何ともよく出来た仕組みで、両方が両方の役目を果たせる。いわゆる、持ちつ持たれつで、ハナムグリの花にいる姿はそれを思わせる。
ところでユズは「桃栗三年柿八年柚子は九年でなりかねる」といわれ、ところによっては「柚子の大馬鹿十三年」ともいわれる。いわゆる、成長の遅い果樹で知られるが、これは実生からの年月だろう。せっかちに突っ走ることに価値を置く現代人にはそんなに待てないので、品種改良される。
我が家のユズはサザンカがネキリムシにやられて枯死した後に苗木を買って来て植えたもので実生からの歳月はわからないが、植えて四年ほどで実をつけた。最初は確か二個だったと思うが、年々増えており、今年の花数からすれば相当数の収穫が望める。
ゆっくり、それでも年々花を増やし、実をならせているユズの勢いには頼もしいところがある。最初から突っ走るような生き方をするものがあるかと思えば、ユズのようにゆっくりながらも堅実さと力強さをその能力において発揮するようなものもある。
忙しない現代にあっては、どちらかと言えば、スピードを誇る突っ走り型の方が歓迎されるのだろうが、ゆっくりと、しかし、堅実に力強く生きる生き方もまた評価されて然るべきと思える。 写真はユズの花とユズの花に来ているハナムグリの仲間。