2年ぶりに旅に出かけました。旅と言ってもたった4日間の小さなものです。長いこと休んでいたため、旅の感覚が大きく鈍っているのを実感しました。6回に分けて久しぶりの旅の所感を報告させて頂こうと思います。
第2日(11/15〔日〕)
道の駅:オアシスおぶせ→(県道)→小布施町営駐車場→(町内散策)→(県道・R18)→須坂長野東IC→(長野道)→姨捨SA→(長野道)→安曇野IC・県道)→道の駅:アルプス安曇野ほりがねの里(泊)
小布施の朝はかなりの冷え込みで地表を真っ白な霜が覆っていた。5時半頃目覚めて歩きに出かけようと外を見たら、まだ暗くて歩ける状況ではなかった。やはり6時を過ぎないと明るくならないかと合点して、待つことにした。6時半頃になると東の山の上が明るくなりだし、日の出なのだと判った。今朝の歩きは、昨日果たせなかった小布施の中心街まで行って主な施設等を探し出し、納得することを目的にしている。旅に出ていても必ず毎朝の歩きを欠かさないようにしており、今回もそれを止めるわけにはゆかない。道の駅は上信越道小布施SAに隣接したハイウエイオアシスとなっており、泊った駐車場の反対側はどうなっているのか、先ずはそちらに行ってみることにした。これは正解だった。というのも、そこからは北信越の5岳が遠望出来て、千曲川の朝霧が白くゆったりとたなびく彼方に、朝日を受けて赤茶けた山肌を晒した妙高の個性豊かな峰が目に飛び込んできた。何とも言えない大自然の造り出す感動の景観だった。妙高山の右手には斑尾山、そして左には黒姫山がどっしりと構えて、更に左方は飯綱山か戸隠か。そしてその脇に小さな真っ白な三角の峰が輝いていた。名は知らないけど、想像すると、もしかしたら白馬かなと思った。自分一人だけが思いっきり味わうこの地の朝の絶妙な景観だった。これこそが早や起きのご褒美だなと思った。今日のご褒美は三文どころではない、優に100両は超えているなと思いつつ、小布施の中心街の方へ向かうことにした。
白き峰のニョキッと見えて今朝の秋 馬骨 信州小布施の朝
千曲川に注ぐ松川というのが流れており、それに沿って上流の方に行けば小布施の町に近づけるのではないかと考え、堤防の道を歩いた。30分ほど歩いたのだが、なんと小布施の中心街は一向現れないのである。一体この町はどんな場所に立地しているのか、さっぱり見当がつかない。何だか昨日の失敗を重ねて繰り返しているような気分になり、再び腹が立ってきた。もう何回もこの地を訪ねて来ているのに、これは一体どういうことなのか、しばらく呪いの気持ちを抱きながらの歩きとなった。電車の通る踏切の音が聞こえたので、その方向へ行ってみることにした。すると、途中で立派なお寺に遭遇した。玄照寺とあった。曹洞宗のお寺で、三門は町宝となっているとのこと。見た目に直ぐそれと判るほどの立派な貫禄のある建物だった。このお寺に出会ってからしばらく町中をさ迷っている内にようやく北斎館などのメインの建物に辿り着き、それからはもう迷うことは無くなった。小布施という町に隣接する須坂市や中野市などの境目がどうもはっきりせず、この町は松川にはあまり縁がなさそうで、どちらかといえば道の駅からは山寄りの方向に位置していたようである。それから車に戻るまでの道は、迷い不要の一本道で、今日これから昨日の仇をとるためにもう一度町を訪問しても迷うことも駐車場を探すのも大丈夫だと確信した。30分ほど歩いて、車に戻った時は9時近くになっていた。ようやく陽が射して来て、先ほどの千曲川の朝霧のたなびきも消え去ったようだった。カミさんは未だ寝床の中で最後の惰眠を貪っていたようだった。いつものことではある。
その後は10時くらいまでゆっくり時間をかけて朝食や片付けを済ます。今日は先ずは昨日の仇を取りに小布施の町中に行った後、昼食の栗おこわを食することにし、その後は小布施を離れてアップルライン(R18)を通ってリンゴを買い求め、高速道に入って安曇野ICまで行き、そこで降りてゴールは道の駅:アルプス安曇野ほりがねの里に行って泊ることにする。当初は小諸まで行って懐古園の紅葉を見ようかと考えていたのだが、今日は日曜日だし人出があって混むのではないかと考え止めることにした。それに紅葉も終りかけているのかも知れないし、小諸での駐車場探しもめんどくさいなと、だんだん横着心が膨らんだ次第。明日安曇野の野菜を手に入れるのには、いつも利用させて頂いている道の駅に泊るのが一番だと思っているからなのである。
10時過ぎ出発して小布施町営の駐車場に向かう。勿論迷うことなく駐車を済ませて町中へ。北斎館の方へ向かう途中に洋菓子店らしきものがあり、人の列ができていた。何だろうと見てみたら、どうやら何か特別なモンブランというのが販売されているらしい。予てから家内は守谷ではまともなモンブランが手に入らないとぶつぶつ言っていたので、これは絶好の機会だと買うのをけしかけた。小布施は栗の名産地ということだから、ここのモンブランが並み以上であることは間違いないだろうと思った。3個くらい買ったら?と言ったのだが、そんなには食べられないと1個しか買わなかったようである。ま、自分はそのような食べ物とは無縁の人間なので、お好きなように、と思っただけ。でも、今後モンブランを食べるためにここまで来るのは大変だなと思った。
その後町中をぶらぶら歩いて栗おこわの店などを探す。何年か前の勘を働かせて歩き回ったのだが、どうにもそれらしき店が見当たらないのである。不思議な気持ちになった。町の中が微妙に変わってしまっているのかもしれないと思った。コロナ禍の影響は措くとしても、何だか以前と比べて町の活気が失せてしまっている感じを拭えないのだ。隆盛を持続するというのはさほどに難しいことなのかもしれない。結局以前とは違う店で栗おこわを手に入れ、車に戻って昼食とする。久しぶりの栗おこわは、自分には甘過ぎて、やや抵抗があった。ゴマ塩が少なすぎるのを不満に思った。2日がかりでどうにか食の念願を果たしたので、もう何の未練もない。一休みの後、安曇野に向けて出発することにした。
この後は、先ずはR18のアップルラインに出て、道の両側に出されているリンゴ販売の店に立ち寄りリンゴを手に入れることにしている。その後高速に入って安曇野へという考えである。千曲川に架かる橋を渡り、R18に出て長野方向へ向かったのだが、どうもリンゴ園の販売の様子が昔とは違っているようなのに気づいた。進行方向左側の店を探しながら行ったのだが、どの店もリンゴの数が少なく、リンゴ狩りの案内が多いのだ。リンゴ狩りをする考えなど毛頭ないし、只リンゴさえ手に入ればそれでいいのである。次の店はどうかなと思いながら長野方面へ向かっていると、とうとうそれらしき満足を得られそうな店が無くなってしまった。こりゃあまずいぞ、と引き返すことにした。反対側には確か20年ほど前に上越方向へ向かうたそがれ時に立ち寄ってお世話になった老夫妻の店があった場所近くに今でも店が出ていたなと思い出を振り返りつつ、その店に寄ることにした。中に入ると、20年前とは雰囲気が変わっていたが、信州の働き者らしきリンゴ農家のご夫妻が試食のサービスをして下さった。家内が台風時の災害の話を伺うと、奥さんの話では、その時はただ一つご先祖の位牌だけを抱えて大急ぎで避難所に向かったのだという。ここは千曲川からはかなり離れており、とてもそんな洪水が押し掛けてくるなどとは思えない場所なのに、どんなに驚かれたことかと察するに余りあるものがあるなと思った。恐らくその後の復興作業も,自家を含めてリンゴ園の樹木の手入れなど相当に厳しかったのではないかと思った。それにしても今日ここで豊かに実ったリンゴを手にすることができ、甘美な実を味わうことができて良かったなと、しみじみ思った。
手を添えて至宝のリンゴ愛でるかな 馬骨 アップルライン千曲園にて
念願のリンゴを手に入れた後は、R18をそのまま長野方向へ走り続けて、須坂長野東ICから長野道に入り、安曇野ICへ向かう。まだ日は高く西日が運転席に注いで暑かった。途中姥捨てSAにて小休止の後、安曇野ICへ。全山紅葉を眺めながらの運転は、信州の秋の醍醐味そのもので、やはり来て良かったなと改めて満足を実感した。
間もなく安曇野ICで降りて、道の駅:アルプス安曇野ほりがねの里へ。ここは信州を通る時には必ず寄る場所で、もう10回近く泊りでお世話になっているのではないか。駐車場に車を停めた後、隣接する売店を覗き今夜の晩酌用に地酒を1本手に入れた。野菜類は明日の楽しみである。車の中で過ごす夜も二日目を迎えて、久しぶりの旅にも少しは馴れ出したのを実感しながら夕食を済ませ、夜を迎える。
長き夜の妄想果てぬ歳となり 馬骨 安曇野の秋の夜