花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

西瓜と梨

2017-08-27 10:07:02 | 季節/自然
 もてあます 西瓜ひとつや ひとり者
 これは永井荷風が詠んだ句です。ある夏、友人に郵便小包で西瓜を送ってもらった時、独身者である上に、子どもの頃から瓜類の青臭いにおいが嫌いだったことから、「この西瓜をどうしたものか」と思って詠んだものです。西瓜嫌いではなかったとしても、ひとりで西瓜1個を食べるのは大変です。荷風の時代は電気冷蔵庫がありませんから、少しずつ小分けにして食べる訳にもいかないでしょう。西瓜より半月ほど季節は後ろにズレますが、梨ならひとり者でも大丈夫です。みずみずしさでは西瓜に劣らず、しかもまるまる1個食べても平気です。しかし、ひとりで皮をむいて、ひとりで食べるのは、何やら寂しげな感じはします。小津安二郎の映画「晩春」のラストシーンで、父親役の笠智衆は原節子演ずる娘が嫁いだ日に、ひとり家へ戻ってリンゴの皮をむき、リンゴを手にしたままうなだれます。その哀情多いシーンが思い出されるからです。