9/5付け朝日新聞夕刊の文化欄で「バズワード」なる言葉が取り上げられていた。「バズワード」とは、「明確な合意や定義のない用語のこと」で、「Web2.0」「ブロードバンド」「ユビキタス」などが代表例だそうだ。記事では、「豊かな情報に囲まれ、視界が開けたはずの現代社会で、正確な意味が明らかでない言葉が幅をきかせる現象」の背景を探っている。その中で、メディア史研究者・佐藤卓己氏の次の意見が印象に残った。「限られた時間で膨大な情報を処理しなければならない現代社会では、思考を節約して先に進むことが必要だ。そのため世間に広がっているステレオタイプの意見や言葉に頼らざるをえない」。つまり、思考することよりも情報を処理する方が重要、ということを言っている。以前、自然科学の本でリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」がかなり話題になったが、この本でドーキンスは、人間も含めて生物は遺伝子が自らのコピーを残していくための乗り物(vehicle)だ、と述べていたように思う。生き物が遺伝子を残すのではなく、遺伝子を残す戦略に適合的な個体が遺伝子を残すことが出来る。その意味で、遺伝子は利己的である、という説だ。朝日新聞の記事を読んで、この利己的な遺伝子のことを思い出した。そして、「俺たちに主体性は無いのかい」、と寂しくなった。