花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

日本中が固唾をのんだ日

2010-03-01 23:31:33 | Sports
 バンクーバー冬季五輪が閉幕しました。バンクーバー大会で一番の注目競技は、もちろん女子フィギュアだったでしょう。先週の金曜日は、日本中が固唾をのんでテレビを見守ったことと思います。私は同僚たちと一緒に職場のテレビを見ていました。浅田真央選手の前がキム・ヨナ選手でしたが、キム・ヨナ選手がジャンプをした時、誰かが「転べ」と声を発しました。この声を聞いて、私はある意味ほっとしました。と言うのも、思わず声を出した人は、キム・ヨナ選手が浅田選手よりも金メダルに近いと思っているので、キム・ヨナ選手のミスを期待したわけで、浅田選手が金メダルを獲って当然とは考えていないことになるからです。つまり、キム・ヨナ選手の力を十分認めたうえで、浅田真央選手がキム・ヨナ選手に勝つためには、相手のミスによるしかないと考えていることになります。そこで、私がほっとしたのは、もし金メダルを獲って当然と考えられていれば、獲れなかった時のバッシングが予想されますが、そうでなければ、金メダル以外であっても祝福は得られるだろうと思ったからです。その意味では、浅田選手より先に私の方がメダルの重圧から解き放たれたと言えるでしょう。
 結果は、キム・ヨナ選手が金メダル、浅田真央選手は銀メダルでした。職場でテレビを見ていた一群から、「あーあ」との声は聞かれましたが、浅田選手を非難する人は居ませんでした。競技終了後のインタビューで、浅田選手は、「長くて短い4分間」と言っていました。浅田選手の気持ちがよく表れている一言だと思います。この4年間のプレッシャーが如何ほどであったかを思えば、本当に「長くて短い4分間」だったのでしょう。女子フィギュアが終わって、テレビの前を離れ何事もなかったかのように机に戻り、いつもと変わらず仕事をしている同僚たちを見て、やはりまたほっとしました。その夜はたまたま遅くまで会社に残って仕事をしていて、何となく残っていた仲間と軽くウィスキーを飲みに行くことになりました。お店に入って、他のグループが女子フィギュアについて話しているかどうか、ちょっと気になりましたが、落胆のようすで女子フィギュアの話をしている人は見受けられませんでした。
 「銅メダルで大騒ぎするなんて、おかしな国だ」とか、「国家を背負わない者が、いい成績を出せるはずがない」と発言されたどこかの首長がいらっしゃるようですが、私にはメダルを国威発揚の手段とする必要のない国は素晴らしいと思います。たとえ金メダルは獲れなくても、頑張った選手の姿が私たちに何かを伝えてくれれば、それで良いと思います。メダルの数が多いのは誇らしいことだと思いますが、一方で、「次は頑張ろう!」との思いを胸に帰国する選手の多い国も誇りに思って良いのではないかと思います。