大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年07月31日 | 創作

<3846> 写俳二百句(156) 葛茂る

             葛茂るいつもの猫は見えずなり

                        

 奈良盆地の大和地方は連日の猛暑。最近、「熱中症警戒アラ-ト」なる言葉をよく耳にするが、連日の暑さはまさに要注意。コロナ感染者の急拡大とともに高齢者には襲い来る感。その上、体調のよくないこの身にとって耐えがたいところ。

 このような暑さの中にもかかわらず、むしろこの猛暑の日々を好日のごとく繁茂しているのが蔓植物のクズで、そこここに生え出して見える。葉が大きく、蔓をどんどん伸ばして広がるので、辺りを占領し、その上道端まで這い広がる勢いを見せる。

 私が早朝、歩く道の傍の空地にはこのクズやまだ成長なかばのセイタカアワダチソウが繁茂し、クズは道にまで蔓を伸ばし始めている。地域を巡るコミュニティーバスの乗場の近く。

   この辺りでは白に黒の模様があるネコがいて、ときおり見かける。が、辟易の暑さの所為かこのところその姿を見せない。ネコにはネコの事情があるのだが、ネコも暑さに弱いからと勝手に思ったりしている。暑気払いにもならないが。 写真は空地に茂るクズ。


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年07月29日 | 創作

<3844> 写俳二百句(155) 蝉時雨

               蝉時雨命を張ってゐるものら

                                   

 このところ朝になるとクマゼミが一斉に鳴く。その鳴き声は驟雨のごとく、誰が名づけたか、「蝉時雨」。セミは腹部の鼓膜を強い筋力によって振動させ、それを音にして発する。これを鳴くと表現するが、鳴くのはオスばかり。メスへのアピールである。即ち、生殖の一端、自らの子孫を残すための手段である。

   蝉時雨は自然の成り行きの一端として俳句にも取り上げられるが、クマゼミには短い間ながら懸命である。思えば、涙ぐましい光景ではある。 写真は木の幹にとまって鳴き立てるクマゼミ。


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年07月27日 | 創作

<3842> 写俳二百句(154) 草いきれ

             草いきれ旺盛にして辟易の眼

                       

 「草いきれ」を歳時記で引いてみると、「生い茂った夏草の叢(くさむら)が、炎日に灼(や)かれて、むせるような匂いと温気とを発するのを言う。草いきり、草の息とも。「生きれ」とは、蒸されるような熱気である」と見える。真夏の季語。蕪村に「草いきれ人死をると札の立」がある。

 どうしようもない暑さの続く日々。灼けるような炎天の日中、熱中症の警戒アラート。外出もままならない昨日、今日、だが、夏草の叢では生い茂った草が、燃える炎天下、耐えるというよりは旺盛に対しているように見える。その旺盛に触れる眼は果たして限界の辟易にあった。 救急車今日も働く炎天下  写真は道端の草いきれ。


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年07月25日 | 創作

<3840> 写俳二百句(153) スイカ

               スイカとは西瓜なれども水瓜なり

       

 真夏の果物と言えば、スイカがある。原産地は熱帯アフリカ方面。中国では「西からやって来たウリ」という意によって西瓜(さいか)と名づけられ、この漢名西瓜(さいか)が訛ってスイカになったと和名の由来にある。日本への渡来は中国経由らしく、江戸の寛永年間と言われるが、定かでない。

 スイカは大玉、小玉さまざま、二つに割ってみると、赤色や黄色の滴るような瑞々しい果肉が目を引く。英名にwater melonとあるように果肉に水分が豊富で、99・5%とか。夏場の果物として最適である。で、その語源を水瓜とする考えもあるようで、水瓜も当を得ているように思える。

   大和地方は昔からスイカの産地として知られ、種の生産量は他府県の追随を許さず、大和スイカのブランド名で、全国に広く行き渡っていると聞く。それにしても水分量99・5%とは驚きである。この豊富な水分量とシトルリンという成分を含み、昔からスイカには利尿作用があるとして、腎臓を患っている人には絶好の果物のようである。

 私は子供のころからこのスイカをよく食べ、好きだったが、これについては慢性の腎臓病を患っていた祖母との関係で、母が率先して祖母をはじめ、よく食べさせてくれたからである。もちろん、母も大好きな果物だった。夏の盛りのころになると、土間の片隅にはナンキンやマクワウリなどとともにスイカも置かれていた。ということで、スイカは西瓜なれども、私の中ではむしろ水瓜のイメージにある。  写真は盆に載せられたスイカ。


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年07月23日 | 創作

<3838> 写俳二百句(152) 大 暑

           時は日々大和平野の大暑かな

                     

 時は日々にあって刻々と過ぎて行く。どんな大騒動があっても、滞ることなく粛々と過ぎ、戻るということもない。安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなるという大騒動がつい最近起き、世間を驚かせたが、時は冷酷なほど刻々と過ぎて行った。私たちはその日々の時に支配され、従い行くばかり。そして、四季は巡り、今日は二十四節気の大暑。大和平野の奈良地方は何もなかったように晴れ、大暑の名のとおり、暑さの厳しい日になった。 写真は大暑の日の二十三日午後一時過ぎの大和平野。