【今日(6/16)の予定】
小木港駐車場 → 真野方面へ(未定)→ 道の駅:芸能とトキの里(泊)
【昨日(6/15)のレポート】
<行程>
道の駅:芸能とトキの里 → 羽茂本郷:草刈神社駐車場 →(羽茂まつり見物→夕刻草刈神社での薪能鑑賞)→ 小木港駐車場(泊)
<レポート>
今日は一日草刈神社の薪能用の駐車場に滞在して、羽茂まつりの中に暮らすつもりでいる。早朝の5時少し前に起床して、水の補給などを行った後、5時半少し前に羽茂本郷の草刈神社に向けて出発する。この地では大きなお祭りの一つらしく、毎年6月15日の定例開催となっているらしい。かなりの混雑となるのではないかと考え、早朝の内にベストの駐車ポジションを確保しておくことにした次第。6時から交通規制が始まるということになっているが、既にその情報は調べてあり、コースも駐車場の場所も承知している。6時10分に駐車場に到着し、最初の目的を完了する。まだ車は1台も来ていないのかなと思ったら神社の関係者らしい人の車が先着していた。見物の人の車は皆無で、もちろん我々のSUN号だけだった。お湯を沸かし朝食を摂る。このようなおかしな行動は、我々のくるま旅では時々行われることであり、くるま旅ならではできることではある。
食事の後、しばらく休憩していたら、駐車場脇の草刈神社に向かう細い砂利道を、何やら黒い布切れを一緒に纏った一列が10人ほどの被り物がやってきた。何だろうと思ったら、どうやらそれは獅子の様で、草刈神社にお祓いに参上するらしい。相棒が聞いてきた話である。その獅子は胴体が奇妙に膨らんでいて、まるで先日小木の宿根木の磯で見つけた海牛が丘に上がったような気がした。
その後はやって来る車も増え出して、祭りのスタートらしいふれ太鼓の行列が動き出したようである。9時半過ぎに町の歩行者天国になっている商店街の方に祭りの様子を見に行く。最初に見たのは先ほどの獅子の戸別訪問(?)の様子だった。10人20本の足に先頭に大きな獅子頭があり、最後尾には牛のような尻尾が作られていた。その巨大な獅子が商店街の一戸ごとに挨拶をして回るのだが、何しろ図体がでかいものだから、頭と尻尾までがうまく連動しなくて、苦労されているようだった。それが又滑稽さがあって面白いのであろう。
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何と呼ぶ獅子舞なのかは分からないが、とにかく普通にはない図体の巨大な獅子が、律義に商店街の戸別訪問(?)をするのは大変だ。
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獅子の胴体の中で蒸しあがったお父さんたちは、一休みして子供神輿をやり過ごしていた。
しばらくすると向こうから神輿の一団が、「わっしょい、わっしょい」とやってきた。子供神輿である。神輿は3基あって、小学生の高学年、次が低学年、そしてもう一つは小さな幼稚園児らしき子どもたちのものだった。付添いの親も大勢いて、微笑ましい情景が展開していた。
このような調子で続々と様々な出し物が繰り出されて来ていた。商工会のブースで、初めて今回の祭りのプログラムを頂戴した。郷土芸能として有名な「つぶろさし」や「チントンチン」とかいうのは何時からかと見たら、午後に予定されているようなので、一先ず車に戻って休むことにした。相棒はその後も引き続いて祭りの中に残って、昼ごはんの少し前に戻ってきた。
暑い。晴なのだが、霞がかかったような天気で蒸し暑く、気温は30℃近くになっているに違いない。窓を開けると風が少し通って助かるのだが、日射しは強くて、これじゃあ人ごみの中を歩き回るのは最小限にしなくてはと思った。熱中症などにならぬよう冷えた枇杷茶をたっぷり飲む。昼食の後は、祭り見物は少し遅くなってからにすることにして、しばらく午睡をとることにした。何といっても今日の目的は薪能であり、それはこの祭りの締めのイベントでもあるようである。19時を過ぎてからなので、それまでは祭りの中の「つぶろさし」の競演だけを見ることにしようと思った。そのイベントは2回あって、2回目が16時近くに行われるので、それを見に行くことにして、しばらくTVなどを見たりして過ごす。
15時半ごろにもう一度祭りのイベントが行われる商工観光会館前の十字路広場に向かう。祭りの勢いもやや弱まったようで、人々の集まりもこの一カ所が中心で、それ以外の商店街などはひっそりとしていた。15時少し前から「つぶろさし」という滑稽な舞いの競演が始まった。この舞は、このエリアでは3エリア残っているということで、「村山鬼舞いつぶろさし」「飯岡妹背神楽つぶろさし」「寺田太神楽つぶろさし」の三種のつぶろさしが披歴された。いずれも似たような舞いで、その内容は子孫繁栄を祈願した真に風俗的、直截的な舞いで、つぶろという、穀類や野菜類の種を保存していたという細長い筒状の入れ物を男性のシンボルに見立て、いわゆるヒョットコ面の男と、オカメ面の女が戯れ舞うというもので、相当にリアルなので、若い女性などには刺激が強過ぎるのではないかと思ったりした。これほどあからさまに性の奔放さを表現している民俗舞踊らしきものを見たことがない。これは佐渡の武士社会でも公家社会でもなく、真に佐渡らしき土着の百姓文化だなと思った。いやあ、驚いた。
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郷土芸能「つぶろさし」の一場面。いやはや何とも恐れ入った景観である。
それで車に引き返そうと思ったら、そのあと地元の羽茂高校の生徒による芸能発表があるというので、相棒の希望で残ってカメラに動画で残すことにした。これは結果的に良かった。というのも、佐渡おけさなどの民謡や踊りの本物を見せて頂いた気分になったからである。全国大会出場を目指すという高校生たちの男女の踊りは真剣で迫力があり、且つ優雅さに溢れていて、つぶろさしとは違った清涼感があった。ほんの一部だけの披歴だったけど、高校生たちに感謝と、これからの活躍への大きなエールを送りたい。
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地元の羽茂高校芸能部による宵の舞の披歴。宵の舞は相川地区に残る伝統の舞らしい。男女そろって均整のとれた踊りだった。
17時近く車に戻り、薪能の開催を待つ。18時から仕舞が開始されるので、間もなく草刈神社の能舞台前に持参した椅子に腰を下ろす。仕舞は薪能の本番前に、謡の一部を踊りで表現するもので、高校生などが披歴することが多いようである。今夜も地元の高校生と、それから特別に鼓童のメンバーによる披歴もあった。太鼓を叩くための修練で鍛えられている鼓童の若者たちの謡や舞の姿は、さすがに動きに無駄が少なく、いいものだなと思った。しかし、観客の中に絶えることなくしゃべり続けている一組のばあさんがおり、舞台など全く気に掛けないそのババアぶりに、これが田舎の普通の能文化なのかなと思ったりした。
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仕舞が終わって、火入れを待つ草刈神社能楽堂。迫る夕闇の中に浮かび上がる殿堂は、幻想的で優雅である。
神輿の帰還を待って火入れが行われるとのことなのだが、予定時間を過ぎても神輿が戻らず、10分ほど遅れての開演となった。今日の演目は「西王母」というもので、これは中国の話をもとに作られた筋書きである。そのあらすじは次のとおりである。(三省堂「能楽ハンドブックより)
里の女が帝王に、三千年に一度花咲き実のなる桃が今咲いたが、これは君の御威徳よるものとしてささげたいと奏聞した。帝王はさてそれは聞き及んでいる天上の西王母の園の桃であろうと喜び、天上の仙女の姿を目の当たりに見るのは不思議なことだというと、里の女は真はわれこそ西王母の化身であると明かし、桃の実を結ばせようといって天に上がった。 帝王が管弦を奏して天女の天降るのを待っていると、やがて侍女を従えた西王母は光り輝く妙なる姿で現れ、帝王に桃の実を捧げ、舞いを舞い、天上に上る。
この上演が始まったのだが、最初の準備の中で舞台に帝王が座る座所を作る置物の制作に手間取り、全体の流れを少し怪しげにするなど、素人、庶民の姿が垣間見られて却って親しみを感じる舞台だった。能のストーリーの展開には、4回目となると多少は慣れて来て、前段から後段への移り変わりも少しずつ理解、予想できるようになってきた。しかし、スートーリーの中に空想力を膨らませてのめり込むにはまだまだ無理がある。鼓や笛太鼓のタイミングなどはまだまだ判っていない。それでもこの芸術表現の日本的不思議さというところは、なんとなく見当がついてきた気がした。
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暗闇の中で演じられている西王母の一場面。そこには切り取られた空間が鎮座していた。
20時半近く全てが終了する。200名ほどいた観客は、道端に数十個の雪洞の灯る砂利道を噛みしめる音を立てながら、駐車場の方へ去って行った。われわれもその後ろの方から歩いて車に戻り、今日の宿の小木港の駐車場に向かう。9時前には着いて、今日の長い賑やかな一日が終わった。