東京多摩借地借家人組合

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報酬目的の地上げ行為は弁護士法72条違反か

2008年10月30日 | 明渡しと地上げ問題
 今年の春、建設・不動産業者のスルガコーポレーションが所有していたビルの立退き交渉で大阪の不動産会社などが弁護士法違反で逮捕され、不動産業者も戦々恐々となっている。最近、組合事務所に賃貸マンションの明渡し交渉で来た業者は「立退き拒否でしたら私達は手を引きます。最近、弁護士さんが代理人で出てくると非弁活動といわれるので困るんです」といっていた。

 この弁護士法第72条「非弁行為」とは何か、10月に住宅新報社がセミナーを開催した。講師の弁護士さんの説明によると、非弁行為とは弁護士でない者が報酬を得る目的で、「法律事件」に関して「法律事務」を行なうこと、またはそのあっせん(仲介)をすることを業として行なうこと(弁護士法72条)とされている。

 非弁行為とみなされるためには4つの要件が必要とされている。1つは、当事者から依頼内容が法律事件であること。法律事件とは、法律上の権利・義務に関する紛争という解釈が一般的だが、紛争になっていなくても新たな権利義務が発生する案件すべてを指すという説もある。

 二つ目は法律事務を行なうことである。法律事務とは法律事件について、法律上の効果を発生または変更させる事項の処理を言う。組合事務所に明渡し交渉に来た地上げ屋業者は賃借人が明渡しに反対しているのに明渡し交渉すると、この法律事務や法律事件になってしまう。とにかく、賃借人と立退き料の話し合いを円満に行なえば非弁行為と相手側から訴えられないと考えたようだ。

 3つ目は、報酬を得る目的があるかどうか。そういう意図が無く、報酬を得ていなければ弁護士法違反にはならない。報酬を得る目的で行なった場合は、現実にまだ報酬を得ていなくても非弁行為の構成要件となるといわれている。地上げ屋、事件屋とよばれる業者で報酬を目的としていないものはなく、ボランティアでやらない限り全て非弁活動となってしまう。

◎最近、借地や借家の地上げ事件が多発している。組合には顧問の弁護士さんがいるので、不動産業者が明渡し交渉とか値上げ交渉で、脅かしてくる時は組合に相談してください。場合によっては費用がかかりますが、弁護士さんを代理人に立てることが「地上げ屋撃退」の有効な手段になりそうです。



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固定資産税額の3倍の地代改定特約違反でも契約解除が否定された事例

2008年10月30日 | 最高裁と判例集
判例紹介

 地代を固定資産税の3倍とする自動改定特約違反があっても契約解除が否定された事例 (東京地裁平成6年11月28日判決、判例タイムズ886号)


 (事案)
 借地人は昭和58年3月建物所有を目的で借地した。借地契約には、地代は固定資産税の3倍とするという特約があった。借地人は昭和62年度分までは右特約どおりの地代を支払っていたが、昭和63年以降は特約で計算した賃料を支払わず、相当と認める賃料のみ支払っていた。地主は平成5年5月、賃料不払を理由に借地契約を解除して、土地明渡を求めた。借地人は、地代の自動改定特約は借地法に違反すると争った。


 (判決要旨)
 本件賃料自動改定特約は固定資産税の年額の3倍の12分の1を月額賃料としている。旧借地法12条が賃料増減額の要件として、「土地に対する租税その他の公課の増減」を挙げていること、及び従前土地の年額賃料は概ね固定資産税額ないし公租公課の2ないし3倍を1つの目安とする考えも相当行われていたことからして、定め方自体不合理であるとはいえない。

 本件特約による年額賃金は、
 昭和60年で16.3%増、
 昭和61年で6.3%増、
 昭和63年で397.6%増、
 平成元年で20.12%増、
 平成2年12.7%増、
 平成3年で22.3%増、
 平成4年で22.7増、
 平成5年で16.5%増となる。

 右賃料のうち昭和63年の増加は、一挙に約4倍になっている。しかし、右増加は、賃借人が借地上の建物を商業用のビルに建て替えたために小規模住宅用地に対する課税標準の特例が受けられなくなった結果と認められ、そのことは賃借人も予想すべきであるから、当事者の予測を超えた異常事態のため賃料が上昇したとは言えないので、本件改定特約が事情変更によって無効になったとまでは言えない。

 本件特約による賃料が通常の継続賃料としては賃借人に相当過酷な結果になっているが、賃借人は本件借地上の商業ビルを賃貸して多額の賃料収入を得ていることを勘案すると著しく不利益な改定特約とまでは言えない。

 賃借人は、本件特約賃料を支払わないが、従前賃料の2倍を支払い、その後も賃料増額と本件特約の改定を求める話し合いを求めた。しかし、賃貸人から具体的な対応もないまま、本件賃貸借契約を解除したものであるから、賃借人の賃料不払については、未だに信頼関係を破壊するに至らない特段の事情があり、本件解除は無効である。


 (説明)
 公租公課の3倍を地代とする地代改定特約の効力が争われた。判決は、借地人が堅固建物に建替えた結果税額が上昇した点、商業ビルとして賃貸している点をとらえて賃料改定特約の有効性を認めた。しかし、そのような事情がないとき、地代増額特約が否定されることがあるという余地を残した判決となっている。

(1996.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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