東京多摩借地借家人組合

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賃貸入居を断られやすい高齢者 官民の支援で壁を低く

2022年02月21日 | 最新情報
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20220131-OYTET50031/

 高齢になると、賃貸物件への入居が難しくなるという。家主側が高齢者の家賃を負担する能力や健康を不安視することが主因だ。高
齢化が進むなかで、増加する独居高齢者の住居確保が深刻な課題となっており、入居難に直面する高齢者を支援する動きが広がってい
る。(平井翔子)

不動産会社が見守り・自治体も物件紹介


面談や電話

 「新型コロナウイルスの感染が広がっているけど、僕は風邪もひかず元気。おかげさまで困り事もないよ」
 1月中旬、東京都八王子市に住む男性(87)が、不動産会社「中央企画」(東京都多摩市)を訪れた。男性から近況報告を受けるの
は、同社事業部マネジャー、馬場節子さんだ。同社では2~3か月に1回、管理物件の高齢居住者から面会や電話で報告を受ける決まり
になっているという。
 男性は55歳の時に離婚して以来単身で、6年前から家賃5万円のワンルームのアパートで生活をしている。馬場さんは「65歳以上の方
でも実際に会うと元気で、支払い能力に問題のない人も多い」と話す。定期的な近況報告は、家主や管理会社の不安を軽減するための
工夫の一つだ。
 中央企画は居住者の異変を早めに察知するため、動静を見守る装置を住居に設置している。冷蔵庫などの電気使用量を自動的に解析
し、使用頻度などの変化を検知すると、中央企画にメールが送られてくる。男性は「干渉にならない程度に気に掛けてくれるので助か
る」と笑顔を見せた。

希望は増加

 持ち家と比べ、維持費用の少ない賃貸住宅を希望する高齢者は増えている。また、体力に応じて掃除などの家事負担を減らすため小
規模住宅へ転居するケースも少なくない。2018年の総務省の調査では、賃貸物件に住む単身の65歳以上は約213万世帯で、13年から
14%増加した。
 一方で、不動産業者「R65」(同杉並区)が20年に行った調査では、65歳以上の回答者348人のうち、23・6%が「賃貸住宅の入居を
断られたことがある」と答えた。4人に1人の割合だ。そのうち5回以上断られた経験がある人も13・4%いた。R65の山本遼代表取締役
(32)は「高齢化は進んでおり、賃貸住宅を希望する高齢者も増える。民間企業と行政が連携し、高齢者が入居を断られない仕組み作
りが必要だ」と強調する。

設備に助成

 自治体に民間と連携する動きもある。東京都葛飾区では17年から、電気やガスなどの利用状況を家族にメールで知らせる民間の見守
りサービスを導入する際に、設置費用の9割を助成(上限1万3500円)している。区の担当者は「自治体が補助することで、見守りサー
ビスへ信頼をもっていただき、高齢者や大家の不安解消につなげていきたい」と期待する。
 福岡市社会福祉協議会と同市は共同で、65歳以上や障害のある人に、入居を受け入れる賃貸住宅を紹介している。弁護士やボラン
ティア団体、葬儀業者など約14の企業や団体と連携しているのが特徴だ。市社協の栗田将行課長は「社会福祉協議会のような半官半民
の組織は、民間の企業や団体と柔軟に協力しやすく、市民にとっても相談してもらいやすい」と説明する。
 入居後の定期的な訪問や電話による見守りのほか、家事の手伝い、死後の家財回収や清掃、葬儀などのサービスも提供している。
 神戸大の平山洋介教授(住宅政策)は「室内の段差解消といったバリアフリー化や、居住者の死後に発生した居室の改修費用、家賃
滞納リスクの対策などで、家主の不安を緩和することが重要だ。民間だけでは担えないため、国や自治体が中心的な役割を果たすこと
も不可欠だ」と指摘している。

◆独居高齢者= 65歳以上で一人暮らしをする人は2015年現在、625万3000人いた。その後、男女ともに増加傾向にあり、40年には896
万3000人と、25年間で43.4%増えるとする試算もある。未婚率の上昇も増加の一因とみられる。入院や賃貸住宅の入居の際などに
「身元保証人」となる頼れる家族がいなくて困るケースも多い。

次の入居者への告知に指針 国交省

 単身高齢者や障害者、ひとり親世帯など、入居を断られやすい「住宅弱者」の住まいを保障し、家主の不安を軽減させるため、国も
動き始めている。
 2017年には、改正住宅セーフティネット法に基づき、高齢等を理由に「入居を拒まない」空き家や空き部屋を紹介する「住宅セーフ
ティネット制度」が始まった。登録物件は専用サイトで閲覧できるほか、各地で指定された非営利組織(NPO)などによる住居選びの
支援も受けられる。登録戸数は約68万戸(1月24日時点)あるが、空室物件が少ないため、さらに登録を増やすことが今後の課題と
なっている。
 家主側の高齢者を敬遠する最大の理由とされているのが孤独死のリスクだ。「事故物件」と扱われて次の入居契約が入りにくくなる
という不安が、高齢者の入居を難しくしている。
 これに対し国土交通省は昨年10月、老衰や病気などの自然死は「発生が当然に予想される」として、入居者に対する告知は原則とし
て必要ないとするガイドライン(指針)を策定・公表した。一定の基準を示すことで、家主側の不安を軽減し、高齢者を受け入れやす
くなると期待される。

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