花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

「いのちの重さ」の軽さについて (下)

2013-11-24 11:06:28 | Weblog
 戦後教育の中で「人命の尊さ」が教えられてきました。観念的には人の命が重いことを誰もが知っています。けれど、それは薄いヴェールのようなもので、しっかりと私たちに根を下ろしていません。そのため何かの拍子で私たちの地の部分が顔を出します。社会や組織の効率が個人に優先するのが当たり前になっているのを、私たちは身近に感じることが出来ます。かつて人の命が消耗品であり、如何に軽いものであったかは、インパールやガダルカナルでの日本軍を思い出すだけで充分でしょう。その頃の日本は狂っていた、今はそんな時代じゃないと思っていても、もしかすると五十歩百歩くらいの隔たりしかないのかもしれません。だから、教えられた「いのち重さ」はいとも簡単に消え去り、本然の姿が現れて「チェッ」と舌打ちが出てしまうのかもしれません。であるからこそ、しつこい程に「いのちの重さ」を教え込まなければならないと思いました。薄いヴェールがいつの日か私たちの皮膚にまで同化するように。私はそんなことを思いながら、西沢渓谷の滝の水流を受けて底深いコバルトブルーの水を湛えたお釜を眺めていました。