山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

‘15年 佐渡一国を味わう旅 レポート <第20回>

2015-06-20 04:03:44 | くるま旅くらしの話

【今日(6/20)の予定】 

  道の駅:芸能とトキの里 → 七浦海岸 → 相川エリア散策 → 正法寺ろうそく能鑑賞 → 道の駅:芸能とトキの里(泊)

 

【昨日(6/19)のレポート】     

<行程>

 道の駅:芸能とトキの里 → 両津大川集落屋外版画美術館 → 羽吉の大桑(両津エリア)→ 佐和田のスーパー → 新穂潟上温泉 → 道の駅:芸能とトキの里

<レポート>

佐渡に上陸してから半月を経過し、目的の能楽の鑑賞も明日の正法寺でのろうそく能のみとなった。佐渡一国を味わうなどと大げさなタイトルを付けた旅だが、この一国の正体のようなものが、朧ながら見えて来ているようには思っている。それは一言でいえば、日本という国の象徴のようなものであり、「衰退」ということになるような気がしている。どんなに盛んな国でも、或いはどんなに隆盛を極めた場所でも、そのまま永遠に栄えることはない。これは歴史の証明するところであり、佐渡は金銀の採掘の衰えと共に、次第に国としての活力を衰微させて来ているという印象である。10万人を超えたという人口も、今はその半分近くに近づいており、じわじわと新しい変化への対応ニーズが強まっているようだ。為政の関係者の人たちは、それなりに頑張っているのだと思うけど、行く先は厳しいように思う。今のところそのような所感である。

今日も特に予定はないのだが、このまま何もしないでここに止まっているというのもつらいもので、やはりどこかに出かけなければという、ある種の脅迫感(?)のようなものが背中を押す。それで、今日は先ず、先日小佐渡の海岸線を小木に向かって走った際に、津神神社というのがあり、そこの大川集落の方たちが「大川屋外版画美術館」というのを展示しているのを知ったのだが、その時はざっと2~3枚の家の壁などに張られた版画を見ただけで通過してしまった。それが少し気になっていて、今日はもう一度そこを訪ねてじっくりと見させて貰おうと思った。そしてその後は、これは9年前にも訪ねている、旧両津市郊外にある「羽吉の大桑」と呼ばれる樹齢1300年といわれる桑の老木を再訪して今の状況を知りたいと思っている。この二つの目的の他に、佐和田のスーパーに依頼している所用があり、それを済ませたら、道の駅近くにある新穂潟上温泉に行って、夕方まで静養滞在することにしたい。

ということで、9時少し前に「大川屋外版画美術館」のある津神島公園に向かって出発する。20分ほどで到着して、早速集落の各戸の様々な場所に、大小思い思いに展示されている版画を、順次写真を撮りながら歩き回った。この「大川屋外版画美術館」だが、その主旨が次のように説明されていた。

「大川集落は、元歴元年(1184)頃に村づくりが行われ、それ以来幾多の変遷を経て今日に至っております。なかでも長年伝えられた伝統芸能や文化、行事、産物等が集落の人々の助け合いや支えあいにより色濃く残されています。先人が残したそれらを自分たちが再認識するために、14年間に亘り約100枚の版画を摺り、カレンダーを作成しました。そして、この度佐渡市のチャレンジ事業を始め下記の多くの方々のご協力を得て、版画作品を印刷し、外壁に掲げ、「大川屋外版画美術館」として鑑賞して頂くことにしました。<設置者:大川区・佐渡市・佐渡を版画の島にする会><協力者:社団法人佐渡版画村・大川版画クラブ・(株)ラミー・コーポレーション・(株)ミマキエンジニアリング・デコラ(株)・ヤマダ畳センター・(株)造形社>

大川集落のこの地は、古来縄文時代より人が住んでいたらしく、土器類なども発見されているとか。また、近世では北前船の風待ち港としても栄えたという歴史があり、2.5kmほどの海岸線の、山が迫る小さな谷あいの集落に、今は約50戸の人たちが暮らしている、とも書かれていた。早速その集落の中心の細道を歩いて、外壁に掲げられた版画を見て回った。主旨にあるように、版画には人々の暮らしの中の様々な情景が描かれていた。農事や磯働きの老婆の姿や逞しい漁師の姿、或いは祭りの鬼太鼓、それから馬に乗っての嫁入りの姿などなど、どの絵にもこの集落の暮らしぶりが見事に表現されていた。

 先の小木の宿根木集落と同じように小さな谷間に密集した集落は、まさに「集落」であり、そこに「個」の感覚を見出だすのは困難なのを感じた。人々の暮らしはプライバシーなどの入り込む余地のないほどに仕切りのない集団生活の感じがした。このような狭い集落でもちゃんとお寺さんがあり、そこにも何枚かの版画が掲げられていた。それらの白黒での表現の芸術作品を全てカメラに収めたのだが、さて、漏れはなかったのか。 それにしても面白い試みだなと思った。佐渡には各地に様々な古い文化と暮らしが残っており、それらを版画で記録して残そうという試みは、素晴らしいと思う。版画には素朴で真髄を捉えた表現の力があると思う。佐渡の暮らしの歴史や文化を数多くの版画で残すという試みには、大いなるエールを送りたい。この大川集落地区以外で、その後この活動がどのように展開されているのか、知るところまでは行かないけど、市の関係者は、世界遺産登録などと騒ぐ前に、地元に根を下ろすべきこのような事業をしっかりと支え、前進させて欲しいものだとも思った。

  

大川屋外版画美術館の作品、「わらぞうりを編む老婆」 一心に作業に集中する老婆の表情までが見事に表現されている。

  

大川屋外版画美術館作品「大川の結婚式(馬で嫁ぐ)」 集落の人々の喜びの顔があふれ、馬までが何やら嬉しそうだ。

その後は旧両津市の商店街を抜けて羽吉の大桑に向かう。商店街にはかなりの長さのアーケードがあり、往時の繁栄ぶりを思わせるのだが、今はその反動なのか、衰微したシャッター街と化したその姿に悲哀感のようなものを感ぜずにはいられない。車社会の時代から完全に置き去りにされた町並みが、次第に幽霊化して行くような印象を受けた。わずかに残っている商店の前には、何台もの路上駐車の車が、他の車の往来を無視して停まっており、外部から来た者には異常な風景としか思えない。島の他の地区にも、このような古い町並みが残っている箇所が幾つかあったが、両津のここが一番ひどいように感じた。

間もなく県道から横道に入って、羽吉の大桑のある場所へ。9年前は広い畑の中にあったように記憶していたが、それは完全なる誤りで、桑の樹は屋敷林らしき杉林の近くにあった。9年前に来た時は、まだ若葉の出揃う前で、老樹の痛々しさが目立つ印象だったが、今回はすっかり若葉も生長して生い茂り、遠くからではそれが桑の木一本の姿とは思えないほどの大きな緑の塊に見えた。近くに行ってみると、何本かの柱に支えられて、緑を茂らせて頑張っている老樹がそこにあった。この老樹にはさすがに実を付ける力はないらしく、山桑というからには小さな実が付いている頃なのにと思って探したのだが、見当たらなかった。それにしても1千年を超えての生命を保っている生き物には、やはり圧倒されるものがある。来て良かったと思った。その後は、近くにあるお寺の境内に苔梅という梅の老樹があるので、ついでに会いに行くことにした。こちらの方は、2代目が100年を経過した頃ということで、桑の老樹と比べるとやや貫禄不足の感は否めなかった。お寺の境内は荒れ果てていて、ここにも現状維持の難しさを見せつけられた感じがした。

  

羽吉の大桑。緑の小山の中には何本もの支柱に縋りながらも、尚逞しく生命を構える老樹の姿があった。

老樹に会ったあとは、来た道を戻り、両津の町中からR350に入り、佐和田エリアにあるスーパーを目指す。そこで所用を済ませた後は、新穂潟上温泉へ。12時半ごろの到着だった。もう動くのは止め、夕方まで静養することにした。昼食は先ほどのスーパーで手に入れた大型の黒鯛の刺身とその兜煮を炊い、て大御馳走会となった。もうあと2日ほどの滞在となるので、佐渡の魚を堪能したいと思っての大盤振る舞い(?)なのだ。食事の後は入浴のことなど忘れて、寝床の中に。相棒はその後もずっと起きていたらしい。15時半頃目を覚ますと、温泉に入りに行くところだった。風呂から戻って来るまでの間、再び寝床で転寝を続ける。戻ってきた相棒の話では、何と入浴中の湯船の窓から、飛んでゆくトキを見たとのこと。どうやらこの辺りにトキの巣があるらしく、夕方近くになって戻って来たらしかった。転寝の者には果報はないということ。

その後一人入浴に行く。浴槽から空を眺めたが、トキもカラスも見られなかった。ところが、車に戻ると、相棒はその後何度もトキが空に舞うのを見たとのことで、写真にも収めていた。しかし、夕暮れで相手は動いているので、なかなか良い写真とはなっていなかった。残念。しかし、佐渡に来て自分はまだ一度しかトキを見ていないのだが、相棒には今日は特別サービスの日だったようだ。大いに喜んで貰いましょう。

18時頃道の駅に戻る。一台の車も停まっていなかった。いつもの位置に車を止め、さて、ここにお世話になるのは何回目となるのだろう?小木に2度だから、13回の宿泊となる筈だ。黒鯛の漬けで一杯やって、今日は終わり。

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