とうとう、というよりも、やっぱりという感想ですが、社民党が民主政権からの離脱を決定しました。至極当然の話だと思います。総理大臣の言動が、ずっと社民党の考え方を支持する方向を向いていましたので、こと普天間基地の移転の問題に関して言えば、本当のところあまりにも調子の良すぎるその言動に一番不安感を覚えていたのは、社民党の面々だったのかもしれません。その不安が、とんでもない形で裏切りの現実となったにも拘らず、内閣に加わっている社民党の党首に対して、閣議結果の了承を求めるというのですから、これを受け入れるわけにはゆかないというのは、小学生だって、少しでも信念のある者ならば、断じて了承できるものでないことは自明のことです。
断腸の思いで罷免をせざるを得なかったというのが、首相のコメントでしたが、この人の腸が切れるなどというのはあり得ないのではないかと思わずにはいられません。どんな鋭いメスだって、この人の腸を断ち切るなんて不可能のような気がします。この人の腸の機能は、地上の如何なる消化困難なものでも、全て呑み込んで消化したという気分になれるほど強力なものであり、普天間の基地移転の問題だって、今のところ少し気分は悪いけど消化しつつある、というのがご自身の感覚なのではないかと思えるほどです。
社民党との考えが相容れないものであることは、多少過去の政治の歴史を理解している者から見れば、初めから明らかだったように思います。社民党の発想は正論です。正論なのですが、治政においては必ずしも正論がその要諦とはなり得ず、より現実的な大局論をクリアーして、初めてそれが力を持つのだと考えます。
日本の政治は日本国の国民のためにあるのは当然ですが、そのためには視点を世界情勢に置いてから始めなければなりません。世界情勢を無視して、日本国のことばかりを論じても、今の世は鎖国が通じる状況ではないのですから、通用する筈が無いのです。わが国に求められている二大政党の基本にあるべき発想は、世界情勢を見極めた上での政策でなければ、決して国民を真に安心させることは出来ないのだと考える必要があると思います。
沖縄の基地問題は、戦中・戦後の悲しい歴史に覆われたものを引き摺って今日につながっており、県民の皆様にとっても心ある日本人の全てにとっても、それが無くなることが悲願ですが、今日の世界情勢を直視したときに、日本国が置かれている現状を考えれば、そうそう簡単に他県や海外に移転できるという話ではないように思います。というのであれば、先ずは我が国が今日の世界情勢の中で、どのようにすれば安定的に国を守れるのか、と言う議論やそれに基づいた大局観を確立することから始めなければならず、そのようなことを無視して耳障りの良い、自国の利益ばかりを強調した主張が通用するはずもありません。現実を直視した上で、沖縄県民の、或いは基地周辺に暮らすことを余儀なくされている人びとの幸せを、どう実現するかを施策として明確にするのが政治の本来のあり方のような気がします。
然るに現実は、一国の最高責任者が、美醜綯(な)い混ざった言動を繰り返し、いたずらに人心を混乱させ、不信と怒りを結果するということになったのですから、これは愚政というしかありません。
この愚政は民主党だけではなく、社民党も国民新党も共倒れ現象に突入する危険を孕んでいます。そして最も困るのは、漁夫の利を得る者が見当たらないということです。本来なら自民党がその立場になければならないのですが、昨年の選挙での惨敗から少しも立ち直っておらず、分裂現象を引き摺っているばかりなのですから、真に困ったものです。
我々国民としては、いや、私だけのことなのかもしれませんが、次の選挙にどこの誰を信頼して一票を投じて良いのやらさっぱり見当がつきません。一番安易な方法は、分らなければ投票しないということ、即ち棄権するということなのでしょうが、棄権の積み上げは、この国の政治のあり方を益々破滅の方に向けるのは明らかですから、取るべき行動ではないと思います。真に困った現状です。
国政が破綻すれば、年金暮らしの我々の生活も破綻します。さすれば、くるま旅などどこかに吹き飛んでしまうかもしれません。せめてあと十年くらいは残りの人生を、この世に生きていて良かったと思える生き方をしたいと思っているのに、現在の為政者の連中が口先ばかりで、一向に新味のある政治を実現できないのであれば、お先は真っ暗です。無い金を使っての、借金まみれの政策もいい加減にして欲しいものです。八方美人の政策ではなく、選択と集中の実りある施策を期待したいと思います。そして何よりもそれができる強力な意思と力を持ったリーダーが、政党の枠などを飛び越えて出現することを願わずにはいられません。
老人の愚痴でした。