花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

柔軟性という魔物 : おまけ

2009-11-30 22:34:37 | Weblog
 「それでも新資本主義についていくか」の著者、リチャード・セネット氏は、2008年4月25日付け朝日新聞朝刊で、安定的な雇用が壊れている現状がもたらしたものとして、次の3つをあげています。①組織への帰属心の低下、②働き手同士の信頼の喪失、③組織についての知識の減少。さらに、これらの変化が働く人びとにどう影響するかについて、セネット氏は、「人は仕事が不安定になるとものごとを長期的、戦略的に考えられなくなり、自信を失う」と指摘しています。
 新聞の社会面で目に止まる、インサイダー取引や不正経理、それから○○偽装といったものに代表される企業犯罪は、もしそれが増加傾向にあるならば、雇用の安定の喪失がもたらす、長期的、戦略的思考の喪失の現われであると言えるかもしれません。常識的に考えれば、長期的、戦略的思考の持ち主は、危ない橋は渡らないからです。そして、このところコンプライアンスやコーポレート・ガバナンス、内部統制など、企業とその従業員が不法な活動を行なわないようにするための枠組みが盛んに言われるようになったのも、同じコインの裏表なんだと思います。