数日前、朝日新聞朝刊に載っていた新潮文庫の広告で「さよなら怪傑黒頭巾」のタイトルを見た時、「あぁ、いいタイミングだなぁ」と思いました。庄司薫さんが書いたこの本は、G.Wのとある一日、主人公のお兄さんの友人の結婚式を中心舞台とし、そこに現れるいろいろな人と主人公の係わりを通じて、理想と現実の相克、そして現実の前に退却を余儀なくさせられる理想と、理想の退却を前にして若者の正義感から湧き上がる葛藤が描かれています。G.Wの「どっと繰り出す」的な過ごし方がどうも肌に合わない私は、5月の爽やかな陽光の下、真面目な、けれども必要以上に深刻になったりしない、醒めた目を持った主人公の周りで展開される「どっと繰り出さない」一コマ一コマが妙に好ましく思われ、この時期何回か書棚から取り出しては読み返すことがありました。そんな思い出があったので、「いいタイミングだなぁ」と思った訳です。
さて、では今年のG.Wに何を読むかです。大型連休に合わせて大部の本に取り組みたいところですが、家族サービスをおろそかにすることは出来ません。ちょっとした合い間の積み重ね、あるいは運よく生まれた空白の一日で読み切れる分量にしなければなりません。読みたいと思っていた本の中から、この条件に合う次の2冊を候補に考えてみました。ひとつはオフェイロン著「アイルランド」(岩波文庫)、もう一冊は井上浩一著「ビザンツ 文明の継承と変容」(京都大学学術出版会刊)です。ところが、G.W突入前日の27日、朝日新聞朝刊一面の書籍広告で「垂壁のかなたへ」(白水社刊)を目にして、新たな候補が名乗りを上げることになりました。私が好きな登山本である「垂直の記憶」(山野井泰史著・山と渓谷社刊)とタイトルが似ていることに加え、広告中の「世界最強のクライマーが綴る」のコピーに、かつて世界最強と謳われた山野井さんとこれまた通ずるものを感じ、「これは期待出来る一冊かもしれない」と思いました。「ビザンツ 文明の継承と変容」はしばらく寝かせていた本なので、もう少し眠ってもらっても構わないだろうと考え、ひとまずG.W後の通勤本へ回すことにしました。そこで、G.W初日の28日、「アイルランド」と「垂壁のかなたへ」の雌雄を決するべく神保町へ出掛けました。最初に岩波ブックセンターで「アイルランド」を何ページか読んでみました。アイルランドの歴史と文化に関する記述に興味をそそられつつも、以前読んだ司馬遼太郎の「愛蘭土紀行」(朝日文庫)の方が読書の満足度が高いような気がし、いずれ「愛蘭土紀行」を再読すれば良いようにも思えました。次に三省堂で「垂壁のかなたへ」を手に取って初めの数ページを読んでみました。「物事がシンプルになればなっただけ、体験は豊かになる」のフレーズが私の目を捕らえ、これはきっと私の好みに適う内容だと思いました。また、著者のスティーブ・ハウスさんは、「最後は自分を燃やしながら登るしかない」と言ってブドウ糖をなめるだけで頂を目指した山野井泰史さんと、登山スタイルにおいても重なり合うものがあると思いました。この時点で勝負がつきました。あとは、家族サービスの隙を縫って読書の時間を捻出するだけです。
さて、では今年のG.Wに何を読むかです。大型連休に合わせて大部の本に取り組みたいところですが、家族サービスをおろそかにすることは出来ません。ちょっとした合い間の積み重ね、あるいは運よく生まれた空白の一日で読み切れる分量にしなければなりません。読みたいと思っていた本の中から、この条件に合う次の2冊を候補に考えてみました。ひとつはオフェイロン著「アイルランド」(岩波文庫)、もう一冊は井上浩一著「ビザンツ 文明の継承と変容」(京都大学学術出版会刊)です。ところが、G.W突入前日の27日、朝日新聞朝刊一面の書籍広告で「垂壁のかなたへ」(白水社刊)を目にして、新たな候補が名乗りを上げることになりました。私が好きな登山本である「垂直の記憶」(山野井泰史著・山と渓谷社刊)とタイトルが似ていることに加え、広告中の「世界最強のクライマーが綴る」のコピーに、かつて世界最強と謳われた山野井さんとこれまた通ずるものを感じ、「これは期待出来る一冊かもしれない」と思いました。「ビザンツ 文明の継承と変容」はしばらく寝かせていた本なので、もう少し眠ってもらっても構わないだろうと考え、ひとまずG.W後の通勤本へ回すことにしました。そこで、G.W初日の28日、「アイルランド」と「垂壁のかなたへ」の雌雄を決するべく神保町へ出掛けました。最初に岩波ブックセンターで「アイルランド」を何ページか読んでみました。アイルランドの歴史と文化に関する記述に興味をそそられつつも、以前読んだ司馬遼太郎の「愛蘭土紀行」(朝日文庫)の方が読書の満足度が高いような気がし、いずれ「愛蘭土紀行」を再読すれば良いようにも思えました。次に三省堂で「垂壁のかなたへ」を手に取って初めの数ページを読んでみました。「物事がシンプルになればなっただけ、体験は豊かになる」のフレーズが私の目を捕らえ、これはきっと私の好みに適う内容だと思いました。また、著者のスティーブ・ハウスさんは、「最後は自分を燃やしながら登るしかない」と言ってブドウ糖をなめるだけで頂を目指した山野井泰史さんと、登山スタイルにおいても重なり合うものがあると思いました。この時点で勝負がつきました。あとは、家族サービスの隙を縫って読書の時間を捻出するだけです。