旅車の取扱に関して考えておかなければならないことの一つに、基本装備があります。車を使って生活してゆくために不可欠な装備のことを基本装備と呼ぶことにしますが、私の考えでは、①熱源装置②給排水装置③換気装置という3項目がそれに該当すると考えます。これら以外にも基本装備と呼ぶべきものとして、例えば調理設備やトイレ、TVなどを付加しても良いようには思いますが、ここでは旅くらしの根源に関わる最も重要な装備としてこの3項目を取り上げ、その考え方について触れることにします。
⑴熱源装置
熱源とは、旅くらしのエネルギー供給の根幹となるもので、具体的には、電気、ガスを指します。
最初に電気について述べたいと思います。電気は、外部から直接取入れが出来ない場合は、バッテリーから供給されることになります。従って、バッテリーの充電管理が重要となります。旅くらしでは、多くの場合、外部から電気の供給を受けることが困難ですので、安心して電気製品を使用するためには、不断のバッテリーの電源管理が重要です。
バッテリーの不安を無くすために、発電機を搭載したり、ソーラーを取り付けたりしますが、それらを24時間いつでも使えると考えるのは早計に過ぎます。発電機の使用は、騒音の問題がどうしても発生しますので、使用する時間と場所を考慮する必要があります。又ソーラーは夜間や雨天では効率が極端に落ちますので、常時心配なしというわけには行きません。
結局の所は、自分の車に見合ったレベルの装置をうまく使い分けるしかないように思います。こだわりの車を目指す人の中にはいろいろ工夫して目を見張るような装置を取り付けられている方もおられますが、普通人(若しかしてかなり低いレベルの)である私には、ごく普通の装備をうまく使うことしか考えられませんので、今のところはせめてソーラーだけでも取り付けようかと考えています。
車の中で家電製品を使う場合に気をつけなければならないのは、消費電力の大きい電子レンジや炊飯器などを使う場合です。エンジンもかけずに長時間使いますと、いっぺんにバッテリーを破損するようなことになりかねません。家庭での電源とは違い、12Vをインバーターで100Vに変換して使っているわけで、効率が落ちる上にバッテリーが大元となっているのですから、これを忘れると大元が壊れてしまうなど、とんでもないことが起こる可能性が高いのです。初めての旅で、嬉しさもあって何の不安も抱かず、エンジンを切ったまま、家で使うのと同じようなつもりで、電子レンジや電気釜を使っていたら、全てがパタリと止まってしまった、その上にエンジンをかけようとしたら、何と、いくらキーを回しても始動しない、などということが起こりかねないのです。
基本的には、高消費電力の家電製品は使うのを控えるか、どうしても使わなければならない場合は、発電機を回すとか、或いは必ずエンジンをかけて使うようにするという心がけが必要だと思います。
因みに私の場合は、電子レンジも電気釜も使わず、調理は全てガスを使っています。夜間の照明用として、普通車用の40Wのバッテリーを2個用意し、これを毎日の走行時に充電器を使って充電し、毎晩交互に使うようにしています。バッテリー1個で一夜に必要な照明は充分まかなうことが出来ます。長期滞在の場合は、出来る限りAC電源のあるキャンプ場などを選ぶようにしますが、費用の問題もあります(多くの場合AC電源付きのキャンプ場は1晩千円ほどの別料金をとられる)ので、通常はフリーサイトで生活し、電源をカバーする必要が生じた時にオートキャンプサイトに移るようにしています。また、AC電源がない場所では、騒音の問題のない所を選び、発電機を使うようにしています。
次にガスですが、ガスは大別するとLPガスとカセットのLPガスになります。LPガスは多くは5kgのボンベを備えて、このガスを利用するものですが、補填供給の場所が限定されるため、ガスが少なくなった時の補給が面倒という問題があります。この場合は、事前に供給所を調べておくとか、或いは地元の人に尋ねて教えて頂く必要があります。これに対してカセットガスの方は、どこのホームセンターでも販売されており、在庫管理さえしっかりやれば、補給の心配もありません。ガスの火力もこちらの方が強いようですが、車内で使う場合は、換気などをしっかりしておかないと危険です。使う場所を選ぶ必要があります。
いずれのガスにしても基本的な取扱要領は同じですが、ガスの場合は直火を使うことになりますので、火災や事故には十二分に気をつける必要があります。
私の場合は、LPガスとカセットガスの双方を使っていますが、通常の煮炊きは備え付けのLPガスコンロ(2口)を使い、魚など匂いのきついものを扱う場合や大容量の煮炊きをする場合は、カセットガスを使うようにしています。カセットガスの使用はこの他、長期滞在の好天時に使うことが多くなります。くるま旅くらしでは、カセットガスだけを使っている方もたくさんおられます。どのように使い分けるかは、各自の自由判断によりますが、それぞれの特性と欠点をしっかり捉えた上での使い分けが肝要です。
なお、LPガスは、煮炊きの他に冷蔵庫用としても使うことが多いものです。エンジンを止めた後で、冷蔵庫を長時間電源だけで使えば、たちまちバッテリーが上がってしまいます。旅車の冷蔵庫は多くの場合3ウェイ(12V電源、100V電源、LPガス)での機能が備わっていますが、長時間駐車時や長期滞在の場合は、特にガスでの使用が有効になります。これらの使い分けも大切です。
尚、冷蔵庫に関しては、カセットガス専用のものも製造されているようです。自車のサイズに合わせて検討してみるのも一考かと思います。
⑵給排水装置
二番目の基本装備は、給排水です。水は生活には不可欠の要素です。この装備に関しては、旅車のつくり方や使い方の考え方によって、かなりの違いが出てくるものと思われます。私の車の場合は、80Lほどの給水タンクと同容量の排水タンクが装備されていますが、旅車の中には給排水を簡易装備で済ませ、その分のスペースを別途で有効活用するという考えでつくられているものもあります。生活の中で、水をどのように使うかという考え方によって、これらの扱いは変わってくるものと思います。
水の補給や排水が苦労せずに出来る環境を常時確保できるのであれば、大型の給排水装置は不要かも知れません。
私の場合は、水がなかなか補給できない場所でも過ごすことが結構あるものですから、現在の容量で満足しています。
⑶換気装置
三番目の基本装備は換気装置です。これについては多くの旅車に装備されていると思いますので、特段申し上げることもありませんが、大切なことは、狭い車内では密閉状態は危険度が高いということです。冬の寒い時期などは、どうしても換気がおろそかになりがちですが、億劫がらずに換気扇を回したり、時には窓を開けて空気の入れ替えをするなど、こまめな対応が望まれます。特にガス等の火気を使用している状態では、換気扇の使用は不可欠の厳守事項と心得るべきです。今まで旅車でのガス中毒事故などは耳にしたことはありませんが、最近の密閉度の高い車では、うっかりすると事故に遭遇しかねませんので、注意が肝要です。