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賃貸住宅:定額補修分担金は合法 借り主の請求棄却--地裁判決 /京都

2008年10月02日 | 最高裁と判例集
賃貸住宅退去時の原状回復費を借り手に負担させる「定額補修分担金」条項は消費者契約法に反し無効だとして、右京区のマンションに住んでいた男性が家主に分担金12万円の返還を求めた訴訟の判決が26日、京都地裁であった。吉川慎一裁判官は「消費者の利益を一方的に害するものではない」として訴えを棄却した。原告男性は弁護士に委任していなかったが、貸主側代理人によると、分担金条項を合法とした判決は全国初という。

 判決によると、男性は家賃月5万8000円の2年契約で06年4月から入居し、分担金12万円を支払った。男性は「(最高裁が負担義務はないと判断した)通常損耗の回復費を負担させるもの」と主張したが、判決は分担金は敷金とは異なるとした上で「借り主も回復費用を追加請求されないなど利益を受けられる」と認定した。

 分担金条項を巡っては、貸主側と借り手側の双方の弁護団が地裁で争っており、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」も3月、不動産会社を相手に同条項の使用差し止めを求める消費者団体訴訟を起こして係争中。4月には「借り手の利益を一方的に害し無効」として、貸主に全額返還を命じる判決が地裁であった。【熊谷豪】

毎日新聞 2008年9月27日 地方版



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賃料不払を理由にした契約解除を背信行為と認めるにるに足りない特段の事情あるとして解除を無効とした事例

2008年10月02日 | 最高裁と判例集
 約17か月分の賃料不払を理由とする借地契約の催告解除につき、背信行為と認めるに足りない特段の事情があったとして、右解除を無効とした事例 (東京地裁平成元年12月27日判決、判例時報1359号78頁)

 (事案)
 借地人Yは地主Xの先代と昭和8年頃より借地関係を継続し、本件まで地代の遅滞等の紛争を起さなかった。地代は事実上年払が多く、Xが便宜取立てに赴く慣行もあった。

 Yは昭和61年12月28日、60年分の地代不足分約13万円と61年年分約170万円の支払を62年1月半ばまでの猶予を申出てXの了承を得た。しかしYはそれまでに支払わなかった。この間Yの次男が重病になった。

 Xは62年6月16日、同年5月分までの滞納地代総額約255万円を3日以内に支払うよう催告の上借地契約を解除した。Yは解除の前後を通じ誠意ある対応を採ったが、XはYに会うことを避けた。

 (判決要旨)
 遅延期間は支払猶予の時点から計算すれば5か月程度に過ぎない。この間に支払わなかったYは強く非難されるべきであるが、次男の病状のことや、事実上は原告が取立てに赴いたり、年末まで猶予したりする長年の慣行に照らすならば、この一時をもって数10年も続いている本件契約の解除を直ちに相当ならしめるほど高度の背信性があるとは言えない。しかも、Xの催告に対してYは催告期間内及び期間後直ちにX宅や事務所を訪ね真摯な対応をしており、催告期間内②弁済の事実が認められない点も催告金額と期間(3日間)及びそのための対応を考えると、やはり背信性が極めて高いとはいえない。(t)

 以上のとおり、Yの背信性はさほど強いものではなく、加えてまた、XY間の賃貸借関係が長期に及んでおり、しかもその間正常な関係が保たれてきたこと、Yはその不注意を法律の無知から紛争を引き起こしたものの、その後供託もし経済的に問題もなく信頼関係の復旧に努めていることに照らせば、催告期間中ないしその直後にXがYに対し地代支払についてしかるべき協議に応じてやっておれば、正常な賃貸借関係の継続が十分可能であったと考えられる。そうすると、結局本件の解除についてはXY間の信頼関係を破壊しない特段の事情があるということができる。

 (寸評)
 判決はもとより正当である。こういう判例があるからといって賃料の支払がルーズであっていいわけでは決してない。5か月分の滞納で解除を認めなかった例もあれば、4か月分の滞納で解除を認めた例もある。いうまでもなく賃料債務は賃借人の最も重要な債務であり、Yの不払は重要な義務違反である。だから賃貸人側も契約解除し易い。

 当事者間の信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があれば解除は認められないのが通説・判例だが、それはあくまで最後の砦だ。

(1990.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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