花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

玉秀

2007-01-08 23:05:17 | Weblog
 おとといの雨、昨日の風と、二つ目玉の低気圧による影響で大荒れになった天気も収まり、障子越しに差し込むまぶしい朝日で目が覚めた。背筋がシャキっとするような冷気に、何となく散髪にでも行こうかという気になり、理容店へ出掛けた。順番を待っている間、持って行った文庫本、谷崎潤一郎の「幼少時代」(岩波文庫)を読んでいると、谷崎潤一郎が幼い頃を過ごした日本橋蛎殻町界隈に触れた箇所で、『鳥屋の「玉秀」』なる文字が目に入った。これは、あの親子丼で有名な「玉ひで」に違いないと思うが、その「玉ひで」のちょっと甘めでトロリ感のある玉子、そしてそこにちりばめられたにゅっと歯に吸い付くような鶏肉の食感が思い出された。リアルな感覚の覚醒にふと文庫本から目を上げると、髪を切るハサミのシャキシャキという音や、ドライヤーのヴォーという唸りが、やや間遠な感じで聞こえてきた。店内のラジオからは、成人式の話をしているDJの声が流れていた。祝日の中、人それぞれに時は過ぎているんだろうなぁ、と思った。