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裁判事例 サブリースの契約終了と賃貸人・再転借人との関係

2008年10月16日 | 最高裁と判例集
最高裁判決 平成14年3月28日
(判例時報 1787号 119頁)
(判例タイムズ 1094号 111頁)

《要旨》
 転貸を目的として締結された事業用ビルの賃貸借契約が、賃借人の更新拒絶により終了しても、賃貸人は、再転借人に対し、信義則上その終了を対抗することができないとされた事例


(1) 事案の概要
 賃貸人Xは、ビルの賃貸・管理を業とするAを賃借人とし、Aがビルを第三者に転貸することを承諾の上、本件ビルにつき一括して本件賃貸借契約を締結した。
 同日、Aは本件ビル敷地の一部の従前の所有者であったY1を転借人として、本件ビル1階の一部分について期間を20年(平成8年11月まで)とする転貸借契約を締結した。Y1はX及びAの承諾のもと、転貸借部分の一部について、Y2との間で再転貸借契約を締結し、Y2はこれに基づき本件部分を占有していた。
 平成6年2月、AはXに対し、転貸方式によるビル経営が採算に合わないとして、本件賃貸借を更新しない旨の通知を行い、これに伴って、XはY1及びY2に対して本件賃貸借が平成8年11月に期間の満了によって終了し、再転貸借も終了する旨の通知をした。
 その後、Xは、本件ビルの転借人との間で直接賃貸借契約を締結したが、Y1との間では、XがY1に対しY2との間の本件再転貸借の解消を求めたために協議が調わず、契約の締結には至らなかった。
 そこで、XはY1及びY2に対して本件部分の明渡しと賃料相当額の支払いを求めて提訴した。
 原審は、Xが信義則上、本件賃貸借の終了をY1及びY2に対抗し得ないということはできないとしてXの請求を認容し、Y2が上告した。

(2) 判決の要旨
 ①本件賃貸借は、Aが第三者に転貸することを当初から予定して締結されたものであり、Xによる転貸の承諾は、Aに、本件ビルを第三者に転貸し収益を上げさせ、Aから安定的に賃料収入を得るためにされたというべきである。
 ②他方、Y2はAの業種、本件ビルの種類や構造などから、XとAの賃貸借の趣旨・目的の下に本件賃貸借が締結され、Xによる転貸の承諾並びにX及びAによる再転貸の承諾がされることを前提として本件再転貸借を締結したものと解される。
 ③本件再転貸借は、本件賃貸借の存在を前提としているが、XとAの賃貸借の趣旨・目的を達成するために行われたものであって、Xは本件再転貸借を承諾したにとどまらず、本件再転貸借の締結に加功し、Y2による本件転貸部分の占有の原因を作り出したというべきであるから、Aが更新拒絶の通知をして本件賃貸借が期間満了により終了しても、Xは信義則上、本件賃貸借の終了をもってY2に対抗することはできず、Y2は本件再転貸借に基づく本件部分の使用収益を継続することができると解すべきである。


(3) まとめ
 本判決は、いわゆるサブリースの形態で行われる建物の賃貸借について賃貸の関係が再転貸借に及んでいても、その再転貸借が賃貸人の承諾があり、また、賃貸人が再転貸借の締結に加功しているような場合は、再賃貸借の根拠となる賃貸借関係が終了しても、賃貸人は再賃借人に対抗できず、再賃借人の使用収益を継続させなければならないとした。



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